諸外国の高レベル放射性廃棄物処分等の状況

 

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スイスにおける
高レベル放射性廃棄物処分

> 2.法制度

2.1 法制度-計画

 1978年に示された「原子力法に関する連邦決議(1978.10.6/2001.2.13)」【2】及び政府の要求によって、原子力発電所の新規建設・運転に必要な概要承認の発給及び既存の原子力発電所の運転許可延長の要件として、原子力施設で発生する放射性廃棄物の最終処分の実現可能性及び安全性の確保が求められた。こうした状況を受け、原子力発電会社及び連邦政府などの組合員によって構成される放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、これまでに「スイスにおける放射性廃棄物処分:概念及び実現計画(1992.12)」【5】及び「高レベル放射性廃棄物処分:目的、戦略及びタイムスケール、地質調査、長期安全評価及び放射線リスク(1995.3)」などを発表し、放射性廃棄物処分の計画を示してきた【7】。2005年2月に施行された原子力法(2003.3.21)【13】では、第32条において、放射性廃棄物の管理義務を有する者に対し、「放射性廃棄物管理プログラム」の策定を義務付けている。このプログラムは、連邦評議会が指定する官庁によって審査され、連邦評議会が最終的にプログラムに対する許可を与えることとなっている。原子力法と共に施行された原子力令(2004.12.10)【15】では、地層処分場建設のための実施計画などの「放射性廃棄物管理プログラム」に記述しなければならない項目が規定されている。放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2008年に「放射性廃棄物管理プログラム」を連邦政府に提出した。【14,24】

2.2 法制度-実施体制
(現状は1.5実施主体の節を参照)

 スイスでは、旧原子力法(「原子力の平和利用に関する法律(1959.12.23/1996.1.1)」)【1】における放射性廃棄物管理の発生者責任に関する規定に基づき、原子力発電会社及び連邦政府などにより、1972年に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が設立された。また、2005年2月に施行された現行の原子力法(2003.3.21)第31条においても、原子力施設を運転する者は放射性廃棄物を自身の費用によって安全に管理する義務があることが規定されている。全ての放射性廃棄物の処分責任を有する放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)や規制機関などを含む、高レベル放射性廃棄物処分の実施体制は以下のようになる。【14,25,42】

高レベル放射性廃棄物処分の実施体制図
高レベル放射性廃棄物処分の実施体制図

2.3 法制度-資金確保

 スイスでは、原子力発電所の閉鎖後に発生する放射性廃棄物管理費用を確保するために、放射性廃棄物管理基金が設置されている。また、2003年の原子力法は、原子力施設の所有者に放射性廃棄物基金への拠出を義務付けている。なお、放射性廃棄物管理基金については、2000年3月の「原子力発電所の放射性廃棄物管理基金に関する法規命令(2000.3.6.)」【9】で設置などが規定されていたが、同政令は2007年12月に「原子力施設の廃止措置基金及び廃棄物管理基金に関する政令(2007.12.7)」【21】によって置き換えられている。この新しい政令では、放射性廃棄物管理費用の算出や分担金などが規定されている。基金の積立の対象となるのは、原子力発電所の閉鎖後に発生する以下の放射性廃棄物管理に要する全費用である。なお、高レベル放射性廃棄物処分場開発についてはすべてこの基金で賄われることとなっている。【13,49】

  1. 放射性廃棄物の輸送
  2. 原子力発電所の運転によって発生する放射性廃棄物の処理
  3. 放射性廃棄物の中間貯蔵
  4. 使用済燃料の再処理または使用済燃料の処分のためのコンディショニング
  5. 放射性廃棄物の処分


 なお、放射性廃棄物管理基金は基金の管理委員会が管理しており、資金確保の仕組みは以下のようになっている。

資金確保の仕組み
資金確保の仕組み

 また、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が行っている活動に要する費用は、電力会社及び政府が負担している。【14】

2.4 法制度-サイト選定、及び自治体の撤退の権利

 高レベル放射性廃棄物の処分場のサイト選定に適用される主要な法令としては、「原子力法(2003.3.21)」及び「原子力令(2004.12.10)」がある。原子力法では、原子力施設の許可は連邦政府が一元的に発給することなどが規定されており、地層処分場に関する情報収集のために行われる立地候補地域における地球科学的調査には、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可を必要とすることが規定されている。また、同法では、地層処分場の建設及び操業を行うためには、立地場所、施設の目的及びプロジェクトの基本事項などを定める連邦評議会の概要承認(詳細はこちら)が必要であることが規定されている。概要承認発給の条件として、モニタリング期間や閉鎖に関する計画などに加えて、地層処分場の場合は地球科学的調査の結果に基づいたサイトの適性の立証が求められている。概要承認の発給に関する連邦評議会の決定については連邦会議(上下両院の合同会議)による承認が必要であり、また、連邦会議の議決結果については、一定数の国民の発案があった場合には国民投票の対象となることが定められている。

 2008年4月、連邦評議会は原子力令第5条に基づき、地層処分場のサイト選定手続等を規定する特別計画(詳細はこちら)「地層処分場」を承認した。同計画では、3段階でのサイト選定が定められ、関係する州や地域との協力等により、安全・技術的実現可能性、地域開発計画、環境、社会経済的観点などの評価によりサイト選定が行われることとなっている。【13,15,18,22,46】

 地層処分場の建設及び操業に先立って必要とされる概要承認は、国民投票の対象とすることができるものの、特別計画「地層処分場」には、サイト選定手続きからの州や自治体の自発的な意思による撤退に関する規定はない。スイスでは、1990年代から2000年代前半にかけて、ニドヴァルデン州ヴェレンベルグにおいて低中レベル放射性廃棄物処分場の建設のためのプロジェクトが進められたものの、州が発給した許可が2度にわたって州民投票で否決されたことによって、このプロジェクトは断念された(詳細はこちら)。その後、2003年に制定された原子力法は、原子力施設の概要承認及び許可手続きについて、以下を規定している。【1,24】

  • 概要承認に関する手続きにおいて、関係する州の懸念は、プロジェクトが極度に制限を受けない範囲で考慮される。

  • 原子力施設の建設、及び地球科学的調査において、原子力法及び関連する連邦法の許可により、必要な全ての許可が発給される。

  • 州の許可は不要であり、州法はプロジェクトを極度に制限しない範囲で考慮される。

  • 地元州の意思に反して連邦政府が許可を発給した場合、州は異議の申し立てができる。

2.5 法制度-環境

 高レベル放射性廃棄物の処分場開発に関する環境影響評価については、「環境保護に関する法律(1983.10.7)」【3】及び「環境影響評価に関する法規命令(1988.10.19)」【4】が適用される。放射性廃棄物処分場の環境影響評価は、「環境影響評価に関する法規命令(1988.10.19)」により、多段階での環境影響評価の実施が定められている。第1段階は処分場の概要承認手続(詳細はこちら)において、第2段階は建設許可手続において環境影響評価が求められている。【4】

 「環境影響評価に関する法規命令(1988.10.19)」第8条では、第1段階(概要承認手続)及び第2段階(建設許可手続)における評価のそれぞれにおいて、予備的な評価として、その施設が環境に及ぼす影響の負荷を調査することを規定している。環境に対して著しい影響が予想される場合には、評価を要する影響を示し、評価の場所及び時間的な範囲を定めた仕様書を連邦当局へ提出する。連邦当局はこの仕様書を連邦の環境保護専門機関へ提出し、同専門機関が申請者に対して助言を与える。連邦当局は2ヶ月以内に仕様書に対して見解を表明し、これに基づき環境影響評価が実施され報告書が作成される。この報告書は連邦及び州の環境専門機関による判定を受け、連邦当局が環境影響評価に関する決定を行うことになる。【4】

 2005年2月に施行された原子力令においても、概要承認及び建設許可申請に必要な書類として環境影響評価報告書が明記されている。【15】

2.6 法制度-安全

 2005年2月に施行された「原子力令(2004.12.10)」【15】では、原子力施設安全本部(HSK)が原子力施設の原子力安全に対する責任を持つ監督官庁であることなどが定められている。

 なお、2007年6月に「連邦原子力安全検査局(ENSI)に関する連邦法」が連邦議会で可決された。この法律は、これまで組織上、連邦エネルギー庁(BFE)の一部であった原子力施設安全本部(HSK)を連邦原子力安全検査局(ENSI)として独立させること、 及び原子力施設安全委員会(KSA)に代わり原子力安全委員会(KNS)を設置することを定めている。ENSIは2009年1月に設立された。原子力法は、KNSの役割として、ENSI、UVEK及び連邦評議会の諮問を受け安全性に関する基本的な問題を検討すること、及び原子力安全の分野での立法作業に協力することを規定している。【13,17,20】

  連邦原子力安全検査局(ENSI)は原子力安全及び放射線防護に関する指針を策定する責任を有しており、放射性廃棄物処分に関する安全性について評価する際に適用される指針として、「地層処分の設計原則とセーフティケースに関する要件 ENSI-G03(2009.4)」【27】を策定している。この指針では、放射性廃棄物から放出される放射線から人間及び環境が長期的に保護される方法で、放射性廃棄物を処分しなければならないとされており、下記の表で示す2つの定量的な防護目標が設定されている。地層処分場のセーフティケースについては、許可手続の各段階(概要承認、建設、操業、閉鎖、及び閉鎖の確認申請)での提出が求められている。【27】

防護目標1 将来の変遷のうち、発生確率が高いと分類されるものについては、放射性核種の放出による個人線量が年間0.1mSvを上回ってはならない。
防護目標2 将来の変遷のうち、発生確率が低いと分類されるものについては、放射線による追加的な健康リスクが年間100万分の1を上回ってはならない。

本ホームページは、経済産業省資源エネルギー庁の委託事業として、公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センターが整備しています。

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