(簡略版)
韓国には、原子力発電所が4カ所あり、使用済燃料は各発電所内で管理・貯蔵されています。韓国では、使用済燃料の再処理及び高レベル放射性廃棄物の処分に関する方針は決定していません。
政府の知識経済部(MKE)は、韓国における使用済燃料の管理政策や、その政策決定に向けた公衆協議の方法に関する提案を受けるために、2011年11月に「使用済燃料政策フォーラム」を設置しました。同フォーラムは23名の委員―原子力発電所の所在自治体の代表4名、人文科学系の専門家12名、理工系の専門家7名―で構成されています。同フォーラムでの検討は2012年4月まで続くことになっています。
韓国における高レベル放射性廃棄物及び低中レベル放射性廃棄物の処分は、韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)が行うこととなっています。
原子力施設の安全監視や高レベル放射性廃棄物の管理等の原子力安全全般に関わる規制機関として教育科学技術部(MEST)があり、また原子力エネルギー開発、放射性廃棄物の管理、処理・処分の長期計画等の政策の立案などを行う監督機関として、知識経済部(MKE)があります 1) 。
韓国の原子力発電事業者は、韓国電力公社(KEPCO)の子会社である韓国水力原子力発電株式会社(KHNP)の1社です。このためKHNPは、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の韓国内における唯一の発生者であり、また低中レベル放射性廃棄物の大部分(90%)の発生者でもあります。なお、KHNPの下部組織である原子力環境技術院(NETEC)は、研究開発や医療等で発生した低中レベル放射性廃棄物の中間貯蔵を行っています。
KRMCが実施する放射性廃棄物の管理に要する費用は、放射性廃棄物基金として確保することになっています。放射性廃棄物の発生者は、廃棄物をKRMCに引き渡す際に、低中レベル放射性廃棄物の管理費用及び使用済燃料の負担金等をKRMCに納付します。放射性廃棄物基金の運用管理は、処分事業者であるKRMCが行っています。
韓国では、2004年12月に開催された原子力委員会(現在の原子力振興委員会の前身)において、▶2016年までは原子力発電所内で使用済燃料を貯蔵・管理すること ▶使用済燃料の直接処分又は処理などの最終的な管理政策については後日決定すること―が決定されましたが、現在に至るまで使用済燃料の管理政策は決定していません。
2009年1月には、放射性廃棄物管理制度の充実を図るために「放射性廃棄物管理法」が施行されました。同法では、「原子力法」における放射性廃棄物管理の技術・安全基準及び許認可に関する規定、並びに「電気事業法」における放射性廃棄物の管理事業者・処分費用・管理対策に関する規定が一つの法律に統合されました。放射性廃棄物管理のための専門機関を設立することも規定され、同法施行と併せて、韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)が設立されました。
2011年8月には、韓国の原子力学会などの専門家グループが、使用済燃料の処理・処分について技術的に可能な方法などを報告書としてまとめ、韓国政府に提出しました。韓国政府はこの報告を受けて、2011年11月に「使用済燃料政策フォーラム」を設置しました。使用済燃料政策フォーラムは、韓国における使用済燃料の管理政策や、管理政策の策定のための公衆協議の方法などについて検討し、2012年4月までに提案を取りまとめることになっています。なお、「使用済燃料政策フォーラム」の設置に先立つ2011年10月には、処分事業の安全規制に関する法律として原子力安全法が施行されました。
このように韓国では、使用済燃料の管理政策は今後決定されるため、高レベル放射性廃棄物処分の立地選定は開始されていません。
一方、低中レベル放射性廃棄物については、1984年10月に開催された原子力委員会(現在の原子力振興委員会の前身)において、低中レベル放射線廃棄物を国内で処分すること、中間貯蔵施設を原子力発電所のサイト外に建設することなどを盛り込んだ、国家放射性廃棄物政策が策定されました。
この政策の下で、1986年から韓国電力を実施主体とする処分サイトの立地選定作業が進められましたが、約10年間で5回試みられた選定計画では、処分場候補地の住民による反対運動などのため、処分場の選定には至りませんでした。
1997年からは、韓国水力原子力株式会社(KHNP)を実施主体とする処分事業計画が推進されました。この体制による選定計画では、処分地の選定には候補地の自治体による請願書の提出が必要な制度にするなど、誘致活動への民意の反映が試みられましたが、2005年までに4回試みられた選定計画でも、やはり住民の反対運動などによって処分場の選定には至りませんでした。
2005年には、誘致地域への特別支援金や、選定手続きにおける住民投票の義務化などを盛り込んだ「低中レベル放射性廃棄物処分施設の誘致地域支援に関する特別法」が施行され、処分施設の新たな選定活動が進められました。その結果、キョンジュ(慶州)、クンサン(群山)、ポハン(浦項)、ヨンドク(盈德)の4つの地域が処分場候補地として申請し、これらの地域で住民投票を実施した結果、最も誘致への賛成率が高かった慶州が低中レベル放射性廃棄物処分施設の候補地として選定されました。現在、慶州において、処分施設である「月城原子力環境管理センター」が建設されており、2014年6月に処分施設の一部が竣工する予定となっています。
今後の予定
備考:通貨換算には、日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレートを使用しています。
韓国
韓国の主要な原子力関連施設の立地点