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《カナダ》使用済燃料処分場のサイト選定の状況-オンタリオ州ニピゴン・タウンシップが選定プロセスからの撤退を決定

(NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向)

(NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向)

カナダにおける使用済燃料処分場のサイト選定プロセスに参加していたオンタリオ州ニピゴン・タウンシップ(図中の⑥)は、2014年6月17日にサイト選定プロセスから撤退する決議を行った。この決定を受け、カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、同日、ウェブサイトにおいてニピゴン・タウンシップの決定を尊重するとの見解を公表した。

ニピゴン・タウンシップは、2011年11月にサイト選定プロセスに対する関心表明を行っており、2013年10月からはニピゴン地域連絡委員会(NCLC)を設置して、月一回のペースで会合を開催し、サイト選定プロセスの第3段階にあたる「使用済燃料処分場の潜在的な適合性の予備的評価」の前期・後期のうち、机上で行う前期の調査(第1フェーズ)の進捗を追跡していた。NCLCは、住民5名の委員のほか、ニピゴン・タウンシップ長とタウンシップ議会議員からなる5名の委員を加えた計10名で構成されており、当初は2014年11月までの会合予定を活動計画に組み込んでいた。

しかし、ニピゴン・タウンシップは、サイト選定プロセスへの参加継続をタウンシップ議会において早期に議決するための判断材料として、2014年5月21日にNWMOに対し、同地域において実施されてきた第3段階第1フェーズにおける調査の中間評価を求めた。これを受けてNWMOは2014年6月11日に、地域の地層科学面と地元福祉に及ぼす影響の二つの分野について、それぞれ外部コンサルタントに依頼して実施していた調査の中間評価をニピゴン・タウンシップ長宛ての書簡とともに提出した。NWMOは書簡において、次の第3段階第2フェーズである現地調査に進むかどうかを検討する際には、外部コンサルタントが指摘している不確実性の存在を重要視することになると説明し、中間評価の概要を以下のように整理している。

  • 地層科学面の中間評価
     ニピゴン・タウンシップ地域には、処分場設置のための十分な深さと横幅があり、天然資源の存在の可能性が低く、全般的にアクセスしやすい等、処分場設置に好ましい特性を持つと見られる岩盤のあるエリアが2カ所ある。しかし、これら2カ所のエリアには、サイトが処分場設置に求められる評価基準を満たしているとNWMOが判断する可能性を低くするような大きな不確実性がある。その不確実性とは、不均質な岩相、シル(貫入岩体)、貫入岩脈、近接地域に存在する断層である。
  • 処分プロジェクトが地域や周辺地域の福祉に及ぼしうる影響の中間評価
     処分プロジェクトにより、ニピゴン・タウンシップにおける人口の増加、労働力の増加、教育・訓練へのアクセス、保健・安全関連施設やサービスの向上、雇用・所得・事業活動・自治体の財政・自治体のインフラ整備への好影響等、タウンシップにとっての便益が見込まれる。しかし、それらがタウンシップの期待する価値に見合うものであるか、社会的資産を向上させる上で何を優先すべきかについては難しい判断を迫られるため、その判断に伴ってタウンシップ内に問題が生じかねないといった不確実性がある。また、処分プロジェクトに関して流布された誤った情報への対応や処分プロジェクトについての学習への住民の関心維持も解決すべき大きな課題となっている。

これらの中間評価の結果を受けて、ニピゴン・タウンシップ議会は、議決を行うに際しての情報が十分に揃っていると判断した上で、2014年6月17日にサイト選定プロセスから撤退する決議を行った。なお、ニピゴン・タウンシップは、NWMOがサイト選定プロセスから撤退した自治体についても、その後のプロセスに継続的に関与できるようにする枠組みを作る予定であることを示したことから、プロセスへの継続的な関与と関連情報の提供を望むとしている。

また、ニピゴン・タウンシップがサイト選定プロセスから撤退したことで、サイト選定プロセスに残っている地域は14地域(図中オレンジ4カ所、紫色9カ所、青色1カ所)となったが、NWMOは、今回のニピゴン・タウンシップにおける評価結果がこれら他の14地域に影響を及ぼすことは無いとしている。

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

【出典】

(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-11 )