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hlw:ch:prologue [2013/05/17 15:16] – 以前のリビジョンを復元 (2013/04/24 14:48) sahara.satoshi | hlw:ch:prologue [2017/05/16 11:08] – 2017年版へ更新 ss12955jp | ||
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* 高レベル放射性廃棄物を含む全ての放射性廃棄物を、長期安全性と回収可能性を融合させた「**監視付き長期地層処分**」の概念に基づいて設計する処分場で処分することを法律で定めています。 | * 高レベル放射性廃棄物を含む全ての放射性廃棄物を、長期安全性と回収可能性を融合させた「**監視付き長期地層処分**」の概念に基づいて設計する処分場で処分することを法律で定めています。 | ||
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=====原子力エネルギー政策の動向===== | =====原子力エネルギー政策の動向===== | ||
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- | **[1] 連邦評議会とは? | + | **[1] 連邦評議会とは? |
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- | 全国4カ所の原子力発電所に建設された5基の原子炉は、1969年から1984年にかけて運転を開始しました。その内訳は沸騰水型原子炉(BWR)が2基、加圧水型原子炉(PWR)が3基です。2003年に制定された原子力法(2005年2月施行)は、新規原子炉の導入凍結を解除するとともに、原子炉の運転期限の制限を撤廃していました。しかし、2011年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故後に連邦評議会[1]は政策を転換し、原子炉が安全に運転可能な期間を50年とし、その期間が到達した原子炉を順次停止し、リプレースは行わないとする「エネルギー戦略2050」を閣議決定しました。また議会は、原子炉の新設を禁止する動議を2011年12月に可決しています。これらを受けて、政府は同戦略の実施に向けた法案を準備しており、2013年半ばに議会への提出を見込んでいます。 | + | 全国4カ所の原子力発電所に建設された5基の原子炉は、1969年から1984年にかけて運転を開始しました。その内訳は沸騰水型原子炉(BWR)が2基、加圧水型原子炉(PWR)が3基です。2003年に制定された原子力法(2005年2月施行)は、新規原子炉の導入凍結を解除するとともに、原子炉の運転期限の制限を撤廃していました。 |
+ | しかし、2011年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故後の2011年5月に連邦評議会[1]は「エネルギー戦略2050」を閣議決定し、既設5基が営業運転を終了した以降はリプレースせず、段階的に原子力発電から撤退する方針に転換しました。連邦議会は2012年12月に原子炉の新設を禁止する動議を可決しています。 | ||
+ | 政府は同戦略に基づくエネルギー構造改革に向けた法案を2013年9月に連邦議会へ提出し、2016年9月に連邦議会で採択されました。法律の発効は2018年初頭と見込まれています。 | ||
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===== 使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)===== | ===== 使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)===== | ||
- | <WRAP rss right 350px> | + | [40%{{ :hlw:ch:zzl-wurenlingen.png|ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)| |
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- | スイスでは、原子力発電から発生する使用済燃料は、各発電会社が個別に外国(フランスと英国)の会社と委託契約を結ぶことにより、再処理を実施してきました。しかし、原子力法により、2006年7月以降10 年間にわたり再処理を目的とした使用済燃料の輸出を禁止しています。このため現在は、燃料プールで使用済燃料を数年間冷却した後、所内または所外の中間貯蔵施設で中間貯蔵しています。 | ||
- | 発電所外の中間貯蔵施設には、原子力発電所を保有する4社が出資して建設されたヴュレンリンゲン中間貯蔵施設(ZWILAG、2001年操業開始)があります。この施設では、使用済燃料(乾式キャスク貯蔵)のほか、外国での再処理に伴って返還されるガラス固化体や他の放射性廃棄物を貯蔵しています。 | + | スイスでは、原子力発電から発生する使用済燃料は、各発電会社が個別に外国(フランスと英国)の会社と委託契約を結ぶことにより、再処理を実施してきました。しかし、原子力法により、2006年7月以降10年間にわたり再処理を目的とした使用済燃料の輸出を禁止しました。連邦決議により、この禁止期間が2016年7月からさらに4年延長されました。このため現在は、燃料プールで使用済燃料を数年間冷却した後、所内または所外の中間貯蔵施設で中間貯蔵しています。 |
- | 2カ所の原子力発電所(ベツナウとゲスゲン)には所内に中間貯蔵施設があり、いずれも2008 年から使用済燃料の貯蔵を開始しました。ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)は乾式キャスクを用いた貯蔵方式であり、ゲスゲン原子力発電所の施設は湿式プール方式です。 | + | 発電所外の中間貯蔵施設には、原子力発電所を保有する4社が共同出資して建設したヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL、2001年操業開始)があります。この施設では、使用済燃料(乾式キャスク貯蔵)のほか、外国での再処理に伴って返還されるガラス固化体や他の放射性廃棄物を貯蔵しています。 |
- | 2010年12月末時点で、スイス国内の使用済燃料貯蔵量は約1, | + | 2カ所の原子力発電所(ベツナウとゲスゲン)には所内に中間貯蔵施設があり、いずれも2008年から使用済燃料の貯蔵を開始しました。ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)は乾式キャスクを用いた貯蔵方式であり、ゲスゲン原子力発電所の施設は湿式プール方式です。 |
+ | 2013年12月末時点で、スイス国内の使用済燃料貯蔵量は約1, | ||
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===== 処分方針 ===== | ===== 処分方針 ===== | ||
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**[2] 放射性廃棄物の管理義務の履行** \\ 原子力法は、次のいずれかが満たされた場合、放射性廃棄物の管理義務が履行されたものとすると規定しています。 | **[2] 放射性廃棄物の管理義務の履行** \\ 原子力法は、次のいずれかが満たされた場合、放射性廃棄物の管理義務が履行されたものとすると規定しています。 | ||
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- | スイスでは原子力法において、再処理目的の使用済燃料の輸出を2016年6月末まで禁じています。現時点では将来に再処理を行うオプションが残されているので、使用済燃料は“直接処分する高レベル放射性廃棄物”と決まった訳ではありません。2005年施行の原子力令では、再利用しない使用済燃料を“高レベル放射性廃棄物”と定めています。 | + | スイスでは原子力法及び連邦決議において、再処理目的の使用済燃料の輸出を2020年6月末まで禁じています。現時点では将来に再処理を行うオプションが残されているので、使用済燃料は“直接処分する高レベル放射性廃棄物”と決まった訳ではありません。2005年施行の原子力令では、再利用しない使用済燃料を“高レベル放射性廃棄物”と定めています。 |
スイスでは、放射性廃棄物を国内で処分する場合には地層処分を行う方針です。ただし、法的には、国際共同処分場での処分も可能としています[2]。 | スイスでは、放射性廃棄物を国内で処分する場合には地層処分を行う方針です。ただし、法的には、国際共同処分場での処分も可能としています[2]。 | ||
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- | ==== 処分方針が決定されるまでの経緯 ==== | + | ==== 処分方針が決定するまでの経緯 ==== |
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**[3] EKRAの勧告** \\ 2000年のEKRAの報告書の主な勧告は、次の通りです。 | **[3] EKRAの勧告** \\ 2000年のEKRAの報告書の主な勧告は、次の通りです。 | ||
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スイスでは、原子力分野における規制が、数多くの法令に分散していたことなどを理由として、原子力分野の法制度の刷新の必要性が認識されていました。1998年に連邦評議会は「エネルギー対話」ワーキンググループを設置し、新しい原子力法の制定に向けた検討を開始しました。このワーキンググループには、関係官庁やNAGRAに加えて、原子力発電事業者や環境団体も参加し、原子力発電の継続や再処理の実施についての議論が行われました。同ワーキンググループは、放射性廃棄物管理の問題に関して、廃棄物の回収可能性に関する検討を継続することを勧告しました。その後、連邦の環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、1999年に「放射性廃棄物の処分概念に関する専門家グループ」(EKRA)を設置し、技術と社会の両面から問題を検討・勧告するよう依頼しました。EKRAは2000年に最終報告書をまとめ、「監視付き長期地層処分」という概念を提案し、この概念で放射性廃棄物を処分することを法律で明確化するよう勧告しました[**3**]。 | スイスでは、原子力分野における規制が、数多くの法令に分散していたことなどを理由として、原子力分野の法制度の刷新の必要性が認識されていました。1998年に連邦評議会は「エネルギー対話」ワーキンググループを設置し、新しい原子力法の制定に向けた検討を開始しました。このワーキンググループには、関係官庁やNAGRAに加えて、原子力発電事業者や環境団体も参加し、原子力発電の継続や再処理の実施についての議論が行われました。同ワーキンググループは、放射性廃棄物管理の問題に関して、廃棄物の回収可能性に関する検討を継続することを勧告しました。その後、連邦の環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、1999年に「放射性廃棄物の処分概念に関する専門家グループ」(EKRA)を設置し、技術と社会の両面から問題を検討・勧告するよう依頼しました。EKRAは2000年に最終報告書をまとめ、「監視付き長期地層処分」という概念を提案し、この概念で放射性廃棄物を処分することを法律で明確化するよう勧告しました[**3**]。 | ||
- | EKRAは、従来の地層処分(GEL)― 保守を行なわず、回収の意志を持たずに、放射性廃棄物を生物圏から永久に隔離―する概念のほか、無期限の地層貯蔵(TDL)といった概念を比較検討しました。この結果、長期安全性と処分場からの廃棄物の回収可能性の観点を融合させ、モニタリングを積極的に組み込んだ「監視付き長期地層処分」概念(KGL)を考案しました。 | + | EKRAは、従来の地層処分(GEL)― 保守を行なわず、回収の意志を持たずに、放射性廃棄物を生物圏から永久に隔離―する概念のほか、無期限の地層貯蔵(TDL)といった概念を比較検討しました。TDLは長期の安全評価に合致しないと結論付けた上で、GELにモニタリングの概念をを積極的に組み込んだ「監視付き長期地層処分」概念(KGL)を考案しました。 |
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**[4] 処分の実現可能性実証プロジェクト** \\ スイスでは、法律等によって、国内における放射性廃棄物の処分の実現可能性の実証が求められていました。NAGRAは、結晶質岩と堆積岩に関する調査・研究を行った後、2002年12月にチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土を対象とする「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書を公表しました。処分の実現可能性が実証されたことは、2006年6月に連邦評議会によって承認されています。ただし、今後の調査の対象をチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土に絞るというNAGRAの要求は退けました。 | **[4] 処分の実現可能性実証プロジェクト** \\ スイスでは、法律等によって、国内における放射性廃棄物の処分の実現可能性の実証が求められていました。NAGRAは、結晶質岩と堆積岩に関する調査・研究を行った後、2002年12月にチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土を対象とする「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書を公表しました。処分の実現可能性が実証されたことは、2006年6月に連邦評議会によって承認されています。ただし、今後の調査の対象をチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土に絞るというNAGRAの要求は退けました。 | ||
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====== 〔参考資料〕 ====== | ====== 〔参考資料〕 ====== | ||
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- | ===== エネルギー情勢 | + | ===== スイスの原子力発電利用状況 ===== |
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===== 原子力関連施設 ===== | ===== 原子力関連施設 ===== | ||
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スイスの主要な原子力関連施設の立地点 | スイスの主要な原子力関連施設の立地点 | ||
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行 181: | 行 176: | ||
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+ | # グラフ描画用ライブラリの読み込み | ||
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hlw/ch/prologue.txt · 最終更新: 2018/05/02 11:40 by 127.0.0.1