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スウェーデンにおける高レベル放射性廃棄物処分

スウェーデン

国別編(詳細情報):スウェーデン
スウェーデン 1.HLWの発生状況と処分方針 | 2.地層処分計画と技術開発 | 3.処分事業に係わる制度/実施体制 | 4.処分地選定の進め方と地域振興 | 5.処分事業の資金確保 | 6.安全確保の取り組み・コミュニケーション

現在の状況 (ポイント)


1. 高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針

ポイント

  • 高レベル放射性廃棄物として処分される使用済燃料は、国内一カ所に集めて中間貯蔵されています。2009年末における貯蔵量は約5,050トンです。全ての原子炉の運転が停止するまでに発生する使用済燃料の累積量は約11,600トンになる見込みです。スウェーデンでは、これらの使用済燃料を再処理することなく、キャニスタに封入して地層処分する方針です。

2. 地層処分計画と技術開発

  • スウェーデンでは、使用済燃料を地下約500mの結晶質岩中に直接処分する計画です。キャニスタ、緩衝材(ベントナイト)及び地層という多重のバリアシステムにより廃棄物を隔離するKBS-3概念という処分方法です。使用済燃料を封入するキャニスタは、外側が約50mmの厚さの銅製、内側が鋳鉄製の容器です。KBS-3概念に基づく処分場の建設予定地として、処分実施主体のSKB社は、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定し、2011年3月に処分場の立地・建設の許可申請を行いました。
  • 実施主体のSKB社は、国内外の大学、研究機関、専門家等との協力により処分技術の開発や安全に関する研究を進めています。実際の地層環境での地下研究を目的としたエスポ岩盤研究所では、国際共同研究も数多く行われています。

3. 処分事業に係わる制度/実施体制

  • スウェーデンにおける高レベル放射性廃棄物処分に関わる規制行政機関は、政府(環境省)及び環境省が所管する中央行政執行機関である「放射線安全機関」(SSM)です。政府(環境省)は処分事業全般に対する監督を行います。実施主体は原子力発電所を所有、運転する電力会社が共同出資して設立した「スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社」(SKB社)という民間会社です。また、原子力利用から発生する放射性廃棄物の問題について、独自の評価を行う政府の諮問組織として「原子力廃棄物評議会」があります。

4. 処分地選定の進め方と地域振興

  • スウェーデンにおけるサイト選定は、実施主体であるSKB社が提案した4種類の調査から構成されています。サイト選定の手続は法令に定められてはいませんが、3年ごとの研究開発計画(SKB社による呼称はRD&Dプログラム)のレビューを通じて、政府と規制機関による承認を得て進められています。SKB社は、次の段階へ進む際に地元自治体の了承を得ています。処分場の建設(詳細特性調査を含む)には、原子力活動法に基づく許可と環境法典に基づく許可が必要であり、申請書には環境影響評価書を添付することが義務づけられています。
  • SKB社は、2009年6月に処分場建設予定地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定しました。その後、2011年3月に処分場の立地・建設の許可申請を行いました。
  • スウェーデンでは、高レベル放射性廃棄物の処分事業に関連して、自治体が行う情報提供活動や協議に要する費用は、原子力廃棄物基金で賄われています。その協議を通じて、サイト調査が実施されたエストハンマルとオスカーシャムの2自治体、SKB社、原子力発電事業者4社の間で、地元開発に関する協力協定が2009年3月に合意されました。

5. 処分事業の資金確保

  • 高レベル放射性廃棄物の処分費用は、原子力発電所を所有、運転する電力会社が負担しています。この処分費用を賄うため、電力会社は毎年政府が決定する拠出金を原子力廃棄物基金に積み立てています。基金に積み立てられる費用には、高レベル放射性廃棄物の処分費用のほか、中間貯蔵、中低レベル放射性廃棄物処分、及び原子力発電所の廃止措置に必要な費用も含まれています。
  • 基金で確保する費用には、実施主体のSKB社が立地に向けた調査を行う自治体の場合に、自治体が行う情報提供活動のための費用も含まれています。

6. 安全確保の取り組み・コミュニケーション

  • 実施主体のスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、サイト選定の節目に合わせて、処分場の長期安全性の評価結果を「安全報告書(SR)」として取りまとめています。規制機関はそれらの安全報告書について、原子力廃棄物評議会といった評価機関や他の行政機関、サイト選定に関係する調査が実施されている自治体などから意見を集め、それらを踏まえたレビューを行っています。
  • スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、サイト選定の当初から、自治体の了承が得られない限り、調査を実施しない方針をとっています。処分事業の計画は、環境影響評価の協議には住民や自治体を含む関係者が幅広く参加し、許可申請に必要な環境影響評価書に盛り込まれる内容は、こうした協議で決定されていきます。自治体は、独自の立場で判断を行うことができるように、住民を含む形の体制整備や情報提供活動の費用を原子力廃棄物基金で賄うことができます。
  • 実施主体のスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、処分事業への理解を得るための活動として、一方的な情報提供活動ではなく、住民が情報を入手し、意見を表明できる場をさまざまな形で設け、双方向のコミュニケーションを図ってきました。SKB社が処分場建設予定地としてフォルスマルクを選定した後に、エストハンマル自治体の住民を対象に実施された処分場受け入れに関する意識調査では、81%の人が支持しているという結果が得られています。





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