米国のエネルギー省(DOE)は、2016年12月16日に、軍事起源の高レベル放射性廃棄物の独立した処分場の計画案を示す報告書を公表するとともに、2016年12月19日付の連邦官報において、2017年3月20日までコメントの募集を行うことを告示した。DOEは、核兵器開発等で発生した高レベル放射性廃棄物や海軍の船舶炉の使用済燃料を保有しており、今回公表された報告書は、これら軍事起源廃棄物の専用処分場の計画案を示すものである。
DOEは、核兵器開発に伴う高レベル放射性廃棄物は米国で新たに発生しておらず、民間の使用済燃料と比較して廃棄物量が限定されて発熱量も小さいことから、軍事起源の高レベル放射性廃棄物の処分場は、民間使用済燃料と共同の処分場よりも立地・建設計画の単純化が可能であり、より早期に開発できるとしている。DOEは、全米各地のDOEサイトで保管されている軍事起源廃棄物の撤去及び処分に責任を有しており、専用処分場の開発のために必要な活動について検討してきた。DOEは、軍事起源廃棄物の専用処分場を同意に基づくサイト選定プロセスで開発することにより、今後の米国の全体的な放射性廃棄物戦略に重要な経験をもたらすとしており、軍事起源廃棄物の専用処分場の計画案についてのコメントを募集することが適切としている。
軍事起源廃棄物について独立した専用処分場を開発する方針は、2015年3月に大統領覚書により示されていた 。軍事起源廃棄物の処分について、1982年放射性廃棄物政策法第8条においては、費用対効果、保健及び安全、規制、輸送、社会的受容性及び国家安全保障に関連する要因を評価し、軍事起源の高レベル放射性廃棄物の処分場の開発が必要であると大統領が判断した場合、民間から独立した処分場を計画することができると規定されている。2015年3月の大統領の判断は、本法に沿った検討・評価と位置付けられる。
今回公表された報告書では、軍事起源廃棄物の専用処分場の開発に係る法的権限と規制枠組みを示した上で、計画、戦略、計画で必要とされる様々な活動などが示されている。軍事起源廃棄物の専用処分場の開発は、段階的なアプローチで進めるものとされ、同意に基づくサイト選定プロセスを構築した後、16年後には処分場の建設を開始し、23年後には操業を開始する予備的なスケジュール案が示されている。費用については、一例として30億ドル(3,600億円)の概算も示されているが、より信頼できる想定を行うためには、立地地点、地質環境、廃棄物量等の確定が必要としている。
【出典】
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-10 )