(公財)原子力環境整備促進・資金管理センター

諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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Posiva Safety Case 2009 Interim (フィンランド)

安全評価の方法論について

(セーフティケース中間概要報告書2009:2010年)



q02.gif安全評価はどのように行っているのですか…

安全評価の進め方

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ポシヴァ社の『セーフティケース中間概要報告書2009』は、セーフティケース全体(主要結果を含む)を記述する「概要報告書」の構成案を例示したものである。中間概要報告書の構成は、セーフティケース・ポートフォリオの構成に準じており、右図のようになっている。

  1. オルキルオトサイトに建設される、KBS-3処分概念による使用済燃料処分場の安全概念に基づき、処分システムの特性を記述する。
  2. 科学技術的情報の理解、モデル、データに関する評価の基礎を確立した後にシナリオを作成する。
  3. シナリオの安全解析を実施し、その結果がフィンランドの規制指針の遵守の可否について検討する。
  4. 安全評価の結果に基づき、オルキルオト処分場の安全性に関する信頼性の主な根拠、論拠、解析に関する要約を示し、また、今後の予備的安全解析報告書の提出前までに取り扱うべき安全性に関する問題、及び不確実性を特定し、かつ管理するための戦略と主な問題を記述する。


FEPの取り扱い

『セーフティケース中間概要報告書2009』の取りまとめ時点では、ポシヴァ社は同社独自のFEPデータベースを作成していない。ポシヴァ社は中間概要報告書2009において、「FEPデータベース報告書」(2010年取りまとめ予定)において、事象及びプロセスに加えてシステム特性を記述する方針としている。FEPがすべて含まれていること(網羅性・完全性)は、「FEPデータベース報告書」でチェックする予定としている。

ポシヴァ社は「FEPデータベース報告書」を、セーフティケース・ポートフォリオの「プロセス報告書」(2011年前半に発行予定)を支援する文書と位置づけている。

中間概要報告書では、FEPを「安全機能に寄与する主要バリアの鍵となる特性」と「潜在的に有害なFEP」に分けて文書化している。人間侵入についてポシヴァ社は、意図的なもの、偶発的なもののいずれによっても、処分場の安全機能が損なわれる可能性があるとしているが、偶発的な人間侵入だけをセーフティケースの対象とする見解である。

安全機能に寄与する主要バリアの鍵となる特性

  • キャニスタの機械的強度、耐腐食性
  • 緩衝材の低透水性、化学的緩衝性
  • オルキルオト基盤岩の亀裂密度の低さ、還元性地下水

処分場の内部で発生する「潜在的な有害なFEP」

  • キャニスタにおける貫通欠陥及び非貫通欠陥と、早期放出につながる可能性のあるその他の欠陥が存在する可能性
  • 銅の腐食や放射性核種移行などの影響を生じさせる可能性のある緩衝材物質の欠落、喪失または再分配につながるプロセス
  • 同様に銅の腐食や放射性核種の移行などの影響を生じさせる可能性のある緩衝材/岩石境界面の擾乱につながるプロセス
  • キャニスタ内部での気体発生
  • 臨界(中間概要報告書の段階ではシナリオ解析は実施していない)

処分場の外部事象に起因して発生する擾乱プロセス

  • 緩衝材の凍結
  • 地殻均衡荷重に起因するキャニスタの破損
  • 処分場深度への酸素の移行
  • 氷河融氷水にさらされることで生じる緩衝材の喪失
  • 岩石剪断に伴って生じるキャニスタの破損
  • 偶発的な人間侵入によって生じるもの


シナリオ

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図7 ポシヴァ社による安全評価シナリオの分類

処分システムの変遷は、当該システム内部と外部のFEP(特に、気候面での事象とプロセス)の影響を受けるものであり、その全てが不確実性を伴う。こうした不確実性と関連して、処分システムに将来起こりうる変遷を記述するシナリオを作成する。

規制要件からのシナリオ区分

『セーフティケース中間概要報告書2009』の取りまとめ時点では、規制当局である放射線・原子力安全センター(STUK)が、あらゆる放射性廃棄物の処分に適用する詳細安全規則(以下では「新規則案」という)の策定検討を進めている。ポシヴァ社は『セーフティケース中間概要報告書2009』において、新規則案への対応を図る上で必要となるシナリオを以下の3つに整理している(図7)。

  1. 気候シナリオ(Climatic senarios): 新規則案では、処分システムのバリアに対して性能目標(期待性能)を設定する際に、気候影響の変動を考慮することが求められている。処分場の長期的変遷が気候変動に関連するFEPに強く影響を受けることから、「〔設計〕ベースシナリオ」と「擾乱シナリオ」の上位に気候シナリオを位置付けている。以下の2つのシナリオを検討している。
    • ウルム氷期繰り返しシナリオ(Weichselian Repetition scenario)
    • 地球温暖化シナリオ(Moderate Anthropogenic Emissions scenario)

  2. 〔設計〕ベースシナリオ(The base scenario): 新規則案では、処分システムのバリアが設計上の期待性能を発揮する場合のシナリオを意味する。ポシヴァ社は、設計検討を進めている処分概念に当てはめて考えると、処分場の変遷のうち「キャニスタからの核種放出が生じない道筋のすべてを指すシナリオ」が相当することになる、としている。これは、使用済燃料を封入したキャニスタの設計上の耐久性能を10万年間と想定しているためである。
    〔※ “The base scenario” の訳語について、通常使用する(安全評価を行う上での)「基本シナリオ」や「レファレンス・シナリオ」と意味合いがやや異なるため、「ベースシナリオ」(カタカナ表記)を用いている。頭に「設計」を補って Design-baseと考えるとわかりやすいかもしれない。〕
  3. 擾乱シナリオ(Disturbance scenarios): 新規則案では「長期安全性を損なう発生確率の低い事象」(unlikely event impairing long-term safety)を解析するために作成するシナリオを意味する。ポシヴァ社は、設計検討を進めている処分概念に当てはめて考えると、「キャニスタから核種が放出し、最終的に生物圏に到達した核種による人間やその他の生物相の放射線被ばくの可能性につながるすべての道筋を含むシナリオ」としている。


ポシヴァ社による評価シナリオの分類

上記のシナリオ分類の整理に基づいてポシヴァ社は、核種移行解析や被ばく線量の評価に用いるシナリオは(新規則案で言われる)擾乱シナリオに分類されるものだけであるとしている。このため、安全評価に用いるシナリオを「評価シナリオ」(Assessment scenarios)と総称し、シナリオを用いて何を評価するかの観点から、以下の3つのシナリオに分類している。

  1. 処分場評価シナリオ … 処分場が備える防護能力を評価するために用いるシナリオ。処分場からの地圏への核種の「放出比」を算出する。
  2. 線量評価シナリオ … 生物圏に放出された核種による放射線学的影響を評価するために用いるシナリオ。「線量」を算出する。
  3. 人間侵入シナリオ … 処分場への人間侵入の影響を評価するためのシナリオ。(中間概要報告書では、定量的な評価結果を示していない)


① 処分場評価シナリオ : Repository assessment scenarios

処分場評価シナリオは、処分場内部と外部で発生する潜在的に有害なFEPに伴う不確実性の結果として、放射性核種の放出に至る処分場の変遷として想定可能な初期状態とその後のプロセスを取り扱うものとして開発する。これらのシナリオは一般に発生確率の低いものであるが、一部には発生確率がまだ明確になっていないものもある。

処分場評価シナリオには、以下の表に示すシナリオが含まれる。

処分場評価シナリオ
欠陥キャニスタシナリオDefective canister scenarios)
DCS-I:貫通欠陥が処分後10000年に発生する(設計寿命の1/10に相当する)
DCS-II:貫通欠陥が処分時点(t = 0)で存在する
補足的なシナリオAdditional scenarios)
AD-I:地震/岩石剪断:定置孔を横切る亀裂に突然変位で生じた結果として、キャニスタが破損する
AD-II:緩衝材に影響を及ぼす破壊的事象-(緩衝材の定置ミス、低濃度の氷河融氷水の浸入など)の結果として、キャニスタが破損する
AD-III:気体によって、キャニスタ及び定置孔から、瞬時放出割合が成立する形で核種を含む汚染水や揮発形態の核種(C-14)が排出する。


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図15 欠陥キャニスタシナリオDCS-IIの計算ケースツリー構造

処分場評価シナリオの解析では、DCS-IIシナリオに基づいて体系的に生成した計算ケースの1つ「Sh1」を基本処分場計算ケース(base repository calculation case)と位置付けている。

Sh1計算ケースは、〔シナリオのパラメータとして〕処分場閉鎖直後(t=0)にキャニスタに1mmの貫通孔が存在していること、また、イオン強度が低い低濃度/汽水組成の地下水条件と、地下水流動が初期状態の条件(移行抵抗WL/Q=50000 yr/m)を設定したものである。


② 線量評価シナリオ : Dose assessment scenarios

線量評価シナリオは、地表環境における放射性核種の最終的な帰結(fate of radionuclides)、つまりは地表環境に到達した放射性核種が最終的にどのような放射線学的影響を及ぼすかについて記述するものである。線量評価シナリオには、基本シナリオにとっての構成要素でもある地表環境の変遷、及び(規制要件で求められている少なくとも数千年間の)線量評価の期間において、地表環境にどのように人間及びその他の生物相が居住/生息し、また当該環境をどのように利用するのかに関する変遷の道筋が含まれる。

線量評価シナリオの主要な観点(作成要因)として「気候変動」と「土地利用」の2つをあげ、これらの要因を組み合わせて線量評価シナリオを作成している。

下表に、線量評価シナリオ作成のために検討される潜在的な将来の気候状態と広範な土地利用の種類を示す。中間概要報告書の段階では、「CL1:現在の気候」と「LU1:現在の土地利用」の組み合わせ(CL1-LU1)からなる線量評価基本シナリオ(dose assessment base scenario)だけを扱っている。

シナリオ作成要因 記述及びバリアントへの分割
気候 CL1:「現在の気候」
- 線量評価時間窓において不変の気候条件
- 後氷期の土地隆起に起因する海水位の変化
- 現状のままの動植物
Cl2「より暖かい気候」
- 線量評価時間窓において上昇する温度
- 後氷期の土地隆起に起因する海水位の変化と、より温暖な気候における地球規模の海水位の変化
- 動植物の変化
土地利用 LU1:「現在の土地利用」
- 想定された現時点での土地利用の特性(耕作、林業及び人口統計面での特性)
- 線量評価時間窓において不変の土地利用
LU2:「都市化」
- サイトが、線量評価時間窓の範囲内で都市部へと変化
LU3:「荒野」
- 線量評価の時間窓の枠内で、当該サイトを人々が放棄し、その自然の状態に放置する(人が定住しておらず、耕作もしない)


地圏から生物圏への放射性核種の移行量(フラックス)は、処分場評価シナリオに基づいた計算ケースの算出結果をインプットとして用いる。

線量評価シナリオは生物圏計算ケースで解析する。中間概要報告書では、生物圏計算ケースを3種類に分類している。

  1. 現実的な生物圏計算ケース (Realistic biosphere calculation cases) : 評価で用いるパラメータ値や仮定を、潜在的な放射線学的影響が「慎重な」(cautious)結果となるように、かつ蓋然性が高く過度に悲観的とならないように設定する計算ケースである。
  2. 感度解析用の生物圏計算ケース (Sensitivity biosphere calculation cases)
  3. 「What-if」生物圏計算ケース (“What if” biosphere calculation cases)


③ 人間侵入シナリオ : Human intrusion scenarios

処分場サイトにおける人間侵入シナリオは、人間社会と科学技術水準の状況の移り変わりに伴う不確実性の影響を考慮する必要があるが、このような不確実性は保守的な線量解析では全面的に評価することができないため、「様式化された仮定」に基づきシナリオの確率と影響を見積もる必要がある。

中間概要報告書の中では、人間侵入シナリオの定量的な評価はしていない。このシナリオの評価は、ポシヴァ社は2012年までに生物圏評価の一部として実施する予定としている。


モデル

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Figure 4-3 図8 モデル及び情報の流れ

評価シナリオにおいて、処分システムから放出された核種の最終的な帰結は、定量的なモデルを使用して分析する。

セーフティケースにおける全体的なモデル化プロセスを図8に示す。

燃料からの核種放出、それに続く、人工バリア(緩衝材等)及び天然バリア(地圏)における核種移行をモデル化し、シナリオ解析において、処分システムから生物圏への核種フラックスの見積もりに使用する。規制要件が要求する少なくとも数千年間の期間については、被ばく線量の見積もりのために、燃料からの核種放出から天然バリアにおける核種移行モデルに加えて生物圏における核種移行モデルを使用する。

これらのモデル化においては、オルキルオトサイトの基盤岩の記述、処分システムの記述といったインプット情報を与えることにより支援する。また、「地下水流動モデル」や生物圏評価のために必要な「ランドスケープモデル」といった支援モデルは、核種移行解析において主要な核種放出及び核種移行モデルにとって鍵となる入力情報を与える。

支援モデルの概要を以下に記す。

  • 地下水流動モデル(EPMモデルやDFNモデル)は、人工バリア/地圏境界における地下水流動と、地圏における地下水流動パラメータ(移行抵抗)を核種移行解析のインプット情報を与えるために使用する。また、これらのモデルは「地表及び地中の水文学的モデル」のモデル化に利用する。
  • 地表及び地中の水文学的モデルは、将来の地表環境における放射性核種の放出場所の単純化されたパターンを予測するために利用する。
  • 地形及び生態系の展開モデルは、生物圏評価を行うために必要な将来の地表環境における地形と生態系の特定を行うために用い、その結果は「地表及び地中の水文学的モデル」と「ランドスケープモデル」において利用する。
  • ランドスケープモデルは、人間その他の生物相への被ばく線量の影響を分析するための、生物圏オブジェクトと核種放出パターンの組み合わせによる時間依存性のある放射性核種移行モデルである


使用済燃料からの放射性核種放出のモデル

キャニスタの破損、水との接触に伴い、以下の放射性核種の放出現象をモデル化している。

  • 瞬時放出割合(instant release fractions:IRF)
  • 長期間にわたるゆっくりとした燃料劣化に伴う調和放出
  • 溶解度

瞬時放出割合は、燃料の粒界に存在する放射性核種インベントリが迅速に溶液に放出するようにモデル化している。データは、SR-Canデータ報告書に記載されている保守的な値を採用している。

元素 C Cl Se Sr Tc Pd Sn I Cs
IRF(%) 10 10 0.1 1 1 1 0.01 5 5

長期間にわたるゆっくりとした燃料劣化に伴う調和放出は、一定の燃料劣化速度に伴い、一定の核種放出が起こることによりモデル化されている。文献に基づき、燃料劣化速度のデータは10-7(yr-1)が採用され、例外的なケースでは、10-6(yr-1)を用いている。

溶解度は、様々な地下水の種類(低濃度水/汽水、塩水、融氷水)について評価した文献値(Grivéほか、2007年)を採用している。

その他、ジルカロイの腐食、及び燃料集合体の他の金属腐食に伴う核種放出プロセスをモデル化している。


ニアフィールドにおける核種移行モデル

ニアフィールドにおいて、緩衝材がその性能目標通りの性能を示した場合、緩衝材で生じる主な放射性核種移行プロセスは、拡散である。緩衝材中では、緩衝材の微孔製構造がコロイドとして存在する放射性核種の移行を阻止するとしている。

拡散は、液相の拡散と固相の吸着を考慮した次式の拡散方程式によりモデル化している。

式1 ニアフィールドの拡散移行モデル式

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図9 KBS-3V処分場に関する概念的なニアフィールド移行モデル

KBS-3V概念における緩衝材から地圏への放射性核種の移行モデルでは、以下の3つの代替経路を考慮している(図9)。

  • 緩衝材から、処分孔と交差している母岩亀裂に直接つながる経路(QF
  • 緩衝材から、処分孔上部の埋め戻し材に、さらには処分坑道のEDZにつながる経路(QDZ
  • 緩衝材から、処分坑道の埋め戻し材に、さらには処分坑道のEDZにつながる経路(QTDZ

上記の3つの代替経路には、地下水流動モデル(EPMモデル)の結果から実効流量(それぞれQF、QDZ、QTDZ)を与える。実効流量QF、QDZ、QTDZは、それぞれの代替経路においてニアフィールドから地圏への核種移行速度を制御する。


地圏における核種移行モデル

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図10 概念的な地圏移行モデル

地圏における放射性核種の移行では、透水量係数の大きい亀裂に沿った移流・分散による移行と亀裂面から岩石の隙間や岩石マトリクスの間隙へのマトリクス拡散、および亀裂内の液相から亀裂面や岩盤マトリクスへの平衡線形吸着をモデル化している(図10)。マトリクス拡散は、亀裂性媒体中の核種移行においては、吸着現象とともに主要な遅延メカニズムの1つである。

ここで、地圏における連結した亀裂や断層が形成する1本の移行経路(チャンネリング)内での核種移行に着目する。移行経路の開始点において、時刻t=0に液相中の一定の液相濃度C0が与えられる場合、(例えば亀裂開口幅の不均質性などの要因による)移流による遅れを無視できると仮定すると、移行経路内の距離Lでの液相濃度Cfは次式のとおりとなる。

式2 地圏における移行モデル式


生物圏における放射性核種移行のモデル

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Figure 5-3 of BSA-2009(マップレイアウトはAri Ikonen(ポシヴァ社)による)

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Figure 5-4 of BSA-2009(マップレイアウトはAri Ikonen(ポシヴァ社)による)

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Figure 7-3 of BSA-2009注)生物圏オブジェクトの色分けの凡例はBSA-2009 Fig.7-2を基に追記した。(マップはJani Helin(ポシヴァ社)及びThomas Hjerpe(S&R社)による)

生物圏における放射性核種移行は、ランドスケープ・モデルを用いて解析している。

地圏から放射性核種を受け取る可能性のある生態系を地形・生態系進展モデル(TESM)や地下水流動モデル、地表・浅地中の水文学的モデル化から導き出された放射性核種の放出パターンに基づき特定する。生物圏における放射性核種の移行は「生物圏オブジェクト」と呼ばれる不連続ユニットのネットワークとしてモデル化し、これをランドスケープ・モデルという。

生物圏オブジェクトは、森林・湿地・耕作地・湖・河川・海岸の6種類の生物圏オブジェクトを用い、地理的な場所に配置したそれぞれの生物圏オブジェクトについて、関連するパラメータ値の個別に設定することにより特徴づける。ポシヴァ社の「現実的な」生物圏計算ケースでは、166個の生物圏オブジェクトを用いて、処分場閉鎖後の約1万年間にあたる西暦2020年~12520年までの地表景観(ランドスケープ)の変遷をモデル化している。

  • 24個の森林サブオブジェクト、19個の湿地サブオブジェクト、15個の耕作地サブオブジェクト、11個の湖サブオブジェクト、29個の河川サブオブジェクト、そして68個の沿岸サブオブジェクト(合計166個のサブオブジェクトで構成)。



処分場から漏出した核種が生物圏で放出される地点(放出点)の分布は、地下水流動モデルで評価している。ポシヴァ社の生物圏評価 BSA-2009 では、処分場をパネルA~Cの3つに分け、各パネルから放出した核種が放出される場所(放出点)を評価している。


Figure 7-3では、キャプションで示すように処分場パネル(A~C)から漏洩した核種の放出地点を、その放出量の大きさに比例した円印(○記号)によって地図上に示している。Realistic release patternでは、仮想地点 Tankarienjärvi(同図では、中央から右上の湖となっている地点、現時点はバルト海底である)に、パネルA起源の核種の14%、パネルB起源の94%、パネルC起源の71%が放出されるとポシヴァ社は評価している。

posiva2010-03-table7-4top_ja.png
Figure 7-4 of BSA-2009縦軸は、Activity concentrations of C-14(単位は凡例を参照), Sh1ケース、パネルAからの漏出したC-14のみ

ランドスケープ・モデルを用いた解析例として、仮想地点 Mäntykarinjärvi(Figure 7-3の湖 Tankarienjärvi の西側のやや小さな湖のある地点の仮想地点名、現時点はバルト海底である)に設定された生物圏オブジェクト(7種類)における放射能濃度の評価例を右図に示す。この図は、BSA-2009(POSIVA 2009-03、2010年3月) 1) の Figure 7-4からとったものである。

  • 西暦2020~3020年の期間では、仮想地点 Mäntykarinjärvi はバルト海底に位置するとの予測に基づき、C-14の海洋水濃度(Bq/m3)と海岸沈降物中濃度(Bq/kg)を算出している。
  • 西暦3250年以降は、現在から続く後氷期の隆起の進行とともに陸地化し、湖が出現する。こうしたランドスケープを反映して、湿地アクロテルム、森林土壌、葦湿地、湖底堆積物のC-14濃度を算出している。


不確実性の取り扱い

ポシヴァ社は、不確実性を管理するために、「特定」、「回避」、「低減」及び「評価」の反復的なアプローチを採用している。不確実性の「特定」は記述であり、可能な場合には不確実性の定量化であり、さらには不確実性が安全性にとってどのような関連性を有する可能性があるかに関する検討でもある。そしてこれは、セーフティケースの開発に関連する全ての報告書の主要部分を表わしている。処分システムの開発は、「頑健性」の考え方に基づくものであり、実行可能な場合にはその挙動の理解及び予測が難しい概念及び構成要素を回避し、不確実性の影響を低減することを意味する。しかし、一部の不確実性はそれでも残るものであり、その評価が、これらの不確実性が安全性に関する最終結論にとってどのような関連性を有するのかという面から実施されなければならない、としている。

ポシヴァ社による処分システムの開発の基本は、主なシステム構成要素に性能目標を設定し、頑健なシステム設計のためのガイダンスを示すことである(例えば、緩衝材の安全機能が満たされる緩衝材密度の範囲)。安全評価では、性能目標の基礎となる様々な仮定に含まれる不確実性が、処分システムの経時的変化と共に変化するにつれて目標を満たしてゆく能力に及ぼす影響が検討される。中間概要報告書で記述した安全解析では、計算ケースの特定及び評価のために決定論的アプローチを用いており、不確実性がシステムの性能及び安全性に及ぼす影響を個別に解明することができる。これにより、セーフティケースを損なう可能性のある不確実性を特定した上で、研究、技術設計及び開発(RTD)によってそれを回避したり、低減したりすることができる。
将来の安全評価では、確率論的アプローチと決定論的アプローチを組み合わせることにより、いくつものパラメータ不確実性の組み合わせに関してさらに組織的な解析を実施することになっている。

セーフティケースの開発に関する事項や、科学的理解に関するより具体的な事項を含め、特定の安全関連事項に対処するための現行プランについては、『TKS-2009』(Posiva 2009)で取り扱っている。セーフティケースの概念化と方法論の開発において鍵となる事項には次に挙げるものが含まれる、としている。

  • 複数のキャニスタが破損する可能性を、どのように取り扱うべきか
  • 複数の破壊的事象またはプロセスの複合効果を、どのように取り扱うべきか
  • 確率論的な手法を利用するの可能性も含めて、関連する全ての不確実性が特定され、それらの影響が評価されていることを、どのようにして確認すべきか
  • モデル及びデータの選定における品質を、さらにより一般的にはセーフティケース作成の様々な段階における品質を、どのように保証すべきか




1)
Hjerpe et al.; Biosphere Assessment Report 2009. POSIVA 2010-03
srsr/psc2009i/methodology.txt · 最終更新: 2013/09/26 14:18 (外部編集)

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