ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分
「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)では、まず国民各層の代表者33名で構成される「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が、安全要件やサイト選定基準、サイト選定手続きの検討を行ってきました(「IV. 処分地選定の進め方と地域振興」参照)。この委員会の会合はすべてインターネットで中継され、議事録や会議資料、報告書も公開されています。
選定手続きの開始後は、実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が提案する複数の候補地から、公衆参加プロセスを経て対象を絞り込むことになっています。また、サイト選定法において、これらの手続きの期間を通じて、インターネットなどのメディアを介して関連の情報発信・意見聴取を行うことを規定しています。
また、サイト選定に関わる以下のような重要な事項については公衆や関係する州や地元自治体が見解を表明する機会を作らなければならないとしています。
サイト選定では、連邦レベルにおける国民意見反映のための組織として、国民のさまざまな層で構成される「社会諮問委員会」を設置することになっています。サイト選定法に基づき、社会諮問委員会の詳細を含め、公衆参加についても検討することとなっていた高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016 年7月に公表した最終報告書において、公衆参加の枠組みについて、連邦、地域横断、地域の3 つのレベルで、市民代表や各地域の住民などで構成される委員会や合議体を設置することを勧告しています(下表参照)。これらの委員会・合議体は、サイト選定プロセスの各段階において、公衆参加の結果を報告書としてとりまとめ、提出することとされています。
これらの委員会・合議体のうち、連邦レベルでの公衆参加組織である社会諮問委員会については、2016年11月に議会選出委員の6名、及び市民代表委員3名の合計9名が任命されました。市民代表委員については、全国5か所で市民フォーラムを開催し、サイト選定に関する課題、今後の選定手続きや社会諮問委員会の役割について学ぶ取り組みなどを行ったうえで選出されました。3名の市民代表委員には、16歳~ 27歳の若年層を代表する委員が1名含まれています。なお、サイト選定選定手続きの開始後、社会諮問委員会の委員は18名に拡大され、本格的に活動を行うことになっています。
サイト選定法では、連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)が、サイト選定手続きを監督するとともに、サイト選定手続きの早い段階から全期間にわたり、プロジェクトの目的、手段及び実現状況、発生すると考えられる影響に関する情報を提供することとされています。この手続きは、インターネットなどの媒体を通じた対話志向のプロセスで実施すべきであることが規定されています。また、BfEは、公衆に包括的な情報提供を行うために、情報提供を行うインターネット・プラットフォームを設置することとされています。このプラットフォームでは、BfEや実施主体であるBGEが作成したサイト選定手続きに関する重要文書を継続的に公表することが規定されています。さらにサイト選定法では、サイト選定における提案が示された際の見解表明手続き後に、BfEが示された見解などに関する検討会議を地元において開催することが規定されています。
ドイツでは2013年4月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)の法案が閣議決定された後、同年5月31日から6月2日の3日間にわたり、「サイト選定法に関する市民フォーラム」がベルリンで開催されました。このフォーラムでは連邦議会に所属する各政党の議員や処分事業関連の専門家らが出席し、公衆参加などの社会的側面から資金・技術面などサイト選定法案で扱われている多くの側面について説明し、市民と議論を交わしました。
フォーラムの模様は全てインターネットで同時中継され、録画画像は動画投稿サイトを通じて公開されています。会場での議論に加え、インターネットを通じた市民からの意見聴取も実施されました。
ゴアレーベンでの探査が中止される以前は、処分の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が主に一般市民向け、BfSの委託を受けて実際の調査作業を行っていたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)が主にサイト周辺住民向けの広報活動を実施していました。
プレスリリースや情報冊子、講演会の開催や見本市への出展に加え、ゴアレーベンには情報センターが設けられ、地下探査坑道の見学を組み込んだサイトツアーが実施されていました。2009年からは、移動展示車両で各地を巡回する情報提供活動も実施されました。