目次

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ドイツ ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)

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1. 高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針

ポイント

  • ドイツでは当初、原則として使用済燃料を再処理する方針でしたが、2002年に改正された原子力法において使用済燃料を外国の再処理施設に運搬することが禁じられ、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体及び使用済燃料)を国内で地層処分する方針に変わっています。これらは処分空洞の壁面に熱影響を与えることから「発熱性放射性廃棄物」と呼ばれています。


原子力エネルギー政策の動向

ドイツの商業用原子炉所在地
ドイツの商業用原子炉
(運転中のみを表示、2013年末時点)
BMU資料より作成

ドイツでは1998年に成立した連立政権の下で脱原子力政策が進められ、現在も継続しています。2000年6月に連邦政府と主要電力会社は、原子力発電からの段階的撤退等に関して合意しました。2002年4月に全面改正された原子力法では、この合意内容の一部が法制化され、商業用原子力発電所の運転を原則32年間に制限するとともに、今後の原子力発電の総量に上限を設けました。2009年秋に成立した現連立政権は、脱原子力政策を維持しつつも、運転中の原子炉17基の運転期限を平均で12年延長することなどを含む原子力法改正案を、2010年10月に成立させました。

しかし、東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故を受けて連邦政府は、2011年3月に、17基の原子炉のうち8基(1980年以前に運転開始した炉)を停止させるとともに、予定していた原子炉の運転期限の延長を凍結しました。そして2011年6月、連邦政府は、停止させた原子炉8基を即時閉鎖し、残る9基も2022年までに閉鎖するとした、将来のエネルギー政策の見直しを閣議決定しました。これらの政策を含む改正原子力法は、2011年8月に発効しました。

2017年末現在、ドイツで運転中の原子炉がある原子力発電所は7カ所あり、加圧水型原子炉(PWR)が6基、沸騰水型原子炉(BWR)が2基です。これらの8基についても2022年末までに順次運転終了する予定です。


使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)

ゴアレーベンの中間貯蔵施設
ゴアレーベンの中間貯蔵施設
使用済燃料とガラス固化体のほか、低レベル放射性廃棄物も中間貯蔵されています。

ドイツでは、当初は使用済燃料を再処理して核物質を再利用するよう法律で定めていましたが、1994年の原子力法改正により、再処理せずに使用済燃料を直接処分することを原子力発電事業者が選択できるようなりました。その後、原子力発電からの段階的撤退政策を受けて2002年4月に改正された原子力法において、原子力発電所からの再処理を目的とした使用済燃料の搬出を2005年7月以降永続的に禁止しています。

原子力発電所で発生する使用済燃料は、原則として処分のために搬出するまで、発生したサイト内で貯蔵する方針です。使用済燃料は、燃料プールで約5年間冷却された後、「輸送貯蔵兼用キャスク」に収納して貯蔵されます。こうした乾式貯蔵は、運転中と閉鎖された原子力発電所を含め、12の原子力発電所で実施されています。

使用済燃料の乾式中間貯蔵
ゴアレーベン中間貯蔵施設における
使用済燃料の乾式中間貯蔵

(写真提供:GNS社)

一部の使用済燃料は、原子力発電所から搬出され、ゴアレーベンとアーハウスの2カ所の集中中間貯蔵施設で貯蔵されています。電力会社などが出資しこれらの中間貯蔵施設を操業する原子力サービス会社(GNS)は、ゴアレーベン中間貯蔵施設において使用済燃料だけでなく、フランスと英国に委託した再処理からの返還ガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)を併せて貯蔵する計画でした。ゴアレーベン中間貯蔵施設では、1995年から使用済燃料を収納した「輸送貯蔵兼用キャスク」の受け入れが始まりました。しかし、使用済燃料の輸送に対する反対運動が激しくなったことから、1997年を最後に使用済燃料の搬入は行われていません。外国からの返還ガラス固化体の受け入れは継続していましたが、2013年3月の連邦とニーダーザクセン州の合意に基づき、搬入を停止することになりました。今後返還されるガラス固化体は、原子力発電所サイトに貯蔵することが検討されています。

アーハウス中間貯蔵施設では、主として研究炉や高温ガス炉(実験炉と実証炉、いずれも1980 年代末に廃止)の使用済燃料を乾式貯蔵しています。なお、旧東ドイツに導入された原子力発電所の廃止措置に伴い、それらの発電所からの使用済燃料が、ノルト集中中間貯蔵施設において乾式貯蔵されています。

2016年12月末時点で、ドイツ国内の使用済燃料貯蔵量は約8,485トン(ウラン換算トン、以下同じ)です。また既に約6,670トンの使用済燃料が主としてフランス及び英国において再処理されています。


処分方針

ドイツにおける放射性廃棄物の分類
ドイツにおける放射性廃棄物の分類
発熱量の違いで区分されています

ドイツでは2002年の原子力法改正以降、再処理のために既にフランスと英国に搬出した使用済燃料は再処理し、回収したプルトニウムなどを燃料として再利用するものの、それ以外の使用済燃料はそのまま高レベル放射性廃棄物として直接処分する方針です。従って、処分対象となる高レベル放射性廃棄物は、使用済燃料と、外国(フランスと英国)に委託した再処理に伴って返還されたガラス固化体の両方があります。

ドイツでは、放射性廃棄物を処分する場合は全て、国内で地層処分する方針です。処分時に地層への熱影響を考慮しなければならない廃棄物を「発熱性放射性廃棄物」と定義し、それ以外を「非発熱性放射性廃棄物」としています。使用済燃料とガラス固化体は、発熱性放射性廃棄物に該当します。

処分の対象となる発熱性放射性廃棄物の量は、2022年までに全ての原子炉を閉鎖することを前提として、約28,100m3(処分容器込みの体積)と推定されています。





〔参考資料〕

ドイツの原子力発電利用状況

電源別発電電力量の変遷

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電力需給バランス

2015年 ドイツ 単位: 億kWh (=0.01 x GWh)
総発電電力量 (Total Production) 6,468.88
- 輸入 (Imports) 370.08
- 輸出 (Exports) -852.90
国内供給電力量 (Domestic Supply) 5,986.06
国内電力消費量 (Final Consumption) 5,147.31

source: «Energy Statistics 2017, IEA» Germany 2015:Electricity and Heat

原子力発電の利用・導入状況

  • 稼働中の原子炉数 7基, 944.4万kW(2018年1月)

source: World Nuclear Power Reactors & Uranium Requirements (WNA, 世界原子力協会)


原子力関連施設

ドイツの主要な原子力関連施設の立地点

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