諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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hlw:de:chap3 [2014/01/08 16:20] – [安全規則] sahara.satoshihlw:de:chap3 [2015/10/19 13:41] – 外部編集 127.0.0.1
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-~~bc:3.処分事業に係わる制度/実施体制~~+~~ShortTitle:3.処分事業に係わる制度/実施体制~~
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 ==HLW:DE:chap3== ==HLW:DE:chap3==
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 {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink}} {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink}}
-  * ドイツでは**高レベル放射性廃棄物処分場の設置責任は連邦政府にある**とされています。連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMU)が所管省であり、その下の**連邦放射線防護庁(BfS)**が実施主体となっています。BfSはサイト選定の任務を外部委託することなく、主体的に実施することになっています。+  * ドイツでは**高レベル放射性廃棄物処分場の設置責任は連邦政府にある**とされています。連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が所管省であり、その下の**連邦放射線防護庁(BfS)**が実施主体となっています。BfSはサイト選定の任務を外部委託することなく、主体的に実施することになっています。
   * 2014年1月1日に連邦放射性廃棄物処分庁設置法が施行され、今後、放射性廃棄物処分に関する安全規制機関として**連邦放射性廃棄物処分庁**が設置される予定です。これにより、従来は州当局に委任されていた高レベル放射性廃棄物処分に関する許認可権限が連邦に集約されます。   * 2014年1月1日に連邦放射性廃棄物処分庁設置法が施行され、今後、放射性廃棄物処分に関する安全規制機関として**連邦放射性廃棄物処分庁**が設置される予定です。これにより、従来は州当局に委任されていた高レベル放射性廃棄物処分に関する許認可権限が連邦に集約されます。
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 ===== 実施体制の枠組み ===== ===== 実施体制の枠組み =====
  
-下の図は、ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分に係る実施体制を図式化したものです。連邦政府では、原子力問題全般を担当する連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMU)が管轄官庁であり、その下に設けられた**<abbr>連邦放射性廃棄物処分庁 [Bundesamt für kerntechnische Entsorgung]</abbr>**が、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制を担います。処分場建設・操業の実施主体である**連邦放射線防護庁(BfS)**も、BMUに所属する連邦官庁です。+下の図は、ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分に係る実施体制を図式化したものです。連邦政府では、原子力問題全般を担当する連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が管轄官庁であり、その下に設けられた**<abbr>連邦放射性廃棄物処分庁 [Bundesamt für kerntechnische Entsorgung]</abbr>**が、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制を担います。処分場建設・操業の実施主体である**連邦放射線防護庁(BfS)**も、BMUBに所属する連邦官庁です。
  
  
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-2014年1月1日付けで発効した連邦放射性廃棄物処分庁設置法により、今後、<abbr>連邦放射性廃棄物処分庁 [Bundesamt für kerntechnische Entsorgung]</abbr>が設置される予定です同庁処分場サイト選定手続き全体の監督・調整を担います。処分場サイトが決定した後は、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制当局として、実施主体であるBfSに対する監督を行います。+2014年1月1日付けで発効した連邦放射性廃棄物処分庁設置法により、2014年9月に<abbr>連邦放射性廃棄物処分庁(BfE) [Bundesamt für kerntechnische Entsorgung]</abbr>が設置されましたBfE サイト選定の段階から処分場の建設・操業・閉鎖に至るまで、高レベル放射性廃棄物の処分事業に対する規制監督の任一貫して担います。 
 +処分場サイトが決定した後は、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制当局として、実施主体であるBfSに対する監督を行います。
  
-なお、従来は高レベル放射性廃棄物の処分場については、州の管轄官庁が許認可当局としての役割を担っていましたが、連邦放射性廃棄物処分庁の設置などに伴い規制・実施体制が見直されました。 +なお、従来は高レベル放射性廃棄物の処分場については、州の管轄官庁が許認可当局としての役割を担っていましたが、BfEの設置などに伴い規制・実施体制が見直されました。
- +
-連邦放射性廃棄物処分庁は、サイト選定の段階から処分場の建設・操業・閉鎖に至るまで一貫して、高レベル放射性廃棄物の処分事業場規制監督の任を担います+
  
 原子力法では、同庁が許認可を発給する際は、州や関係自治体も決定に参加することとされています。 原子力法では、同庁が許認可を発給する際は、州や関係自治体も決定に参加することとされています。
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 ===== 実施主体 ===== ===== 実施主体 =====
  
-ドイツの原子力法では、放射性廃棄物の処分場を連邦政府が設置することになっています(州は、必要な場合、中間貯蔵施設を設置する責任があります)。処分場の建設・操業の実施主体として、**連邦放射線防護庁(BfS)**が1989年に設置されています。BfSは、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMU)の監督下にあり、主として放射線防護、通信機器の電磁波対策に関する連邦の業務を実施していますが、所掌の一つとして放射性廃棄物の処分・輸送などに関する業務も担当しています。+ドイツの原子力法では、放射性廃棄物の処分場を連邦政府が設置することになっています。処分場の建設・操業の実施主体として、**連邦放射線防護庁(BfS)**が1989年に設置されています。BfSは、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督下にあり、主として放射線防護、通信機器の電磁波対策に関する連邦の業務を実施していますが、所掌の一つとして放射性廃棄物の処分・輸送などに関する業務も担当しています。
  
 2013年7月に新たに制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)では、BfSは“サイト選定の任務を第三者に委任できない”と規定されました。なお、サイト選定以外の業務の委任については制限はありません。ドイツでは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定プロセスは連邦政府が主導する形になります。 2013年7月に新たに制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)では、BfSは“サイト選定の任務を第三者に委任できない”と規定されました。なお、サイト選定以外の業務の委任については制限はありません。ドイツでは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定プロセスは連邦政府が主導する形になります。
  
-サイト選定法の制定以前は、BfSは民間会社であるドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)と業務契約を結び、放射性廃棄物処分に関する実務作業(ゴアレーベンでの地下探査など)を委託していました。DBE社は、PTBが実施主体であった1979年に連邦政府系の出資も含めて設立された会社です。現在は政府系機関からの出資はなく、原子力発電所を所有する電力会社が株主となっている原子力サービス社(GNS)が、DBE社に75%を出資しています。+サイト選定法の制定以前は、BfSは民間会社であるドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)と業務契約を結び、放射性廃棄物処分に関する実務作業(ゴアレーベンでの地下探査など)を委託していました。DBE社は、連邦物理・技術研究所(PTBが実施主体であった1979年に連邦政府系の出資も含めて設立された会社です。現在は政府系機関からの出資はなく、原子力発電所を所有する電力会社が株主となっている原子力サービス社(GNS)が、DBE社に75%を出資しています。
  
  
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 <WRAP rss right 320px> <WRAP rss right 320px>
-<fc #080>発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件(2010年9月30日改訂版)に規定されている線量基準</fc>\\+<fc #080>発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件(2010年9月30日改訂版)での線量基準</fc> 
 +/*
 {{:hlw:de:bmu-safety-requirements-hg-draft.png?340&nolink|発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件(2010年9月30日改訂版)に規定されている線量基準}} {{:hlw:de:bmu-safety-requirements-hg-draft.png?340&nolink|発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件(2010年9月30日改訂版)に規定されている線量基準}}
-/*+*/
 |**線量基準**:評価期間は100万年を目安とする。  ||   |**線量基準**:評価期間は100万年を目安とする。  ||  
 |○発生確率の高い事象  |評価目安期間内での発生確率が10%以上ある事象については、10μSv/年以下であることを示さなければならない。| |○発生確率の高い事象  |評価目安期間内での発生確率が10%以上ある事象については、10μSv/年以下であることを示さなければならない。|
 |○発生確率の低い事象  |評価目安期間内での発生確率が1~10%の事象については、0.1μSv/年以下であることを示さなければならない。| |○発生確率の低い事象  |評価目安期間内での発生確率が1~10%の事象については、0.1μSv/年以下であることを示さなければならない。|
-*/ 
  
 +<wrap lo>注)この安全要件は見直しが予定されています。</wrap>\\
 \\ \\
 {{:hlw:de:bmu-safety-requirements-image.png?150&nolink|発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件}}\\ {{:hlw:de:bmu-safety-requirements-image.png?150&nolink|発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件}}\\
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 </WRAP> </WRAP>
  
-一方、BMUは2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定しました。なおゴアレーベンでの探査活動の再開に先立ち、BMUはゴアレーベン・サイトへの安全要件の適用についてニーダーザクセン州を含む各州の政府と協議し2010年9月に安全要件の一部を改訂しました。ただし安全要件に幾つかの課題がることから協議を継続していました。+ゴアレーベンでの探査活動の再開に先立ち、BMU(現BMUBの旧称)は2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定し、ゴアレーベン・サイトへの安全要件の適用についてニーダーザクセン州を含む各州の政府と協議しました。その結果を受けて2010年9月に安全要件の一部を改訂したものの、幾つかの課題が残っていることから協議を継続していました。
  
 今後は、2013年に制定されたサイト選定法に基づき、2015年末までに「[[chap4#高レベル放射性廃棄物処分委員会]]」が安全要件に関する検討結果を勧告としてまとめて政府・議会に提出し、議会がこれを元に安全要件等のサイト選定に関わる各種の基準を、連邦法として採決する予定となっています。 今後は、2013年に制定されたサイト選定法に基づき、2015年末までに「[[chap4#高レベル放射性廃棄物処分委員会]]」が安全要件に関する検討結果を勧告としてまとめて政府・議会に提出し、議会がこれを元に安全要件等のサイト選定に関わる各種の基準を、連邦法として採決する予定となっています。
行 142: 行 142:
   * 放射性廃棄物に関する安全規制については、原子力法では概括的な考え方が規定されているのみです。放射線防護に関する全般的な安全規制としては放射線防護令がその基本的な法令ですが、処分場に特定化した形での規制は定められていません。   * 放射性廃棄物に関する安全規制については、原子力法では概括的な考え方が規定されているのみです。放射線防護に関する全般的な安全規制としては放射線防護令がその基本的な法令ですが、処分場に特定化した形での規制は定められていません。
   * 放射性廃棄物処分に関する安全基準としては、もとは原子炉安全委員会(RSK)の勧告として出された1983年の「鉱山における放射性廃棄物の最終処分のための安全基準」があり、放射性廃棄物処分に関する基本的な要件を定めています。この安全基準は、コンラッドでの非発熱性放射性廃棄物の処分に係る計画確定手続において適用されました。   * 放射性廃棄物処分に関する安全基準としては、もとは原子炉安全委員会(RSK)の勧告として出された1983年の「鉱山における放射性廃棄物の最終処分のための安全基準」があり、放射性廃棄物処分に関する基本的な要件を定めています。この安全基準は、コンラッドでの非発熱性放射性廃棄物の処分に係る計画確定手続において適用されました。
-  * 2009年7月、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は「発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件」を策定しました(2010年9月に一部改訂)。この安全要件は、発熱性放射性廃棄物の地層処分のみに適用されるものであり、「鉱山における放射性廃棄物の最終処分のための安全基準」に代わるものとされています。+  * 2009年7月、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(現BMUB の旧称)は「発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件」を策定しました(2010年9月に一部改訂)。この安全要件は、発熱性放射性廃棄物の地層処分のみに適用されるものであり、「鉱山における放射性廃棄物の最終処分のための安全基準」に代わるものとされています。
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hlw/de/chap3.txt · 最終更新: 2018/05/02 16:34 by sahara.satoshi