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高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針 >>>
I. 高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針
カナダでは、カナダ型重水炉(CANDU 炉)から発生する使用済燃料を再処理せずに高レベル
放射性廃棄物として、当面 60 年間はサイト貯蔵または集中貯蔵を実施し、最終的には地層処分す
るという「適応性のある段階的管理」(APM)を長期管理アプローチとしています。
◎原子力エネルギー政策の動向
カナダでは、国家レベルのエネルギー政策について
は連邦政府が権限を有するものの、天然資源の保有
をはじめ、州内でのエネルギー開発や規制の権限は
基本的に州政府にあります。そのため、原子力エネ
ルギー政策についても州ごとに異なっていますが、国
としては原子力の平和利用を推進する方針です。
カナダでは 1952 年に設立されたカナダ原子力公
社(AECL)が天然ウランを燃料とするカナダ型重水
炉(CANDU 炉
[1]
)を開発しました。商業用の原子
力発電所は、オンタリオ州、ケベック州、ニューブラン
ズウィック州の計 5カ所に建設され、1971 年から1983
年にかけて CANDU 炉が計 22 基導入されました。
2019 年末時点で 19 基が運転中であり、うち18 基が
オンタリオ州に、1 基がニューブランズウィック州にあり
ます。
現在のカナダ政府は、原子力発電をエネルギーミッ
クス上の重要な構成要素と見なしています。2011 年
3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事
故後もその方針に変更はありません。
◎使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)
カナダでは、原子炉から取り出された使用済燃料
は、その時点で“廃棄物”と見なされており、「核燃料
廃棄物」と呼ばれています。天然ウラン(自国で産出)
を燃料としているために燃焼度が低く、従って含有す
るプルトニウム量も少ないために、再処理は経済的に
適さないと考えられています。
原子力発電所で発生した使用済燃料(=核燃料
廃棄物)は、発生元の発電所で貯蔵されています。
原子炉から取り出された使用済燃料は、プールで6 ~
10 年間冷却した後、乾式の管理施設へ移されます。
2022 年 6 月時点での貯蔵量は約 319 万体(ウラン換
算で約 61,130トン)、うち約 177 万体が乾式貯蔵され
ています。
[1] CANDU 炉
カナダ原子力公社(AECL)が開発。原子炉の減速材
と冷却材に重水(天然水中に0.02%含まれる)を使用す
る圧力水型の原子炉であり、燃料として天然ウラン(ウ
ラン235を濃縮していない)を利用します。バンドルと
呼ばれる長さ約 50 センチメートルの短尺燃料集合体を
原子炉に横置きで装荷する設計であり、原子炉の運転を
止めずに燃料交換できる点が特徴です。CANDU炉はカ
ナダを含む7カ国で運転されており、中国に2基、韓国に
4 基あります。
カナダの原子力産業の国際競争力を強化するという政
府方針に基づき、2011 年に AECL の商業用の発電用原
子炉部門が民間(CANDU エナジー社)へ売却されまし
た。
これまでに 22 基導入された CANDU 炉のうち、OPG 社のピッカ
リング発電所の 2 基、ハイドロ = ケベック社のジェンティリー発電
所の 1 基が廃止済み。
電気事業者 原子力発電設備容量
オンタリオパワージェネレーション
(OPG)社
(オンタリオ州営オンタリオ・ハイドロ社の子会社)
661 万 kW
ブルースパワー社
(民間出資)
660 万 kW
(※オンタリオ・ハイドロ社か
ら発電設備を長期リース)
ハイドロ=ケベック社
(ケベック州営)
-
ニューブランズウィック(NB)パワー社
(ニューブランズウィック州営)
64 万 kW
カナダの原子力発電事業者
ウェスタン廃棄物管理施設での使用済燃料の乾式貯蔵
(出典:NWMO, Backgrounder 2010: Project Description)