高レベル放射性廃棄物は、極めて長期にわたり私
たちの生活環境から遠ざける必要があり、その方法
として地下深くの安定な地層中に処分する「地層処
分」が最も好ましい処分方法であることが、国際的に
共通の認識となっています。わが国においても、平成
26 年(2014 年)4 月のエネルギー基本計画において、
高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題について、
地層処分を前提に進めつつ、将来世代が最良の処
分方法を選択できる余地を残すとしております。原子
力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物は、
将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任
で、地層処分する必要があります。地層処分の仕組
みや日本の地質環境等について理解を深めて頂くた
めに、国は、「科学的特性マップ」を作成し、平成 29
年(2017 年)7 月に公表しました。そして、令和 2 年
(2020 年)11 月に、北 海 道の寿 都 町と神 恵 内 村に
て文献調査が開始されることとなりました。
~ この冊子のねらい ~
諸外国の経験から学ぶ上では、放射性廃棄物を
長期にわたって管理するという共通の目標があって
も、各国の文化、政治及び歴史的な状況を反映し
て、地層処分の実現に至る取組みには似ているところ
と異なるところが必然的に生じます。
諸外国の多様な進捗状況を理解する上で役立つ
重要な事項を体系的にまとめ、解説する資料を目指し
て、この冊子の最初のバージョンを平成 15 年(2003
年)9 月に発行しました。当初は欧米 6カ国(フィンラン
ド、スウェーデン、フランス、スイス、ドイツ、米国)を取
り上げました。その後、高レベル放射性廃棄物処分
の具体化が進んだ国、処分地選定や処分事業の進
展が見られる国々を丹念に追跡し、英国とカナダを加
えて、情報の更新・追加を行った改訂版を毎年発行
しています。諸外国での最新の進捗動向を反映する
だけでなく、わが国での検討状況を踏まえ、諸外国で
類似検討がなされた過去の情報も充実させるようにし
ています。
地層処分について初めて知ったという方でも手に
とってもらえるよう、難しい表現をできるだけ避け、諸
外国の状況や多様な取組みを眺めつつ、地層処分
について知る・考えるきっかけとなる読み物としての
性格を意識しています。初めてこの冊子を手に取っ
た方は、頁数が多いのでは…と疑問に思うかもしれま
せん。
地層処分の関心領域は、技術だけでなく、処分場
のサイト選定方法、法制度、地域振興、安全確保の
取組みなど多岐にわたります。原子力発電の規模や
核燃料サイクルの選択なども関係します。諸外国で
も高レベル放射性廃棄物の問題について悩みつつ、
様々な取り組み・経験が積み重ねられて今日に至って
います。頁数が多いのはそのためです。
2022 年 9 月には、スイスの実施主体 NAGRA が北
部レゲレンを処分場サイトとして提案するとともに、地
上施設とキャニスタ封入施設のサイトも提案しました。
また 2023 年 1 月には、フランスの実施主体 ANDRA
が地層処分場(Cigéo)の設置許可申請書を政府に
提出しました。2023 年版の冊子では、これらの注目す
べき動向を含めています。
巻末には用語解説のほか、わが国の近隣国である
中国、韓国、ロシアでの地層処分に関する情報を短く
解説したページを設けています。
地層処分に関して、興味のある方、もっとよく考えて
みたいと思われる方の理解の一助になれば幸いです。
はじめに
○本冊子の電子版は、原子力環境整備促進・資金管理センターのウェブサイト「諸外国での高レベル放射性
廃棄物処分」(https://www2.rwmc.or.jp)で入手できます。このウェブサイトでは、諸外国の高レベル
放射性廃棄物の最終処分に関連する情報をまとめているほか、最新情報を「海外情報ニュースフラッシュ」
としてブログ形式で提供しています。こちらもぜひご覧下さい。
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