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hlw:ch:chap4 [2013/12/30 13:22] – [サイト選定の第1段階の進捗(2008~2011年)] sahara.satoshi | hlw:ch:chap4 [2017/05/16 14:25] – [制度の現状] ss12955jp | ||
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- | スイスの連邦評議会は、原子力令(2005 年2月施行)において、「放射性廃棄物処分に関する拘束力のある目標及び基準を“特別計画”で定める」と規定しています。**特別計画**とは、地域と環境に重大な影響を及ぼすプロジェクト―例えばエネルギーインフラや交通網など―を確定する手続きとして都市計画法で定められている手続きです(ドイツ語ではザッハプランといいます)。 | + | スイスの連邦評議会は、原子力令(2005 年2月施行)において、「放射性廃棄物処分に関する拘束力のある目標及び基準を“特別計画”で定める」と規定しています。**特別計画**とは、地域と環境に重大な影響を及ぼすプロジェクト―例えばエネルギーインフラや交通網など―を確定する手続きとして都市計画法で定められている手続きです(ドイツ語では< |
- | 特別計画は「方針部分」と「実施部分」から構成されます。< | + | 特別計画は「方針部分」と「実施部分」から構成されます。< |
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- | 特別計画では処分場の立地に関する空間概念が右図の通り示されています。特別計画第1段階で選定される“**地質学的候補エリア**”は、地質学上の要件を満たし、そのエリアの地下に処分場の建設できる可能性がある候補地の幅広いエリアです。地質学的候補エリアを包み込む“**計画範囲**”は地上施設が建設される可能性のある領域です。 | + | 特別計画では処分場の立地に関する空間概念が右図の通り示されています。 |
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+ | 特別計画第1段階で選定される“**地質学的候補エリア**”は、地質学上の要件を満たし、そのエリアの地下に処分場の建設できる可能性がある候補地の幅広いエリアです。地質学的候補エリアを包み込む“**計画範囲**”は地上施設が建設される可能性のある領域です。 | ||
“**サイト地域**”は地質学的候補エリアに所在する自治体、計画範囲の境界内部に全体または一部が含まれる自治体、その他関係する自治体から構成されます。これらの自治体の代表や住民は「地域会議」へ参加します。地域会議の活動については、「[[chap6|VI.2.処分事業の透明性確保とコミュニケーション]]」にまとめています。 | “**サイト地域**”は地質学的候補エリアに所在する自治体、計画範囲の境界内部に全体または一部が含まれる自治体、その他関係する自治体から構成されます。これらの自治体の代表や住民は「地域会議」へ参加します。地域会議の活動については、「[[chap6|VI.2.処分事業の透明性確保とコミュニケーション]]」にまとめています。 | ||
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- | <WRAP clear></WRAP> | + | 特別計画「地層処分場」では、高レベル放射性廃棄物用と低中レベル放射性廃棄物用の2つの処分場を建設すると規定していますが、同じ場所に高レベル及び低中レベルの放射性廃棄物用処分場を建設することも可能としています。 |
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===== サイト選定の第1段階の進捗(2008~2011年) ===== | ===== サイト選定の第1段階の進捗(2008~2011年) ===== | ||
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- | **NAGRAが地質学的候補エリアを提案する際に採用した\\ | + | **NAGRAが地質学的候補エリアを提案する際に採用した絞り込みプロセス** |
- | 絞り込みプロセス** | + | |
- 廃棄物を高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃棄物用処分場に割り当てる。 | - 廃棄物を高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃棄物用処分場に割り当てる。 | ||
- バリア概念と安全性の概念を確定し、基準に関わる定量的及び定性的な要件と基準値を定める。 | - バリア概念と安全性の概念を確定し、基準に関わる定量的及び定性的な要件と基準値を定める。 | ||
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- 岩盤形状の評価及び地質学候補エリアの提案を作成する。 | - 岩盤形状の評価及び地質学候補エリアの提案を作成する。 | ||
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特別計画に基づくサイト選定の第1段階は、2008年10月に、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が処分場の**地質学的候補エリア**を提案したことを受けて始まりました。 | 特別計画に基づくサイト選定の第1段階は、2008年10月に、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が処分場の**地質学的候補エリア**を提案したことを受けて始まりました。 | ||
- | 特別計画(の方針部分)では右表に示すように、安全性と技術的実現可能性に関するサイトの評価基準が定められています。この基準に基づき、NAGRA はスイス全土を右下の囲みに示したプロセスによって絞り込むことで、高レベル放射性廃棄物の地層処分場の地質学的候補エリアを3カ所提案しました。 | + | 特別計画(の方針部分)では右表に示すように、安全性と技術的実現可能性に関するサイトの評価基準が定められました。NAGRAはこの基準に従って全国から絞り込みを進め(右段の囲み記事を参照)、高レベル放射性廃棄物の地層処分場の地質学的候補エリアを3カ所提案しました。 |
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- | ===== サイト選定の第2段階の進捗状況と作業予定(2011~2016年) ===== | + | ===== サイト選定の第2段階の進捗状況と作業予定(2011~2017年) ===== |
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- | 2011年12月にサイト選定手続きの第2 段階が開始されました。2012年1月にNAGRAと連邦エネルギー庁(BFE)は「計画範囲」に含まれる20カ所の地上施設区域の案を公表しました(120 ページに丸印で示された点です)。設置区域は、安全性及び技術面からの現実性、土地利用に関する適合性及び環境との適合性、地域との調和を考慮して提案されました。BFE の主導で設置され、自治体の代表や住民が参加する「地域会議」は地上施設の設置区域について独自の提案をすることができるとされています。 | + | 2011年12月にサイト選定手続きの第2段階が開始されました。2012年1月にNAGRAと連邦エネルギー庁(BFE)は「計画範囲」に含まれる20カ所の地上施設区域の案を公表しました。設置区域は、安全性及び技術面からの現実性、土地利用に関する適合性及び環境との適合性、地域との調和を考慮して提案されました。BFEの主導で設置され、自治体の代表や住民が参加する「地域会議」は地上施設の設置区域について独自の提案をしました。 |
- | NAGRAはこれらの提案の成果を踏まえ、2013年秋以降に各「計画範囲」ごとに、地上施設の設置区域を最低でも1カ所提示しており、2013年12月末時点で4つの計画範囲について絞り込みを行いました。 | + | NAGRAはこれらの提案の成果を踏まえ、14カ所を追加検討し、2013年秋から2014年5月末にかけて、地上施設の設置区域を6つの計画範囲について合計7カ所を提案しました。 |
BFE は2012年6月に地層処分場が立地する地域に与える経済影響に関する第1回目の中間報告書を公表しました。同報告書は、6カ所の地質学的候補エリアを包含する形で設定されている「サイト地域」を対象に①地元経済、②雇用、③観光業、④農業、⑤税収、⑥対価(交付金)について分析しています。いずれのサイト地域でも経済的にプラスまたはマイナスの影響のどちらも小さいと結論付けています。 | BFE は2012年6月に地層処分場が立地する地域に与える経済影響に関する第1回目の中間報告書を公表しました。同報告書は、6カ所の地質学的候補エリアを包含する形で設定されている「サイト地域」を対象に①地元経済、②雇用、③観光業、④農業、⑤税収、⑥対価(交付金)について分析しています。いずれのサイト地域でも経済的にプラスまたはマイナスの影響のどちらも小さいと結論付けています。 | ||
- | 今後、NAGRA が各「計画範囲」ごとに最低1カ所の地上施設の設置区域を提示した後、BFE が環境影響と社会影響に関する調査を実施し、2014年に社会・経済・環境影響に関する最終報告書を作成するとしています。 | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | その後2014年11月に、BFEは社会・経済・環境影響に関する最終報告書を公表しました。最終報告書では、NAGRAが2014年5月までに提案した7カ所の地上施設の設置区域を比較しており、その結果、環境影響と社会影響については、差異の大きい評価項目があると結論付けています。 |
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+ | 2014年には、右上のフロー図中に示すとおり、NAGRA が予備的安全評価とサイトの比較作業を実施しました。 | ||
+ | NAGRAは科学的・技術的な基準に基づいて絞り込みを行い、2015年1月末に「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」の2つを提案しました。NAGRA はいずれについても不透水性の岩盤が適切な深度にあり、氷河等による侵食の影響を受けず長期に安定して存在しているため、放射性廃棄物を安全に閉じ込めることができるとしています。第2段階の完了は2018年半ばと見込まれています。 | ||
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+ | 現在、連邦原子力安全検査局(ENSI )がNAGRAの提案を審査しています。 | ||
+ | 他方、NAGRAはサイト選定第3段階の実施に向けて、三次元弾性波探査を2015年10月から12月にかけてジュラ東部で実施、チューリッヒ北東部においては2016年2月に実施しました。 | ||
+ | ボーリング調査についてもNAGRAは準備を進めており、2016年9月に許可申請書を連邦エネルギー庁へ提出しました。 | ||
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- | また2014年には、NAGRA が右図の予備的安全評価とサイトの比較作業を実施することとなっており、終了後NAGRAは最低2カ所の候補サイトを提案する予定です。第2段階は2016年の終了が見込まれています。 | ||
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- | ===== サイト選定の第3段階の作業予定(2016年~) ===== | + | ===== サイト選定の第3段階の作業予定(2018年~) ===== |
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第3段階では、右図の流れでNAGRAが概要承認申請書をBFEに提出し、高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃棄物用処分場のサイトを提案します。低中レベル放射性廃棄物用処分場が高レベル放射性廃棄物用処分場と同じサイトで提案される可能性もあります。 | 第3段階では、右図の流れでNAGRAが概要承認申請書をBFEに提出し、高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃棄物用処分場のサイトを提案します。低中レベル放射性廃棄物用処分場が高レベル放射性廃棄物用処分場と同じサイトで提案される可能性もあります。 | ||
- | 「概要承認」の連邦議会による承認後は、地下特性調査施設の建設等の詳細な地球科学的調査が実施され、実施後は建設許可、操業許可の手続きが行われます。 | + | 「概要承認」の連邦議会による承認後は、地下特性調査施設の建設等の詳細な地球科学的調査が実施され、実施後は建設許可、操業許可の手続きが行われます。処分場の建設許可、操業許可の手続きは別途必要となっています。 |
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===== 環境影響評価 ===== | ===== 環境影響評価 ===== | ||
- | 環境影響評価については、特別計画及び環境影響評価に関する政令に基づき、予備調査、第1段、第2段の順序で実施されます。まずNAGRAはサイト選定第2段階で環境影響の予備調査を実施し、環境影響評価の第1 | + | 環境影響評価は、特別計画及び環境影響評価に関する政令に基づき、予備調査、第1ステージ、第2ステージの順序で進められます。まずNAGRAはサイト選定第2段階で環境影響の予備調査を実施し、環境影響評価の第1ステージの仕様書を作成します。サイト選定第3段階では概要承認を申請する際にNAGRAが環境影響評価第1ステージの報告書を提出し、第2ステージの仕様書を作成します。建設許可を申請する際には環境影響評価第2ステージの報告書を提出します。 |
行 250: | 行 267: | ||
スイスでは、現時点では地域振興を目的とした法的な枠組みはありませんが、地層処分場プロジェクトに関する特別計画の確定手続きにおいて、サイト確定後に交付金について検討することを明文化しています。 | スイスでは、現時点では地域振興を目的とした法的な枠組みはありませんが、地層処分場プロジェクトに関する特別計画の確定手続きにおいて、サイト確定後に交付金について検討することを明文化しています。 | ||
- | 特別計画によると、「対価」と呼ばれる交付金について、法的根拠は定められていないものの、第3段階において概要承認が発給されてから、対価に関する検討が行われ、廃棄物発生者によって支払われることが規定されています。対価の配分と用途については、候補サイト区域や計画範囲に含まれる自治体等が検討し、州などに提案することになっています。 | + | 特別計画によると、交付金について、法的根拠は定められていないものの、第3段階において交付金に関する検討が行われ、概要承認が発給されてから、実施主体であるNAGRAを通じて廃棄物発生者が支払うことが規定されています。 |
+ | 交付金の配分と用途については、地質学的候補エリアや計画範囲に含まれる自治体等が検討し、州などに提案することになっています。 | ||
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hlw/ch/chap4.txt · 最終更新: 2017/10/27 18:38 by 127.0.0.1