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hlw:ch:chap2 [2013/12/29 22:14] – [処分場の建設予定地の地質構造] sahara.satoshi | hlw:ch:chap2 [2017/10/27 16:57] – ss12955jp | ||
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*<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | ||
*<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | ||
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====== 2.1 処分計画 ====== | ====== 2.1 処分計画 ====== | ||
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* スイスでは、多重バリアシステムにより長期間にわたって放射性廃棄物を人間環境から隔離するという通常の地層処分概念に、回収可能性の考え方を取り入れた処分概念である「**監視付き長期地層処分**」が、2005年2月に施行された原子力法及び原子力令で採用されています。また、国内での処分を原則としていますが、他の国との国際共同処分も可能とされています。2008年から国内での処分場サイトの選定が開始されています。 | * スイスでは、多重バリアシステムにより長期間にわたって放射性廃棄物を人間環境から隔離するという通常の地層処分概念に、回収可能性の考え方を取り入れた処分概念である「**監視付き長期地層処分**」が、2005年2月に施行された原子力法及び原子力令で採用されています。また、国内での処分を原則としていますが、他の国との国際共同処分も可能とされています。2008年から国内での処分場サイトの選定が開始されています。 | ||
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===== 地層処分対象の放射性廃棄物 ===== | ===== 地層処分対象の放射性廃棄物 ===== | ||
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- | NAGRAが2008年に公表した見積りによると、国内5基の原子炉を50年間運転した場合、約3,600トンの使用済燃料が発生し、このうち、再処理されるのが約1,100トンであり、残りの2,435トンは直接処分することになっています。NAGRAは、処分することになるキャニスタの量について、ガラス固化体を収納したものが730体(730m< | + | NAGRAが2016年に公表した見積りによると、国内4基の原子炉を60年間、1基を47年間運転した場合、約2,932トンの使用済燃料が発生すると評価しています。このうち、2016年時点で約1,139トンが既に再処理されており、残りの約1,793トンは直接処分する見込みです。NAGRAは、処分することになるキャニスタの量について、ガラス固化体を収納したものが398m< |
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===== 処分場の概要(処分概念) ===== | ===== 処分場の概要(処分概念) ===== | ||
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- | **[6] オパリナス粘土とは… ** \\ オパリナス粘土({{popup>: | + | |
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- | NAGRAは、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場は、スイス北部の地下に分布する堆積岩「**オパリナス粘土**」[6]を母岩とする地層がある、深さ400~900mの場所に設置することを検討しています。 | + | [40%{{ : |
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+ | オパリナス粘土のボーリングコアで見つかったアンモナイトの化石</ | ||
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+ | NAGRAは、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場は、スイス北部の地下に分布する堆積岩「**オパリナス粘土**」を母岩とする地層がある、深さ400~900mの場所に設置することを検討しています。オパリナス粘土は、約180億年前のジュラ紀に形成された堆積岩の一種です。 | ||
- | + | スイスでは「**監視付き長期地層処分**」概念に基づく処分場で処分する方針です。このため、地下には、高レベル放射性廃棄物の処分エリア、長寿命中レベル放射性廃棄物の処分エリアに加えて、**パイロット施設**が設けられます。 | |
- | NAGRAが「処分の実現可能性実証プロジェクト」で検討した地層処分場の概念を右図に示します。スイスでは「**監視付き長期地層処分**」概念に基づく処分場で処分する方針です。このため、地下には、使用済燃料またはガラス固化体を収納したキャニスタの処分エリア、長寿命中レベル放射性廃棄物の処分エリアに加えて、**パイロット施設**が設けられます。 | + | |
パイロット施設は、少量の廃棄物を処分することにより、処分後に生じる変化や挙動をモニタリングし、予測モデルの正しさを確認したり、想定外の悪影響を早期に検出できるようにする目的で設置します。パイロット施設の設置は法律(原子力法及び同令)での要求事項となっています。 | パイロット施設は、少量の廃棄物を処分することにより、処分後に生じる変化や挙動をモニタリングし、予測モデルの正しさを確認したり、想定外の悪影響を早期に検出できるようにする目的で設置します。パイロット施設の設置は法律(原子力法及び同令)での要求事項となっています。 | ||
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==== 処分場の建設予定地の地質構造 ==== | ==== 処分場の建設予定地の地質構造 ==== | ||
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===== 処分事業の実施計画 ===== | ===== 処分事業の実施計画 ===== | ||
- | <WRAP rss right 350px> | + | 2005年2月に施行された原子力法及び同令において、原子力発電事業者は「放射性廃棄物管理プログラム」を5年ごとに作成し、規制機関の承認を受けることが義務づけられています。このプログラムは、廃棄物の種類や量、処分場建設の実施計画等を記述するものです。放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、放射性廃棄物管理プログラムを2008年10月に連邦政府に提出、2013年8月には連邦評議会が承認しました。 |
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+ | 連邦評議会はこの際に、同プログラムに沿って実施される研究開発計画、及び放射性廃棄物管理費用の見積りに関する報告書の提出に合わせ、次回の更新版のプログラムの提出を2016年にするようNAGRAに要求したことを受けて、NAGRAは2016年12月に放射性廃棄物管理プログラムの更新版を提出しました。 | ||
- | 2005年2月に施行された原子力法及び同令において、原子力発電事業者は「放射性廃棄物管理プログラム」を5年ごとに作成し、規制機関の承認を受けることが義務づけられています。このプログラムは、廃棄物の種類や量、処分場建設の実施計画等を記述するものです。放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、放射性廃棄物管理プログラムを2008年10月に連邦政府に提出、2013年8月には連邦評議会が承認しました。この計画によると、現在進行中のプロジェクト確定手続きが予定通り2019年頃に完了(この時点で処分場の建設地が決定)した場合、地下特性調査施設の建設及び調査を行い、処分場の建設を2045年に開始、2050年頃に操業を開始する予定です。 | + | 2016年の廃棄物管理プログラムでは、処分場のサイト選定手続きが2031年に終了すると見込んでいます。地下特性調査施設の建設及び調査の実施後、処分場の建設を開始し、2060年頃に操業が開始される予定です。 |
- | 連邦評議会が2013年8月にNAGRAの「放射性廃棄物管理プログラム」を承認した際には、同プログラムに沿って実施される研究開発計画、及び放射性廃棄物管理費用の見積りに関する報告書の提出に合わせ、次回の更新版のプログラムの提出を2016年にするようNAGRAに要求しています。研究開発計画については、「2.研究開発・技術開発」、また放射性廃棄物管理費用の見積りについては、「V.処分事業の資金確保」の「1.処分費用の見積り」において説明しています。 | + | [{{ : |
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====== 2.2 研究開発・技術開発 ====== | ====== 2.2 研究開発・技術開発 ====== | ||
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* 全ての放射性廃棄物の処分責任を有する**放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)**は、高レベル放射性廃棄物処分の国内における実現可能性及び安全性を実証することを目的として、国内外の研究機関、大学、コンサルタント会社等の外部機関との協力により、地下研究所における地質調査、安全評価等の研究を進めています。 | * 全ての放射性廃棄物の処分責任を有する**放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)**は、高レベル放射性廃棄物処分の国内における実現可能性及び安全性を実証することを目的として、国内外の研究機関、大学、コンサルタント会社等の外部機関との協力により、地下研究所における地質調査、安全評価等の研究を進めています。 | ||
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またこの他に、処分プロジェクトの計画の基盤となる放射性廃棄物の特性評価及びインベントリの作成なども行っています。 | またこの他に、処分プロジェクトの計画の基盤となる放射性廃棄物の特性評価及びインベントリの作成なども行っています。 | ||
NAGRAの研究は、スイスの国立研究機関であるパウル・シェラー研究所(PSI)との緊密な協力をはじめとして、大学、研究機関及び民間機関との協力により進められています。 | NAGRAの研究は、スイスの国立研究機関であるパウル・シェラー研究所(PSI)との緊密な協力をはじめとして、大学、研究機関及び民間機関との協力により進められています。 | ||
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- | なお、NAGRAによる、2カ所の地下研究所での研究を含めた、高レベル放射性廃棄物の管理・処分に関する研究開発費用は、1972年の設立以来の累計で、約5.4億スイスフラン(約590億円、1スイスフラン=109円で換算)となっています。 | ||
===== 研究計画 ===== | ===== 研究計画 ===== | ||
- | 原子力令(2005年制定)において5年毎の策定が義務づけられている「放射性廃棄物管理プログラム」について、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2008年に、第1回目のプログラムを公表しました。このプログラムの中で、処分事業の進捗の各段階で必要となる研究・開発事項などをまとめています。 | + | 原子力令(2005年制定)において5年毎の策定が義務づけられている「放射性廃棄物管理プログラム」について、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2016年に、第2回目のプログラムを公表しました。このプログラムの中で、処分事業の進捗の各段階で必要となる研究・開発事項などをまとめています。 |
- | 原子力令の制定以前にも、NAGRAは、高レベル放射性廃棄物の処分研究に関する計画書を作成していました。1995年にNAGRAは、地質調査計画及びその実施スケジュール等も含めた「高レベル放射性廃棄物処分:目的、戦略及びタイムスケール」を公表しました。NAGRAのこれまでの研究成果は、2002年末に連邦評議会に提出された「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書に反映されています。またNAGRAは、2009年には放射性廃棄物の処分に関する研究、開発及び実証計画について取りまとめた報告書を作成しています。 | + | NAGRAは、2016年12月に『スイスにおける放射性廃棄物処分のための研究・開発・実証計画書』(Nagra Technical Report 16-02)を作成しています。この計画書は「処分の実現可能性実証プロジェクト」及び連邦政府のプロジェクトに対するレビューから明らかになった課題、さらに今後5~10年に行うべき作業計画をまとめています。また、計画書の改訂を「放射性廃棄物管理プログラム」の次回更新に合わせて、2021年に予定しています。 |
- | 研究・開発・実証計画については、「放射性廃棄物管理プログラム」の2016年の更新に合わせて、2016年の改訂が予定されています。 | + | |
+ | なお、原子力令の制定以前にも、NAGRAは、高レベル放射性廃棄物の処分研究に関する計画書を作成していました。1995年にNAGRAは、地質調査計画及びその実施スケジュール等も含めた「高レベル放射性廃棄物処分:目的、戦略及びタイムスケール」を公表しました。NAGRAのこれまでの研究成果は、2002年末に連邦評議会に提出された「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書に反映されています。 | ||
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===<グリムゼル試験サイト>=== | ===<グリムゼル試験サイト>=== | ||
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この研究所は、1984年に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)によって設置されました。同サイトでの調査活動には、ドイツ、フランス、日本、スペイン、スウェーデン、台湾、米国、欧州連合等の機関が参加しています。現在は長期的な実験が中心となっており、実スケールでの高レベル放射性廃棄物の定置概念の実証、及び人工バリアや周囲の岩盤における放射性核種の移行に関する実験など、処分場と同様の条件下での定置概念の現実的な実証に主眼が置かれています。 | この研究所は、1984年に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)によって設置されました。同サイトでの調査活動には、ドイツ、フランス、日本、スペイン、スウェーデン、台湾、米国、欧州連合等の機関が参加しています。現在は長期的な実験が中心となっており、実スケールでの高レベル放射性廃棄物の定置概念の実証、及び人工バリアや周囲の岩盤における放射性核種の移行に関する実験など、処分場と同様の条件下での定置概念の現実的な実証に主眼が置かれています。 | ||
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===<モン・テリ岩盤研究所>=== | ===<モン・テリ岩盤研究所>=== | ||
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- | この研究所は、1996年に各国関係機関による国際共同プロジェクトとして、スイス国立水文学・地質調査所が中心となる形で設置されました。NAGRAは、オパリナス粘土に関する理解を深めるためのデータを得るために、モン・テリ岩盤研究所で研究を行っています。NAGRAが参加している主な研究としては、オパリナス粘土での放射性核種やガスの拡散、微生物の活動、母岩への熱の影響を調べる研究などがあります。 | + | この研究所は、1996年に各国関係機関による国際共同プロジェクトとして、スイス国立水文学・地質調査所が中心となる形で設置されました。現在は、スイス国土地理院(Swisstopo)が管理しています。NAGRAは、オパリナス粘土に関する理解を深めるためのデータ取得を目的とした研究を実施しています。NAGRAが参加している主な研究としては、オパリナス粘土での放射性核種やガスの拡散、微生物の活動、母岩への熱の影響を調べる研究などがあります。 |
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*<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | ||
*<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | ||
- | *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</ | + | *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</ |
*<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | ||
- | *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</ | + | *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</ |
- | *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</ | + | *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み]]</ |
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hlw/ch/chap2.txt · 最終更新: 2018/11/14 14:13 by yamamoto.keita