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《カナダ》核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が2019~2023年の実施計画書を公表

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、自身のウェブサイトにおいて、「適応性のある段階的管理」(APM詳細はこちら))の実施に関して、2019年から2023年までの5カ年の実施計画書を公表した。NWMOは、毎年、今後5年間の行動計画をまとめた実施計画書を公表している。今回の実施計画書の対象期間には、NWMOが1カ所の好ましいサイトの特定を予定する2023年が含まれている。なお、2019年4月現在、NWMOは5つの自治体において、サイト選定プロセスの第3段階「使用済燃料処分場の潜在的な適合性の予備的調査」の第2フェーズとして現地調査を実施している

NWMOは、今回公表した実施計画書において、2023年を重要なマイルストーンと位置付け、それに向けた取り組みとして下記の7つの優先事項を挙げ、それぞれにおける実施内容を示している。

  1. 工学技術:工学的設計をさらに発展させ、その有効性を実証する。
    • プロトタイプの処分容器、緩衝材、定置システムの設計、製造、試験を完了する。
    • ボーリング調査、予備的な環境ベースライン調査で得られたデータを活用したサイト固有の概念的な処分場設計の整備を行う。
    • 人工バリアの評価のためのプロトタイプ試験及び実証施設を維持する。
    • 必要に応じてAPMの概念設計とコスト見積りを更新するとともに、使用済燃料取扱システムの設計と開発を開始する。
  1. サイト評価:候補サイトにおける詳細な現地調査を継続し、社会的・技術的両面でのサイト評価を実施していく。
    • ボーリング調査を継続するとともに、プロジェクトの要件に合致する可能性が高い地域における地球科学的、工学的、環境的及び安全性の要因と先住民の有識者や地域社会によって特定された要因の評価について情報提供するために現地調査を拡大する。
    • 地域社会との調査結果の再検討を通じて、調査対象地域の絞り込みを継続する。
  1. 安全性:サイト固有の予備的なセーフティケースを構築し、長期安全性を確認する取り組みを強化する。また、国際機関や諸外国の実施主体との協力に基づく研究を継続する。
    • カナダ国内外の大学との共同研究を通じてプロジェクトの科学的側面の理解を深め、その結果を学術誌、会議論文、技術報告書で提示する。
    • IAEA「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」に基づくカナダの国際的義務を継続する。
    • 諸外国の研究者とともに、スイスのモン・テリ岩盤研究所プロジェクト及びグリムゼル試験サイトでの研究に引き続き協力する。
    • カナダ原子力学会、OECD/NEAやIAEAなどが主催する国内及び国際会議、ワークショップ、国際共同研究への参加を継続する。
    • 学術界と産業界の研究者による地球科学セミナーの開催を継続する。
    • カナダ自然科学・工学研究会議(NSERC)の奨学金プログラムを通じて、大学院生を支援する。
    • 地域住民の安全に対する理解を深めるための討論の場を構築・支援する。
    • 地下水の流れ、閉じ込め容器からの放出と移行及び熱-水-力学連成プロセスの評価を含めて、安全評価モデルを整備・改良する。
    • 処分場の安全性に影響を与える可能性があるプロセスについて科学的理解を促進する。
    • 地層処分場閉鎖後の安全評価のサイト固有のじ実例を通して、技術的安全性の考慮事項の調査を継続する。
  1. 人材の確保:2023年のサイト特定以降の段階に備え、NWMOの要員確保などに関する戦略を立案するとともに、地域における雇用の促進に向けた取り組みを強化する。
    • 将来の許認可申請をサポートするため、選定された地域の詳細なサイト特性調査、環境アセスメント、工学的設計及びセーフティケースの開発を進めるためのワークプランを検討し、要員の要件を評価する。
    • 選定された地域に建設される専門技術センターの概念等を検討する。
    • 潜在的なサイトでの現地スタッフのプレゼンスを構築し、プロジェクトに関する現地契約の機会を提供する。
    • 地方自治体の青少年及び住民の能力向上を支援するとともに、先住民がAPMプロジェクトやその地域の他の大規模プロジェクトに関連する就業機会を確保するためにサイト選定プロセスに関与を促す。
  1. 許認可:許認可や規制上の承認を得るための戦略を立案・実施するとともに、持続可能性の確保のための、自然環境、健康及び社会福祉の変化を特定するための調査を行う。
    • 立地地域と協力して影響評価手法を開発する。
    • 地域の持続可能な開発へのプロジェクトの貢献のために必要な情報を提供するプログラムを開発する。
    • 地域住民や先住民の有識者と連携して、潜在的なサイトにおけるベースライン環境モニタリングを確立する。
    • カナダ原子力安全委員会(CNSC)などの規制当局と協力して、規制プロセスの要件を理解することにより、NWMOの戦略を説明できるようにする。
    • 潜在的な受入地域と協力して、規制プロセスにおける役割を明確にし、プロセスに参加できるよう関与を促進する。
    • 地元の伝統的な知識を評価に織り込むための先住民との共同作業など、地域社会などの人々と協力しながら地域の自然環境に対する理解を深める機会を創出する。
  1. 輸送:関心のある自治体、個人及びグループの関与を促進し、輸送計画に対する信頼構築のための技術的作業(リスク評価、輸送方法の検討等)を行う。
  1. 公衆の関与:2023年にサイトを特定するために、地域での関与や現地調査を進め、自治体とのパートナーシップ協定締結に向けた取り組みを行う。
    • 「適応性のある段階的管理」(APM)の実施、サイト選定プロセス、サイト選定後の取り組み及びNWMOに対するカナダ国民の認識を高めるとともに、受け取った情報を一般に報告する。
    • プロジェクトに対する若年層の認識と理解を深め、APMに関連する将来の意思決定能力を高める。
    • 核燃料の最終的な輸送の計画を含むAPMの進捗状況について、カナダの原子力立地地域に説明する。
    • 以下との関係を構築し維持する。
      • サイト選定プロセスへの参加を選択した関心のある地域、その地域の先住民及びその周辺地域
      • APM及びサイト選定プロセスの進捗状況を共有するための国、州及び地域レベルに設けられている先住民組織
      • 地方自治体が重要と考える観点をより良く理解し、協力してAPMを実施していくために設けられている自治体連合体(複数州にまたがる連合体)
      • 連邦、州、地方自治体
    • 先住民地域の文化や言語、慣習、取り組みは多様であることを認識しつつ、先住民の有識者を含む潜在的に影響を受ける先住民との協力を続ける。
    • より具体的に「社会的受容(social acceptance)」及び「喜んで受け入れる(willing host)」という用語を定義し、どのように立証できるか理解するために、サイト選定プロセスに関与する自治体、地域、先住民と協働する。
    • 地域などでの議論をサポートするための展示やわかりやすいコミュニケーション資料、視聴覚ツールの開発を継続する。
    • NWMOのWebサイト及びソーシャルネットワークサービス(SNS)を通じた関与を拡大する。

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

【出典】

(post by nunome.reiko , last modified: 2023-12-28 )