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《フィンランド》フェノヴォイマ社が使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書を提出

フェノヴォイマ社が地質学的研究を行う2自治体の位置

フェノヴォイマ社が地質学的研究を行う2自治体の位置

フィンランドにおいて新たに原子力発電事業に参入し、原子炉新設に向けたプロジェクトを進めているフェノヴォイマ社は、2016年6月22日付のプレスリリースにおいて、新規原子炉から発生する使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省(TEM)に提出したことを公表した。フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(下図参照)によれば、同社は調査を2030年代半ばまで実施した後、環境影響評価書の作成を行い、2040年代に使用済燃料処分場のサイトを選定する計画である。

  • 使用済燃料処分場のサイトに関してフェノヴォイマ社は、原子炉建設プロジェクトを進めているピュハヨキ自治体と、ポシヴァ社が使用済燃料処分場を建設するエウラヨキ自治体の2カ所を対象として、今後、地質学的研究(Geological studies)を実施する。
  • フェノヴォイマ社は、ポシヴァ社の子会社ポシヴァ・ソリューションズ社と10年間の業務提携契約を締結した。ポシヴァ・ソリューションズ社は親会社のポシヴァ社が培ってきた専門性を活かして、フェノヴォイマ社の使用済燃料処分に向けた計画策定や研究開発、及びサイト選定の面で協力する。10年後には次のステップの実施に向けた別の協定を結ぶことも可能となっている。
フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(フェノヴォイマ社環境影響評価計画書を基に作成)

フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(フェノヴォイマ社環境影響評価計画書を基に作成)

雇用経済省の2016年6月22日付プレスリリースによると、同省のレーン経済大臣は、フェノヴォイマ社とポシヴァ・ソリューションズ社との協力により、フェノヴォイマ社の使用済燃料処分プロジェクトにおいてポシヴァ社が有する専門的知識が活用されるとして歓迎の意を表明した。また、フィンランドの原子力に関する安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)も2016年6月22日にプレスリリースを公表し、今回の両社の協力は、これまでのポシヴァ社の経験を活かすことによって、フェノヴォイマ社が計画している使用済燃料処分の安全性にとって好ましいとする見解を表明した。また、フェノヴォイマ社が今後実施する環境影響評価について、STUKは処分の計画の実施、処分概念、処分による放射線影響の評価に主に取り組んでいくこととしている。

フェノヴォイマ社の使用済燃料処分計画をめぐるこれまでの動向

フェノヴォイマ社は、フィンランドの原子力発電事業に新たに参入した企業であり、同社が新規原子炉建設事業に関して2009年に原則決定(詳細はこちら)の申請を行った際には、使用済燃料管理に関してはエウラヨキ自治体オルキルオトに計画されている処分場に共同で処分する計画としていた。なお、その当時、フェノヴォイマ社はポシヴァ社やその親会社であるテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)、フォルツゥム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)と経済的な面での協力関係はなかった。フェノヴォイマ社の原則決定申請に対して政府は2010年5月に原則決定を行い、2010年7月には国会が政府原則決定を承認していた。政府による原則決定文書では、フェノヴォイマ社は2016年6月30日までに、同社が既存の処分実施主体であるポシヴァ社と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価計画書を雇用経済省に提出することにより、同社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することを付帯条件としていた。

フェノヴォイマ社は、ポシヴァ社及びその親会社2社(TVO社、FPH社)と使用済燃料処分に関して協力関係を構築するよう調整を行っていたが、ポシヴァ社はオルキルオトに建設予定の処分場は親会社が運転する原子炉から発生する使用済燃料のためのものであるとして、フェノヴォイマ社との協力関係を拒否し続けていた。

その後、FPH社の親会社であるフォルツム社が、2015年8月にフェノヴォイマ社のプロジェクトに出資し、フェノヴォイマ社のプロジェクトに参加することとなった。なお、フェノヴォイマ社は2015年に新規原子炉(ハンヒキヴィ1号機)の建設許可申請を行っている。

今回のポシヴァ社によるプレスリリースでは、ポシヴァ社は引き続き、親会社であるTVO社とFPH社の原子力発電所で発生する使用済燃料の処分場建設に集中していくものであり、フェノヴォイマ社との業務契約締結には、フェノヴォイマ社の原子力発電所で発生する使用済燃料をポシヴァ社が建設を進めているオルキルオトの地層処分場において処分することは含まれていないとしている。

フィンランドにおける環境影響評価について

フィンランドでは、1994年に環境影響評価手続法が制定されている。環境影響評価は、環境に重大な影響が生じる可能性がある事業について、市民を含むステークホルダーが情報を事前に入手し、計画策定や意思決定に参加する機会を増やすことを目的とした制度となっている。最終処分場を含む重要な原子力施設の建設事業に関しては、原子力法に基づく原則決定手続きの申請に先だって、事業者は環境影響評価(EIA)を実施し、その評価書を原則決定申請書に添付することが規定されている。

EIAは、狭い意味での自然環境に対する影響だけではなく、景観、社会生活への影響、経済的な影響を含めた総合的な評価をすることが規定されている。

また、環境影響評価(EIA)は、計画書の作成(EIA計画書)、評価の報告書(EIA報告書)をまとめる段階から構成されている。

原子力施設に係る事業に関しては雇用経済省が環境影響評価の監督官庁となり、対象地域住民を含めた関係者や関係省庁に意見を求めることとなっており、その一環としてこれまでの原子力施設に係る環境影響評価において、雇用経済省はSTUKにも意見書の提出を要求している。

【出典】

 

【2016年7月13日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年7月12日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が提出した使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書が、同社の新規原子炉建設事業に関する2010年の原則決定の付帯条件を満たしていることを承認したことを公表した。これにより、同社が2015年に提出していたハンヒキヴィ原子力発電所1号機の建設許可申請の審査が継続されることになる。

フェノヴォイマ社の新規原子炉建設に関する原則決定申請に対して、政府は2010年5月に原則決定を行っていた。原則決定文書では、フェノヴォイマ社が2016年6月30日までに、同社が既存の処分実施主体であるポシヴァ社と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省に提出することにより、同社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することを付帯条件としていた。

また、同プレスリリースによれば、今後、雇用経済省(TEM)は環境影響評価の調整機関として、関係行政機関や、候補サイトの自治体とされているエウラヨキ、ピュハヨキの両自治体にフェノヴォイマ社の環境影響評価(EIA)計画書に関する意見照会を行うほか、その一環として公聴会を開催する計画である。

【出典】

 

【2016年8月24日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年8月23日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が提出した使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書に関する公聴会を、エウラヨキ、ピュハヨキ両自治体において、それぞれ2016年9月21日、9月22日に開催することを公表した。

環境影響評価手続法に基づいてTEMは、環境影響評価の調整機関として、関係行政機関及び候補サイトの自治体にEIA計画書に関する意見照会を行うほか、公聴会を開催することが規定されている。同プレスリリースによると、EIA計画書に対する関係行政機関及び候補サイトの自治体から意見照会を行う期間は2016年9月12日から2016年11月9日とされ、収集した意見を踏まえて、TEMは2016年末までに見解書を公表する予定としている。

【出典】

 

【2016年12月19日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年12月16日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が2016年6月に提出していた使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書に対する意見書を公表した。TEMは意見書において、フェノヴォイマ社のEIA計画書は包括的であり、環境影響評価手続法の要件を満たしているとの見解を示している。

フェノヴォイマ社のEIA計画書について調整機関である雇用経済省(TEM)は、2016年9月12日から11月9日にかけて自治体や関係機関等、及び関係国に対して意見聴取を行った。その結果、合計で63の意見が寄せられたが、多かった意見としては、EIA評価の期間が非常に長いこと、事業に関するコミュニケーションが重要であることなどのほか、EIA評価の期間中における評価プログラムに関する最新情報の提供についての要求があったとしている。

雇用経済省(TEM)は、今回の意見書においてフェノヴォイマ社に対し、現時点で放射性廃棄物管理義務を有している原子力発電事業者との協力を継続すること、及び2018年1月31日までに使用済燃料処分プロジェクトのより詳細なスケジュールを示した計画書を追加で提示するよう求めている。フェノヴォイマ社が追加で提出する計画書では、エウラヨキ自治体で実施する調査の対象となる地域の選定方法と選定時期のほか、エウラヨキ・ピュハヨキ両自治体の調査地域での調査の実施方法、及び公衆参加の枠組みに関する詳細を示さなければならないとしている。そのほか、雇用経済省(TEM)は、フェノヴォイマ社の原子炉から発生する使用済燃料については、商業契約に基づく協力により、ポシヴァ社の処分場で処分するのが最も望ましい解決策であり、フェノヴォイマ社がそのための努力をすべきであるとの見解を示している。

【出典】

 

【2018年2月2日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2018年1月30日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が2016年6月に提出していた使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書について、追加説明資料を雇用経済省に提出したことを公表した。雇用経済省は2016年12月にフェノヴォイマ社のEIA計画書に対する意見書を発出しており、その中で、2018年1月31日までに使用済燃料処分プロジェクトのより詳細なスケジュールを示した計画書を追加で提示するよう求めていた。

雇用経済省のプレスリリースによれば、フェノヴォイマ社は、ピュハヨキ自治体のシュデネバ(Sydänneva)と呼ばれる森林地帯で処分場設置の適合性確認を目的とした地質調査を実施するとしている。また、エウラヨキ自治体では、地質調査を実施する地区を選定するに至っていないが、調査地区選定の検討を自治体全域を対象として実施しているとしている。また、フェノヴォイマ社は、予備的な調査計画をすでに作成しており、エウラヨキ自治体の調査地区を選定した後、エウラヨキとピュハヨキの両自治体の調査地区において同時に、表層地質調査等の追加的な調査を実施する予定としている。

 

【出典】

(post by t-yoshida , last modified: 2023-10-11 )