諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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hlw:de:chap5 [2015/05/27 11:42] – [処分費用の確保制度] sahara.satoshihlw:de:chap5 [2018/05/02 16:50] (現在) sahara.satoshi
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-~~bc:5.処分事業の資金確保~~+~~ShortTitle:5.情報提供・コミュニケーション~~
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 ==HLW:DE:chap5== ==HLW:DE:chap5==
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
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 {{anchor:chap5}} {{anchor:chap5}}
-====== 5. 処分事業の資金確保 ======+====== 5. 情報提供・コミュニケーション ======
  
 {{anchor:d1}} {{anchor:d1}}
-====== 5.1 処分費用確保(制度) ======+====== 5.1 公衆と対話 ======
  
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 {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}} {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}}
-  * 高レベル放射性廃棄物の処分費用は、全額廃棄物発生者が負担することが原子力れています。処分費用積み立てるめの公的な基金制度は存在せず、廃棄物発生者である電力社等が引当金を確保ています。現段階で発生する費用いて処分場の設置・運営の責任を有する連邦政府して、原子力発電事業者が毎年支払い行っています。+  * 2013年7月に制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選法)では、新たに公衆や地元自治体等の参加を得ながら複数サイトから処分場建設地の候補絞り込んでいくプロセスが導入されました。 
 +  * また、サイト選定法に基づき設置された高レベル放射性廃棄物処分委員は、2016年7月に提出た最終報告書いて、連邦レベル、地域横断レベル、地域レベルのそれぞれおいて公衆参加のための委員会や合議体を設置して、公衆参加促進することを勧告しています。 
 </WRAP> </WRAP>
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
-===== 処分費用の負担者 =====+===== 「サイト選定法」に基づく選定プロセスにおける公衆参加 =====
  
-ドイツの原子力法に基づき、放射性廃棄物処分場の設置・運営は、連邦政府責任実施されます。連邦政府は、この処分場を利用して処分する放射性廃棄物の発生者から、経費徴収することが定められいます。また、廃棄物発生者は、連邦政府経費を負担る以外にも自らの廃棄物の処理貯蔵、処分場までの輸送など、放射性廃棄物管理全般に関わる費用を負担します。+「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)では、まず国民各層代表者33名構成される「**高レベル放射性廃棄物処分委員会**」が、安全要件やサイト選定基準、サイト選定手続き検討行っ(「[[chap4|IV. 処分地選定進め方と地域振興]]」参照)。こ委員会の会合はべてインターネットで中継され議事録や会議資料報告書も公開されています。
  
-\\ +選定手続きの開始後は、実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が提案する複数の候補地から、 
-===== 処分費用確保制度 =====+公衆参加プロセスを経て対象を絞り込むことになっています。 
 +また、サイト選定法において、これらの手続きの期間を通じて、 
 +インターネットなどのメディアを介して関連情報発信・意見聴取を行うことを規定しています。
  
-連邦放射線防護庁(BfS)が処分事業の実施のめに支出する費用は「前払金令」基づき原子力発電事業者どが決められた比率基づいて連邦政府に毎年納付する「前払金」で賄われます。これには、サイト選定法(法律)に基づくサイト選定探査や予備的安全評価、環境影響評価実施、連邦放射性廃棄物処分庁によるBfSの提案等のレビューや公衆参加手続きの実施などを含む)及び、サイト決定後処分場建設、操業、閉鎖に至るまでの一連の費用が該当します。+た、サイト選定関わる以下のよう重要な事項いては公衆や関係する州や地元自治体が見解を表明する機会を作らなけばならないとしています。 
 +  *地上からの探査対象サイト地域の選定 
 +  *地上からの探査計画の策定 
 +  *地下での探査対象サイト選定 
 +  *地下での探査計画策定 
 +  *候補サイトの最終比較
  
-なお、サイト選定法に基づく発熱性放射性廃棄物の処分場サイト選定に係る費用は、原子力発電事業者が負担することになっています。 
  
-<WRAP rss right 300px> +===== 公衆参加枠組み =====
-{{:hlw:de:provision-breakdown-de.png?250&nolink|2002年における廃棄物発生者引当金総額の構成}}\\ +
-<fc #080>2002年における廃棄物発生者の引当金総額の構成</fc>\\ +
-<fs 90%>放射性廃棄物管理のための引当金には、高レベル放射性廃棄物以外の管理のための費用です。</fs> +
-</WRAP>+
  
-では、放射性廃棄物管理費用の確保関す公的な基金制度はありません。このため、原子力発電事業者どは原子炉廃止措置のたの費用や放射性廃棄物の管理の発生す将来費用引当金として確保しています。+ト選定では、連邦レベルおけ国民意見反映のための組織として国民のさまざま層で構成される「**社会諮問委員会**」を設置することになっています。サイト選定法に基づき社会諮問委員会詳細を含め、公衆参加についも検討することとなっていた高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016 年7月に公表し最終報告書おいて、公衆参加の枠組みについて、連邦、地域横断、地域の3 つのレベル 
 +で、市民代表や各地域の住民などで構成され委員会や合議体設置するこを勧告しています(下表参照)。これらの委員会・合議体は、サイト選定プロセスの各段階において、公衆参加の結果を報告書とてとりまとめ、提出することとされています。
  
-2002年連邦環境・自然保護・原子炉安全省(現BMUB 旧称)が各廃棄物発生者の引当金を集計した結果によると、総額約350億ユーロ(約4.8兆円)です。こ金額のうち、約55%が放射性廃棄物管理に必要な金額(廃止措置以外の目的で引き当てている額)とされています。+[imagebox1b{{:hlw:de:サイト選定手続きおける公衆参加枠組み.png?640|公衆参加枠組み| 
 +}}]
  
  
-<WRAP clear></WRAP>+これらの委員会・合議体のうち、連邦レベルでの公衆参加組織である社会諮問委員会については、2016年11月に議会選出委員の6名、及び市民代表委員3名の合計9名が任命されました。市民代表委員については、全国5か所で市民フォーラムを開催し、サイト選定に関する課題、今後の選定手続きや社会諮問委員会の役割について学ぶ取り組みなどを行ったうえで選出されました。3名の市民代表委員には、16歳~ 27歳の若年層を代表する委員が1名含まれています。なお、サイト選定選定手続きの開始後、社会諮問委員会の委員は18名に拡大され、本格的に活動を行うことになっています。 
 + 
 + 
 +===== 候補地域・候補サイトにおける対話活動 ===== 
 + 
 +サイト選定法では、連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)が、サイト選定手続きを監督するとともに、 
 +サイト選定手続きの早い段階から全期間にわたり、プロジェクトの目的、手段及び実現状況、 
 +発生すると考えられる影響に関する情報を提供することとされています。 
 +この手続きは、インターネットなどの媒体を通じた対話志向のプロセスで実施すべきであることが規定さ 
 +れています。 
 +また、BfEは、公衆に包括的な情報提供を行うために、情報提供を行うインターネット・プラットフォーム 
 +を設置することとされています。このプラットフォームでは、 
 +BfEや実施主体であるBGEが作成したサイト選定手続きに関する重要文書を継続的に公表すること 
 +が規定されています。 
 +さらにサイト選定法では、サイト選定における提案が示された際の見解表明手続き後に、 
 +BfEが示された見解などに関する検討会議を地元において開催することが規定されています。 
 + 
 + 
 +<WRAP clear/>
  
 \\ \\
 {{anchor:d2}} {{anchor:d2}}
-====== 5.2 処分費用の見積もり ======+====== 5.2 意識把握と情報提供 ======
  
-2000年にゴアレーベンでの探査活動凍結される前に、同処分場を建設するまでに要する費用を連邦放射線防護庁(BfS)が試算し結果では、処分場の置費用は約23億6,300万ユーロ約3,140億円(1997年末での金額)でした。+<WRAP round box> 
 +{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイト}} 
 +  * ドイツは2013年4月にサイト選定法案閣議決定された後、同年5月31日から3日間わたり、法案について説明し議論する「市民フォーラム」がベルリンで開催されした。会場の議論加え、インターネット通じた意見聴取も実施されました。 
 +  * サイト選定の見直し前は、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)やBfSの委託を受けて実際の調査作業を行っていドイツ廃棄物処分建設・運転会社DBE社がゴアレーベンに関する広報活動を実施していました。 
 +</WRAP>
  
-また、ゴアレベンでの調査研究費(地下探査坑道の建設を含む)として、1977年~2010年末までの支出額の累計は約15億5,900万ユーロ(約2,070億円)となっています。+===== サイト選定法に関する市民フォラム =====
  
 +[30%{{ :hlw:de:市民フォーラムの模様.png|市民フォーラムの模様|
 +サイト選定法に関する市民フォーラムの様子\\
 +<fs 70%>source: BMU</fs>
 +}}]
  
 +ドイツでは2013年4月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)の法案が閣議決定された後、同年5月31日から6月2日の3日間にわたり、「サイト選定法に関する市民フォーラム」がベルリンで開催されました。
 +このフォーラムでは連邦議会に所属する各政党の議員や処分事業関連の専門家らが出席し、公衆参加などの社会的側面から資金・技術面などサイト選定法案で扱われている多くの側面について説明し、市民と議論を交わしました。
  
 +フォーラムの模様は全てインターネットで同時中継され、録画画像は動画投稿サイトを通じて公開されています。会場での議論に加え、インターネットを通じた市民からの意見聴取も実施されました。
  
  
 +<WRAP clear/>
  
 +===== ゴアレーベンにおける広報活動(情報提供) =====
  
 +[30%{{ :hlw:de:display-trailer.png|移動展示車両を用いた展示|
 +<fc #080>移動展示車両を用いた展示</fc>\\
 +<fs 70%>source: BfS</fs>
 +}}]
  
-<WRAP clear></WRAP>+ゴアレーベンでの探査が中止される以前は、処分の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が主に一般市民向け、BfSの委託を受けて実際の調査作業を行っていたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)が主にサイト周辺住民向けの広報活動を実施していました。 
 + 
 +プレスリリースや情報冊子、講演会の開催や見本市への出展に加え、ゴアレーベンには情報センターが設けられ、地下探査坑道の見学を組み込んだサイトツアーが実施されていました。2009年からは、移動展示車両で各地を巡回する情報提供活動も実施されました。 
 + 
 + 
 +<WRAP clear/>
  
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 ====== ====== ====== ======
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-<WRAP note> 
-<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1312.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成25年12月中において適用)を使用しています。</wrap> 
-  * <wrap lo>1ユーロ=133円として換算</wrap> 
-</WRAP> 
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 ---- ----
  
 -->全体構成^ -->全体構成^
-{{:wiki:images:ch_w16.png?nolink|ドイツ}}<select ドイツ…>+{{:wiki:images:de_w16.png?nolink|ドイツ}}<select ドイツ…>
 :hlw:se:chap5|スウェーデン(SE) :hlw:se:chap5|スウェーデン(SE)
 :hlw:fi:chap5|フィンランド(FI) :hlw:fi:chap5|フィンランド(FI)
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
hlw/de/chap5.1432694552.txt.gz · 最終更新: 2015/05/27 11:42 by sahara.satoshi