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高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針 >>>
I. 高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針
フランスでは、原子力発電で発生する使用済燃料を再処理しています。2006 年に制定された放
射性廃棄物等管理計画法において、再処理等に伴って発生する高レベル放射性廃棄物及び長寿命
中レベル放射性廃棄物は「可逆性のある地層処分」を行う方針を定めています。
◎原子力エネルギー政策の動向
フランスの原子力発電所は、全てフランス電力株式
会社(EDF社)が運転しています。2022 年末現在、
56 基の原子炉を運転しており、フランス全土に電力を
供給し、輸出もしています。
フランス北西部のコランタン半島の先端にOrano 社
(旧 AREVA 社)のラ・アーグ再 処 理 施 設があり、
UP2、UP3と呼ばれるプラントが操業しています。再
処理で回収したプルトニウムを MOX 燃料等に加工
し、再び原子力発電の燃料として利用しています。フ
ランスでは、高速増殖炉の開発も行われてきました
が、現在は運転中のものはありません。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
フランスの全ての原子力発電所から発生する使
用済燃料は年間約 1,200トンであり、そのうち年間約
1,080トンがラ・アーグ再処理施設で再処理され、残り
は再処理されずに貯蔵されています。再処理を待つ
使用済燃料は、各発電所で貯蔵されるほか、ラ・アー
グ再処理施設にも受入施設としての貯蔵施設があり
ます(いずれもプールでの湿式貯蔵)。また、再処理
施設には高レベルガラス固化体の貯蔵施設もあり、将
来の地層処分場の開設まで貯蔵しています。
フランスでは、余剰プルトニウムを発生させないため
にプルサーマル用 MOX 燃料の年間生産・装荷量か
ら使用済燃料の年間再処理量を計画しています。そ
のため、発生する全ての使用済燃料が直ぐに再処理
されるわけではなく、2020 年末時点で約 14,000トン
の使用済燃料(使用済 MOX 燃料等を含む)が将
来の再処理を待ち、貯蔵されています。将来の貯蔵
量増加に対応できるように貯蔵施設の拡張等が計画
されています。
2020 年に公表された多年度エネルギー計画
( PPE )では、21 世紀後半を目途とした高速炉(第
Ⅳ世代炉)開発を進めつつ、核燃料サイクルの確立
(全量再処理)を目指すとともに、中期的には、使用
済 MOX 燃料の再処理による燃料を第Ⅲ世代の加圧
グラブリーヌ
ショー
カットノン
フェッセンハイム
(2020年閉鎖)
ノジャン・シュール・セール
ベルビル
ダンピエール サンローラン・デゾー
パンリー
パリュエル
フラマンビル
シノン
シボ-
ルブレイエ
ゴルフェッシュ
トリカスタン
クリュアス
サンタルバン・
サンモーリス
ビュジェイ
90万kW級の原子炉
130万kW級の原子炉
フランスの原子力発電所
(ANDRA ウェブサイトより作成)
国家放射性物質及び放射性廃棄物インベントリ報告書の例
(写真提供:ANDRA)