諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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hlw:se:chap2 [2017/05/08 18:22] – [研究計画] ss12955jphlw:se:chap2 [2017/10/27 18:56] (現在) – 外部編集 127.0.0.1
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
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 ===== 処分場の概要(処分概念) ===== ===== 処分場の概要(処分概念) =====
  
-<WRAP right 340px> +[imagebox0 30%{{ :hlw:se:kbs3-variation-ja.png?300|KBS-3概念| 
-{{:hlw:se:kbs3-variation-ja.png?340&nodirect|KBS-3概念}}\\ +<fc #080>KBS-3概念</fc> \\ <fs 90%>キャニスタの定置方法は、縦置き(図左)と横置き(図右)が検討されています。</fs>\\
-<fc #080>KBS-3概念</fc> ... <fs 90%>キャニスタの定置方法は、縦置き(図左)と横置き(図右)が検討されています。</fs>\\+
 <fs 70%>source: SKB</fs> <fs 70%>source: SKB</fs>
-</WRAP>+}}] 
  
 処分実施主体のSKB社が検討している処分概念は「**KBS-3概念**」と呼ばれています。右下の図に示すように、使用済燃料をキャニスタに封入し、その周囲を緩衝材(ベントナイト粘土)で取り囲んで、力学的及び化学的に安定した岩盤内に定置する方法です。複数の人工バリアと天然バリアを組み合わせた多重バリアシステムにより、放射性廃棄物を長期に隔離し、隔離ができなくなった場合でも処分場からの放射性核種の放出を遅延させるという安全哲学に基づいています。キャニスタの定置方法について、SKB社は縦置き方式を主とて技術開発を進めてきましたが、フィンランドの使用済燃料処分の実施主体ポシヴァ社との共同で横置き方式の実現可能性も検討しています。 処分実施主体のSKB社が検討している処分概念は「**KBS-3概念**」と呼ばれています。右下の図に示すように、使用済燃料をキャニスタに封入し、その周囲を緩衝材(ベントナイト粘土)で取り囲んで、力学的及び化学的に安定した岩盤内に定置する方法です。複数の人工バリアと天然バリアを組み合わせた多重バリアシステムにより、放射性廃棄物を長期に隔離し、隔離ができなくなった場合でも処分場からの放射性核種の放出を遅延させるという安全哲学に基づいています。キャニスタの定置方法について、SKB社は縦置き方式を主とて技術開発を進めてきましたが、フィンランドの使用済燃料処分の実施主体ポシヴァ社との共同で横置き方式の実現可能性も検討しています。
  
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-<WRAP right 340px> +[imagebox0{{ :hlw::se:clink.jpg?320|キャニスタ封入施設の概要(予定図)|
-{{:hlw::se:clink.jpg?320&nodirect|キャニスタ封入施設の概要(予定図)}}\\+
 <fc #080>キャニスタ封入施設の概要(予定図)</fc>\\ <fc #080>キャニスタ封入施設の概要(予定図)</fc>\\
-<fs 90%>オスカーシャムにある使用済燃料集中中間貯蔵施設に併設し、CLINK という一体施設とする計画です(赤枠部分が封入施設)</fs>\\+<fs 90%>オスカーシャムにある使用済燃料集中中間貯蔵施設に併設し、CLINK という一体施設とする計画です。\\  
 +(赤枠部分が封入施設)</fs>\\
 <fs 70%>source: SKB</fs> <fs 70%>source: SKB</fs>
-</WRAP>+}}]
  
  
 SKB社が地層処分を実施するためには、使用済燃料をキャニスタに封入する「キャニスタ封入施設」と、そこで製造したキャニスタを処分する「使用済燃料処分場」の2つの施設が新たに必要になります。 SKB社が地層処分を実施するためには、使用済燃料をキャニスタに封入する「キャニスタ封入施設」と、そこで製造したキャニスタを処分する「使用済燃料処分場」の2つの施設が新たに必要になります。
  
-キャニスタ封入施設はオスカーシャム自治体にある使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB)に併設し、CLINKという一体施設にする計画です。CLABでは、1985年からスウェーデンの全原子力発電所で発生した使用済燃料が地下のプールで貯蔵されています。+キャニスタ封入施設はオスカーシャム自治体にある使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB)に併設し、CLINKという一体施設にする計画です。CLABでは、1985年からスウェーデンの全原子力発電所で発生した使用済燃料が地下のプールで貯蔵されています。
  
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-{{:hlw:se:forsmark-repository-ja.png?320&nodirect|使用済燃料処分場の概要(予定図)}}\\+ 
 +[imagebox0{{ :hlw:se:forsmark-repository-ja.png?320&nodirect|使用済燃料処分場の概要(予定図)|
 <fc #080>使用済燃料処分場の概要(予定図)</fc>\\ <fc #080>使用済燃料処分場の概要(予定図)</fc>\\
 <fs 90%>使用済燃料を封入したキャニスタは、フォルスマルクの地下約500mで処分する計画です。処分坑道が配置される面積は約3.6km<sup>2</sup>です。</fs>\\ <fs 90%>使用済燃料を封入したキャニスタは、フォルスマルクの地下約500mで処分する計画です。処分坑道が配置される面積は約3.6km<sup>2</sup>です。</fs>\\
 <fs 70%>source: SKB</fs> <fs 70%>source: SKB</fs>
-</WRAP>+}}]
  
 使用済燃料の処分場の建設予定地は、**エストハンマル自治体のフォルスマルク**です。既存の全ての原子炉が発電運転を終了するまでに発生する使用済燃料量に対応する約6,000本のキャニスタ(ウラン換算で約12,000トン相当)を、地下約500mの深さで処分する計画です。 使用済燃料の処分場の建設予定地は、**エストハンマル自治体のフォルスマルク**です。既存の全ての原子炉が発電運転を終了するまでに発生する使用済燃料量に対応する約6,000本のキャニスタ(ウラン換算で約12,000トン相当)を、地下約500mの深さで処分する計画です。
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 最終的な地下施設全体の面積は約3.6km<sup>2</sup>、トンネルの総延長距離は約72km(処分坑道の長さは約61km)になります。地下施設は段階的に建設する計画であり、完成した処分坑道でキャニスタの定置・埋め戻しが実施され、平行して別の場所で処分坑道の建設が進められます。 最終的な地下施設全体の面積は約3.6km<sup>2</sup>、トンネルの総延長距離は約72km(処分坑道の長さは約61km)になります。地下施設は段階的に建設する計画であり、完成した処分坑道でキャニスタの定置・埋め戻しが実施され、平行して別の場所で処分坑道の建設が進められます。
  
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 ==== 処分場の建設予定地の地質構造 ==== ==== 処分場の建設予定地の地質構造 ====
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-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
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 ===== 処分事業の実施計画 ===== ===== 処分事業の実施計画 =====
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 処分に関する研究は、実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が1970年代後半から実施しています。SKB社は、スウェーデンの国内外の大学、他の研究機関及び専門家と協力して研究・技術開発を進めており、約250人が研究活動に従事しています。主な研究施設としては、オスカーシャム自治体にあるエスポ岩盤研究所とキャニスタ研究所が挙げられます。 処分に関する研究は、実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が1970年代後半から実施しています。SKB社は、スウェーデンの国内外の大学、他の研究機関及び専門家と協力して研究・技術開発を進めており、約250人が研究活動に従事しています。主な研究施設としては、オスカーシャム自治体にあるエスポ岩盤研究所とキャニスタ研究所が挙げられます。
 +
 +SKB社は2013年から、フィンランドの使用済燃料処分実施主体であるPosiva社と共同作業の立案を開始しており、双方の最終処分施設システムに共通する技術的解決策を生み出すことを目標として、共同研究を実施しています。SKB社とPosiva社は、キャニスタと緩衝機器の共同生産の可能性とともに、実際の建設プロジェクト(使用済燃料の封入施設と最終処分施設)での協力の可能性を調査しています。
 +
  
 ===== 研究計画 ===== ===== 研究計画 =====
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 この他に、岩盤の天然バリアとしての機能を把握するために地下水の挙動や、その化学組成に関する調査などが行われています。 この他に、岩盤の天然バリアとしての機能を把握するために地下水の挙動や、その化学組成に関する調査などが行われています。
-この研究所では、国際的な共同研究も多く進められており、今日では日本を含む合計8カ国がプロジェクトに参加しています。+この研究所では、国際的な共同研究も多く進められており、今日では日本を含む合計7カ国がプロジェクトに参加しています。 
 + 
 +<WRAP clear/> 
 +\\ 
 + 
 + 
 +===== 地層処分の実施に向けた取り組み ===== 
 + 
 +<WRAP rss right 320px> 
 +<fc #080>地層処分の実施に向けたSKB社の活動</fc>\\ 
 +~サイト選定プロセスと安全評価のタイミング 
 +{|style="font-size:81%;" 
 +|- style="background-color:#aadff8;"  
 +|style="width:7.5em;" |1984年 
 +|SKB社設立 
 +|- style="background-color:#d4eefc;"  
 +|1990年 
 +|エスポ岩盤研究所の建設開始 
 +|- style="background-color:#aadff8;"  
 +|1992年5月 
 +|『SKB91-安全における母岩の重要性』 
 +|- style="background-color:#d4eefc;"  
 +|1992年9月 
 +|『研究開発実証プログラム1992』を取りまとめ、サイト選定プロセスを公表 
 +|- style="background-color:#aadff8;"  
 +|1993~2000年 
 +|フィージビリティ調査(文献調査に相当) 
 +|- style="background-color:#d4eefc;"  
 +|1999年11月| 
 +|『SR 97 -閉鎖後の安全性』 
 +|- style="background-color:#aadff8;"  
 +|2000年12月 
 +|『研究開発実証プログラム1998 の補足』において、サイト調査候補地の選定結果を政府に提出 
 +|- style="background-color:#d4eefc;"  
 +|2001年11月 
 +|政府がSKB 社のサイト調査候補地の選定結果を承認。その後、3候補地の所在自治体で調査受け入れに関する議決(2自治体が可決、1自治体が否決) 
 +|- style="background-color:#aadff8;"  
 +|2002~2009年 
 +|エストハンマルとオスカーシャムの2自治体でサイト調査を実施(地表からの調査) 
 +|- style="background-color:#d4eefc;"  
 +|2006年1月 
 +|『SR-Can -フォルスマルク及びラクセマルにおけるKBS-3 概念処分場の長期安全性-最初の評価』 
 +|- style="background-color:#aadff8;"  
 +|2009年6月 
 +|サイト調査結果から、地質条件の優位性を主たる理由として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを処分場建設予定地に選定 
 +|- style="background-color:#d4eefc;"  
 +|2011年3月 
 +|『SR-Site -フォルスマルクにおける使用済燃料処分場の長期安全性』、地層処分場の立地・建設許可申請書を提出 
 +|- style="background-color:#aadff8;"  
 +|今後の予定 
 +
 + ・地層処分場の予備的安全報告書を更新\\ 
 + ・処分場の建設と詳細特性調査\\ 
 + ・処分場の操業申請\\ 
 + ・使用済燃料の処分開始(2029年頃を予定) 
 +|} 
 + 
 + 
 +</WRAP> 
 + 
 + 
 +実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、研究開発のなかで処分場の長期安全性を評価する方法の開発を継続的に進めています。これまでにSKB社は安全評価の取りまとめを、サイト調査の候補地を選定する前(フィージビリティ調査の実施期間内)、ならびに詳細特性調査の候補地1カ所を選定する前(サイト調査の実施期間内)に実施しています。これらの安全評価を実施する目的の一つは、サイト選定プロセスにおける自治体や関係機関の意思決定に役立てることです。このことは、SKB社が3年ごとに取りまとめる「研究開発実証プログラム」の規制機関及び政府による審査・承認のサイクルを通じて決定されました。なお、政府は1995年5月に、詳細特性調査は処分場建設の一部であるとの見解を示しており、詳細特性調査の候補地1カ所を選定する前の安全評価は、処分場の建設許可申請に必要となる安全評価として位置付けられています。 
 + 
 +SKB社が実施するこれらの処分場の長期安全性の評価結果は「安全報告書」(<abbr>SR [Safety Report]</abbr>)として取りまとめられています。この報告書は規制機関に提出され、「研究開発実証プログラム」の場合と同様にレビューを受けます。規制機関は、原子力廃棄物評議会や他の行政機関、サイト選定に関係する調査が実施されている自治体などから意見を収集するとともに、それらを踏まえた意見書を政府に提出します。 
 + 
 + 
 +<WRAP clear/> 
  
-<WRAP clear></WRAP> 
  
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
hlw/se/chap2.1494235364.txt.gz · 最終更新: 2017/05/08 18:22 by ss12955jp