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英国 英国における高レベル放射性廃棄物処分

英国における高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)

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1. 高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針

ポイント

  • 英国政府は、放射性廃棄物管理政策を検討する専門委員会のメンバーを公募し、その委員会による勧告を政府が受け入れる形で、高レベル放射性廃棄物を地層処分する方針を2006年に決めました。


原子力エネルギー政策の動向

英国には商業用原子炉として、26基のガス冷却炉(GCR、マグノックス炉)、14基の改良型ガス冷却炉(AGR)、1基の加圧水型軽水炉(PWR、1995年運転開始)が順次導入されました。初期に導入されたGCR は全て閉鎖済であり、運転中の14基のAGRも2023年以降、順次運転を終了する予定です。

英国政府は、温室効果ガスの排出量抑制やエネルギー安全保障の観点から、2030年代までに電力供給の脱炭素化を目指し、再生可能エネルギー、原子力、ガス、二酸化炭素の回収・貯蔵を用いた多様なエネルギーミックスの構築をサポートする考えです。民間による原子力発電への新規参入や投資を促すことを目的とした2013年エネルギー法が制定されました。2016年12月時点で、新規に13基の原子炉の導入計画があります。

2011年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故を受け、原子力施設の安全管理などを規制する原子力規制局(ONR)は、英国政府の指示により、この事故による英国の原子力安全に与える影響を調査しました。この調査結果による新規原子炉の計画を含めた、大きな政策の変更はありません。


使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)

英国の原子力発電で発生する使用済燃料の発生者は、GCRを所有する「原子力廃止措置機関」(NDA)と、AGR14基とPWR1基を所有する民間発電事業者の「EDFエナジー社」(フランス電力会社の英国子会社)です。これらの原子炉から発生する使用済燃料のうち再処理予定があるものは、再処理施設のあるセラフィールドに輸送(主に鉄道)されています。現時点では、EDF エナジー社から発生する使用済燃料の一部については、同社が最終的な管理方針を決定しておらず、発電所内で貯蔵しています。

なお、NDAは、かつての英国の原子力産業界、研究開発機関が持っていた原子力施設を所有し、運転・操業し、廃止措置及び放射性廃棄物の処理処分を行うために2005年に設立された政府外公共機関(NDPB)です。NDAは、個々の原子力サイトに存在する原子力施設を操業するサイト許可会社(SLC)と管理・操業契約を締結しますが、SLCの経営は国際競争入札で決定する親会社(PBO)が行います。

セラフィールドの再処理施設

セラフィールドの再処理施設
NDAのセラフィールドの再処理施設
source: NDA

THORPの使用済燃料貯蔵プール
酸化物燃料再処理プラント(THORP)内の
使用済燃料貯蔵プール

source: NDA

英国の北西部、セラフィールドに再処理施設があり、1950年代から、英国内で発生した使用済燃料の他、外国の使用済燃料も委託契約に基づいて再処理しています。再処理で製造されたガラス固化体は、再処理施設内で貯蔵されています。セラフィールドには、原子力廃止措置機関(NDA)が所有する2つの再処理施設―マグノックス再処理プラントと酸化物燃料再処理プラント(THORP)―があります。NDAは、サイト許可会社であるセラフィールド社と管理・操業契約を締結し、同社が商業ベースで操業しています。


処分方針

再処理で製造されたガラス固化体は、冷却のために少なくとも50年間貯蔵した後、地層処分する方針です。セラフィールドの再処理施設では、外国の使用済燃料を再処理しているほか、施設の操業計画によっては、再処理しない使用済燃料が残る可能性があります。それらの所有者が、使用済燃料を放射性廃棄物と位置付けた場合には、それを容器に封入して地層処分する可能性も考慮しています。


処分方針が決定するまでの経緯

[1] 英国
英国の正式名称は、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国です。イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの自治政府から構成されます。地層処分場では、高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物の両方を処分する計画です。ただし、高レベル放射性廃棄物の地層処分方針については、スコットランドが賛同していないため、高レベル放射性廃棄物に限って、スコットランドは実施体制の枠組みには含まれていません。

高レベル放射性廃棄物の管理政策の決定までの経緯
~「放射性廃棄物の安全管理」アクションプログラム~

2001年9月 環境・食糧・農村地域省(Defra)が英国内の放射性固体廃棄物管理のための政策開発に向けた提案をまとめ、意見募集。〔第1期〕
2003年 政策勧告を検討する「放射性廃棄物管理委員会」(CoRWM)の設置を決定。委員を公募・任命し、11月から検討作業を開始。〔第2期〕
2006年7月 CoRWM が放射性廃棄物管理オプションに関する勧告を政府に提出。
2006年10月 政府が勧告を受け入れ、高レベル放射性廃棄物等の地層処分実施を含む管理方針を決定。
2007年4月 原子力廃止措置機関(NDA)が、地層処分の実施主体となる。
2007年6月 Defraが実施体制や処分地選定プロセスなどを含む「地層処分の実施枠組み」案をまとめ、意見募集。〔第3期〕
2008年6月 Defraが白書『地層処分の実施枠組み』を公表。処分実施主体の役割を、中間貯蔵の責任を有していた原子力廃止措置機関(NDA)に割り当てるとともに、政府主導のサイト選定プロセスを開始。〔第4期〕

英国[1]において、高レベル放射性廃棄物を地層処分するという最終的な管理方針は、2001年から政府が実施している「放射性廃棄物の安全管理」と呼ばれる政府のアクションプログラムを通じて2006年に決定しました。政策開発・決定の方法として、公開討論を通じて政府に勧告してもらう方式を打ち出したことが特徴です。これは、廃棄物政策に対する公衆の信頼を得るためには不可欠だという認識によるものでした。公開討論の運営をどの組織が担当するかについても、広く意見を求めました。政府は、公開討論の運営・政策提案を担う組織として、委員長を含む13名を公募・選任し、2003年に放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)を設置しました。

CoRWMは公衆・利害関係者参画プログラム(PSE)を進め、管理方針が未定の放射性廃棄物の管理の在り方について、技術・コスト面だけでなく、社会・倫理面からも検討・協議を重ねました。2006年にCoRWMが提出した勧告を政府が受け入れ、高レベル放射性廃棄物等の地層処分を含む管理方針を決定しました。処分の実施主体は、高レベル放射性廃棄物等の中間貯蔵の責任を有していた原子力廃止措置機関(NDA)に割り当てました。

また、CoRWMは勧告において、地層処分場の立地選定における成功要因として、自治体の“主体的参加”“パートナーシップ”(互恵関係)を挙げています。これに基づいて、政府は引き続き「放射性廃棄物の安全管理」プログラムを継続しており、地層処分場のサイト選定を公募方式で進めているところです。

放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の政府への勧告書(2006年7月) 白書『地層処分の実施の枠組み』(2008年6月)
左:放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の政府への勧告書(2006年7月)
右:白書『地層処分の実施の枠組み』(2008年6月)





〔参考資料〕

英国の原子力発電利用状況

電源別発電電力量の変遷

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電力需給バランス

2015年 英国 単位: 億kWh (=0.01 x GWh)
総発電電力量 (Total Production) 3,390.95
- 輸入 (Imports) 227.16
- 輸出 (Exports) -17.78
国内供給電力量 (Domestic Supply) 3,600.33
国内電力消費量 (Final Consumption) 3,028.50

source: «Energy Statistics 2017, IEA» United Kingdom 2015:Electricity and Heat

原子力発電の利用・導入状況

  • 稼働中の原子炉数 15基, 888.3万kW(2018年1月)

source: World Nuclear Power Reactors & Uranium Requirements (WNA, 世界原子力協会)


原子力関連施設

英国の主要な原子力関連施設の立地点

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