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- | * 米国では、1987年に法律によりネバダ州のユッカマウンテンが高レベル放射性廃棄物の唯一の処分候補地としてサイト特性調査が行われ、2002年に法律で処分場サイトとして指定されました。ユッカマウンテン計画では、商業用原子力発電所から発生する使用済燃料、エネルギー省(DOE)が保有する国防活動関連等から発生する高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)及び使用済燃料の3 種類を、地表から200 ~500mの深さに地層処分する方針です。ただし、2009 年に発足した現政権は、ユッカマウンテン計画を中止し、代替案を検討する方針です。 | + | |
- | * このように、米国の高レベル放射性廃棄物の処分の最終的な計画はまだ定まっていない状況ですが、以下ではこれまで進められてきたユッカマウンテン計画について、処分場の建設認可に係る許認可申請書の情報なども含めて示します。 | + | 処分候補地としてサイト特性調査が行われ、 |
+ | 2002年に法律で処分場サイトとして指定されました。 | ||
+ | ユッカマウンテン計画では、商業用原子力発電所から発生する使用済燃料、 | ||
+ | エネルギー省(DOE)が保有する国防活動関連等から発生する高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)及び | ||
+ | 使用済燃料の3種類を、地表から200~500mの深さに地層処分する方針です。 | ||
+ | ただし、2009年に発足したオバマ前政権は、ユッカマウンテン計画を中止し、代替案を検討する方針でしたが、 | ||
+ | 2017年に誕生したトランプ政権は、ユッカマウンテン計画を継続する方針を示しています。 | ||
+ | |||
+ | 現在、米国の高レベル放射性廃棄物の処分の最終的な計画はまだ定まっていない状況ですが、 | ||
+ | 以下では、ユッカマウンテン計画での処分場の建設認可に係る許認可申請書の情報、前政権での代替案の検討結果なども含めて示します。 | ||
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- | ユッカマウンテンで処分予定の高レベル放射性廃棄物は3種類あります。①商業用原子力発電所から発生した使用済燃料が63, | + | ユッカマウンテンで処分予定の高レベル放射性廃棄物は3種類あります。 |
+ | ①商業用原子力発電所から発生した使用済燃料が63, | ||
+ | ②DOE保有の使用済燃料(研究炉や海軍の船舶炉などから発生するもの)が2, | ||
+ | ③核兵器製造及びかつて実施された商業用原子力発電所からの使用済燃料の再処理によって発生した | ||
+ | 高レベル放射性廃棄物が4, | ||
+ | 合計で70, | ||
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- | 処分対象の高レベル放射性廃棄物は、外側がアロイ22と呼ばれるニッケル基合金、内側がステンレス鋼の二重構造の廃棄物パッケージに封入して処分されます。外側の合金が腐食に耐える役割を、内側のステンレス鋼が力学的な荷重に耐える役割を担います。 | + | 処分対象の高レベル放射性廃棄物は、 |
+ | 外側がアロイ22と呼ばれるニッケル基合金、 | ||
+ | 内側がステンレス鋼の二重構造の廃棄物パッケージに封入して処分されます。 | ||
+ | 外側の合金が腐食に耐える役割を、内側のステンレス鋼が力学的な荷重に耐える役割を担います。 | ||
- | 商業用原子力発電所で発生した使用済燃料の約90%は、発電所で輸送・貯蔵・処分(TAD)キャニスタに収納してからユッカマウンテンに輸送する計画であり、残りは処分場においてTADキャニスタに収納する計画です。このTADキャニスタを上述した二重構造の廃棄物パッケージに封入して処分します。 | + | 商業用原子力発電所で発生した使用済燃料の約90%は、 |
+ | 発電所で輸送・貯蔵・処分(TAD)キャニスタに収納してからユッカマウンテンに輸送する計画であり、 | ||
+ | 残りは処分場においてTADキャニスタに収納する計画です。 | ||
+ | このTADキャニスタを上述した二重構造の廃棄物パッケージに封入して処分します。 | ||
- | 廃棄物パッケージは、収納する廃棄物の種類に応じて、民間の使用済燃料を収納したTAD廃棄物パッケージ、軍事用の高レベル放射性廃棄物を収納したもの、船舶用の使用済燃料を収納したものなどの6種類があります。 | + | 廃棄物パッケージは、収納する廃棄物の種類に応じて、 |
+ | 民間の使用済燃料を収納したTAD廃棄物パッケージ、 | ||
+ | 軍事用の高レベル放射性廃棄物を収納したもの、 | ||
+ | 船舶用の使用済燃料を収納したものなどの6種類があります。 | ||
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- | 処分場は、地表から200~500mの深さ、地下水面より平均約300m上部に建設することが考えられています。こうした地質構造の特徴に加え、放射性廃棄物を環境から長期間隔離するための人工バリアによる多重バリアシステムによる処分概念が考えられています。処分場の規模は、総面積が約5km< | + | 処分場は、地表から200~500mの深さ、 |
+ | 地下水面より平均約300m上部に建設することが考えられています。 | ||
+ | こうした地質構造の特徴に加え、 | ||
+ | 放射性廃棄物を環境から長期間隔離するための人工バリアによる多重バリアシステムによる処分概念が考えられています。 | ||
+ | 処分場の規模は、総面積が約5km< | ||
- | 処分場は、地上施設と地下施設から構成されており、地上施設の主要な構成要素としては、輸送・貯蔵・処分(TAD)キャニスタに収納された使用済燃料を輸送用キャスクから取り出して処分または貯蔵に振り分けるための「受入施設」、輸送キャスクにそのままの状態で運ばれてきた使用済燃料などをTADキャニスタに収納するための「湿式取扱施設」、TADキャニスタなどを処分用の廃棄物パッケージに収納するための「キャニスタ受入・密封施設」、使用済燃料を冷却貯蔵するための「貯蔵施設」などがあります。 | + | 処分場は、地上施設と地下施設から構成されており、 |
+ | 地上施設の主要な構成要素としては、輸送・貯蔵・処分(TAD)キャニスタに収納された | ||
+ | 使用済燃料を輸送用キャスクから取り出して処分または貯蔵に振り分けるための「受入施設」、 | ||
+ | 輸送キャスクにそのままの状態で運ばれてきた使用済燃料などをTADキャニスタに収納するための「湿式取扱施設」、 | ||
+ | TADキャニスタなどを処分用の廃棄物パッケージに収納するための「キャニスタ受入・密封施設」、 | ||
+ | 使用済燃料を冷却貯蔵するための「貯蔵施設」などがあります。 | ||
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- | また、地下施設の主要な構成要素としては、直径約5.5mで11, | + | また、地下施設の主要な構成要素としては、 |
+ | 直径約5.5mで11, | ||
+ | 定置される様々な形態の「廃棄物パッケージ」、 | ||
+ | 廃棄物パッケージの上部に設置されて処分坑道壁面からの液滴・岩石の落下から防御する「ドリップシールド」があります。 | ||
- | 廃棄物パッケージは、収納される放射性廃棄物の種類に応じて、民間の使用済燃料を収納したTAD廃棄物パッケージ、軍事用の高レベル放射性廃棄物を収納したもの、舶用の使用済燃料を収納したものなどの6種類があり、処分坑道に設置されたパレットに定置されます。 | + | 廃棄物パッケージは、処分坑道に設置されたパレットに定置されます。 |
+ | なお、ドリップシールドは、閉鎖時に設置される計画となっています。 | ||
- | + | また、処分場は段階的な建設が考えられており、 | |
- | また、処分場は段階的な建設が考えられており、地下施設については、初期段階の建設が完了した時点で操業許可を受けて廃棄物の受け入れが開始されます。残りの部分については、廃棄物の定置と並行して建設が進められる予定です。 | + | 地下施設については、初期段階の建設が完了した時点で操業許可を受けて廃棄物の受け入れが開始されます。 |
+ | 残りの部分については、廃棄物の定置と並行して建設が進められる予定です。 | ||
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*/ | */ | ||
- | ユッカマウンテン周辺の岩盤は、約1, | + | ユッカマウンテン周辺の岩盤は、 |
+ | 約1, | ||
+ | 年間の降水量が少なく蒸発量が多い砂漠地帯にあって、 | ||
+ | 地下水面が地表から500~800mと深いところにあります。 | ||
[{{ ym-sar-figure2.2-16.png? | [{{ ym-sar-figure2.2-16.png? | ||
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- | 米国における高レベル放射性廃棄物処分の基本方針は、1982年放射性廃棄物政策法に定められており、同法第301条では、DOEはプログラムの包括的な計画を示した「ミッション・プラン」を作成することが規定されています。 | + | 米国における高レベル放射性廃棄物処分の基本方針は、 |
+ | 1982年放射性廃棄物政策法に定められており、同法第301条では、 | ||
+ | DOEはプログラムの包括的な計画を示した「ミッション・プラン」を作成することが規定されています。 | ||
- | 1985年のミッション・プランでは、処分場の操業開始を1998年に計画していました。しかし、その後、1987年に1982年放射性廃棄物政策法が修正され、サイト特性調査活動をユッカマウンテンのみに限定することになり、1987年のミッション・プランの修正版では、操業開始は5年遅れの2003年とされました。その後、1989年にさらに7年の遅れが発表され、2000年に公表された「民間放射性廃棄物管理プログラム・プラン第3版」では、操業開始を2010年と計画していました。 | + | 1985年のミッション・プランでは、処分場の操業開始を1998年に計画していました。 |
+ | しかし、その後、1987年に1982年放射性廃棄物政策法が修正され、 | ||
+ | サイト特性調査活動をユッカマウンテンのみに限定することになり、 | ||
+ | 1987年のミッション・プランの修正版では、操業開始は5年遅れの2003年とされました。 | ||
+ | その後、1989年にさらに7年の遅れが発表され、 | ||
+ | 2000年に公表された「民間放射性廃棄物管理プログラム・プラン第3版」では、 | ||
+ | 操業開始を2010年と計画していました。 | ||
- | 約20年間の調査研究の後、ユッカマウンテンの大統領へのサイト推薦が2002年に行われ、連邦議会の承認を経て最終処分場サイトとして決定されました。 | + | 約20年間の調査研究の後、ユッカマウンテンの大統領へのサイト推薦が2002年に行われ、 |
+ | 連邦議会の承認を経て最終処分場サイトとして決定されました。 | ||
- | その後、予定からは遅れたもののユッカマウンテンの建設認可に係る許認可申請の準備作業が進められ、DOEは、2008年6月3日に許認可申請書(約8, | + | その後、予定からは遅れたもののユッカマウンテンの建設認可に係る許認可申請の準備作業が進められ、 |
+ | DOEは、2008年6月3日に許認可申請書(約8, | ||
+ | 及び同月中に最終補足環境影響評価書など原子力規制委員会(NRC)に提出し、 | ||
+ | 2008年9月8日にNRCが正式に受理しました。 | ||
+ | 安全審査は一時中断があったものの審査が行われ、 | ||
+ | 2015年1月29日までに、安全審査の結果を取りまとめた5分冊からなる安全性評価報告(SER)が作成されています。 | ||
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}}] | }}] | ||
- | エネルギー省(DOE)は、ユッカマウンテン・サイト適合性指針(10 CFR Part 963)に従って、処分場閉鎖前及び閉鎖後の期間でのサイト適合性を判定することとなっています。この指針では、処分場閉鎖前の期間については、処分場が本来の機能を果たし、発生確率が1万分の1以上の事象による影響を防止あるいは軽減できるかを、ユッカマウンテンに適用される安全基準に照らして評価することが規定されています。また閉鎖後の期間については、トータルシステム性能評価(TSPA)を用いて評価することが定められています。 | + | エネルギー省(DOE)は、ユッカマウンテン・サイト適合性指針(10 CFR Part 963)に従って、 |
+ | 処分場閉鎖前及び閉鎖後の期間でのサイト適合性を判定することとなっています。 | ||
+ | この指針では、処分場閉鎖前の期間については、処分場が本来の機能を果たし、 | ||
+ | 発生確率が1万分の1以上の事象による影響を防止あるいは軽減できるかを、 | ||
+ | ユッカマウンテンに適用される安全基準に照らして評価することが規定されています。 | ||
+ | また閉鎖後の期間については、トータルシステム性能評価(TSPA)を用いて評価することが定められています。 | ||
- | このTSPAでは、右図に示されるように、処分システムによる廃棄物の隔離性能に対して影響を与え得る水文地質学、地球化学、熱、力学等のさまざまなプロセスモデルを組み込み、サイト特性調査で得られたデータ等を用いて、1万年を超える長期間にわたる処分場の性能について不確実性を考慮に入れた上でのシミュレーションが行われます。結果は、適用される安全基準との比較により、定量的に評価されています。 | + | このTSPAでは、右図に示されるように、 |
+ | 処分システムによる廃棄物の隔離性能に対して影響を与え得る水文地質学、地球化学、熱、力学等の | ||
+ | さまざまなプロセスモデルを組み込み、サイト特性調査で得られたデータ等を用いて、 | ||
+ | 1万年を超える長期間にわたる処分場の性能について不確実性を考慮に入れた上での | ||
+ | シミュレーションが行われます。 | ||
+ | 結果は、適用される安全基準との比較により、定量的に評価されています。 | ||
- | なお、サイト推薦に向けてのTSPA(2002年12月版)は、経済協力開発機構(OECD)の原子力機関(NEA)による国際的なピアレビューも受けています。レビューチームからは、このTSPAは改善の余地はあるものの、サイト推薦の十分な根拠を与えるものだとの結論が示されています。 | + | なお、サイト推薦に向けてのTSPA(2002年12月版)は、 |
+ | 経済協力開発機構(OECD)の原子力機関(NEA)による国際的なピアレビューも受けています。 | ||
+ | レビューチームからは、このTSPAは改善の余地はあるものの、 | ||
+ | サイト推薦の十分な根拠を与えるものだとの結論が示されています。 | ||
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- | \\ | + | 2008年6月にNRCへ提出されたDOEの許認可申請書には、 |
- | ==== TSPAの結果 ==== | + | NRCの10 CFR Part 63の改定案での規定内容に従って実施された |
- | 2008年6月にNRCへ提出されたDOEの許認可申請書には、NRCの10 CFR Part 63の改定案での規定内容に従って実施されたトータルシステム性能評価(TSPA)の結果が示されています。 | + | トータルシステム性能評価(TSPA)の結果が示されています。 |
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