諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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hlw:ch:chap5 [2013/12/30 11:46] – 2014年版向けに更新 sahara.satoshihlw:ch:chap5 [2017/05/17 10:24] – 2017年版へ更新 ss12955jp
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-~~bc:5.処分事業の資金確保~~+~~ShortTitle:5.処分事業の資金確保~~
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 ==HLW:CH:chap5== ==HLW:CH:chap5==
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 {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}} {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}}
-  * 廃棄物発生者である電力会社及び連邦政府は、処分実施主体の放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の活動費用を負担しています。また、電力会社は原子力発電所の閉鎖後の廃棄物管理全般に必要となる費用を賄うため、**放射性廃棄物管理基金**への拠出金負担しています。+  * 廃棄物発生者である電力会社及び連邦政府は、処分実施主体の放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の活動費用を負担しています。また、電力会社は原子力発電所の運転中に係る廃棄物管理に必要となる費用を賄うため、引当金を計上しており、原子力発電所の閉鎖後の廃棄物管理費用については、放射性廃棄物管理基金への拠出金負担しています。
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 ===== 処分費用の負担者 ===== ===== 処分費用の負担者 =====
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 ===== 処分費用の確保制度 ===== ===== 処分費用の確保制度 =====
  
-<WRAP rss right 300px> +[40%{{ :hlw:ch:financing-system-ch.png|スイスにおける資金確保の仕組み|
-{{:hlw:ch:financing-system-ch.png?300&nodirect|スイスにおける資金確保の仕組み}}\\+
 <fc #080>スイスにおける資金確保の仕組み</fc> <fc #080>スイスにおける資金確保の仕組み</fc>
-</WRAP>+}}]
  
  
- +スイスでの放射性廃棄物管理の資金確保では、引当金制度と拠出金制度が併用されています。
-スイスでの放射性廃棄物管理の資金確保では、拠出金制度と引当金制度が併用されています。+
  
 原子力発電所の運転中に係る放射性廃棄物管理費用については、2005年2月に施行された原子力法により、原子力発電所の所有者が引当金を計上することにより資金確保をしています。 原子力発電所の運転中に係る放射性廃棄物管理費用については、2005年2月に施行された原子力法により、原子力発電所の所有者が引当金を計上することにより資金確保をしています。
  
-原子力発電所の廃止措置後の放射性廃棄物管理については、必要な費用を賄うために設立された**<acronym title="Entsorgungsfonds">放射性廃棄物管理基金</acronym>**に対して、電力会社が毎年拠出金を支払う義務を有しています。2000年3月に放射性廃棄物管理基金令が制定され、原子力発電所の閉鎖後の廃棄物管理活動全般に必要な費用を基金化する制度が確立しました。この政令は2007年12月に、原子力施設の廃止措置基金に関する政令と一本化され、廃止措置・廃棄物管理基金令となりました。放射性廃棄物管理のための基金の積立対象となるのは、原子力発電所の閉鎖後に必要となる以下の費用です。+原子力発電所の運転終了後の放射性廃棄物管理については、必要な費用を賄うために設立された**<abbr>放射性廃棄物管理基金 [Entsorgungsfonds]</abbr>**に対して、電力会社が毎年拠出金を支払う義務を有しています。2000年3月に放射性廃棄物管理基金令が制定され、原子力発電所の閉鎖後の廃棄物管理活動全般に必要な費用を基金化する制度が確立しました。この政令は2007年12月に、原子力施設の廃止措置基金に関する政令と一本化され、廃止措置・廃棄物管理基金令となりました。放射性廃棄物管理のための基金の積立対象となるのは、原子力発電所の閉鎖後に必要となる以下の費用です。
  
-  *a. 廃棄物の輸送及び処分 +  廃棄物の輸送及び処分 
-  *b. 使用済燃料の輸送及び処分 +  使用済燃料の輸送及び処分 
-  *c. 処分場の50年間の監視段階 +  処分場の50年間の監視段階 
-  *d. 処分場の設計、計画、計画管理、建設、操業、閉鎖及び監視 +  処分場の設計、計画、計画管理、建設、操業、閉鎖及び監視 
-  *e. 放射線防護措置及び作業被ばく防止措置 +  放射線防護措置及び作業被ばく防止措置 
-  *f. 官庁による許認可及び監督 +  官庁による許認可及び監督 
-  *g. 保険 +  保険 
-  *h. 管理費用+  管理費用
  
-この基金は、連邦評議会が設立した管理委員会によって管理されており、この委員会が費用の想定額についての決定も行います。基金への払い込みは2001年末から始まり、2011年末における放射性廃棄物管理基金の残高は約28.3億スイスフラン(約3,080億円)です。 +この基金は、連邦評議会が設立した管理委員会によって管理されており、この委員会が費用の想定額についての決定も行います。基金への払い込みは2001年末から始まっており、2015年末における放射性廃棄物管理基金の残高は約42.2億スイスフラン(約4,400億円)です。 
-(1スイスフラン=109円として換算)+(1スイスフラン=105円として換算)
  
-基金への拠出金および引当金は、5年に一度行われる放射性廃棄物の費用見積りに基づいて決定されます。最近では原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアが2011年に費用見積りを発表し、連邦原子力安全検査局(ENSI)評価したこれ受けて2012年から2016年までの拠出金および引当金定されています。次回の費用見積りは2016年に実施される予定です。+基金への拠出金および引当金は、5年に一度行われる放射性廃棄物の費用見積りに基づいて決定されます。最近では原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアが2016年に費用見積りを発表しました。今後、連邦原子力安全検査局(ENSI)と会計専門家による評価が行われ2016年の費用見積もりは、2017年から2021年までの基金への拠出金引当金の額をめる根拠となります。次回の費用見積りは2021年に実施される予定です。
  
-放射性廃棄物の発生者が負う管理義務に基づいて、NAGRAの事業費用は、現在、発生者からの引当金に基づく処分場へのプロジェクトへの支出によ賄われています。現在スイスでは閉鎖された原子力発電所は存在しないため、「放射性廃棄物管理基金」による支払いはありませんが、原子力発電所の廃止措置の後では、NAGRAの活動費用は基金からの払戻金で賄われることになります。+放射性廃棄物の発生者が負う管理義務に基づいて、NAGRAの事業費用は、現在、廃棄物発生者の引当金によって賄われています。原子力発電所の運転終了後は、NAGRAの活動費用は「放射性廃棄物管理基金」からの払戻金で賄われることになります。
  
  
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 ====== 5.2 処分費用の見積もり ====== ====== 5.2 処分費用の見積もり ======
  
-<WRAP rss right 300px> +[40%{{ :hlw:ch:処分費用の見積額2016.png|処分費用見積もり| 
-{{:hlw:ch:cost-breakdown-ch.png?300&nolink|処分費用見積額内訳}}\\ +<fc #080>処分費用見積もり</fc>   
-<fc #080>処分費用見積額内訳</fc>\\ <fs 70%>source: NAGRA</fs> +<fs 70%>NAGRA NTB 16-01(2016)から作成</fs> 
-</WRAP> +}}]
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-NAGRAは、スイスにおける高レベル放射性廃棄物の処分費用の総額(2011年時点)は約45億スイスフラン(約4,900億円)と見積っています。 +
- +
-処分費用見積額の内訳(概算)は、サイト選定を含む概要承認までの準備作業費が4.4億スイスフラン(80億円)、サイト特性調査施設の建設・操業費が9.2億スイスフラン(1,000億円)、処分場建設費が11億スイスフラン(1,200億円)、処分場操業費用8.8億スイスフラン(960億円)、処分場モニタリング費用が約10億スイスフラン(1,100億円)、処分場の閉鎖費用が2.3億スイスフラン(約250億円)です。(1スイスフラン=109円として換算)+
  
 +スイスの原子力発電事業者は、2016年時点において、①高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物用の処分場をそれぞれ1カ所ずつ計2カ所に建設する場合、②それらを同じ場所に建設する場合―の費用見積もりを行っています。
  
 +①高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物用の処分場をそれぞれ別の場所(計2カ所)に建設する場合、放射性廃棄物の処分費用の総額は約191.8億スイスフラン(約2兆140億円)になると見積っています。
 +処分費用見積額の内訳は、再処理に係る費用が約27.6億スイスフラン(約2,900億円)、中間貯蔵に係る費用が約29億スイスフラン(約3,045億円)、輸送に係る費用が約14億スイスフラン(約1,470億円)、低中レベル放射性廃棄物用処分場の費用が約44.2億スイスフラン(約4,640億円)、高レベル放射性廃棄物用処分場の費用が約76.9億スイスフラン(約8,080億円)です。
  
 +②高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物用の処分場を同じ場所に建設する場合については、処分費用の総額は約183.6億スイスフラン(約1兆9,280億円)と見積っています。
 +その内訳は、再処理、中間貯蔵、輸送に係る費用については①の場合と同額となりますが、低中レベル放射性廃棄物用処分場の費用は約41.5 億スイスフラン(約4,360 億円)、高レベル放射性廃棄物用処分場の費用は約71.5億スイスフラン(約7,510 億円)となっています。(1スイスフラン=105円として換算)
  
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 <WRAP note> <WRAP note>
-<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1312.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成25年12月中において適用)を使用しています。</wrap> +<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1612.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成28年12月中において適用)を使用しています。</wrap> 
-  * <wrap lo>1スイスフラン=109円として換算</wrap>+  * <wrap lo>1スイスフラン=105円として換算</wrap>
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hlw/ch/chap5.txt · 最終更新: 2017/10/27 18:38 by 127.0.0.1