諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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hlw:fr:prologue [2013/12/25 08:48] – [原子力関連施設] sahara.satoshihlw:fr:prologue [2017/05/11 09:39] – [処分方針が決定するまでの経緯] ss12955jp
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-~~bc:1.HLWの発生状況と処分方針~~+~~ShortTitle:1.HLWの発生状況と処分方針~~
 <WRAP pagetitle> <WRAP pagetitle>
 ==HLW:FR:chap1== ==HLW:FR:chap1==
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 =====原子力エネルギー政策の動向===== =====原子力エネルギー政策の動向=====
  
-<WRAP rss right 320px> +[30%{{ :hlw:fr:npps-location.png|フランスの原子力発電所|
-{{:hlw:fr:npps-location.png?300&nolink|フランスの原子力発電所}}\\+
 <fc #080>フランスの原子力発電所</fc> <fc #080>フランスの原子力発電所</fc>
-</WRAP>+}}]
  
-フランスの原子力発電所は、全てフランス電力株式会社(EDF社)が運転しています。EDFは、2013年末現在、58基の原子炉を運転しており、フランス全土に電力を供給し、輸出もしています。(2011年段階における総発電電力量に対する原子力の割合は78.6%でした。)+フランスの原子力発電所は、全てフランス電力株式会社(EDF社)が運転しています。EDFは、2015年末現在、58基の原子炉を運転しており、フランス全土に電力を供給し、輸出もしています。
  
 フランス北西部のコランタン半島の先端にAREVA社(旧COGEMA社)のラ・アーグ再処理施設があり、UP2、UP3と呼ばれるプラントが操業しています。再処理で回収したプルトニウムをMOX燃料等に加工し、再び原子力発電の燃料として利用しています。フランスでは、高速増殖炉の開発も行われてきましたが、現在は運転中のものはありません。 フランス北西部のコランタン半島の先端にAREVA社(旧COGEMA社)のラ・アーグ再処理施設があり、UP2、UP3と呼ばれるプラントが操業しています。再処理で回収したプルトニウムをMOX燃料等に加工し、再び原子力発電の燃料として利用しています。フランスでは、高速増殖炉の開発も行われてきましたが、現在は運転中のものはありません。
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 ===== 使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)===== ===== 使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)=====
  
-<WRAP rss right 320px> +[30%{{ :hlw:fr:csd-v-image.png?nolink|CSD-V| 
-{{:hlw:fr:national-waste-inventory-reports.png?200&nolink|}}\\ +<fc #080>溶融したガラスの注入装置と\\ 
-国家放射性廃棄物インベントリ報告書\\+ガラス固化体用キャニスタ(CSD-V)</fc>\\
 <fs 70%>source: ANDRA</fs> <fs 70%>source: ANDRA</fs>
-</WRAP>+}}]
  
 フランスの全ての原子力発電所から発生する使用済燃料は年間約1,150トンであり、そのうち年間約1,050トンがラ・アーグ再処理施設で再処理され、残りは再処理されずに使用済燃料のままで貯蔵されています。再処理を待つ使用済燃料は、各発電所で貯蔵されるほか、ラ・アーグ再処理施設にも受入施設としての貯蔵施設があります(いずれもプールでの湿式貯蔵)。 フランスの全ての原子力発電所から発生する使用済燃料は年間約1,150トンであり、そのうち年間約1,050トンがラ・アーグ再処理施設で再処理され、残りは再処理されずに使用済燃料のままで貯蔵されています。再処理を待つ使用済燃料は、各発電所で貯蔵されるほか、ラ・アーグ再処理施設にも受入施設としての貯蔵施設があります(いずれもプールでの湿式貯蔵)。
行 63: 行 62:
 フランスでは、余剰プルトニウムを発生させないためにプルサーマル用MOX燃料の年間生産・装荷量から使用済燃料の年間再処理量を計画しています(現在、年間約120トンのMOX燃料の生産に見合う量として年間約1,050トンの使用済燃料を再処理しています)。そのため、発生する全ての使用済燃料が直ぐに再処理されるわけではなく、将来の再処理を待つために貯蔵されます。これらの使用済燃料の貯蔵量増加に対応するため、使用済燃料貯蔵施設の拡張等が計画されているほか、将来の高速炉開発計画(第Ⅳ世代炉の開発)において核燃料サイクルの確立(全量再処理)を目指しています。 フランスでは、余剰プルトニウムを発生させないためにプルサーマル用MOX燃料の年間生産・装荷量から使用済燃料の年間再処理量を計画しています(現在、年間約120トンのMOX燃料の生産に見合う量として年間約1,050トンの使用済燃料を再処理しています)。そのため、発生する全ての使用済燃料が直ぐに再処理されるわけではなく、将来の再処理を待つために貯蔵されます。これらの使用済燃料の貯蔵量増加に対応するため、使用済燃料貯蔵施設の拡張等が計画されているほか、将来の高速炉開発計画(第Ⅳ世代炉の開発)において核燃料サイクルの確立(全量再処理)を目指しています。
  
-2012年に処分実施主体の放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が取りまとめた最新のインベントリレポートによれば、2010年末時点の貯蔵量は、ガラス固化体が2,700m<sup>3</sup>、長寿命中レベル放射性廃棄物が41,000m<sup>3</sup>、使用済燃料が18,900トンです。+2015年に処分実施主体の放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が取りまとめた最新のインベントリレポートによれば、2013年末時点の貯蔵量は、ガラス固化体が3,200m<sup>3</sup>、長寿命中レベル放射性廃棄物が44,000m<sup>3</sup>、使用済燃料が19,500トンです。
  
  
 +[45%{{ :hlw:fr:waste-inventory2015.png|処分量の推定|
 +}}]
  
-<WRAP clear></WRAP>+フランスで最終的に地層処分する必要がある高レベル放射性廃棄物等の構成と量は、今後の使用済燃料の再処理の状況によって変化します。2015年には、稼働中の58基の原子炉から発生する使用済燃料について、右の表のような再処理シナリオを仮定して、最終的に地層処分が必要となる放射性廃棄物量を試算しています。
  
-<WRAP rss right 320px> +<WRAP clear/>
-{{:hlw:fr:waste-volumes-estimation.png?300&nodirect|処分量の予測}}\\ +
-<fc #080>再処理シナリオ別の\\ +
-使用済燃料及びガラス固化体の予測発生量</fc>\\ +
-<fs 90%>発生量の値は、処分場に定置する廃棄物パッケージの体積です。</fs>\\ +
-<fs 70%>source: ANDRA Dossier 2005 Argile. Architecture and management of a geological repository (2005)</fs> +
-</WRAP> +
- +
- +
- +
-フランスで最終的に管理する必要がある使用済燃料の量、並びに再処理の結果として発生する高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)と長寿命中レベル放射性廃棄物の構成と量は、今後の再処理等の状況によって変化することが予想されます。2002年には、既に発生している使用済燃料(及び使用済燃料)に加え、稼働中の58基の原子炉から発生する約45,000トン(40年間の運転を想定)の使用済燃料について、複数の再処理シナリオを仮定して、最終的に処分が必要となる廃棄物量を試算しています。 +
- +
-<WRAP baretable> +
-|  ○|使用済燃料を全て再処理する場合 \\ (全量再処理) +
-|  ○|使用済MOX燃料のみを再処理しない場合\\ (一部再処理) +
-|  ○|2010年に再処理を停止する場合\\ (再処理停止) +
-</WRAP> +
- +
- +
-<WRAP clear></WRAP>+
 \\ \\
 ===== 処分方針 …可逆性のある地層処分 ===== ===== 処分方針 …可逆性のある地層処分 =====
  
-<WRAP rss right 320px> +[imagebox0 30%{{ :hlw:fr:etape2009-stoackage-reversibilite-profond-reports.png?nolink| 
-{{:hlw:fr:etape2009-stoackage-reversibilite-profond-reports.png?200&nolink|}}\\ +フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による地層処分の可逆性に関する検討報告書  
-フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による地層処分の可逆性に関する検討報告書\\+
 <fs 70%>source: ANDRA</fs> <fs 70%>source: ANDRA</fs>
-</WRAP>+}}]
  
 2006年に放射性廃棄物等管理計画法が制定され、高レベル放射性廃棄物を含む、あらゆる放射性廃棄物の管理に関する基本方針が定められました。同法では、高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物について「**可逆性のある地層処分**」を行うことを基本とし、目標スケジュールとして、2015年までに地層処分場の設置許可申請を提出すること、2025年には操業を開始することが示されています。 2006年に放射性廃棄物等管理計画法が制定され、高レベル放射性廃棄物を含む、あらゆる放射性廃棄物の管理に関する基本方針が定められました。同法では、高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物について「**可逆性のある地層処分**」を行うことを基本とし、目標スケジュールとして、2015年までに地層処分場の設置許可申請を提出すること、2025年には操業を開始することが示されています。
  
-「**<acronym title="フランス語では le stockage réversible en formation géologique profonde">可逆性のある地層処分</acronym>**」とは、処分事業を段階的に実施し、各段階において利用可能な知見をもとに、技術・環境・経済・社会的観点から処分場設計の変更や定置された廃棄物の回収などが行えるなど、将来世代に選択肢を残すことを目的とした柔軟性のある処分概念です。た、一つ前の段階に戻るとに対する技術実現性を証するためのプログラムも開発されています。+「**<abbr>可逆性のある地層処分 [フランス語では le stockage réversible en formation géologique profonde]</abbr>**」とは、処分事業を段階的に実施し、各段階において利用可能な知見をもとに、技術・環境・経済・社会的観点から処分場設計の変更や定置された廃棄物の回収などが行えるなど、将来世代に選択肢を残すことを目的とした柔軟性のある処分概念です。このめ、地層処分の技術開発においては、一つ前の段階に戻ると必要となる技術実現性を証する目的のプログラムも必要です。
  
 上記の法律では、地層処分事業における可逆性を確保する期間を少なくとも100年以上(処分場の閉鎖段階までを意図)とし、処分実施主体による設置許可の申請後に可逆性の条件を定める法律を制定することを規定しています。 上記の法律では、地層処分事業における可逆性を確保する期間を少なくとも100年以上(処分場の閉鎖段階までを意図)とし、処分実施主体による設置許可の申請後に可逆性の条件を定める法律を制定することを規定しています。
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 ==== 処分方針が決定するまでの経緯 ==== ==== 処分方針が決定するまでの経緯 ====
  
-<WRAP right 320px> +[40%{{ :hlw:fr:policy-evolution.png?300|放射性廃棄物等管理計画法成立までの流れ|
-<WRAP rss> +
-{{:hlw:fr:policy-evolution.png?300&nodirect|放射性廃棄物等管理計画法成立までの流れ}}\\+
 <fc #080>放射性廃棄物等管理計画法成立までの流れ</fc> <fc #080>放射性廃棄物等管理計画法成立までの流れ</fc>
-</WRAP> +}}] 
-\\ + 
-<WRAP box rss>+フランスの現在の処分方針―**可逆性のある地層処分**―は、1991年に制定された放射性廃棄物管理研究法が定めた、3つの管理方策に関する15年間にわたる研究、及びそれらの研究成果の総括評価を経て決定されたものです。この法律の制定以前には、政府の主導で、当時は原子力庁(CEA、現在の原子力・代替エネルギー庁)の一部門であった放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が4つの地域での地質調査に着手しましたが、地元の反対を受けて1990年に停止に至りました。 
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 +<WRAP clear/
 + 
 +<WRAP rss right box rss 320px>
 **[1] 議会科学技術選択評価委員会(OPECST)** \\ 1983年に法律で議会内に設置されている常設委員会です。国民議会(下院)と元老院(上院)から各18名、計36名で構成されています。一定数以上の議員からの要請を受けた科学技術政策の特定テーマについて、評価委員会メンバーである議員自身が調査活動を行います。通常は、調査の過程で公聴会を開催します。調査報告書を評価委員会で諮った後、議会に提出されます。 **[1] 議会科学技術選択評価委員会(OPECST)** \\ 1983年に法律で議会内に設置されている常設委員会です。国民議会(下院)と元老院(上院)から各18名、計36名で構成されています。一定数以上の議員からの要請を受けた科学技術政策の特定テーマについて、評価委員会メンバーである議員自身が調査活動を行います。通常は、調査の過程で公聴会を開催します。調査報告書を評価委員会で諮った後、議会に提出されます。
 </WRAP> </WRAP>
-</WRAP> 
- 
-フランスの現在の処分方針―**可逆性のある地層処分**―は、1991年に制定された放射性廃棄物管理研究法が定めた、3つの管理方策に関する15年間にわたる研究の実施、及びそれらの研究成果の総括評価を経て決定されたものです。この法律の制定以前には、政府の主導で、当時は原子力庁(CEA、現在の原子力・代替エネルギー庁)の一部門であった放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が4つの地域での地質調査に着手しましたが、地元の反対を受けて1990年に停止に至りました。その反対運動の原因を**議会科学技術選択評価委員会(OPECST)**[1]が調査した結果を踏まえて、1991年に放射性廃棄物管理研究法が制定されました。この法律において、高レベル・長寿命放射性廃棄物の管理方策に関する3つのオプションを設定し、研究を実施することにしました。 
  
 +その反対運動の原因を**議会科学技術選択評価委員会(OPECST)**[1]が調査した結果を踏まえて、1991年に放射性廃棄物管理研究法が制定されました。この法律において、高レベル・長寿命放射性廃棄物の管理方策に関する3つのオプションを設定し、研究を実施することにしました。
  
   *長寿命の放射性核種の分離と短寿命の核種への変換を可能とする解決法   *長寿命の放射性核種の分離と短寿命の核種への変換を可能とする解決法
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-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/> 
  
-<WRAP rss right 320px> +[imagebox0 30%{{ :hlw:fr:dossier2005_argile.jpg?nolink|Dossier 2005|
-{{:hlw:fr:dossier2005_argile.jpg?200&nolink|Dossier 2005}}\\+
 Dossier 2005:地層処分実現可能性研究成果報告書(ANDRA, 2005年) Dossier 2005:地層処分実現可能性研究成果報告書(ANDRA, 2005年)
- +}}]
-/*{{:hlw:fr:dossier2005_granite.jpg?200&nolink|}}*/ +
-</WRAP>+
  
  
行 152: 行 131:
 ---- ----
 ====== 〔参考資料〕 ====== ====== 〔参考資料〕 ======
-{{:wiki:images:fr_w48.png?nolink|フランス}} **フランス** +//{{:wiki:images:fr_w48.png?nolink |フランス}}
-\\+
  
-===== エネルギー情勢 =====+===== フランスの原子力発電利用状況 ===== 
 +{{section>:nuclear-energy:npg2014:fr2014#フランスのエネルギー情勢&noheader&nofooter&noindent}}
  
-{{section>:nuclear-energy:npg2011:fr2011#電力需給バランス(2011年)&nofooter&noindent}} 
- 
-{{section>:nuclear-energy:npg2011:fr2011#原子力発電の利用・導入状況&nofooter&noindent}} 
- 
-{{section>:nuclear-energy:npg2011:fr2011#電源別発電電力量の変遷&nofooter&noindent}} 
- 
- 
-<WRAP clear></WRAP> 
-\\ 
 ===== 原子力関連施設 ===== ===== 原子力関連施設 =====
- 
- 
 フランスの主要な原子力関連施設の立地点 フランスの主要な原子力関連施設の立地点
 <WRAP 500px> <WRAP 500px>
hlw/fr/prologue.txt · 最終更新: 2023/05/10 17:19 by ss12955jp