hlw:de:chap3
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
両方とも前のリビジョン前のリビジョン次のリビジョン | 前のリビジョン次のリビジョン両方とも次のリビジョン | ||
hlw:de:chap3 [2014/01/08 10:16] – [3.1 実施体制] sahara.satoshi | hlw:de:chap3 [2014/02/18 15:56] – sahara.satoshi | ||
---|---|---|---|
行 35: | 行 35: | ||
<WRAP round box> | <WRAP round box> | ||
{{: | {{: | ||
- | * ドイツでは**高レベル放射性廃棄物処分場の設置責任は連邦政府にある**とされています。連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMU)が所管省であり、その下の**連邦放射線防護庁(BfS)**が実施主体となっています。 | + | * ドイツでは**高レベル放射性廃棄物処分場の設置責任は連邦政府にある**とされています。連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が所管省であり、その下の**連邦放射線防護庁(BfS)**が実施主体となっています。BfSはサイト選定の任務を外部委託することなく、主体的に実施することになっています。 |
- | * 2014年1月1日に連邦放射性廃棄物処分庁設置法が施行され、今後、放射性廃棄物処分に関する安全規制機関として**連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)**が設置される予定です。これにより、従来は州の当局に委任されていた高レベル放射性廃棄物処分に関する許認可権限が連邦に集約されます。 | + | * 2014年1月1日に連邦放射性廃棄物処分庁設置法が施行され、今後、放射性廃棄物処分に関する安全規制機関として**連邦放射性廃棄物処分庁**が設置される予定です。これにより、従来は州当局に委任されていた高レベル放射性廃棄物処分に関する許認可権限が連邦に集約されます。 |
</ | </ | ||
<WRAP clear></ | <WRAP clear></ | ||
行 42: | 行 42: | ||
===== 実施体制の枠組み ===== | ===== 実施体制の枠組み ===== | ||
- | 下の図は、ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分に係る実施体制を図式化したものです。連邦政府では、原子力問題全般を担当する連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMU)が管轄官庁であり、その下に設けられた**連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)**が、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制を担います。処分場建設・操業の実施主体である**連邦放射線防護庁(BfS)**も、BMUに所属する連邦官庁です。 | + | 下の図は、ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分に係る実施体制を図式化したものです。連邦政府では、原子力問題全般を担当する連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が管轄官庁であり、その下に設けられた**< |
<WRAP rss> | <WRAP rss> | ||
{{: | {{: | ||
- | <fc # | + | <fc # |
+ | <fs 90%> | ||
</ | </ | ||
- | \\ | ||
- | <WRAP clear></ | ||
- | 2014年1月1日付けで発効した連邦放射性廃棄物処分庁設置法により、今後連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置される予定です。BfEは処分場サイト選定手続き全体の監督・調整を担います。処分場サイトが決定した後は、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制当局として、実施主体であるBfSに対する監督を行います。 | + | 2014年1月1日付けで発効した連邦放射性廃棄物処分庁設置法により、今後、< |
なお、従来は高レベル放射性廃棄物の処分場については、州の管轄官庁が許認可当局としての役割を担っていましたが、連邦放射性廃棄物処分庁の設置などに伴い規制・実施体制が見直されました。 | なお、従来は高レベル放射性廃棄物の処分場については、州の管轄官庁が許認可当局としての役割を担っていましたが、連邦放射性廃棄物処分庁の設置などに伴い規制・実施体制が見直されました。 | ||
- | 連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)は、サイト選定の段階から処分場の建設・操業・閉鎖に至るまで一貫して、高レベル放射性廃棄物の処分事業場規制監督の任を担います。 | + | 連邦放射性廃棄物処分庁は、サイト選定の段階から処分場の建設・操業・閉鎖に至るまで一貫して、高レベル放射性廃棄物の処分事業場規制監督の任を担います。 |
原子力法では、同庁が許認可を発給する際は、州や関係自治体も決定に参加することとされています。 | 原子力法では、同庁が許認可を発給する際は、州や関係自治体も決定に参加することとされています。 | ||
行 68: | 行 67: | ||
===== 実施主体 ===== | ===== 実施主体 ===== | ||
- | ドイツの原子力法では、放射性廃棄物の処分場を連邦政府が設置することになっています(州は、必要な場合、中間貯蔵施設を設置する責任があります)。処分場の建設・操業の実施主体として、**連邦放射線防護庁(BfS)**が1989年に設置されています。BfSは、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMU)の監督下にあり、主として放射線防護、通信機器の電磁波対策に関する連邦の業務を実施していますが、所掌の一つとして放射性廃棄物の処分・輸送などに関する業務も担当しています。 | + | ドイツの原子力法では、放射性廃棄物の処分場を連邦政府が設置することになっています(州は、必要な場合、中間貯蔵施設を設置する責任があります)。処分場の建設・操業の実施主体として、**連邦放射線防護庁(BfS)**が1989年に設置されています。BfSは、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督下にあり、主として放射線防護、通信機器の電磁波対策に関する連邦の業務を実施していますが、所掌の一つとして放射性廃棄物の処分・輸送などに関する業務も担当しています。 |
- | BfSは、民間会社のドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)と業務契約を結んでおり、放射性廃棄物処分に関する実務作業を委託しています。DBE社は、PTBが実施主体であった1979年に連邦政府系の出資も含めて設立された会社です。現在は政府系機関からの出資はありません。原子力発電所を所有する電力会社が株主となっている原子力サービス社(GNS)が、DBE社に75%を出資しています。 | + | 2013年7月に新たに制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)では、BfSは“サイト選定の任務を第三者に委任できない”と規定されました。なお、サイト選定以外の業務の委任については制限はありません。ドイツでは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定プロセスは連邦政府が主導する形になります。 |
+ | |||
+ | サイト選定法の制定以前は、BfSは民間会社であるドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)と業務契約を結び、放射性廃棄物処分に関する実務作業(ゴアレーベンでの地下探査など)を委託していました。DBE社は、PTBが実施主体であった1979年に連邦政府系の出資も含めて設立された会社です。現在は政府系機関からの出資はなく、原子力発電所を所有する電力会社が株主となっている原子力サービス社(GNS)が、DBE社に75%を出資しています。 | ||
行 76: | 行 77: | ||
\\ | \\ | ||
===== 安全規則 ===== | ===== 安全規則 ===== | ||
- | |||
- | <WRAP rss right 320px> | ||
- | {{: | ||
- | 発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件 | ||
- | </ | ||
ドイツにおける放射性廃棄物処分に関する安全規則としては、1983年4月に当時の所轄官庁であった内務省が制定した「鉱山における放射性廃棄物の最終処分に関する安全基準」があります。ここでは、放射線防護令で規定された安全基準である年間0.3mSv(ミリシーベルト)が保証されなければならないとされています。この最終処分の安全基準は、コンラッドでの非発熱性放射性廃棄物の処分に係る計画確定手続において適用されました。 | ドイツにおける放射性廃棄物処分に関する安全規則としては、1983年4月に当時の所轄官庁であった内務省が制定した「鉱山における放射性廃棄物の最終処分に関する安全基準」があります。ここでは、放射線防護令で規定された安全基準である年間0.3mSv(ミリシーベルト)が保証されなければならないとされています。この最終処分の安全基準は、コンラッドでの非発熱性放射性廃棄物の処分に係る計画確定手続において適用されました。 | ||
行 87: | 行 83: | ||
<WRAP rss right 320px> | <WRAP rss right 320px> | ||
- | <fc # | + | <fc # |
- | {{: | + | |
/* | /* | ||
+ | {{: | ||
+ | */ | ||
|**線量基準**:評価期間は100万年を目安とする。 | |**線量基準**:評価期間は100万年を目安とする。 | ||
|○発生確率の高い事象 | |○発生確率の高い事象 | ||
|○発生確率の低い事象 | |○発生確率の低い事象 | ||
- | */ | + | |
+ | <wrap lo> | ||
+ | \\ | ||
+ | {{: | ||
+ | 発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件 | ||
+ | |||
+ | |||
</ | </ | ||
- | 一方、BMUは、2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定しました。なお、ゴアレーベンでの探査活動の再開に先立ち、BMUはゴアレーベン・サイトへの安全要件の適用についてニーダーザクセン州を含む各州の政府と協議し、2010年9月に安全要件の一部を改訂しています。ただし、安全要件に幾つかの課題があることから協議を継続していました。 | + | ゴアレーベンでの探査活動の再開に先立ち、BMU(現BMUBの旧称)は2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定し、ゴアレーベン・サイトへの安全要件の適用についてニーダーザクセン州を含む各州の政府と協議しました。その結果を受けて2010年9月に安全要件の一部を改訂したものの、幾つかの課題が残っていることから協議を継続していました。 |
- | 今後は、2013年に制定されたサイト選定法に基づき、2015年末までに「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が安全要件に関する検討結果を勧告としてまとめて政府・議会に提出し、議会がこれを元に安全要件等のサイト選定に関わる各種の基準を、連邦法として採決する予定となっています。 | + | 今後は、2013年に制定されたサイト選定法に基づき、2015年末までに「[[chap4#高レベル放射性廃棄物処分委員会]]」が安全要件に関する検討結果を勧告としてまとめて政府・議会に提出し、議会がこれを元に安全要件等のサイト選定に関わる各種の基準を、連邦法として採決する予定となっています。 |
- | 現状の安全要件では、100万年を評価目安期間として、線量基準が規定されています。その他放射線防護一般に関しては放射線防護令が定められています。 | + | 現状の安全要件では、100万年を評価目安期間として線量基準を規定しています。その他放射線防護一般に関しては放射線防護令で定められています。 |
<WRAP clear></ | <WRAP clear></ | ||
行 124: | 行 128: | ||
* 高レベル放射性廃棄物処分に関する基本的な枠組みは、原子力法で定められています。ただし、ドイツの特徴としてサイト調査段階においては原子力法の適用はなく、地下における活動等は鉱山法によって規制されています。 | * 高レベル放射性廃棄物処分に関する基本的な枠組みは、原子力法で定められています。ただし、ドイツの特徴としてサイト調査段階においては原子力法の適用はなく、地下における活動等は鉱山法によって規制されています。 | ||
* 「原子力の平和利用及びその危険の防護に関する法律」(原子力法)は原子力関係の基本法ですが、2002年4月に「商業発電のための原子力利用の秩序正しい終結に関する法律」という名称の改正法が成立しています。それまでの原子力法は原子力の平和利用の促進を目的としていましたが、改正後は商業用原子力発電からの段階的撤退が規定されています。原子力法は、原子力の利用、放射性廃棄物管理(貯蔵・処分等)の許認可手続や、関係機関の役割や責任等を定めている法律です。放射性廃棄物の処分場設置の責任が連邦にあることも、この原子力法で定められています。 | * 「原子力の平和利用及びその危険の防護に関する法律」(原子力法)は原子力関係の基本法ですが、2002年4月に「商業発電のための原子力利用の秩序正しい終結に関する法律」という名称の改正法が成立しています。それまでの原子力法は原子力の平和利用の促進を目的としていましたが、改正後は商業用原子力発電からの段階的撤退が規定されています。原子力法は、原子力の利用、放射性廃棄物管理(貯蔵・処分等)の許認可手続や、関係機関の役割や責任等を定めている法律です。放射性廃棄物の処分場設置の責任が連邦にあることも、この原子力法で定められています。 | ||
- | * 一方、処分サイトの選定は「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)に基づいて行われます。この法律では、選定に関わる安全要件や調査対象サイトの決定、処分サイトの最終決定など、サイト選定に関わる重要な決定は、市民集会などの公衆参加プロセスにかけた上で、最終的に議会が連邦法として採択するという形をとるとしています。 | + | * 一方、処分サイトの選定は「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)に基づいて行われます。この法律では、選定に関わる安全要件や調査対象サイトの決定、処分サイトの最終決定など、サイト選定に関わる重要な決定は、市民集会などの公衆参加プロセスにかけた上で、最終的に議会が連邦法として採択するという形をとると定めています。 |
* ドイツでは放射性廃棄物を定置する前のサイト調査活動は原子力法の適用を受けず、鉱山法の許認可取得が必要となります。ゴアレーベンの地下探査活動も、この鉱山法の許可に基づいて行われていました。 | * ドイツでは放射性廃棄物を定置する前のサイト調査活動は原子力法の適用を受けず、鉱山法の許認可取得が必要となります。ゴアレーベンの地下探査活動も、この鉱山法の許可に基づいて行われていました。 | ||
</ | </ |
hlw/de/chap3.txt · 最終更新: 2018/05/02 16:34 by sahara.satoshi