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地層処分計画と技術開発 >>>
◎処分場の建設予定地の地質構造
スウェーデンは、ノルウェー、フィンランド、ロシア北
西部などに広がっているフェノスカンジア盾状地と呼
ばれる古い大陸性の地殻の上に位置しています。地
層処分場の建設予定地であるフォルスマルクを含むス
ウェーデン南東部の岩盤は、19.5 ~ 17.5 億年前(古
原生代)に形成された結晶質岩です。約 4 ~ 2.5 億
年前には、大西洋側のプレート運動の圧力によってノ
ルウェーとの国境となっているスカンディナビア山脈が
形成されるとともに、スウェーデン南東部の岩盤にも大
規模な断層が生じました。また、約 200 万年前以降の
新生代第四紀には、山脈の東山麓に氷河が何度も形
成された跡が残っています。ウルム氷期として知られ
る最終氷期は約 11 万前から始まり、最盛期にはスカン
ディナビア半島全体が氷で覆われ、氷床の厚さは最
大で 3km に達したと推定されています。この氷の重さ
のために地殻が沈み込み、スウェーデンとフィンランド
の間にできた窪みが現在のボスニア湾にあたります。
氷床の成長・後退につれて岩盤にかかる荷重が変化
するので、断層が動いて地震が発生することもありま
す。氷期が終わった約 1 万年前から現在まで、沈降し
た地殻が元に戻ろうとしてゆっくりとした隆起が続いて
います。現在のフォルスマルクは海岸に面しています
が、紀元前8800年頃には海面下150mのところにあり、
紀元前 500 年頃に陸地になりました。表層 5 ~ 6mの
土壌は、氷床の動きによって岩盤が侵食されて運ばれ
た氷成粘土や礫の堆積物です。
処分場の建設予定地であるフォルスマルクにも大
規模な断層があります。そのような断層の近くでは、
その動きによって結晶質の岩石が引きちぎられ、細
かく破砕していますが、そのことによって一定以上離
れた所の岩体は相対的に安定となり、レンズ状の塊
となって残っている部分があります。そのような岩体
は「構造レンズ」と呼ばれています。フォルスマルクの
地下約 500m のところには、これまでのプレート活動や
氷床荷重の変動による影響を受けていない、構造レン
ズが存在することがボーリング調査で確認されていま
す。使用済燃料の処分場は、このような構造レンズ内
の結晶質岩に建設されます。
フォルスマルク周辺の岩盤構造
フォルスマルク
スカンディナビア山脈の
形成で影響を受けた領域
古原生代(19.5~17.5億年前)
に形成された岩盤
大規模断層
構造レンズの存在領域(薄色部分は、海面下の深度に
存在している部分を示す。)
塑性変形の影響が強く生じる領域
塑性変形の影響が弱い領域
サイト調査エリア
海または湖沼
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