諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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-~~bc:5.処分事業の資金確保~~+~~ShortTitle:5.情報提供・コミュニケーション~~
 <WRAP pagetitle> <WRAP pagetitle>
 ==HLW:CH:chap5== ==HLW:CH:chap5==
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
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 {{anchor:chap5}} {{anchor:chap5}}
-====== 5. 処分事業の資金確保 ======+====== 5. 情報提供・コミュニケーション ======
  
-{{anchor:d1}} +{{anchor:e1}} 
-====== 5.1 処分費用確保(制度) ====== +====== 5.1 公衆と対話 ====== 
- +<WRAP round box> 
-<WRAP tip round box> +{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}} 
-  * 廃棄物発生者である電力会社及び連邦政府は、処分実施主体の放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)活動費用を負担しています。また、電力会社原子力発電所閉鎖後の廃棄物管理全般に必要となる費用を賄うため**放射廃棄物管理基金**へ拠出金も負担しています。+  * 特別計画「地層処分場」は、放射性廃棄物処分場サイト選定手続において、情報提供とコミュニケーションが重要であるとしています。サイト選定において、連邦政府担当官庁である連邦エネルギー庁(BFE)が中心となってさまざまな方法で透明性の確保とコミュニケーションの実現が図られています。
 </WRAP> </WRAP>
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
-===== 処分費用の負担者 ===== 
  
-<WRAP rss right 350px> +===== 処分事業とコミュニケーション =====
-{{:hlw:ch:financing-system-ch.png?340&nolink|}}\\ +
-{{popup>:hlw:ch:financing-system-ch.png|スイスにおける資金確保の仕組み}} +
-</WRAP>+
  
 +処分事業を進めていくためには、住民の理解を得ることが重要となります。スイスにおいて放射性廃棄物処分に関し、住民との間に十分なコンセンサスが得られなかった例として、ヴェレンベルグでの低中レベル放射性廃棄物処分場計画が挙げられます。
  
-スでは、放射性廃棄物の発生者が処分費用を負担しなければならないことが2005年2月に施行された原子力法で定められています。廃棄物発生者である電力会社及び連邦政府は、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の放射性廃棄物管理に関する調査研究活動などに必要な費用を負担しています。+[{{ :hlw:ch:wellenberg-photo.png?286&nolink|ヴェレンベルグ・サト| 
 +<fc #080>ヴェレンベルグサイト</fc>   
 +<fs 70%>source: GNW94-01, Technischer Bericht zum Rahmenbewillungsgesuch, (1994)</fs> 
 +}}]
  
-また、電力会社は原子力発電所の閉鎖後の廃棄物管理に必要な費用を賄うために設立された**<acronym title="Entsorgungsfonds">放射性廃棄物管理基金</acronym>**に対しても、毎年拠出金を支払う義務を有しています。この基金の対象は、廃棄物の輸送・貯蔵・処分などを含めた放射性廃棄物管理全般に係る費用です。 
  
 +この計画では、電力会社と地方自治体の共同出資によって設立されたヴェレンベルグ放射性廃棄物管理共同組合(GNW)が、1994年にスイス中部のニドヴァルデン州ヴェレンベルグにおける処分場建設計画を発表し、概要承認手続を開始しました。
 +しかし、1995年6月の州民投票[8]で、探査坑の掘削と処分場の建設を目的とした地下空間利用の許可及び連邦による概要承認に対する州の
 +意見・勧告が否決され、GNWは連邦、州政府、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)などの協力のもとに処分概念の見直しを実施しました。
 +2002年にGNWは再び、処分場建設に向けた探査坑掘削のための地下空間利用の許可申請を州に提出しましたが、同年9月の州民投票で州の許可発給が再度否決されたため、ヴェレンベルグ・サイトを断念する決定がなされ、GNWは解散しました。
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP rss right box 300px> 
 +**[8] スイスにおける州民投票とは?** \\ 州民投票とは、州民による発案に対して一定数以上の有効署名が集まった場合に、発案の是非について住民が直接的に意思表明を行うことができる制度です。州レベルでの発案の権利は、広範囲にわたって認められており、州憲法の改正や州法の改正も対象となっています。なお、連邦レベルにおいても同様の国民投票制度が設けられています。 
 +</WRAP>
  
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 +なお、2005年2月に施行された原子力法では、処分場などの原子力施設の立地などに関しては、州政府による許可が必要とされないことが規定されています。
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-===== 処分費用の確保制度 =====+===== 特別計画「地層処分場」における規定 =====
  
-スでは、2000年3月に放射性廃棄物管理基金令が制定され原子力発電所閉鎖後廃棄物管理活動全般に必要費用基金化する制度が確立しした。この政令は200712月に、原子力施設の廃止措置基金関する政令と一本化されていす。この政令で、**放射性廃棄物管理基金**の積立対象となるのは、原子力発電所の閉鎖後に必要となる以下の費用です+ト選定手続等を定めた**特別計画「地層処分場」**は、2006年3月の最初の草案の公表以降国内や隣接諸国当局や組織及び個人、スイスどから提出された意見えて、20084月に連邦評議会より承認されました
  
-  *a. 廃棄物の輸送及び処分 +特別計画においてサイト選定の担当官庁である連邦エネルギー庁(BFE)はコミュニケーション方針の作成や公衆への情報提供及び広報活動を行う役割を担うことを定めています。また、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、関係者に対す専門的な知見の提供が求められています。
-  *b. 使用済燃料の輸送及び処分 +
-  *c. 処分場の50年間の監視段階 +
-  *d. 処分場の設計、計画、計画管理建設、操業、閉鎖及び監視 +
-  *e. 放射線防護措置及び作業被ばく防止措置 +
-  *f. 官庁許認可及び監督 +
-  *g. 保険 +
-  *h. 管理費用+
  
-この基金は、連邦評議会が設立し管理委員会によ管理されており、委員会が費用想定額についの決定も行います。基金への払い込み2001年末から始まり、2011年における放射性廃棄物管理基金残高は約28.3億スイスフラン(約2,410億円)です。 +、特別計画によるサイト選定手続においは、情報提供や関係する州、地域、自治体及び公衆の関与が重要と考えられており、地域参加はそため主要な手段とされています。特別計画「サイト地域」に属する自治体が地域参加の組織を設置することを定めており、2011年から6つのサイト地域においてBFE主導により設置された「地域会議」が活動を始めています。
-(1スイスフラン=85円として換算)+
  
  
-<WRAP clear></WRAP>+==== 地域会議 ==== 
 + 
 +各地域会議は約85名から最大110名までのメンバーで構成されており、①州やサイト地域を構成する自治体の代表者、②経済団体、政党、教会等の代表者、③住民が参加しています。また、サイト地域にドイツの自治体が含まれる場合はドイツからも地域会議に参加します。 
 +NAGRAの2012年年次報告書によると、地域会議にはのべ約200の自治体が参加(複数の地域会議に参加する自治体もある)しており、その中にはドイツの12の自治体も含まれています。 
 + 
 +地域会議は土地利用や社会経済発展に関する調査を実施し、地域の持続的発展に資するプロジェクトを作成する役割を担っています。また、NAGRAの提案と別に、地域会議が地上施設の配置と立地について独自に提案できます。 
 +ジュラ東部とジュートランデンでは、地域会議が提案した地上施設の設置区域案をNAGRAが採用しました。 
 +チューリッヒ北東部と北部レゲレンでは、地域会議の見解を踏まえてNAGRAが新たに設置区域案を提案・採用しました。 
 + 
 +地域会議の予算は、1つの地域会議あたり年間約50万~70万スイスフラン(約5,250万~7,350円、1スイスフラン=105円で換算)となっています。地域会議は予算案と活動費用に係る請求書を連邦エネルギー庁(BFE)へ提出し、BFEはこの予算案を承認し、費用をNAGRAへ請求します。この予算は地域会議の事務局の運営費、広報活動や会議参加の費用などに割り当てられており、地域会議のメンバーは活動への参加に対する報酬を受け取っています。 
 + 
 + 
 +<WRAP clear/> 
  
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-{{anchor:d2}} +{{anchor:e2}} 
-====== 5.2 処分費用の見積もり ======+====== 5.2 意識把握と情報提供 ======
  
-<WRAP rss right 320px+<WRAP round box
-{{:hlw:ch:cost-breakdown-ch.png?320&nolink|}}\\ +{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}} 
-{{popup>:hlw:ch:cost-breakdown-ch.png|処分費用見積額内訳}}\\ <fs 70%>source: NAGRA</fs>+  * 特別計画「地層処分場」は、サイト選定における地域参加プロセス実施、及び州や自治体等のさまざまな関係者が参加する委員会などの設置を規定しています。また、連邦エネルギー庁(BFE)や放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、多様な媒体を通じて情報提供を行っています。
 </WRAP> </WRAP>
  
  
-NAGRAは、スイスにおける高レベル放射性廃棄物処分費用総額は約45億ススフラン(約3,830億円)になると2011年時点で見積っています。 +===== 広報活動(情報提供) ===== 
-処分費用見積額内訳は、サイト選定を含む概要承認まで準備作業費が約4.4億スイスフラン約370億円サイト特性調査建設・操業費が9.2億スイスフラン(約780億円)、処分場建設費が11億ススフラン約940億円)、処分場操業費用8.8億ススフラン(約750億円、処分場モニタリグ費用が約10億スイスフラン(約850億円処分閉鎖費用が約2.3億スイス(約200億円)です。(1スイスフラ=85円として換算)+ 
 +ここでは、放射性廃棄物処分ト選定手続おいて実施されている意識把握のための活動や、情報提供活動を紹介します。 
 + 
 + 
 +\\ 
 +===<委員会どの設置>=== 
 + 
 +特別計画「地層処分場」は、州や自治体からも代表者が参加して構成され委員会などの設置を規定しており、これらは既に活動を開始しています。 
 + 
 + 
 +{|style="font-size:90%;" 
 +|+ <fc #080>州・自治体が参加する委員会</fc>  (特別計画「地層処分場」で設置規定があるも) 
 +|- 
 +!style="width:10em;" | 名称 
 +! 役割 
 +|- 
 +|処分場諮問委員会 
 +|地層処分場サイト選定手続実施において環境・運輸・エネルギー・通信省UVEKをサポート 
 +|- 
 +|州委員会 
 +|サイト選定に関係する州や近隣州、近隣国の政府代表者間の協力を図り、選定手続の実で連邦をサポート、連邦に勧告を提出 
 +|- 
 +|州安全専門家グループ 
 +|安全性に関する資料評価時に州をサポート/アドバイス 
 +|- 
 +|安全技術ォーム 
 +|住民自治体、団体、州、関係近隣国で影響を受ける自治体の技術的な問い合わせへの対応 
 +|} 
 + 
 + 
 + 
 + 
 +<WRAP clear/> 
 +\\ 
 +===<情報提供の取り組み>=== 
 + 
 +[{{ :hlw:ch:swi3_2_02.png?300&nolink|NAGRAによる情報提供活動の様子| 
 +<fc #080>NAGRAによる情報提供活動の様子</fc> 
 +}}] 
 + 
 + 
 +地層処分場の候補サト区域の提案の公表後の2008年11月から12月にかけて、連邦エネルギー庁BFEの主催によりドイツを含めた9カ所で情報提供トが開催されました。このイベントでは、連邦原子力安全検査局ENSI及びNAGRAもプレゼテーショを行っています。 
 + 
 +<WRAP clear/> 
 + 
 + 
 +[{{ :hlw:ch:Nagra-time-ride.png?300&nolink|Time Ride| 
 +<fc #080>”Time Ride”の展示2012年4月</fc>   
 +<fs 70%>(写真提供:NAGRA)</fs> 
 +}}] 
 + 
 +NAGRAは2012年にチューリッヒ中央駅で”Time Ride”と題する大型展示を開始しました。この展示は地層の歴史やオパリナス粘土が処分に適している理由などを紹介するもです。その後、ベルン、シャウハウゼ、ヴィンタートゥールの見本市も展示を実施しています。 
 + 
 +<WRAP clear/> 
 + 
 + 
 +[imagebox0{{ :hlw:ch:swi3_2_01.png?300&nolink|NAGRAのパフレット| 
 +<fc #080>NAGRAが作成しているパンフレット</fc> 
 +}}]
  
  
 +また、NAGRAは、独自に情報提供のためのイベントを実施する他、パンフレット等の作成や教育機関への情報提供、地下研究所を利用した情報提供活動などを行っています。
  
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
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 <WRAP note> <WRAP note>
-<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1212.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成24年12月中において適用)を使用しています。</wrap> +<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1612.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成28年12月中において適用)を使用しています。</wrap> 
-  * <wrap lo>1スイスフラン=85円として換算</wrap>+  * <wrap lo>1スイスフラン=105円として換算</wrap>
 </WRAP> </WRAP>
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行 116: 行 190:
   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
hlw/ch/chap5.txt · 最終更新: 2017/10/27 18:38 by 127.0.0.1