諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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-  * ドイツでは原子力法において高レベル放射性廃棄物処分場の設置責任は連邦政府にあるとされています。この規定に基づき、これまでは連邦放射線防護庁(BfS)が実施主体としての役割を担っていました。しかし、2016年に原子力法が改正され、新たな実施主体として**連邦放射性廃棄物機関(BGE)**が設置されることなってい。 +  * ドイツでは原子力法において高レベル放射性廃棄物処分場の設置及び操業責任は連邦政府にあり、この処分場の設置及び操業の実施については、連邦政府が100%所有す組織に委託しなければならない規定されています。この規定に基づき、実施主体として連邦放射性廃棄物機関(BGE)が設置され、2017年4月活動を開始しした。 
-  * 放射性廃棄物処分に関する安全規制機関として、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置されました。これにより、従来は州当局に委任されていた高レベル放射性廃棄物処分に関する許認可権限が連邦に集約されました+  * 放射性廃棄物処分に関する安全規制機関として、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置されました。BfEは、従来は州当局に委任されていた高レベル放射性廃棄物処分に関する許認可発給やサイト選定手続きの監督・調整などを行っていくこととされてい
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 +2014年1月1日付けで発効した連邦放射性廃棄物処分庁設置法により、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置されました。BfEは、処分場サイト選定手続全体の監督・調整を担います。処分場サイトが決定した後は、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制当局として、実施主体に対する監督を行います。なお、従来は高レベル放射性廃棄物の処分場については、州の管轄官庁が許認可当局としての役割を担っていましたが、BfEの設置などに伴い規制・実施体制が見直されました。
  
-2014年1月1日付けで発効した連邦放射性廃棄物処分庁設置法により、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置されました。BfEは、処分場サイト選定手続全体の監督・調整を担います。処分場サイトが決定した後は、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制当局として、実施主体に対する監督を行います。BfE は、2016年の法改正により「**連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)**」に名称変更されました。 +BfEは、サイト選定の段階から処分場の建設・操業・閉鎖に至るまで、高レベル放射性廃棄物の処分事業に対する規制監督の任を一貫して担います。
-BfE はサイト選定の段階から処分場の建設・操業・閉鎖に至るまで、高レベル放射性廃棄物の処分事業に対する規制監督の任を一貫して担います。 +
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-なお、従来は高レベル放射性廃棄物の処分場については、州の管轄官庁が許認可当局としての役割を担っていましたが、BfEの設置などに伴い規制・実施体制が見直されました+
 原子力法では、BfEが許認可を発給する際は、州や関係自治体も決定に参加することとされています。 原子力法では、BfEが許認可を発給する際は、州や関係自治体も決定に参加することとされています。
 +BfEは、2016 年の法改正により、「連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)」に名称変更されました。
  
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-ゴアレーベン探査活動の再開先立ち、BMU(現BMUBの旧称)は2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定し、ゴアレーベン・サイトへの安全要件の適用についてニーダーザクセン州を含む各州の政府と協議しました。その結果を受けて2010年9月に安全要件の一部を改訂したものの、幾つかの課題が残っていることから協議を継続していました。+ゴアレーベン・サイトへ適用を前提に、BMU(現BMUB の旧称)は 
 +2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定し、2010年9月に安全要件の一部を改訂していました。
  
 その後、2013年に制定されたサイト選定法では、「[[chap4#高レベル放射性廃棄物処分委員会]]」が、安全要件についても検討し勧告を行うことになっています。高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016年7月に安全要件に関する検討結果を勧告としてまとめて政府・議会に提出しました。勧告には、安全要件をサイト選定法に組み入れるべきことや各種規定の妥当性等を再確認すべきことなどが含まれています。今後、議会がこれを元に安全要件の改定について検討し法令として策定することになっています。 その後、2013年に制定されたサイト選定法では、「[[chap4#高レベル放射性廃棄物処分委員会]]」が、安全要件についても検討し勧告を行うことになっています。高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016年7月に安全要件に関する検討結果を勧告としてまとめて政府・議会に提出しました。勧告には、安全要件をサイト選定法に組み入れるべきことや各種規定の妥当性等を再確認すべきことなどが含まれています。今後、議会がこれを元に安全要件の改定について検討し法令として策定することになっています。
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-  * 高レベル放射性廃棄物処分費用は、全額廃棄物発生者が負担することが原子力法で定められてます。 +  * ドイツではこれまで、放射性廃棄物処分費用については、廃棄物発生者である電力会社等が引当金を確保し、現段階で発生する費用については、処分場の設置・運営の責任を有する連邦政府に対して、原子力発電事業者が毎年支払いを行っていました。 
-  * 処分費用を積み立るための公的な基金制度存在せず、廃棄物発生者である電力会社等が引当金を確保し、現段階で発生する費用については、処分場の設置・運営の責任を有する連邦政府に対して、原子力発電事業者が毎年支払いを行っていました。しかし、2016 年に新たな法律が制定され、公的な基金を設置し処分費用などを管理することが決定されました。+  * しかし、2016 年に新たな法律が制定され、公的な基金を設置し処分費用などを管理することが決定されました。この法律に基づき、2017年に放射性廃棄物管理のための基金が設置され、原子力発電事業者から拠出金の払込みが行われました。
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 ドイツでは、これまで放射性廃棄物管理費用の確保に関する公的な基金制度はありませんでした。このため、原子力発電事業者などは、原子炉の廃止措置のための費用や、放射性廃棄物の管理のために発生する将来費用を引当金として確保していました。 ドイツでは、これまで放射性廃棄物管理費用の確保に関する公的な基金制度はありませんでした。このため、原子力発電事業者などは、原子炉の廃止措置のための費用や、放射性廃棄物の管理のために発生する将来費用を引当金として確保していました。
-しかし、資金確保制度のあり方については、「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」が2015年10月に設置され検討が行われた結果、2016年4月に公的基金の設置などの勧告が行われました。この勧告に基づき、2016年12月に公的基金の設置等を規定した法律が制定されました。この法律により、廃棄物発生者である電力会社は、基金に対して放射性廃棄物管理の将来費用として約174億ユーロ(約1兆9,800億円)及びリスクに備えるための保険料として約62 億ユーロ(約7,070億円)を払い込むことになります。 
  
-払い込み後は、放射性廃棄物管理費用は、この基金から支払われ、不足した場合には連邦政府が負担することになります。なお、基金で賄われる放射性廃棄物管理費用には、放射性廃棄物の輸送、中間貯蔵、処分場の建設・操業・閉鎖の費用が含まれます。+しかし、2016年12月に公的基金の設置等を規定した法律が制定されました。 
 +この法律により、放射性廃棄物管理のための基金が設置され、廃棄物発生者である原子力発電事業者は、 
 +2017年7月に基金に対して放射性廃棄物管理の将来費用として約179億ユーロ(約2兆3,800億円)及び 
 +リスクに備えるための保険料として約62億ユーロ(約8,246億円)を払い込みました。 
 +これにより放射性廃棄物の中間貯蔵以降の放射性廃棄物管理費用は、この基金から支払われ、 
 +不足した場合には連邦政府が負担することになります。 
 +基金で賄われる放射性廃棄物管理費用には、放射性廃棄物の輸送、中間貯蔵、処分場の建設・操業・閉鎖の費用が含まれます。 
 +なお、原子力による発電電力量に応じた基金への拠出はありません
  
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 ===== 処分費用の見積もり ===== ===== 処分費用の見積もり =====
  
-連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が2015年に公表した見積りによると、発熱性放射性廃棄物処分場の建設・操業・閉鎖に係る費用は、約77億ユーロ(約8,800億円)です。このうち、処分場の建設の費用が約39億ユーロ(約4,400億円)、操業の費用が約34億ユーロ(約3,900億円)、閉鎖の費用が約4億ユーロ(約460億円)となっています。+連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が2015年に公表した見積りによると、発熱性放射性廃棄物処分場の建設・操業・閉鎖に係る費用は、約77億ユーロ(約1兆240億円)です。このうち、処分場の建設の費用が約39億ユーロ(約5,200億円)、操業の費用が約34億ユーロ(約4,500億円)、閉鎖の費用が約4億ユーロ(約530億円)となっています。
  
-また、サイト選定法に基づくサイト選定のための費用は、20億ユーロ(約2,280億円)と見積もられています。+また、サイト選定法に基づくサイト選定のための費用は、20億ユーロ(約2,700億円)と見積もられています。
  
  
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 <WRAP note> <WRAP note>
-<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1612.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成28年12月中において適用)を使用しています。</wrap> +<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1712.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成29年12月中において適用)を使用しています。</wrap> 
-  * <wrap lo>1ユーロ=114円として換算</wrap>+  * <wrap lo>1ユーロ=133円として換算</wrap>
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hlw/de/chap3.txt · 最終更新: 2018/05/02 16:34 by sahara.satoshi