セーフティケース中間概要報告書2009、
Posiva report 2010-02、ポシヴァ社(2010年)
Posiva Oy; Interim Summary Report of the Safety Case 2009. POSIVA 2010-02. (March 2010) 1)
処分地選定プロセスのどの段階で、どのような目的で実施された安全評価なのか…
ポシヴァ社は2012年に、オルキルオトにおいて使用済燃料の最終処分場の建設許可を申請する予定である。建設許可申請においてポシヴァ社は予備的安全解析書(PSAR) 2) を取りまとめ、規制機関へ提出を行うが、セーフティケースはPSARを支援する文書となる、としている。また、「原子力廃棄物の処分の安全性に関する政令」においても、原子力廃棄物処分場の建設許可申請時に申請者がセーフティケースを提出することが規定されており、2010年現在、ポシヴァ社は、セーフティケースの作成を進めている。また、政令において、セーフティケースは、操業許可申請時、及び許可条件に特段の記載がない限り15年毎に更新することが規定されている。
ポシヴァ社は、セーフティケースを図1のような8つの主要報告書、及び関連する技術報告書からなるポートフォリオの構成で作成する予定である。また、ポシヴァ社は、ポートフォリオを構成するそれぞれの報告書を段階的に更新する予定である。「セーフティケース中間概要報告書2009」(以下、中間概要報告書とする)はセーフティケース・ポートフォリオにある「概要」報告書の暫定版と位置付けられている。
※参考:別ページにて解説しているRNT-2008報告書は、生物圏評価報告書2009(Posiva report 2010-03)とともに「シナリオの解析」報告書の暫定版と位置付けられている。
ポシヴァ社は、中間概要報告書の中で、セーフティケースを「計画中の処分場の長期安全性と、長期安全性に対する専門家の信頼のレベルを定量化し、立証するための証拠、分析及び論拠をまとめたもの」と定義している。本報告書では、時間の変遷とともに生じる処分システムの変化を取り扱うシナリオの作成に用いるアプローチの概要を示し、これらのシナリオについて記述し、これらのシナリオの分析に用いられる主要モデル及びコンピュータ・コードに関する説明を行っている。さらに、地層処分場の長期安全性に関するフィンランドの規制要件の遵守について論じるほか、計画された処分場の長期安全性に対する信頼(ポシヴァ社の側の信頼)の根拠となる主な証拠、論拠及び解析を提示している。
また、中間概要報告書の作成は、以下の検討事項にとっての叩き台という意味で有益なものと考えられる、としている。
セーフティケース・ポートフォリオにおける『概要報告書』はポートフォリオ全体の概要を述べるものであるが、中間概要報告書の取りまとめ時点では全体が揃っていない。原子力廃棄物管理に関する3ヵ年の研究技術開発計画、TKS-2009(Posiva社 2009年)で示されている整備計画を右図に示す。
セーフティケース・ポートフォリオ | 中間概要報告書取りまとめ時点 | 今後の予定(最終版) |
---|---|---|
『処分システム記述報告書』 | - | 2012年後期 |
『プロセス報告書』 | POSIVA 2007-12 | 2011年前期 |
『シナリオ生成報告書』 | - | 2011年前期 |
『モデル・データ報告書』 | POSIVA 2010-1 | 2012年後期 |
『シナリオ解析報告書』 | POSIVA 2008-6 (RNT-2008) POSIVA 2010-3 (BSA-2009) | 2012年前期 |
『補完的検討報告書』 | - | 2011年後期 |
『概要報告書』 | POSIVA 2010-2 | 2012年後期 |
ポシヴァ社によれば、中間概要報告書の取りまとめ時点での評価には、人間侵入シナリオの解析が実施されていないこと、及び様々な方法によるキャニスタ破損の発生率または確率に関する分析が欠けている、としている。中間概要報告書における解析、とくにこれらの解析を実施する中で明らかになった限界及び知識不足に関する情報は、原子力廃棄物管理に関する3ヵ年の研究技術開発計画、TKS-2009(Posiva社 2009年)にとっての鍵となる入力情報となっている。
TKS-2009で得られた調査結果は順次、予備的安全解析報告書及び最終安全解析報告書のために今後更新されてゆく、概要報告書に組み込まれることになっている。
本報告書に対する規制機関による評価は2010年末現在公表されていない。