諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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hlw:de:chap6 [2014/01/07 13:22] – [連邦政府主導の対話活動「ゴアレーベン・ダイアログ」(2010年~)] sahara.satoshihlw:de:chap6 [2016/03/23 14:43] – [安全性の確認と知見の蓄積] sahara.satoshi
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-~~bc:6.安全確保の取り組み・コミュニケーション~~+~~ShortTitle:6.安全確保の取り組み・コミュニケーション~~
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 ==HLW:DE:chap6== ==HLW:DE:chap6==
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 1983年5月、当時の最終処分事業の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)は『ゴアレーベンのサイト調査の総括的中間報告書』をまとめています。この報告書では、ゴアレーベンに地層処分場を建設した場合の安全解析が行われ、ゴアレーベンが処分場の建設地として適切であると評価されました。この評価結果を受けて、ニーダーザクセン州が地下探査に関する許可を発給し、探査坑道の建設は1986年から始まりました。 1983年5月、当時の最終処分事業の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)は『ゴアレーベンのサイト調査の総括的中間報告書』をまとめています。この報告書では、ゴアレーベンに地層処分場を建設した場合の安全解析が行われ、ゴアレーベンが処分場の建設地として適切であると評価されました。この評価結果を受けて、ニーダーザクセン州が地下探査に関する許可を発給し、探査坑道の建設は1986年から始まりました。
  
-ゴアレーベンでの地下探査活動は、連邦政府の1998年からの脱原子力への政策転換の影響を受けて、2000年10月から10年間にわたり凍結されていました。探査活動は2010年11月に再開されましたが、サイト選定の見直しを受けて2012年11月に中断、その後2013年7月のサイト選定法制定に伴って探査活動は中止することになりました。+ゴアレーベンでの地下探査活動は、連邦政府の1998年からの脱原子力への政策転換の影響を受けて、2000年10月から10年間にわたり凍結されていました。2010年11月に探査活動は再開されましたが、サイト選定の見直しを受けて2012年11月に中断、その後2013年7月のサイト選定法制定に伴って終了することになりました。
  
-連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省)は、2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定しました。この要件は2010年のゴアレーベン探査再開に先立ち、同年9月に一部改訂されました。+連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現BMUB 旧称)は、2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定しました。この要件は2010年のゴアレーベン探査再開に先立ち、同年9月に一部改訂されました。
  
 2010年8月には、BMU の委託を受けた施設・原子炉安全協会(GRS)が中心となって、2010年11月の探査活動再開までに得られたデータを基に、この安全要件に基づくゴアレーベンでの予備的安全評価を開始しました。しかし、2013年7月制定の「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)により候補地であるゴアレーベンが白紙化されたことから、予備的安全評価の作業は中止されました。 2010年8月には、BMU の委託を受けた施設・原子炉安全協会(GRS)が中心となって、2010年11月の探査活動再開までに得られたデータを基に、この安全要件に基づくゴアレーベンでの予備的安全評価を開始しました。しかし、2013年7月制定の「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)により候補地であるゴアレーベンが白紙化されたことから、予備的安全評価の作業は中止されました。
  
-ドイツでは今後、サイト選定法に基づく「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が設置され、2015年末を目途として処分の安全要件や複数サイトの比較を前提としたサイト選定基準、選定手続きを検討していくことになっています。+ドイツでは2014年5月に、サイト選定法に基づく「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が設置されました。同委員会は20166月末を目途として処分の安全要件や複数サイトの比較を前提としたサイト選定基準、選定手続きを検討していくことになっています。
  
  
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 ====== 6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション ====== ====== 6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション ======
  
-<WRAP tip round box> +<WRAP round box> 
-  * ドイツでは、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)やドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社DBE社)は、地元自治体等さまざまコミュニケーション図ってきました。管轄官庁連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は、2010年秋に再開されたゴアレーベンで探査活動に関し情報提供や住民との対話集会行っていま+{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}} 
 +  * 2013年7月に制定された「発熱性放射廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」サイト選定法は、新たに公衆や地元自治体等の参加を得がら複数サイトから処分場建設地の候補絞り込んでいくプロセスが導入されました。 
 +  * なお、このサイト選定の見直前に処分場候補地としてサイト特性調査が実施されていたゴアレーベンでは、実施主体の連邦放射線防護庁(BfS)や監督官庁である連邦環境・自然保護・原子炉安全省(現BMUB 旧称)が中心となっ地元自治体等や住民に対する情報提供対話などのコミュニケーション活動実施していました
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 +===== 「サイト選定法」に基づく選定プロセスにおける公衆参加 =====
  
-===== 情報を提供し意見を受けため制度 =====+「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)ではまず国民各層の代表者33名で構成され「**<abbr>高レベル放射性廃棄物処分委員会 [Kommission Lagerung hock radioaktiver Abfallstoffe]</abbr>**」が2015年まで予定で、安全要件やサイト選定基準、サイト選定手続きの検討を行うことになっています(「[[chap4|IV. 処分地選定の進め方と地域振興]]」参照)。
  
-<WRAP rss right 300px> +選定手続きの開始後は、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が提案す複数候補地域から、公衆参加プロセスを経て対象を絞り込むことになっています。サト選定法において、こら手続きの期間を通じて、市民対話やインターネットなどのメディアを介して関連の情報発信・意見聴取を行うことを規定しています。
-{{:hlw:de:eia-de.png?300&nodirect|ドイツにおけ環境適合性審査流れ}}\\ +
-<fc #080>ドにおける環境適合性審査の流</fc> +
-</WRAP>+
  
 +また、サイト選定に関わる以下のような重要な事項については**<abbr>市民集会 [Bürgerversammlungen]</abbr>**を開催するほか、関係する州や地元自治体の参加の上で決定しなければならないとしています。
  
-原子力法では放射性廃棄物処分場建設に当たって、計画定の手続きを行うことが必要となっており、この手続き、環境適合性審を行うことになっています。+  * 候補地域地上から探査対象サイト選定 
 +  * 地上からの探査計画の策 
 +  * 地下で探査対象サイト選定 
 +  * 地下の探計画の策定 
 +  * 候補サイトの最終比較
  
-この審査は、最初に許可申請者が処分事業全般的な目的を通知し、環境影響評価の調査予定範囲を許認可当局と共に確認するプロセスが行われます。その結果をもとに、許可申請者が環境影響評価計書を作成します。この計画書は、処分事業の概要を記述した概要資料を含めて公告・縦覧されます。そして国民は2カ月の間に異議の申立てをすることができ、申立てがなされた場合には公聴会が開催されます。+==== ◎連邦レベルでの画 ====
  
-寄せられた意見反映する形で許可申請者が環境影響評価書を作成することになるととも、許認可当局も意見反映度を勘案した形で承認の判断ができるようなっています。+サイト選定基準や安全要件が決定し後、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が、連邦レベルにおける国民意見反映のための組織として国民のさまざまな層で構される「**<abbr>社会諮問委員会 [Gesellshaftliches Begleitgremium]</abbr>**」を設置することになっています。委員の任命は議会の承認が必要す。この委員会は選定手続に関わあらゆる文書アクセスすることが可能で、手続きに対する勧告や見解を公表する役割を担います。
  
-ただし、こうした制度に基づく形での情報の提供や地元住民の意見表明などの機会は、計画確定の手続きを開始する段階に至っていないため、現時点では行われていません。 
  
 +==== ◎候補地域・候補サイト住民の参画 ====
  
 +2014年9月に設置された連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)は、サイト選定手続きを監督し、検討対象地域やサイト所在地において、多くの人々が参加可能な形態の市民対話を設定することになっています。。
  
-<WRAP clear></WRAP> +また、検討対象地域や地元住民をサポートする組織として、BfEが<abbr>市民事務局 [Bürgerbüros]</abbr>を設置すことになっています。市民事務局は独立立場で、地域や地域住民に対し、手続きに関する専門的な助言を提供することになっています。
-\\ +
-==== サイト選定手続委員会(AkEnd)における市民参加試行(1999~2001年) ====+
  
-<WRAP rss right 350px> 
-{{:hlw:de:akend-workshop-photo1.png?200&nolink|AkEndのワークショップの開催模様(1)}} 
  
-{{ :hlw:de:akend-workshop-photo2.png?200&nolink|AkEndのワークショップの開催模様(2)}}+==== ◎市民集会 ====
  
-<fc #080>AkEndワークショップの開催模様</fc>\\ +<abbr>市民集会 [Bürgerversammlungen]</abbr>は、2013 年サイト選定法で新たに採り入れられた公衆参加手法です。集会は計画対象とされた地域内で開催されます。連邦放射性廃棄物処分庁は開催2カ月前までに連邦官報や同庁のウェブサイト、地元日刊紙に開催告示を出し、最低1カ月間、関連する基礎資料を提示します。
-<fs 70%>source:<nowiki>www.akend.de</nowiki></fs> +
-</WRAP>+
  
- +市民集会議事録には地域おけ公衆受容度合いについも記載するとになっていま連邦放射性廃棄物処分庁は、探査サイトや処分場サイト検討を行う際に市民集会結果考慮なければなりません。
-1999年に連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)設けられたサイト選定手続委員会(AkEnd)で、サイト選定手続きあり方関す検討が行われました。AkEndはワークショップなど形式を採用し社会との接点を重視する形で検討作業を進め、2002年に取りまめた最終報告書おい、サイト選定の各段階におて市民の参加を得ることが重要性を指摘ししたしかし当時は、AkEndが提案したサイト選定の新たな制度枠組み策定結びつかず、市民接点重視した手続の導入は実現しませんでした+
  
  
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-2013年のサイト選定法により探査活動が中止されるまで、処分場候補地として探査が続けられてきたゴアレーベン地域では監督機関である連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省)や、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が対話活動や情報提供を行ってました。+2013年のサイト選定法により探査活動が中止されるまで、ゴアレーベン地域において、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現BMUB 旧称)や、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が対話活動や情報提供を行ってました。
  
 ゴアレーベンには1979年から情報センターが設けられていました。また、地元及び周辺自治体の議員で構成するゴアレーベン委員会が、実施主体のBfSや、BfSの委託を受けて現地の探査活動を実施していたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)とのコミュニケーションのチャンネルの役割を果たしていました。 ゴアレーベンには1979年から情報センターが設けられていました。また、地元及び周辺自治体の議員で構成するゴアレーベン委員会が、実施主体のBfSや、BfSの委託を受けて現地の探査活動を実施していたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)とのコミュニケーションのチャンネルの役割を果たしていました。
  
 2010年にゴアレーベンの探査凍結が解除された際、BMUは探査活動を進める上で地元のステークホルダーや住民の参加プロセスの導入が重要との認識を示しています。BMUは同年、市民との対話活動「ゴアレーベン・ダイアログ」を開始しました。この対話活動では、探査活動や予備的安全評価について、専用のウェブサイトを設けて情報提供や意見募集を行ったほか、市民との対話集会などが開催されました。しかし、サイト選定の見直しに伴いゴアレーベンの探査が中止されたため、現在はこうした対話活動も中断されています。 2010年にゴアレーベンの探査凍結が解除された際、BMUは探査活動を進める上で地元のステークホルダーや住民の参加プロセスの導入が重要との認識を示しています。BMUは同年、市民との対話活動「ゴアレーベン・ダイアログ」を開始しました。この対話活動では、探査活動や予備的安全評価について、専用のウェブサイトを設けて情報提供や意見募集を行ったほか、市民との対話集会などが開催されました。しかし、サイト選定の見直しに伴いゴアレーベンの探査が中止されたため、現在はこうした対話活動も中断されています。
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-==== ゴアレーベン地域でのコミュニケーション活動 ==== 
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-ゴアレーベンへの核燃料サイクル・バックエンドセンターの誘致は、地元のニーダーザクセン州政府が連邦政府に提案する形で実現しています。1979年には、当時の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)とニーダーザクセン州との間での合意のもと、全ての情報を公開すべきとの求めに応じて、PTBはサイトの近郊に情報センターを設置しました。また同州は、地元及び周辺自治体等の議員が委員となるゴアレーベン委員会を設置し、PTBから報告や情報提供を受けるチャンネルとしました。この委員会は、地元への情報提供、コミュニケーション、PTBとの信頼関係構築に大きな役割を果たしたとされています。 
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-こうした取組みは、1989年に処分実施主体が連邦放射線防護庁(BfS)に代わってからも継続して行われ、ゴアレーベン委員会、ゴアレーベン・フォーラム等のさまざまな地域情報サークル、現地の探査活動の中心となっているドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)との間で、コミュニケーションが図られてきています。 
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hlw/de/chap6.txt · 最終更新: 2017/05/23 19:31 by 127.0.0.1