諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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srsr:turva-2012:methodology

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srsr:turva-2012:methodology [2014/03/11 15:12] – [b) 処分場システム(で起こる)シナリオ] sahara.satoshisrsr:turva-2012:methodology [2014/03/25 10:26] (現在) sahara.satoshi
行 51: 行 51:
 処分場システム及び地表環境の変遷や性能には不確実性が存在する。こうした不確実性が存在することから、安全評価において、一定範囲のシナリオを作成し、解析することが必要となる。 処分場システム及び地表環境の変遷や性能には不確実性が存在する。こうした不確実性が存在することから、安全評価において、一定範囲のシナリオを作成し、解析することが必要となる。
  
-TURVA-2012セーフティケースの放射性核種放出計算に使用しているシナリオは、処分場システムと地上環境に関する様々な変遷に基づくものであり、それぞれにシナリオ分類定義されている。+TURVA-2012セーフティケースの放射性核種放出計算に使用るシナリオは、処分場システム地上環境に関する様々な変遷に基づくものであり、前者と後者のそれぞれにシナリオ分類定義ている。
  
  
-==== a)規制要件からのシナリオ区分====+==== A)規制要件からのシナリオ区分====
  
 {{:srsr:turva-2012:Posiva_2012-12-F2-6_ja.png?400&nodirect|図9}}\\ {{:srsr:turva-2012:Posiva_2012-12-F2-6_ja.png?400&nodirect|図9}}\\
 <fs 90%>図9 規制指針YVL D.5にしたがったシナリオ分類</fs> <fs 90%>図9 規制指針YVL D.5にしたがったシナリオ分類</fs>
  
-フィンランドの規制指針YVL D.5は、セーフティケースにおいて予想される変遷シナリオと長期安全性を損なう発生の見込みの低い事象の両方を析すること求められており、3種類のシナリオ(基本シナリオ、バリアント・シナリオ、擾乱シナリオ)提示されている。TURVA-2012セーフティケースでは、規制指針YVL D.5にしたがって、図9に示すようなシナリオ分類がなされている。+フィンランドの規制指針YVL D.5は、セーフティケースにおいて予想される変遷シナリオと長期安全性を損なう発生の見込みの低い事象の両方を析すること求めており、3種類のシナリオ分類(基本シナリオ、バリアント・シナリオ、擾乱シナリオ)提示ている。TURVA-2012セーフティケースでは、規制指針YVL D.5にしたがって、図9に示すようなシナリオ分類がなされている。
  
   * **ベースシナリオ**:最も発生の見込みが高い変遷(性能目標及び安全機能が満たされる状況のもの)が取り扱われる。その一方で、1体または複数のキャニスタが検出されずに残った貫通欠陥を伴う可能性が考慮に入れられている。これは排除することのできない偶発的逸脱の一つとしてとらえられている。   * **ベースシナリオ**:最も発生の見込みが高い変遷(性能目標及び安全機能が満たされる状況のもの)が取り扱われる。その一方で、1体または複数のキャニスタが検出されずに残った貫通欠陥を伴う可能性が考慮に入れられている。これは排除することのできない偶発的逸脱の一つとしてとらえられている。
行 65: 行 65:
   * **擾乱シナリオ**:発生の見込みは低いと見なされるものの、その可能性を排除することはできない変遷が取り扱われる。   * **擾乱シナリオ**:発生の見込みは低いと見なされるものの、その可能性を排除することはできない変遷が取り扱われる。
  
-==== b処分場システム(で起こる)シナリオ==== +==== B)安全評価を行うシナリオ ====
-<WRAP center round important > +
-  *「処分場システムシナリオ」は、「規制要件からのシナリオ区分」名(上記a)参照)のいずれかに属するものではない。 +
-  * 処分場システムシナリオが「規制要件からのシナリオ区分」に従って区別されるのである。ホントか? +
-</WRAP>+
  
 +安全評価を行うシナリオは、“処分場システムで起こる変遷” と “地上環境で起こる変遷” に分けて定義している。それぞれ「処分場システムシナリオ」と「地上環境シナリオ」と呼び、各々に、規制要件からのシナリオ区分(ベースシナリオ、バリアント・シナリオ、擾乱シナリオ)を対応付けている。
  
  
-処分場システムに関するシナリオ作成に関するポヴァ社のアプロチは、最に安全機能特定し、そのえで単独のFEPまたはFEP組合せこれら機能及ぼす影響と予想される変遷におけ不確実性影響とを考慮に入れているいうである。+{| style="margin-left:5%; width:90%;" 
 +|+ 表4. 規制要件からのシナリオ区分と安全評価を行うシナリオ 
 +
 +  
 +
 +処分場システムシナリオ 
 +
 +地上環境ナリオ 
 +|- 
 +
 +スシナリオ 
 +
 +1件の期貫通1体または複数キャニスタ処分場定置され、放射性核種の放出が起こる。 
 +
 +予想される気候変遷と地上環境の物理的な変化基づく。将来の人間活動については現在の習慣に基づき様式化す。 
 +|- 
 +
 +バリアント・シナリオ 
 +
 +キャニスタ安全機能の低下及び/または他のバリアの複数の安全機能の低下の組合せを考慮する。 
 +
 +湧出場所、海水位の変化、土地利用及び人間の習慣ての代替案を採用す。 
 +|- 
 +
 +擾乱シナリオ 
 +|colspan="2"
 +発生の見込みの低自然現象(大規模地震や緩衝材に著しい侵食を及ぼすよな希薄融氷水侵入等)や発生の見込みの低い人間活動に関する現象を考慮する。 
 +|}
  
-シナリオのそれぞれについて、生じ得る放射線学的影響を解析するために、計算ケース定義されている。これらの計算ケースでは、様々な仮定やデータに関する不確実性、モデル及びパラメータ値の変動通じて考慮に入れている。+ 
 +  * B1) 処分場システム(で起こる)シナリオ 
 +  * B2) 地上環境(で起こる)シナリオ 
 +  * B3) 「処分場システムシナリオ」と「地上環境シナリオ」を組み合わせた解析・評価 
 + 
 +\\ 
 +=== B1) 処分場システム(で起こる)シナリオ=== 
 + 
 +処分場システムに関するシナリオ作成に関するポシヴァ社のアプローチは、最初に安全機能を特定し、そのうえで単独のFEPまたはFEPの組合せがこれら機能に及ぼす影響と予想される変遷における不確実性の影響を考慮に入れるというものである。 
 + 
 +シナリオのそれぞれについて、生じ得る放射線学的影響を解析するために、計算ケース定義ている。様々な仮定やデータに関する不確実性これらの計算ケースで使うモデル及びパラメータ値を変え設定することで考慮に入れている。
  
 {| style="margin-left:5%; width:90%;" {| style="margin-left:5%; width:90%;"
-|+ **4** 処分場システムシナリオの分類と計算ケース +|+ 表5. 処分場システムシナリオの分類と計算ケース 
-!+!style="width:7em;"|
 シナリオ シナリオ
 ! !
 内容 内容
-!+!style="width:15em;"|
 計算ケース 計算ケース
 |- |-
 | |
-シナリオ+ベースシナリオ
 | |
-概要文+直径1mmの貫通欠陥を伴う1体または複数のキャニスタが処分場内に存在するという偶発的な逸脱が生じる。 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *BS-RC\\ (レファレンス・ケース) 
 +  *BS-LOC1 
 +  *BS-LOC2 
 +  *BS-ANNFF 
 +  *BS-TIME 
 + 
 +|- 
 +|rowspan="2"
 +バリアント・シナリオ
 | |
-計算ケース識別記号+**1**:腐食に起因する形で初期欠陥が徐々に拡大する。 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *VS1-BRACKISH 
 +  *VS1-HIPH 
 +  *VS1-HIPH_NF 
 + 
 +|- 
 +
 +**2**:初期貫通欠陥はない(銅製キャニスタの壁は35mmと薄い):緩衝材の侵食が生じ、その後に4体のキャニスタが腐食する。 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *VS2-H1 
 +  *VS2-H2 
 +  *VS2-H3 
 +  *VS2-H4 
 + 
 +|- 
 +|rowspan="3"
 +擾乱シナリオ 
 +
 +**AIC**:インサト腐食速度の増大(定置から1,000年後に初期欠陥を伴う欠陥キャニスタのインサートが腐植を開始する。) 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *AIC-LI 
 +  *AIC-TI 
 + 
 +|- 
 +
 +**RS**:岩盤剪断(定置から40,000年後及び155,000年後に岩盤剪断の結果として単数または複数のキャニスタが破損する。) 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *RS1 
 +  *RS2 
 + 
 +|- 
 +
 +**RS-DIL**:岩盤剪断後の緩衝材の侵食(岩盤剪断の結果として、単数または複数のキャニタが破損する事象に続き、イオン強度が低い水が利用可能になった時点で緩衝材に侵食が生じる。) 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *RS1-DIL 
 +  *RS2-DIL 
 |} |}
  
  
 \\ \\
-==== c) 地上環境(で起こる)シナリオ ===+=== B2) 地上環境(で起こる)シナリオ ===
-<WRAP center round important > +
-  * シナリオ= 「b)処分場システムシナリオ」+「c) 地上環境シナリオ」?ということが正しければ、先に説明しておく。 +
-</WRAP>+
  
 地上環境には安全機能が割り当てられていないため、地上環境に関するシナリオ作成に関するポシヴァ社のアプローチは、処分場システムに関するものとは幾分異なっており、複数の“信憑性のある変遷の道筋”で構成される概念を使用する。すなわち、予想される気候変動(ただし、地上環境シナリオの評価期間は処分後10,000年に限定されており、気候は現状のまま維持されると仮定する。)と地上環境の物理的な変化(例えば、海水準の変動や自然生態系の推移)に基づくものであるが、将来の人間活動については現在の習慣に基づいて様式化されたアプローチを採用している。 地上環境には安全機能が割り当てられていないため、地上環境に関するシナリオ作成に関するポシヴァ社のアプローチは、処分場システムに関するものとは幾分異なっており、複数の“信憑性のある変遷の道筋”で構成される概念を使用する。すなわち、予想される気候変動(ただし、地上環境シナリオの評価期間は処分後10,000年に限定されており、気候は現状のまま維持されると仮定する。)と地上環境の物理的な変化(例えば、海水準の変動や自然生態系の推移)に基づくものであるが、将来の人間活動については現在の習慣に基づいて様式化されたアプローチを採用している。
  
-地上環境シナリオの解析では、生物圏計算ケース定義されている。計算ケースは、様々な仮定及びモデルに関する不確実性と、モデル内で適用されたパラメータ値に関する不確実性及び変動性考慮に入れられている。+地上環境シナリオの解析では、生物圏計算ケース定義ている。計算ケースの設定においては、様々な仮定及びモデルに関する不確実性と、モデル内で適用されたパラメータ値に関する不確実性及び変動性考慮ている。
  
 {| style="margin-left:5%; width:90%;" {| style="margin-left:5%; width:90%;"
-|+ **5** 地上環境システムシナリオの分類と計算ケース +|+ 表6. 地上環境システムシナリオの分類と計算ケース 
-!+!style="width:7em;"|
 シナリオ シナリオ
 ! !
 内容 内容
-!+!style="width:15em;"|
 計算ケース 計算ケース
 |- |-
 | |
-シナリオ+ベースシナリオ
 | |
-概要文+海水位の変化に起因する陸地環境の変化(土地の隆起等)を考慮するが、気候のタイプと人間の習慣は変化せず、現状のまま維持される仮定。 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *BSA-RC \\ (レファレンス・ケース) 
 + 
 +|- 
 +|rowspan="5"
 +バリアント・シナリオ 
 +
 +**VS(A)**:地上環境への湧出場所 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *VS(A)-SOUTH1 
 +  *VS(A)-SOUTH2 
 + 
 +|- 
 +
 +**VS(D)**:土地利用(井戸) 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *VS(D)-WELL 
 +  *VS(D)-NO_WELL 
 + 
 +|- 
 +
 +**VS(E)**:生物圏コンパートメントにおける代替放射性核種移行経路(生物圏の陸上及び水中コンパートメント内の代替放射性核種移行経路が、一定数の陸上及び水中プロセスに影響を及ぼす。) 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *VS(E)-RNT1 
 + 
 +|- 
 +
 +**VS(F)**:被ばく特性(人間の食習慣) 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *VS(F)-FINDIET 
 +  *VS(F)-VEG 
 + 
 +|- 
 +
 +**VS(G)**:複合シナリオ 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *VS(G)-COMBI 
 + 
 +|- 
 +|rowspan="3"
 +擾乱シナリオ 
 +
 +**DS(D)**:被ばく特性 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *DS(D)-HABITAT 
 + 
 +|- 
 +
 +**DS(F)**:意図的でない人間侵入 
 +|style="font-size:90%;"
 +  *DS(F)-HI-CANISTER-D 
 +  *DS(F)-HI-CANISTER-G 
 +  *DS(F)-HI-BUFFER-D 
 +  *DS(F)-HI-BUFFER-G 
 +  *DS(F)-HI-BACKFILL-D 
 + 
 +|-
 | |
-計算ケース識別記号+**DS(G)**:深層井戸 
 +|style="font-size:90%;"
 + 
 |} |}
  
行 126: 行 263:
  
 \\ \\
-==== d) シナリオ組合せ ====+=== B3)「処分場システムシナリオ」と「地上環境シナリオ」をた解析・評価 ===
 フィンランドにおける放射線防護に関する定量的な規制基準は、「生活環境」への各核種の放射能放出(地圏-生物圏フラックス)及び年線量(最も被ばくを受ける人々への年線量及び人々への平均年線量)で表わされる。また、植物及び動物に対する線量の評価も要求されており、TURVA-2012で計算される安全指標は、 フィンランドにおける放射線防護に関する定量的な規制基準は、「生活環境」への各核種の放射能放出(地圏-生物圏フラックス)及び年線量(最も被ばくを受ける人々への年線量及び人々への平均年線量)で表わされる。また、植物及び動物に対する線量の評価も要求されており、TURVA-2012で計算される安全指標は、
   * 地圏-生物圏フラックス   * 地圏-生物圏フラックス
行 134: 行 271:
 から成る。なおポシヴァ社は、図10に示すように、全ての計算ケースで線量計算が必要となるわけではないとしている。フィンランドの規制では、定量的な評価は評価の時間枠の終わりまで継続する必要はなく、より短い期間に限定することもできることを示唆している。 から成る。なおポシヴァ社は、図10に示すように、全ての計算ケースで線量計算が必要となるわけではないとしている。フィンランドの規制では、定量的な評価は評価の時間枠の終わりまで継続する必要はなく、より短い期間に限定することもできることを示唆している。
  
-フィンランドの規則は人間、植物及び動物に対する線量の評価も要求しており、これは十分な信頼性を持った評価が実施可能な期間(少なくとも数千年)にわたって行われるべきである。結果、ポシヴァ社は10,000年までの期間を線量基準時間枠(dose criteria time window)としている。線量基準時間枠内での地表環境への放出が見積られた計算ケースについては、生物圏のモデル化実施され、その結果『生物圏評価』(Biosphere Assessment)報告されている。+フィンランドの規則は人間、植物及び動物に対する線量の評価も要求しており、その評価は十分な信頼性を持った評価が実施可能な期間(少なくとも数千年)にわたって行べきであると勧告が述べられている。勧告ーの対応としてポシヴァ社は10,000年までの期間を線量基準時間枠(dose criteria time window)としている。線量基準時間枠内での地表環境への放出が見積られた計算ケースについては、生物圏のモデル化実施、その結果『生物圏評価』(Biosphere Assessment)報告ている。
  
 {{:srsr:turva-2012:Posiva_2012-09-F2-2_ja.png?400&nodirect|}}\\ {{:srsr:turva-2012:Posiva_2012-09-F2-2_ja.png?400&nodirect|}}\\
srsr/turva-2012/methodology.1394518323.txt.gz · 最終更新: 2014/03/11 15:12 by sahara.satoshi