hlw:ch:chap4
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
両方とも前のリビジョン前のリビジョン次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
hlw:ch:chap4 [2014/02/18 14:31] – 2014年版向けに更新 sahara.satoshi | hlw:ch:chap4 [2017/10/27 18:38] (現在) – 外部編集 127.0.0.1 | ||
---|---|---|---|
行 1: | 行 1: | ||
- | ~~bc: | + | ~~ShortTitle: |
<WRAP pagetitle> | <WRAP pagetitle> | ||
==HLW: | ==HLW: | ||
行 15: | 行 15: | ||
*<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | ||
*<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | ||
- | *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</ | + | *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</ |
*<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | ||
- | *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</ | + | *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</ |
- | *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</ | + | |
</ | </ | ||
行 37: | 行 36: | ||
* スイスにおける放射性廃棄物処分場のサイト選定は、連邦政府が策定した**特別計画「地層処分場」**で取り決めた3段階のプロセスで進められています。特別計画の手続きを進めていく中で、地層処分プロジェクトの具体的な姿を定めていき、最終的にプロジェクトの基本的事項を定める「概要承認」の内容を決定します。2011 年12 月から第2 段階が開始されており、6 つの地質学的候補エリアが特定されています。処分地は連邦評議会が概要承認の発給(許可)を受けて確定しますが、一定数の国民の発案があった場合には国民投票の対象となります。 | * スイスにおける放射性廃棄物処分場のサイト選定は、連邦政府が策定した**特別計画「地層処分場」**で取り決めた3段階のプロセスで進められています。特別計画の手続きを進めていく中で、地層処分プロジェクトの具体的な姿を定めていき、最終的にプロジェクトの基本的事項を定める「概要承認」の内容を決定します。2011 年12 月から第2 段階が開始されており、6 つの地質学的候補エリアが特定されています。処分地は連邦評議会が概要承認の発給(許可)を受けて確定しますが、一定数の国民の発案があった場合には国民投票の対象となります。 | ||
</ | </ | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
===== 処分地選定の進め方…プロジェクト確定手続き ===== | ===== 処分地選定の進め方…プロジェクト確定手続き ===== | ||
行 51: | 行 50: | ||
特別計画は「方針部分」と「実施部分」から構成されます。< | 特別計画は「方針部分」と「実施部分」から構成されます。< | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
<WRAP rss box right 300px> | <WRAP rss box right 300px> | ||
行 68: | 行 67: | ||
連邦評議会が発給する概要承認が有効となるには、連邦議会の承認が必要です。なお、議会の承認から100日以内に5万人の署名が集まれば国民投票にかけることができ、これは「任意の国民投票」と呼ばれます。その場合、可決には過半数の賛成が必要となっています。 | 連邦評議会が発給する概要承認が有効となるには、連邦議会の承認が必要です。なお、議会の承認から100日以内に5万人の署名が集まれば国民投票にかけることができ、これは「任意の国民投票」と呼ばれます。その場合、可決には過半数の賛成が必要となっています。 | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
\\ | \\ | ||
==== 特別計画で用いられる空間概念 ==== | ==== 特別計画で用いられる空間概念 ==== | ||
行 83: | 行 82: | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
\\ | \\ | ||
==== 特別計画『地層処分場』の策定 ==== | ==== 特別計画『地層処分場』の策定 ==== | ||
行 105: | 行 104: | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | 特別計画「地層処分場」では、高レベル放射性廃棄物用と低中レベル放射性廃棄物用の2つの処分場を建設すると規定していますが、同じ場所に高レベル及び低中レベルの放射性廃棄物用処分場を建設することも可能としています。 |
+ | |||
+ | <WRAP clear/> | ||
\\ | \\ | ||
行 111: | 行 112: | ||
<WRAP right 300px> | <WRAP right 300px> | ||
+ | <WRAP rss right 300px> | ||
+ | {{: | ||
+ | <fc # | ||
+ | </ | ||
+ | |||
<WRAP rss right 300px> | <WRAP rss right 300px> | ||
<fc # | <fc # | ||
行 145: | 行 151: | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
---- | ---- | ||
行 176: | 行 182: | ||
|ヴェレンベルグ | |ヴェレンベルグ | ||
</ | </ | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
<WRAP rss 320px> | <WRAP rss 320px> | ||
行 186: | 行 192: | ||
========================================================= */ | ========================================================= */ | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
行 194: | 行 200: | ||
\\ | \\ | ||
- | ===== サイト選定の第2段階の進捗状況と作業予定(2011~2016年) ===== | + | ===== サイト選定の第2段階の進捗状況と作業予定(2011~2017年) ===== |
<WRAP rss right 300px> | <WRAP rss right 300px> | ||
{{: | {{: | ||
行 200: | 行 206: | ||
</ | </ | ||
- | 2011年12月にサイト選定手続きの第2 段階が開始されました。2012年1月にNAGRAと連邦エネルギー庁(BFE)は「計画範囲」に含まれる20カ所の地上施設区域の案を公表しました。設置区域は、安全性及び技術面からの現実性、土地利用に関する適合性及び環境との適合性、地域との調和を考慮して提案されました。BFE の主導で設置され、自治体の代表や住民が参加する「地域会議」は地上施設の設置区域について独自の提案をすることができるとされています。 | + | 2011年12月にサイト選定手続きの第2段階が開始されました。2012年1月にNAGRAと連邦エネルギー庁(BFE)は「計画範囲」に含まれる20カ所の地上施設区域の案を公表しました。設置区域は、安全性及び技術面からの現実性、土地利用に関する適合性及び環境との適合性、地域との調和を考慮して提案されました。BFEの主導で設置され、自治体の代表や住民が参加する「地域会議」は地上施設の設置区域について独自の提案をしました。 |
- | NAGRAはこれらの提案の成果を踏まえ、2013年秋以降に各「計画範囲」ごとに、地上施設の設置区域を最低でも1カ所提示しており、2013年12月末時点で4つの計画範囲について絞り込みを行いました。 | + | NAGRAはこれらの提案の成果を踏まえ、14カ所を追加検討し、2013年秋から2014年5月末にかけて、地上施設の設置区域を6つの計画範囲について合計7カ所を提案しました。 |
BFE は2012年6月に地層処分場が立地する地域に与える経済影響に関する第1回目の中間報告書を公表しました。同報告書は、6カ所の地質学的候補エリアを包含する形で設定されている「サイト地域」を対象に①地元経済、②雇用、③観光業、④農業、⑤税収、⑥対価(交付金)について分析しています。いずれのサイト地域でも経済的にプラスまたはマイナスの影響のどちらも小さいと結論付けています。 | BFE は2012年6月に地層処分場が立地する地域に与える経済影響に関する第1回目の中間報告書を公表しました。同報告書は、6カ所の地質学的候補エリアを包含する形で設定されている「サイト地域」を対象に①地元経済、②雇用、③観光業、④農業、⑤税収、⑥対価(交付金)について分析しています。いずれのサイト地域でも経済的にプラスまたはマイナスの影響のどちらも小さいと結論付けています。 | ||
- | 今後、NAGRA が各「計画範囲」ごとに最低1カ所の地上施設の設置区域を提示した後、BFE が環境影響と社会影響に関する調査を実施し、2014年に社会・経済・環境影響に関する最終報告書を作成するとしています。 | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | その後2014年11月に、BFEは社会・経済・環境影響に関する最終報告書を公表しました。最終報告書では、NAGRAが2014年5月までに提案した7カ所の地上施設の設置区域を比較しており、その結果、環境影響と社会影響については、差異の大きい評価項目があると結論付けています。 |
+ | |||
+ | 2014年には、右上のフロー図中に示すとおり、NAGRA が予備的安全評価とサイトの比較作業を実施しました。 | ||
+ | NAGRAは科学的・技術的な基準に基づいて絞り込みを行い、2015年1月末に「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」の2つを提案しました。NAGRA はいずれについても不透水性の岩盤が適切な深度にあり、氷河等による侵食の影響を受けず長期に安定して存在しているため、放射性廃棄物を安全に閉じ込めることができるとしています。第2段階の完了は2018年半ばと見込まれています。 | ||
+ | |||
+ | 現在、連邦原子力安全検査局(ENSI )がNAGRAの提案を審査しています。 | ||
+ | 他方、NAGRAはサイト選定第3段階の実施に向けて、三次元弾性波探査を2015年10月から12月にかけてジュラ東部で実施、チューリッヒ北東部においては2016年2月に実施しました。 | ||
+ | ボーリング調査についてもNAGRAは準備を進めており、2016年9月に許可申請書を連邦エネルギー庁へ提出しました。 | ||
+ | |||
+ | |||
+ | <WRAP clear/> | ||
<WRAP rss right 300px> | <WRAP rss right 300px> | ||
行 213: | 行 228: | ||
</ | </ | ||
- | また2014年には、NAGRA が右図の予備的安全評価とサイトの比較作業を実施することとなっており、終了後NAGRAは最低2カ所の候補サイトを提案する予定です。第2段階は2016年の終了が見込まれています。 | ||
- | + | <WRAP clear/> | |
- | + | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | |
\\ | \\ | ||
- | ===== サイト選定の第3段階の作業予定(2016年~) ===== | + | ===== サイト選定の第3段階の作業予定(2018年~) ===== |
<WRAP rss right 300px> | <WRAP rss right 300px> | ||
{{: | {{: | ||
行 227: | 行 239: | ||
第3段階では、右図の流れでNAGRAが概要承認申請書をBFEに提出し、高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃棄物用処分場のサイトを提案します。低中レベル放射性廃棄物用処分場が高レベル放射性廃棄物用処分場と同じサイトで提案される可能性もあります。 | 第3段階では、右図の流れでNAGRAが概要承認申請書をBFEに提出し、高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃棄物用処分場のサイトを提案します。低中レベル放射性廃棄物用処分場が高レベル放射性廃棄物用処分場と同じサイトで提案される可能性もあります。 | ||
- | 「概要承認」の連邦議会による承認後は、地下特性調査施設の建設等の詳細な地球科学的調査が実施され、実施後は建設許可、操業許可の手続きが行われます。 | + | 「概要承認」の連邦議会による承認後は、地下特性調査施設の建設等の詳細な地球科学的調査が実施され、実施後は建設許可、操業許可の手続きが行われます。処分場の建設許可、操業許可の手続きは別途必要となっています。 |
- | \\ | + | <WRAP clear/> |
===== 環境影響評価 ===== | ===== 環境影響評価 ===== | ||
- | 環境影響評価については、特別計画及び環境影響評価に関する政令に基づき、予備調査、第1段、第2段の順序で実施されます。まずNAGRAはサイト選定第2段階で環境影響の予備調査を実施し、環境影響評価の第1 | + | 環境影響評価は、特別計画及び環境影響評価に関する政令に基づき、予備調査、第1ステージ、第2ステージの順序で進められます。まずNAGRAはサイト選定第2段階で環境影響の予備調査を実施し、環境影響評価の第1ステージの仕様書を作成します。サイト選定第3段階では概要承認を申請する際にNAGRAが環境影響評価第1ステージの報告書を提出し、第2ステージの仕様書を作成します。建設許可を申請する際には環境影響評価第2ステージの報告書を提出します。 |
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
\\ | \\ | ||
{{anchor: | {{anchor: | ||
行 247: | 行 260: | ||
* 地層処分場プロジェクトに関する確定手続きである特別計画において、その手続きが完了して地層処分場の建設地が確定した後に、地元への交付金について検討することを明記しています。 | * 地層処分場プロジェクトに関する確定手続きである特別計画において、その手続きが完了して地層処分場の建設地が確定した後に、地元への交付金について検討することを明記しています。 | ||
</ | </ | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
===== 制度の現状 ===== | ===== 制度の現状 ===== | ||
行 253: | 行 266: | ||
スイスでは、現時点では地域振興を目的とした法的な枠組みはありませんが、地層処分場プロジェクトに関する特別計画の確定手続きにおいて、サイト確定後に交付金について検討することを明文化しています。 | スイスでは、現時点では地域振興を目的とした法的な枠組みはありませんが、地層処分場プロジェクトに関する特別計画の確定手続きにおいて、サイト確定後に交付金について検討することを明文化しています。 | ||
- | 特別計画によると、「対価」と呼ばれる交付金について、法的根拠は定められていないものの、第3段階において概要承認が発給されてから、対価に関する検討が行われ、廃棄物発生者によって支払われることが規定されています。対価の配分と用途については、候補サイト区域や計画範囲に含まれる自治体等が検討し、州などに提案することになっています。 | + | 特別計画によると、交付金について、法的根拠は定められていないものの、第3段階において交付金に関する検討が行われ、概要承認が発給されてから、実施主体であるNAGRAを通じて廃棄物発生者が支払うことが規定されています。 |
+ | 交付金の配分と用途については、地質学的候補エリアや計画範囲に含まれる自治体等が検討し、州などに提案することになっています。 | ||
- | <WRAP clear></WRAP> | + | <WRAP clear/> |
\\ | \\ | ||
行 279: | 行 293: | ||
*<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</ | ||
*<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</ | ||
- | *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</ | + | *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</ |
*<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</ | ||
- | *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</ | + | *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</ |
- | *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</ | + | |
</ | </ | ||
hlw/ch/chap4.1392701462.txt.gz · 最終更新: 2014/02/18 14:31 by sahara.satoshi