hlw:ca:chap6
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hlw:ca:chap6 [2013/03/07 15:32] – 外部編集 127.0.0.1 | hlw:ca:chap6 [2016/03/22 17:31] – [地元協議・コミュニケーションを支える財政支援] sahara.satoshi | ||
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====== 6.1 地層処分の安全確保の取り組み ====== | ====== 6.1 地層処分の安全確保の取り組み ====== | ||
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* 地層処分の研究開発は1978年からカナダ原子力公社(AECL)の主導で開始されました。AECLは1994年に環境影響評価書(EIS)において、地層処分概念を連邦政府に提示しました。 | * 地層処分の研究開発は1978年からカナダ原子力公社(AECL)の主導で開始されました。AECLは1994年に環境影響評価書(EIS)において、地層処分概念を連邦政府に提示しました。 | ||
* 1998年に環境評価パネルによるレビュー結果と勧告が答申され、「技術的には可能だが、社会的受容性が不十分」との結論が示されました。その後、環境評価パネルの勧告に沿って、2002 年に「核燃料廃棄物法」が制定されました。 | * 1998年に環境評価パネルによるレビュー結果と勧告が答申され、「技術的には可能だが、社会的受容性が不十分」との結論が示されました。その後、環境評価パネルの勧告に沿って、2002 年に「核燃料廃棄物法」が制定されました。 | ||
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===== 安全性の確認と知見の蓄積 ===== | ===== 安全性の確認と知見の蓄積 ===== | ||
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カナダでは、2002年にカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立される以前は、核燃料廃棄物の地層処分研究はカナダ原子力公社(AECL)が実施していました。 | カナダでは、2002年にカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立される以前は、核燃料廃棄物の地層処分研究はカナダ原子力公社(AECL)が実施していました。 | ||
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===== 核燃料廃棄物以外の安全評価の実施 ===== | ===== 核燃料廃棄物以外の安全評価の実施 ===== | ||
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カナダの原子力発電事業者の一つであるオンタリオ・パワージェネレーション社(OPG 社)は、自社の原子力発電所から発生する低中レベル放射性廃棄物の地層処分場(DGR)をウェスタン廃棄物管理施設(ブルース原子力発電所に敷地内)に建設する計画です。OPG 社はDGRプロジェクトを2001年から進めてきました。DGR で核燃料廃棄物(使用済燃料)が処分されることはありません。 | カナダの原子力発電事業者の一つであるオンタリオ・パワージェネレーション社(OPG 社)は、自社の原子力発電所から発生する低中レベル放射性廃棄物の地層処分場(DGR)をウェスタン廃棄物管理施設(ブルース原子力発電所に敷地内)に建設する計画です。OPG 社はDGRプロジェクトを2001年から進めてきました。DGR で核燃料廃棄物(使用済燃料)が処分されることはありません。 | ||
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====== 6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション ====== | ====== 6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション ====== | ||
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* 実施主体のNWMO は、核燃料廃棄物の長期管理アプローチの検討にあたって、約3年の国民対話と研究を踏まえて長期管理アプローチ案に反映しました。また、NWMO はサイト選定プロセスの実施にあたっては、影響を受ける利害のある地域社会と協力してサイト選定プロセスを開発・実施することを公約としています。サイト選定プロセスの策定においてNWMO は、関心を表明した自治体の住民がプロジェクトについて学習できるようにするために、自治体が行う支援活動に対して資金提供を行っています。 | * 実施主体のNWMO は、核燃料廃棄物の長期管理アプローチの検討にあたって、約3年の国民対話と研究を踏まえて長期管理アプローチ案に反映しました。また、NWMO はサイト選定プロセスの実施にあたっては、影響を受ける利害のある地域社会と協力してサイト選定プロセスを開発・実施することを公約としています。サイト選定プロセスの策定においてNWMO は、関心を表明した自治体の住民がプロジェクトについて学習できるようにするために、自治体が行う支援活動に対して資金提供を行っています。 | ||
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NWMOがアプローチを提案する際には、その具体的内容や実施スケジュールに加えて“公衆の関与プログラム”を含めることが求められています。 | NWMOがアプローチを提案する際には、その具体的内容や実施スケジュールに加えて“公衆の関与プログラム”を含めることが求められています。 | ||
- | NWMO は、約3年の国民対話と研究を踏まえて2005 年に取りまとめた最終報告書『進むべき道の選択』において「適応性のある段階的管理」(APM)アプローチを提案しました。このなかでNWMO は、アプローチの実施過程の節目となる、重要な意思決定ポイントを複数設定するとともに、それらの時点で行われる関与プログラムの性格と範囲も明確にしています。 | + | NWMO は、約3年の国民対話と研究を踏まえて2005 年に取りまとめた最終報告書『進むべき道の選択』において「適応性のある段階的管理」(APM)アプローチを提案しました。このなかでNWMO は、アプローチの実施過程の節目となる、重要な意思決定ポイントを複数設定する(下図参照)とともに、それらの時点で行われる関与プログラムの性格と範囲も明確にしています。 |
実施の役目を持つNWMOは、段階的実施と適応を図る上で、専門家と一般市民の双方の参加が継続的かつ積極的、発展的であることが重要であり、それがNWMOの実施能力の向上につながると考えています。 | 実施の役目を持つNWMOは、段階的実施と適応を図る上で、専門家と一般市民の双方の参加が継続的かつ積極的、発展的であることが重要であり、それがNWMOの実施能力の向上につながると考えています。 | ||
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NWMOは、地層処分場のサイト選定プロセスを報告書『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(2010年5月)において公表しました。このなかでNWMOは、自治体とNWMO がプロジェクト受け入れに係る正式協定に調印する前までの複数の段階において、プロジェクトへの関心を評価することに市民を参加させ、広範囲の市民の関与が達成されるように働き掛けるとし、この目的で必要なリソース(人・資材・資金)を供給することを確約しています。 | NWMOは、地層処分場のサイト選定プロセスを報告書『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(2010年5月)において公表しました。このなかでNWMOは、自治体とNWMO がプロジェクト受け入れに係る正式協定に調印する前までの複数の段階において、プロジェクトへの関心を評価することに市民を参加させ、広範囲の市民の関与が達成されるように働き掛けるとし、この目的で必要なリソース(人・資材・資金)を供給することを確約しています。 | ||
- | 関心を表明した自治体の住民がプロジェクトについて学習できるようにするために、自治体が行う支援活動に対して、NWMOは資金提供を行っています。サイト選定プロセスへの関心を表明した自治体では、初期スクリーニングがおこなわれますが、その結果をレビューするために第三者の専門家を雇う費用や、地域の代表などが放射性廃棄物の貯蔵施設を見学するための旅費などをNWMO が負担しています。 | + | NWMOは、自治体が行う住民向けの学習支援活動に資金提供を行っています。これには、住民会合の開催費用のほか、サイト選定プロセスで行われる初期スクリーニングの結果をレビューするために自治体が第三者の専門家を雇う費用、放射性廃棄物の貯蔵施設を見学するための旅費などがあります。またNWMOは、第3段階第1フェーズの調査が完了した自治体に対して、地元福祉の向上に利用できる資金として、40万ドル(3, |
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====== 6.3 意識把握と情報提供 ====== | ====== 6.3 意識把握と情報提供 ====== | ||
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* 地層処分場のサイト選定を開始したカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、サイト選定プロセスへの参加に関心表明を行った自治体において、“ラーン・モア”(もっと学ぼう)プログラムと呼ばれる情報提供活動に取り組んでいます。 | * 地層処分場のサイト選定を開始したカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、サイト選定プロセスへの参加に関心表明を行った自治体において、“ラーン・モア”(もっと学ぼう)プログラムと呼ばれる情報提供活動に取り組んでいます。 | ||
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===== サイト選定プロセスにおける広報活動(情報提供) ===== | ===== サイト選定プロセスにおける広報活動(情報提供) ===== | ||
- | 2010年5月から開始されたサイト選定プロセス(165ページの表を参照)では、自治体がカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)に対して「知識を深めることの関心表明」を行うことで第2段階がスタートします。関心表明を行った自治体にでは“ラーン・モア”(もっと学ぼう)プログラムと呼ばれる情報提供活動が行われています。このプログラムは、サイト選定を行うNWMO が行っているものです。 | + | <WRAP rss right 320px> |
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+ | 2010年5月から開始された[[chap4# | ||
このプログラムの重点は、自治体住民に向けて「適応性のある段階的管理」(APM)の全体像や進め方のほか、地層処分場のサイト選定プロセスがどのように進むのかといった説明です。こうした情報提供や、住民との対話を図るために、オープンハウスでの展示会のほか、住民グループや先住民族コミュニティなどの求めに応じた会合が開催しています。 | このプログラムの重点は、自治体住民に向けて「適応性のある段階的管理」(APM)の全体像や進め方のほか、地層処分場のサイト選定プロセスがどのように進むのかといった説明です。こうした情報提供や、住民との対話を図るために、オープンハウスでの展示会のほか、住民グループや先住民族コミュニティなどの求めに応じた会合が開催しています。 | ||
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===== 国民意識と住民意識(主な世論調査結果) ===== | ===== 国民意識と住民意識(主な世論調査結果) ===== | ||
- | NWMOは、社会調査プログラムの一環としてこれまでに2回(2005年8月と2008年11月)の全国的な世論調査を実施(外部の専門会社に委託)しています。2002年設立のNWMO の最初の仕事は、使用済燃料の長期管理に向けて、国民と協力して「社会に受け入れられ、技術的に優れ、環境責任を果たし、経済的に無理のない」管理アプローチを開発することでした。 | + | <WRAP rss right 320px> |
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+ | NWMOは、社会調査プログラムの一環としてこれまでに2回(2005年8月と2008年11月)の全国的な世論調査を実施(外部の専門会社に委託)しています。2002年設立のNWMOの最初の仕事は、使用済燃料の長期管理に向けて、国民と協力して「社会に受け入れられ、技術的に優れ、環境責任を果たし、経済的に無理のない」管理アプローチを開発することでした。 | ||
2007年6月にカナダの方針として“適応性のある段階的管理”(APM)が決定しました。世論調査は、管理アプローチの提案や適応性のあるようにアプローチを実施する上で、社会の懸念や関心を理解するためのツールとなっています。 | 2007年6月にカナダの方針として“適応性のある段階的管理”(APM)が決定しました。世論調査は、管理アプローチの提案や適応性のあるようにアプローチを実施する上で、社会の懸念や関心を理解するためのツールとなっています。 | ||
hlw/ca/chap6.txt · 最終更新: 2017/05/23 19:36 by 127.0.0.1