目次

用語解説

可逆性

reversibility 〔仏〕réversibilité

可逆性とは処分場の計画作成、または開発計画のどの段階においても、一連の段階を逆転させる可能性を意味する。段階を逆転させる措置(技術的、経済的、その他)の他、見直しを行うことを行うことを意味し、必要である場合には以前の決定を再評価することも意味する。

出典:OECD/NEA(2001):Reversibility and Retievability in Geologic Disposal of Radioactive Waste, Radioactive Waste Management, p.11

回収可能性

retrievability 〔仏〕récupérabilité

回収可能性とは、廃棄物の定置活動の逆転の可能性を意味し、可逆性の特殊な場合である。回収とは廃棄物もしくは廃棄物パッケージの回収活動である。回収可能性は処分場の設計と操業戦略により、例えば定置後のある段階まで地下の接近路を開放し定置/回収システムを設置すること、あるいは耐久性のあるコンテナと容易に掘削可能な埋戻材を利用することにより容易になる。

出典:OECD/NEA(2001):Reversibility and Retievability in Geologic Disposal of Radioactive Waste, Radioactive Waste Management, p.12

確率論的解析

Probabilistic analysis、もしくは Stochastic analysis

確率を1とする決定論的解析に対し、入力された確率に従い発生したパラメータ値を用いる解析である。この解析では、パラメータが取り得る全体の範囲を表現するために複数の繰り返し計算(リアライゼーション)を実施する必要があり、解析結果は統計学的に解釈される場合が多い。IAEA(2007)では、Stochasticの場合には厳密にはランダム性という意味が強いのに対しProbabilisticの場合は確率に直接関係した意味が強いとしており、自然の事象またはプロセスおよびその影響はStochasticという方が適当であり、Probabilisticは、Stochasticな事象、プロセス、およびその影響の数学的な解析を記す際に用いるのが適当であるとしている。

対義語:決定論的解析(deterministic analysis)

出典:IAEA(2007):IAEA Safety Glossary, Terminology Used in Nuclear Safety and Radiation Protection 2007 Edition

感度解析

Sensitivity analysis

あるシステムの挙動が、通常は支配的なパラメータ値の変化とともにどのように変化するかを確認するための定量的調査と定義されている。一般的なアプローチとしては、選択されたレファレンスの値または平均値を中心とする合理的な範囲内で1つ以上の入力パラメータ値を変化させた場合について結果の変化を調査するパラメータの変動、または微分解析または積分解析を適用することによって全ての入力パラメータ値の変化に関する結果の変量を得る摂動解析がある。

出典:IAEA(2007):IAEA Safety Glossary, Terminology Used in Nuclear Safety and Radiation Protection 2007 Edition

期待値

Expected value

期待値は、ある試行を行った場合に得られる数値の平均値である。確率論では、期待値E(X)は、確率変数Xに確率P(X)を掛け、全体に対し合計した数値で表される。
E(X)=∫X・P(X)dx

出典:T.Bedford and Roger Cooke(2001),訳 金野秀敏(2006):確率論的リスク解析、シュプリンガー・ジャパン株式会社

亀裂性媒体

Fractured media

岩盤中の地下水(および地下水中に含まれる物質)の移動を解析する上での岩盤の分類の1つ。岩盤中に亀裂(割れ目)が発達しており,亀裂を主要な移行経路として地下水等の動きを取扱うことができる。

例:花崗岩等の結晶質岩

出典:(独)日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門 「用語集」
    http://www.jaea.go.jp/04/tisou/yogo/yougo_ka.html

決定論的解析

Deterministic analysis

決定論的解析とは、キーパラメータに単一の数値を用いる(確率を1とする)解析と定義されており、解析結果は1つの値に定まる。原子力の安全性においては、異なる事象の発生確率を考慮せず、例えば事故の種類、放出、重要性に着目することを意味する。特に、専門的判断や現象をモデル化する際の知見に基づき、「最も有り得そうな」もしくは「保守的の」値のどちらかが用いられる。

対義語:確率論的解析(probabilistic analysis or stochastic analysis)

出典:IAEA(2007):IAEA Safety Glossary, Terminology Used in Nuclear Safety and Radiation Protection 2007 Edition

決定グループ

Critical group

決定グループとは、与えられた放射線線源からの被ばくの面で合理的に均質に被ばくを受ける公衆を構成員にもつグループであり、その中でも線源から(適用できる)最も高い実効線量もしくは線量当量を受ける個人を代表するグループである。

出典:IAEA(2007):IAEA Safety Glossary, Terminology Used in Nuclear Safety and Radiation Protection 2007 Edition

参照生物圏

Reference biosphere

参照生物圏(レファレンスバイオスフェア)は、国際原子力機関(IAEA)が提唱する様式化された生物圏モデルおよびその構築手法である。参照生物圏の構築では人間の生活環境や様式化に関する仮定を安全評価の目的に従って整合性を取りながら設定し、処分システムから人間に到達する放射性物質の量や濃度を放射線量またはリスクに換算するための道具として捉えることが重要視されている。

このような概念は、生物圏に気候・地形変動および人間の生活様式に関して他のバリアと異なる不確実性が存在し、全ての不確実性に対処すると無限のシナリオが生じる可能性があるためである。国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告(Pub.81)は、「決定グループと生物圏は、現在利用できるサイトまたは地域の上方に基づくサイト固有のアプローチか、もっと一般的な習慣と条件に基づいた様式化されたアプローチを用いて規定すべき」と勧告している。また、国際原子力機関(IAEA)のIAEA-TECDOC-1077では、決定グループと評価期間の関係が示されており評価期間が長くなるほど様式化された生物圏と仮想的な決定グループを設定することの重要性が示されている。

出典:加藤智子(2009):地層処分性能評価における生物圏の変遷および将来の人為的行為の様式化に関する考え方の国際的な動向整理、JAEA-Review 2009-052
   ICRP (2000): Radiation Protection Recommendations as Applied to the Disposal of Long-lived Solid Radioactive Waste: Annals of the ICRP Volume 28/4, ICRP Publication 81, Elsevier.
   IAEA (1999): “Critical Groups and Biospheres in the Context of Radioactive Waste. Disposal, Fourth report of the Working Group on Principles and Criteria for Radioactive Waste Disposal”,IAEA-TECDOC-1077.

実効線量

Effective dose

実効線量とは、人体が放射線から受ける影響は、放射線の種類、放射線を受ける組織(臓器)によって異なり、これらを考慮して算定した放射線量である。具体的に実効線量Eは、次式で表されるとしている。

E=ΣWT×HT = ΣWT×ΣWR×DT.R

ここで、WT:組織Tに対する組織荷重係数、HT:組織Tが受ける等価線量、
    WR:放射線Rに対する放射線荷重係数、DT.R:組織Tに対する平均吸収線量

出典:IAEA(2007):IAEA Safety Glossary, Terminology Used in Nuclear Safety and Radiation Protection 2007 Edition

シナリオ、シナリオクラス(米国)

scenario, scenario class

シナリオとは、予想される処分システムの将来の状態に至るまでの変遷の概要を示す、十分に定義された特性、事象およびプロセスが連結した一続きのものである。シナリオは、処分システ ムの性能が予想通りであり通常の挙動を示す場合には変動を考える必要はないが、人間侵入、火山のような自然事象、核臨界のような破滅的事象を受ける場合には変動を考慮する必要がある。
シナリオクラスとは、シナリオのスクリーニングや解析の目的のために集められた類似性かつ関連性がある一連のシナリオ群である。シナリオクラスの数と大きさはシナリオで定義された範囲に依存するため、シナリオは技術的に正しい議論が可能で解析のために適切な詳細さを維持する最も広い範囲のレベルで定義することが望ましいとされている。

出典:NRC(2003):Yucca Mountain Review Plan Final Report, NUREG-1804

線量限度

Dose limit

線量限度とは、管理された行為から個人が受ける実効線量または線量当量の超えてはならない値である。

出典:IAEA(2007):IAEA Safety Glossary, Terminology Used in Nuclear Safety and Radiation Protection 2007 Edition

線量拘束値

Dose constraint

ICRP1990年勧告で導入した概念で、ある線源に対する放射線防護策を検討する場合に、その線源からの被ばく線量をできる限り低く(最適化)するための目標となる制限値のことである。線量限度は、規制の対象となる関連するすべての行為による個人の被ばく線量の合計についての限度であるのに対し、線量拘束値は、ある計画された行為に関係する特定の線源により与えられる線量の制限値に用いられるものである。

出典:日本保健物理学会放射線防護標準化委員会(2009):放射線防護の重要な概念

セーフティケース

Safety Case

(原子力)施設や操業の安全性を支える根拠や証拠の集合体と定義されており、これには、安全評価の研究成果やこれらの成果の確からしさの記述も含まれる。処分場については、セーフティケースは処分場の開発の各段階に関連する可能性があり、そのような場合には未解決な項目の存在を認め、将来の開発が進んだ段階において未解決な項目を解決するための手引きを与えるべきであるとしている。

出典:IAEA(2007):IAEA Safety Glossary, Terminology Used in Nuclear Safety and Radiation Protection 2007 Edition

多孔質媒体

Porous medium
岩盤中の地下水(および地下水中に含まれる物質)の移動を解析する上での岩盤の分類の一つ。移動の方向に対して,連続する微細な空隙が空間的に均一に存在することを仮定して,その中の物質の移動を取り扱うことができる。例:(亀裂が発達していない)砂岩,泥岩等の堆積岩

出典:(独)日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門 「用語集」
    http://www.jaea.go.jp/04/tisou/yogo/yougo_ka.html

地形線量換算係数(スウェーデン)

Landscape Dose Factors (LDF)

地形線量換算係数は、地圏からの核種放出があった場合に核種放出量を人間もしくはその他生物相が受ける放射線量に換算する係数である線量換算係数の一種であり、1Bq(ベクレル)の核種の放出量あたりの線量で表す。スウェーデンの性能評価では、将来的な気候・地形変動を推定し、推定した水理地質学・生物学的情報に基づく水文学的モデル、生物圏モデル、地表環境における核種移行モデルを組み合わせた地形モデル(Landscape model)を用いた生物圏評価を実施しており、サイト特有の線量換算係数を算定している。このサイト特有の線量換算係数をSKBでは地形線量換算係数と呼んでいる。

参考:Rodolfo Avila(2006):The ecosystem models used for dose assessments in SR-Can, SKB Report R-06-081

中央値、平均値

median(メジアン), mean

確率密度関数p(x)においてxがある値xmedよりも大きくなる確率と小さくなる確率が等しい時xmedを中央値という。平均値は、ある有限個の標本の値の総和を標本数で除した値である。また、似たような用語に「最頻値」(モード) がある。最頻値は、確率密度関数p(x)において、密度関数が最大となるxの値である。これらの数値は標本の母集団の平均的な特徴を表す統計値であり、どの統計値が母集団の代表値としてふさわしいかは、母集団を構成する標本の分布に依存する。

参考:William H. Press et.al.(1987), 丹慶勝市ほか訳(1993):Numerical recipes in C [日本語訳]、技術評論社

トータルシステム性能評価(TSPA:米国)

TSPA(=Total system performance assessment)

トータルシステム性能評価とは、処分システムの多重バリアのバリアごとに安全性の閾値を設けるのではなく、処分システム全体で安全性を評価するアプローチ手法である。米国のユッカマウンテン最終処分場の場合、具体的な実施方法がNRCの規則によって規定されている。ユッカマウンテン最終処分場の安全評価においては、トータルシステム性能評価は、様々な条件の範囲にわたり処分システム全体の長期的な性能の定量的な見積りを行う一種の計算ツールの側面をもっており、サイトデータ及び物質試験データ、さらに広範囲に受け入れられた物理的、化学的原理に基づく複数の数値モデルの集合体を表している。TSPAモデルの開発には、処分システムの挙動に適用可能な、起こり得る全てのFEPのリストを編集し、選定されたFEPは幾つかのシナリオクラスに分類される。線量の見積りは、モンテカルロ法による確率論的手法によって計算され、線量の結果も確率論的に取り扱われる。

参考:竹野直人(2004):天然バリアの安全評価への地球科学の寄与、地質ニュース、602号、pp.18-24
   NRC(2003):Yucca Mountain Review Plan Final Report, NUREG-1804

ドリップシールド(米国)

Drip shield

ユッカマウンテン最終処分場の処分場設計で検討されている廃棄体の周囲に設けるU字型の覆いであり処分坑道に平行な方向に設置することが検討されている。ドリップシールドは、坑道壁より滴下する地下水や坑道壁が崩落した場合の力学的衝撃および崩落後堆積した礫等を伝って伝播する応力(地圧)から廃棄体パッケージを保護するために設置される。

廃棄体パッケージとドリップシールド(鳥瞰図)

出典:Goodluck Ofoegbu, Randall Fedors, Christopher Grossman, Simon Hsiung, Luis Ibvarra, Chandrika Manepally, James Myers, Mysore Nataraja, Osvaldo Pensado, Kevin Smart, and Danielle Wyrick(2007):Summary of current understanding of drift degradation and its effects on performance at a potential yucca mountain repository, CNWRA 2006-02 rev.1

不確実性

Uncertainty

自然現象には偶然的要素に支配される側面もあり、現象の理解の程度や定義のあいまいさなどから、これに基づくモデルやデータには必然的に結果を確実に予測できない面がある。これに対して統計処理や確率論を導入した入力データを適用し、その程度を推定する解析を不確実性解析という。地層処分の性能評価では取り扱う現象が多岐にわたり、空間的規模や時間領域が広範にわたるため、必要とされる精度のレベルも個々の解析に応じて異なると考えられ、不確実性についても十分考慮しておく必要がある。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁 放射性廃棄物等対策室 放射性廃棄物のホームページ 「用語集」
   http://www.enecho.meti.go.jp/rw/hlw/qa/sanko/sanko02.html

不飽和帯

Unsaturated zone

不飽和帯とは、地表面と地下水面の間の領域を意味する。一般的に、この領域の水の圧力は大気圧よりも低く、空隙の幾つかは大気圧の空気やその他のガスで満たされている可能性がある。水が流れている領域もしくは水の停滞領域では、水の圧力が局所的に大気圧よりも大きくなる可能性がある。不飽和帯では空隙中が気液二相状態となることにより地下水で満たされた状態(飽和状態)とは異なった透水性を示すために飽和帯とは異なる地下水流道場を形成する可能性がある。

出典:NRC Regulations 10 CFR Part 63.2 definitions
   http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part063/part063-0002.html

マトリクス拡散

Matrix diffusion

割れ目中の物質移行現象の一つであり、割れ目(亀裂)から岩石基質(岩盤マトリクス)方向に向かう拡散現象である。割れ目に沿った地下水の流れに対して直交する方向に物質が移動するため、花崗岩のような亀裂性岩盤で期待される遅延機能の一つとしてみなされている。

参考:JNC(1999):わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性 -地層処分研究開発第2次とりまとめ-、JNC TN1400 99-020、p.用-11

ランドスケープモデル(フィンランド)

Landscape model

フィンランドの生物圏核種移行解析モデルは、生物圏に関連する研究開発の進捗とともに従来の人間の習慣や地形を仮定する従来の生物圏モデルから、地形、生態系、水文地質を組み合わせた生物圏核種移行モデルへとモデル開発が進められている。地形、生態系、水文地質を組み合わせた生物圏核種移行モデルが地形モデル(ランドスケープモデル)と呼ばれている。フィンランドの地形モデルはスウェーデンのSKBとの共同研究、および欧州共同体(EC)における国際共同研究を通して開発が進められている。

参考:Posiva(2008):Safety Case Plan 2008, Posiva 2008-05
   Posiva(2010):Models and Data Report 2010, Posiva 2010-01

リアライゼーション

Realization

確率論解析における繰り返し計算、および繰り返し計算を行う行為をいう。確率論解析で必要なリアライゼーションの数は、取り扱う問題によって異なる。例えば、稀頻度な事象を確率論解析で取り扱う場合、その現象が数値解析で表現されるためには多数のリアライゼーションが必要となる。

参考:原子力安全委員会(2007):リスク論的考え方に基づく安全評価シナリオの分類例について、第5回低レベル放射性廃棄物埋設分科会用参考資料1

リスク基準

Dose criteria

リスクの計算値との比較に用いる規制上のリスクの判断基準値である。

出典:SKB(2006):Long-term safety for KBS-3 repositories at Forsmark and Laxemar – a first evaluation Main Report of the SR-Can project, SKB Technical Report TR-06-09, pp.619

APSS(フランス)

[仏] APSS (Analyse Phénoménologique des Situations de Stockage)
[英] PARS (Phenomenological Analysis of Repository Situations)

APSSは処分場の長期的な変遷における現象論的分析に基づく不確実性解析の手法の一種である。APSSは処分場が将来受けるもしくは生じる長期的変遷の過程を、時間軸および空間軸について複数のセグメントに区分し、各セグメント間で生じる事象、プロセスについて生じる時間と安全性に与える影響の観点から定量的に分析する手法である。

参考:ANDRA(2005):Dossier 2005 Argile Tome Safety evaluation of a geological repository

AQS(フランス)

[仏]AQS (l’analyse qualitative de sûreté)
[英]QSA (qualitative safety analysis)

AQSはフランスで実施されている不確実性の特定および管理手法の1種である。AQSの手順を以下に述べる。処分場の構成要素ごとに、

を実施し、事前に実施した現象論的分析(APSS)の結果に基づき構成要素の特性に影響を及ぼす可能性がある熱-水理-力学-化学-放射線(T-H-M-C-R)の現象や挙動、およびそれらに含まれる不確実性が理解される。そして、これらの現象や挙動および含まれる不確実性が、安全機能に影響する可能性と影響度合いを定性的に調査する。AQSは、このような調査を外部条件が構成要素に対する影響する可能性まで網羅的かつ体系的に実施する分析方法である。AQSでは不確実性を含む構成要素の特定と変遷が生じた場合の性能を定性的に評価することが可能であり、通常の変遷シナリオ(SEN)とその感度解析に含めることができるかどうかを判断し、含めることができない場合には標準外の変遷シナリオ(SEA)およびその感度解析で取り扱うようにしている。

参考:ANDRA(2005):Dossier 2005 Argile Tome Safety evaluation of a geological repository

CPMモデル(スウェーデン、フィンランド)

Continuum Porous Medium (CPM) model [日] 連続体(多孔質媒体)モデル

連続体多孔質媒体モデルと呼ばれており、土壌、岩盤中での地下水流動および物質移行現象を表現するモデルの一つである。このモデルでは、媒体に連続する空隙が空間的に均質に存在すると仮定し、媒体の巨視的な特性(透水係数、間隙率等)を用いて地下水流動および物質移行を表現する。

参考:G.W. Lanyon and P. Marschall(2006):Discrete Fracture Network Modelling of a KBS-3H Repository at Olkiluoto, Posiva 2006-06

DFNモデル(スウェーデン、フィンランド)

Discrete fracture network (DFN) model  [日] (離散的)亀裂ネットワークモデル

解析領域内に決定論的もしくは確率論的に亀裂を発生させて、岩盤の巨視的な強度や亀裂間の連結によって形成される透水経路を有限要素法などの数値解析手法によって解くモデルであり、岩盤の崩落を取り扱う力学モデルや亀裂内の地下水流動現象を表現する地下水流動解析モデルに適用される場合が多い。ここで、決定論とは亀裂の位置、大きさ、数、特性を原位置データ等から決定して入力することであり、確率論的とは亀裂の位置、大きさ、数、特性についての確率、もしくは確率密度分布に従い入力値を作成して入力することを言う。亀裂ネットワークモデルは基本的には岩盤のマトリクス部分の透水性はないと仮定するモデルであるが、岩盤のマトリクス部分に透水係数に相当するダミーの亀裂を発生させる、もしくは岩盤のマトリクス部分を連続体モデルとして取り扱いマトリクス部分に透水性を持たせるモデルも存在する。広域の地下水流動解析に亀裂ネットワークモデルを適用した場合には透水経路を表現するために多数の亀裂を発生させる必要が生じる。メモリの制限や計算の簡略化のために、亀裂ネットワークモデルを等価な透水性の多孔質媒体要素に置き換えるアップスケーリング(Upscaling)と呼ばれる手法を用いて、等価連続体多孔質媒体モデル(ECPM)に近似する場合がある。

参考:JNC(1999):わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性 -地層処分研究開発第2次とりまとめ-、JNC TN1400 99-020、p.用-3
Jacob Bear, Chin-Fu Tsang, and Ghislain de Harsily (ed.)(1993):Flow and contaminant transport in fractured rock, Academic Press,Inc.
例えば、G.W. Lanyon and P. Marschall(2006):Discrete Fracture Network Modelling of a KBS-3H Repository at Olkiluoto, Posiva 2006-06

Dossier(フランス)

フランス語でファイルするという意味があり、特定の人物あるいは問題、課題に関する書類を集めた書類一式を意味する。

出典:研究社:新英和中辞典 第6版、大修館書店:ジーニアス英和辞典 第3版

FEP

地層処分システムに影響を及ぼすと考えられる、システムの特質(Feature)、そこで生ずる事象(Event)や過程(Process)の略語。

出典:JNC(1999):わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性 -地層処分研究開発第2次とりまとめ-、JNC TN1400 99-020、p.用-2

Sv

Sievert

シーベルトとは線量当量および実効線量のSI単位であり、1Svは1J/kgに等しいと定義されている。

出典:IAEA(2007):IAEA Safety Glossary, Terminology Used in Nuclear Safety and Radiation Protection 2007 Edition

"what if" シナリオ

処分システムの頑健性を試すために設定される評価ケースであり、科学的根拠の可能性の範囲外の仮定やパラメータ値の組をあえて設定する。このようなシナリオに含まれる評価ケースは、必ずしも特性、事象、プロセスの網羅性は考慮されない。例えば、スイスのオパリナスクレイ安全評価書では、処分システムの安全機能(人間環境からの隔離、核種の封じ込めと崩壊による減衰、環境への放出緩和)を達成するための安全性の基盤(処分システムの重要となる特性であり、地下深部の処分場、透水性が低い母岩、遅延に良好な不変な化学環境等)に対する擾乱の影響を試す評価ケースに限定されている。

参考:Nagra(2005):Project Opalinus Clay Safety Rerport, Nagra Technical Report 02-05