諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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srsr:npj-entsorgungsnachweis:sysdesc

Opalinus Clay Project (スイス)

処分システムと安全要件

(“オパリナス・クレイ”プロジェクト:2002年12月)



どのような廃棄物を、どのような場所に、どのような方法で処分する場合の安全評価なのか…

処分システムの概要

対象廃棄物

(当該の安全評価で対象にしている廃棄物)



オパリナス・クレイプロジェクト安全評価では、国内にある5基の原子力発電所で発生する使用済燃料のほか、その一部の再処理委託(英国及びフランスに委託)から発生するガラス固化体、並びに再処理委託先から返還される低中レベル廃棄物(ハル・エンドピース、セメント固化体、ビチューメン固化体など)を地層処分する場合の安全評価である。

廃棄物の発生量は、スイスで稼動中の5基の発電所が60年間運転される場合をレファレンスケースとして評価している。使用済燃料は4,412tHM(UO2燃料3,072t+MOX燃料145tHM)発生すると見積もられている。このうちの約1,195tIHMが再処理(英国及びフランスに委託)されて約292tのガラス固化体が発生すると想定されている。残りの使用済燃料(約3,217tHM)は再処理せずに直接処分するという仮定である。

使用済燃料の処分パッケージは、PWR 燃料集合体4体もしくはBWR 燃料集合体9体を収納できる鋼製キャニスタ(最短設計寿命1,000年)である(図3(a)参照)。なお、NAGRAは代替概念として耐腐食性に優れる銅製インサートを備えた銅製キャニスタ(設計寿命10万年)の使用も検討しているが、それを利用した場合の安全評価は行っていない。

ガラス固化体は、鋼製キャニスタ(最短設計寿命1,000年)に収納して処分すると想定している(図 3(b)参照)。

※再処理委託で発生する以外の低中レベル放射性廃棄物については、それらの処分実現可能性が1985年の「保証プロジェクト」で既に実証されているため、オパリナス・クレイプロジェクト安全評価の対象となっていない。


表1 評価対象廃棄物の量(レファレンスケース)

       使用済燃料
キャニスタ
ガラス固化体
キャニスタ
再処理ILW
ドラム缶
廃棄体数 2,065体 730体 1,680体



処分場の地質環境・立地条件(評価上の設定)


Figure 2.3 (NTB02-02)

「オパリナス・クレイプロジェクト 安全報告書」は、処分場の母岩として、スイス北部のチュルヒャー・ヴァインラントの堆積岩(オパリナス粘土)を想定している。同報告書では、オパリナス粘土の特性として次の点が示されている。

  • 均質性:数kmの規模にわたって地質環境が均質的で、構造、水理及び地球科学的特性の予測可能性が高い。
  • 安定性:サイトとなる適性を有する地域が数百万年にわたって構造的に安定しており、隆起や侵食速度が小さい。
  • 可塑性と自己シール能力:オパリナス粘土は不連続面に対する自己シール性を備えており、不連続が水理特性に重大な影響を与えない。
  • 移流が無視可能:オパリナス粘土は透水性が低く、溶質は主として移流ではなく拡散により移行する。
  • 有意な天然資源が賦存していない
  • 地球化学的安定性と保持能力:オパリナス粘土とその周辺累層中の地球化学環境は数百万年にわたって安定であり、気候変動(第四紀の氷河作用を含む)による摂動は観測されていない。さらに、オパリナス粘土は還元性であり、人工バリアの維持や核種の低溶解性/強収着性にとって好ましい。
  • 工学的実現可能性:オパリナス粘土は良好な工学的特性を有する硬性粘土岩(粘土頁岩)であり、地下数百mに、既存の技術で、ライニングされていない小規模の坑道や、ライニングされた大規模の坑道を掘削することができる



Figure 4.2-10 (NTB02-05)

チュルヒャー・ヴァインラントにおける地下水の流動経路は、サイト情報や広域地下水流動解析の結果から以下の3つの経路が想定されている。このうち、a)のオパリナス・クレイ層上下の堆積層中の小規模な帯水層が最も考えられるケースに挙げられている。

  • a) オパリナス・クレイ層上下の堆積層中の小規模な帯水層(右図のa))
  • b) Muschelkalk帯水層及びMalm帯水層(右図のb))
  • c) オパリナス・クレイ層上下の堆積層を横切る広域の割れ目帯(右図のc))

オパリナス・クレイは透水係数が小さな粘土岩であるため、静水圧から50m~300m被圧しており、処分場の設置位置から上下方向の動水勾配の大きさが不確実性の一つに挙げられている。


処分概念(処分場の設計)


Figure 4.4-1


Figure 4.5-7

処分場は、オパリナス粘土層の中心部(深さ~650m)に建設される。処分場の主要な構成要素は次のように想定されている(図2参照)。

  • アクセス斜坑、建設・操業坑道、廃棄物受入れ施設及び立坑
  • パイロット施設及び試験区域
  • 40mの間隔で配置する直径2.5m、長さ800mのSF/HLW処分坑道
  • SF / HLW 処分坑道より500m以上隔離して配置する3本の短い ILW 処分坑道

SF/HLWのキャニスタは横置き方式で定置し、乾燥密度~1.75kg/m3(初期含水率~10%)のベントナイトブロックを用いて支持し、80%の高密度(約2.1~2.2kg/m3)のベントナイト顆粒と20%のベントナイト粉末を混合した粒状埋戻材で埋め戻す。

ILWは、低分子量有機物及びその他の錯化剤の含有有無によって別々の処分坑道に定置する。空隙はセメントモルタルで充填する。


放射線防護基準 (安全評価の法令・規制要求事項)

オパリナス・クレイプロジェクトの実施当時に有効であった基準は、当時の安全規制機関であった原子力施設安全本部(HSK)が策定したHSK-R-21「放射性廃棄物処分に関する防護目標」(1980年策定、1993年改定)である。これは、IAEAの安全原則(1989)に適合したものである。HSK-R-21では、以下の防護目標が規定されている。

  • 防護目標1:発生が合理的に予期し得るプロセスや事象により、閉鎖された処分場から放出される放射性核種による個人線量が0.1mSv/yを超えないこと。
  • 防護目標2:防護目標1で考慮されない予期しないプロセスや事象によって閉鎖された処分場から放出される放射線による個人の死亡リスクが年間100万分の1を超えないこと。
  • 防護目標3:処分場閉鎖後、処分場は安全確保のために追加の措置をする必要がなく、数年以内に閉鎖できるように設計すること。

なお、HSKは2009年に連邦原子力安全検査局(ENSI)に改組され、HSK-R-21はENSI-G03「地層処分場の設計原則とセーフティケースに関する要件」(2009年)に置き換えられた。HSK-R-21の防護目標1と2は、ENSI-G03に継承されている。また、防護目標3の規定は、2005年に発効した原子力令に継承されている。




srsr/npj-entsorgungsnachweis/sysdesc.txt · 最終更新: 2013/09/27 13:36 by 127.0.0.1