目次

Opalinus Clay Project (スイス)

NTB 02-05

オパリナス・クレイプロジェクト: 安全報告書
- 使用済燃料、ガラス固化高レベル廃棄物及び
長寿命中レベル廃棄物に関する
処分の実現可能性の実証、
NAGRA(2002年)

Project Opalinus Clay: Safety Report. Demonstration of disposal feasibility forspent fuel, vitrified high-level waste and long-lived intermediate-level waste (Entsorgungsnachweis).
Nagra Technical Report NTB 02-05, Wettingen, Switzerland. (December 2002)




処分地選定プロセスのどの段階で、どのような目的で実施された安全評価なのか…


安全評価書の位置付け

スイスでは、1978年の「原子力法に関する連邦決議」により、原子力施設の建設許可及び運転許可の前提条件として、施設を建設しようとする者に対して、連邦評議会(内閣に相当)が発給する概要承認の取得が義務付けられた。そして、この概要承認の発給条件の一つは、放射性廃棄物が確実に処分可能であることであった。この、処分の実現可能性の実証のために、Nagra(放射性廃棄物管理共同組合)は調査・研究を実施してきた。

このうち、低中レベル放射性廃棄物については、スイス北部の結晶質岩を対象として実施され、1985年にNagraが報告書を取りまとめた「保証プロジェクト」 (Project Gewähr) に対する連邦評議会の1988年の評価により、処分の実現可能性が実証されたことが認められた。一方で、使用済燃料、ガラス固化体及び長半減期中レベル放射性廃棄物については、連邦評議会は安全な処分の実現可能性は確認されたものの、処分可能なサイトの存在が実証されていないとして、堆積岩も調査対象とすることを要求した。

結晶質岩について、Nagraは1994年に、「保証プロジェクト」を追補した「クリスタリン-Ⅰ」報告書を公表したが、それに対して当時の安全規制機関であった原子力施設安全本部(HSK)は、スイス北部の結晶質岩は高レベル放射性廃棄物の地層処分場の母岩としての適性を有するものの、具体的な処分場サイトの存在が説得力ある形で示されてはいない、と結論した。一方でNagraはスイス北部の堆積岩(オパリナス粘土)分布域における使用済燃料、ガラス固化体、長半減期中レベル放射性廃棄物の処分の実現可能性の実証のための調査・研究も実施してきた。その成果として取りまとめられたのが「オパリナス・クレイプロジェクト 安全報告書」である。


評価のねらい/目的

「オパリナス・クレイプロジェクト 安全報告書」の主要な目的は次の2点とされている。

また、以下の2点が追加的な目的として挙げられている。

さらに、「オパリナス・クレイプロジェクト 安全報告書」の安全評価における目的として、特に次の4点が示されている。


Projekt Entsorgungsnachweis 報告書の全体構成

Project Entsorgungsnachweis報告書の全体構成

「オパリナス・クレイプロジェクト」の報告書類の全体構成を示す。このうち、安全評価の報告書は NTB 02-05である。安全評価の詳細を記述した報告書として、“モデル、コード及びデータ”を説明する報告書(NTB 02-06)と“FEP(特性・事象・プロセス)”の取り扱いを説明する報告書(NTB 02-23)がある。


安全評価を実施してのNAGRAの結論

オパリナス・クレイプロジェクト報告書において、安全評価を実施した上でNAGRAは以下の結論を導いている。



規制機関によるレビュー

「オパリナス・クレイプロジェクト 安全報告書」に対しては、規制機関であるHSKをはじめとして様々な機関がレビューを行った。これらのレビュー結果も踏まえ、2006年に連邦評議会はスイスにおける高レベル放射性廃棄物の地層処分場の建設が、原則的に可能であることを確認した。ただし、Nagraは連邦評議会に対して、今後の調査対象をチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土に絞ることの承認も要求していたが、連邦評議会はこの要求については退けた。

HSKのレビューは、2005年8月付で作成された「HSK 35/99 Nagraによる使用済燃料、高レベルガラス固化体並びに長寿命中レベル廃棄物の処分の実現可能性の実証(オパリナスプロジェクト)に対する評価」である。そこでは、以下の3点を中心として評価が行われた。


サイトの存在の実証については、チュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土の特性を評価した結果として、地層処分場のサイトの存在が実証されたと結論されている。次に、工学的な実現可能性の実証についてHSKは、Nagraが提示した建設、操業、モニタリング及び閉鎖の概念が法的規定を満足しているとして、チュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土層における地層処分場の建設が可能としている。さらに安全性に関する実現可能性の実証については、HSKはレビューにおいて、自ら計算を行い、Nagraが算出した通り、悲観的な想定を行っても0.1mS/年という防護基準が遵守されることを確認したとしている。