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*<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | ||
*<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | ||
- | *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</ | + | *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</ |
*<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | ||
- | *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</ | + | *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</ |
- | *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</ | + | |
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{{anchor: | {{anchor: | ||
- | ====== 5. 処分事業の資金確保 | + | ====== 5. 情報提供・コミュニケーション |
- | {{anchor:d1}} | + | {{anchor:e1}} |
- | ====== 5.1 処分費用の確保(制度) | + | ====== 5.1 公衆との対話 |
- | < | + | <WRAP round box> |
- | * 高レベル放射性廃棄物の処分費用は、原子力施設許可取得者(電力会社)が負担しています。処分費用は、雇用経済省が所管する**国家放射性廃棄物管理基金(VYR)**に積み立てられています。基金に積み立てられる費用には、高レベル放射性廃棄物の処分費用のほか、中間貯蔵費用と輸送費用、さらにその他の放射性廃棄物の処理・中間貯蔵・輸送・処分費用、及び原子炉施設の廃止措置費用等も含まれています。 | + | {{: |
+ | * フィンランドでは、サイト決定の原則決定手続で地元自治体の賛成が必要とされるほか、自治体・住民の意思・意見反映が制度面でも確立されています。さらにポシヴァ社は、自主的にさまざまなコミュニケーション活動を精力的に行っており、フィンランドにおける特徴の一つともなっています。 | ||
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- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
- | ===== 処分費用の負担者 ===== | ||
- | <WRAP rss right 350px> | + | ===== 情報開示、パブリックコメント、公聴会 ===== |
- | {{:hlw:fi:financing-system-fi.png?340&nolink|フィンランドにおける資金確保の仕組み}}\\ | + | |
- | <fc #080>フィンランドにおける資金確保の仕組み</fc> | + | <WRAP rss right 320px> |
+ | {{:hlw:fi:transparency.png?320&nodirect|透明性の確保と説明責任のための諸手続}}\\ | ||
+ | <fc #080>透明性の確保と説明責任のための諸手続</fc>\\ | ||
</ | </ | ||
+ | フィンランドでは、処分場のサイト選定過程において自治体、住民の意見を反映するために、さまざまな活動が行われたことが環境影響評価(EIA)報告書に挙げられています。これらのうち、法令で制度化されている手続きには以下のものがあります。 | ||
+ | |||
+ | * 公告・縦覧・新聞掲載などの情報開示 | ||
+ | * 意見書の作成・提出 | ||
+ | * 公聴会の開催 | ||
- | フィンランドの原子力法では、原子力施設の許可取得者が放射性廃棄物の処分や貯蔵等を含めた管理全般の費用を負担する責任を有することを規定しています。ここで対象となる費用は、最終処分場の建設・操業のほかに、研究開発や輸送、貯蔵等を含めた放射性廃棄物管理全般に係る費用です。原子炉施設許可取得者である電力会社テオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)とフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)は、3年毎に提出する放射性廃棄物管理計画と併せて、その実施に必要な費用見積の提出も義務づけられています。 | + | これらの手続は、フィンランドでは大きく分けて二つの法律で規定されています。その一つは、EIA手続法に基づくEIA手続の中で、EIA計画書の審査とEIA報告書の審査の2つの段階で住民等に対する情報開示と意見聴取が行われます。他の一つは原子力法に基づく原則決定手続で、安全性を含めた処分場の建設・操業計画について、情報開示と意見聴取の手続が定められています。 |
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
\\ | \\ | ||
- | ===== 処分費用の確保制度 | + | ===== 地域コミュニケーション組織と会合 |
- | <WRAP rss right 350px> | + | <WRAP rss right 320px> |
- | {{:hlw:fi:vyr-fund-development.png?340& | + | {{:hlw:fi:public-meetings.png?320& |
- | <fc #080>国家放射性廃棄物管理基金の積立の状況</fc> | + | /* <fs 70%>source: Posiva EIA report (1999)</ |
+ | </WRAP> | ||
+ | 制度化されたコミュニケーション方法以外にも、処分事業の計画と環境影響評価(EIA)に関し、できるだけ多くの住民に参加してもらって活発に議論してもらうため、ポシヴァ社は、さまざまな地域コミュニケーションの組織づくりに働きかけてきたことがEIA報告書に記載されています。 | ||
- | \\ \\ | + | *地元の住民向けの対話集会やワーキンググループ会合 |
- | <fc # | + | |
- | ^ | + | |
- | |TVO社 \\ (オルキルオト原子力発電所) | + | *国とその地方出先機関の職員向けの会議やセミナー |
- | |FPH社 \\ (ロヴィーサ原子力発電所) | + | |
- | |その他(研究炉をもつVTT) | + | これらの地域コミュニケーション組織の中で、自治体からの代表者とポシヴァ社からの代表者をメンバーとする「協力/フォローアップグループ」は、最終処分に関する諸問題や、その計画、環境影響評価等について、ほぼ2カ月に1回の頻度で会合を行っていました。EIAの対象地域であったロヴィーサとクーモでは1997年に、エウラヨキとアーネコスキではより早い時期に、グループが組織されました。 |
- | |合計 | + | |
+ | これらの地域コミュニケーション組織などを通じて寄せられた意見や疑問等について、ポシヴァ社がEIA計画書を作成する際に考慮したほか、EIA報告書の社会的影響の評価において検討して対応しています。 | ||
+ | |||
+ | \\ | ||
+ | |||
+ | |||
+ | |||
+ | |||
+ | <WRAP clear/> | ||
+ | \\ | ||
+ | {{anchor: | ||
+ | ====== 5.2 意識把握と情報提供 ====== | ||
- | <fs 90%>1ユーロ=133円で換算。四捨五入のため合計は合わない</ | + | <WRAP round box> |
+ | {{: | ||
+ | * 実施主体のポシヴァ社は、処分事業の理解を得るための活動として、一方的な情報提供活動ではなく住民が情報を入手し、意見を表明できる場をさまざまな形で設けてきました。また環境影響評価の中では、住民の意識調査も行われています。 | ||
</ | </ | ||
- | 放射性廃棄物管理費用は、雇用経済省が所管する**国家放射性廃棄物管理基金**に積み立てられています。この基金に積み立てを行う主な廃棄物発生者はTVO社とFPH社です。 | + | ===== 広報活動(情報提供) ===== |
- | 基金の積立対象となるのは、高レベル放射性廃棄物の処分費用のほか、中間貯蔵費用と輸送費用、さらにその他の放射性廃棄物の処理・中間貯蔵・輸送・処分費用、及び原子炉施設の廃止措置費用等も含まれています。 | + | <WRAP rss right 320px> |
+ | {{: | ||
+ | <fc # | ||
+ | <fs 70%> | ||
- | フィンランドの特徴は、その時点までに発生した放射性廃棄物の量(原子力施設の解体廃棄物については発生したとみなされる量)を処理・中間貯蔵・輸送・処分する費用を、その時点の見積額で評価する点です。 | ||
- | 雇用経済省は、TVO社とFPH社から提出された費用見積額を精査した上で、債務評価額(各社が最終的に負担すべき金額)と積立目標額を決定します。積立目標額は、廃棄物の発生量に比例しない固定費部分を長期の分割払いとして調整した金額です。各廃棄物発生者は、この積立目標額を毎年3月末までに国家放射性廃棄物管理基金に払い込みます。また、積立目標額と債務評価額の差額分については、国に対して担保の提供が義務付けられています。 | + | {{: |
+ | <fc # | ||
+ | <fs 70%> | ||
+ | </ | ||
- | 積み立てられた費用の運用にも特徴があり、積み立てた電力会社は積立残高の最大75%までの貸付を受けることが可能です。 | ||
+ | 実施主体のポシヴァ社が行っている処分場開発のための情報提供(広報)活動については、環境影響評価書に詳しく述べられています。それによると、情報提供(広報)活動の目的は、環境影響評価(EIA)に住民が積極的に参加できるようにすることであり、具体的には、以下のことができるようにするとしています。 | ||
- | <WRAP clear></ | + | *議論へ参加する機会があることを知ってもらう。 |
+ | *処分事業計画、EIA手続、進捗情報、完成レポート類の提供など、情報を入手できるようにする。 | ||
+ | *各候補地の自治体住民の間で、継続的な対話ができるようにする。 | ||
+ | *処分事業とその影響予測とその評価に関し、開かれた議論が行われるようにする。 | ||
+ | *処分事業についての報告書の内容と使用する手法の適切性、妥当性に関して、さまざまな見解を集める。 | ||
- | \\ | + | これらの目的を達成するため、ポシヴァ社は、次のような広報(情報提供)活動を行っています。 |
- | {{anchor: | + | |
- | ====== 5.2 処分費用の見積もり ====== | + | |
- | <WRAP rss right 350px> | + | *地元自治体の各世帯にEIAニュースレターを配布 |
- | {{: | + | |
- | <fc # | + | |
- | <fs 90%>※ 5,500トン(ウラン換算)処分の場合</ | + | *小グループ会合を開催 |
- | <fs 70%> | + | |
+ | *自治体職員と自治体議会議員のために、調整とフォローアップのグループ作り | ||
+ | *事業内容とEIAを説明し、またフィードバックを得るための展示会の企画・開催 | ||
+ | *地方の行政官向けの説明会 | ||
+ | *中央の行政官向けのセミナー | ||
+ | *新聞などの論壇への寄稿 | ||
+ | <WRAP clear/> | ||
+ | |||
+ | |||
+ | <WRAP rss right 320px> | ||
+ | {{: | ||
+ | <fc # | ||
+ | <fs 70%> | ||
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- | フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物の処分費用の総額は、約33.2億ユーロ(約4, | + | EIAニュースレターは、自治体に処分事業内容やEIA手続のことを知らせるために発行されるようになったものです。文面を分かりやすくして多くの人々の理解促進を図るだけでなく、EIAへの参加を促すこともねらって作られています。 |
+ | ポシヴァ社は地元の住民に、より多くの意見を出してもらうために展示会やワーキンググループ会合を企画・開催しています。こうした会合では、ブレーンストーミング(自由討論)やその他の手法を活用して、参加者の意見等を集める取り組みが行われました。 | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | |
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+ | <WRAP clear/> | ||
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- | === 処分費用として対象となるもの | + | ===== 国民意識と住民意識(主な世論調査結果) ===== |
- | 高レベル放射性廃棄物の処分費用は、放射性廃棄物管理全般の枠組みの中で見積られています。高レベル放射性廃棄物の処分費用の算定は、実施主体のポシヴァ社が行っています。ポシヴァ社の費用見積を受けて、TVO社とFPH社は、高レベル放射性廃棄物の処分費用以外の中間貯蔵、輸送費用、及び中低レベルの放射性廃棄物の処理、中間貯蔵、輸送、処分費用、さらに原子炉施設の廃止措置費用等を含む全ての必要な費用を見積った上で、雇用経済省に提出します。 | + | <WRAP rss right 320px> |
+ | <fc # | ||
+ | {{: | ||
+ | /* | ||
+ | 質問:「安全規制当局による詳細調査と安全評価の結果、あなたが居住する自治体が放射性廃棄物の最終処分地として安全であることが判明した場合に、あなたの自治体内にフィンランド国内で発生した放射性廃棄物を定置することを受け入れますか?」\\ | ||
+ | */ | ||
+ | <fs 70%> | ||
+ | </ | ||
- | なお原子力法に基づき、これらの費用の見積に当たっては、将来の不確定条件も多く含まれることから、予備費(コンティンジェンシー:不測の費用増に備えた上乗せ分)として20%が含まれています。 | ||
+ | 環境影響評価(EIA)のなかで行われた「住民の生活条件と全般的な幸福さへの影響評価」において、処分場立地を受け入れに対する地元住民の意識調査が行われています。1999年のはじめに、処分場の4つの候補地の自治体の居住者の10%を無作為に抽出して、電話による聞き取り調査が行われました。 | ||
+ | 原子力発電所が存在するエウラヨキとロヴィーサの2つの自治体では、賛成が約60%前後でしたが、クーモとアーネコスキの2つの自治体では、反対が60%前後という結果(右図を参照)でした。 | ||
+ | またEIA報告書の中では、住民の持つ不安やリスクをどうとらえているか、原子力技術に対する意識、風評被害等さまざまな問題についての社会調査が行われています。下の表はそうした調査の中から、処分プロジェクトによる影響についての地元住民の意見を評価した結果として示されているものです。 | ||
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+ | </WRAP> | ||
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*<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | ||
*<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | ||
- | *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</ | + | *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</ |
*<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | ||
- | *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</ | + | *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</ |
- | *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</ | + | |
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hlw/fi/chap5.1385699907.txt.gz · 最終更新: 2013/11/29 13:38 by sahara.satoshi