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このWebサイトでは、諸外国における高レベル放射性廃棄物の最終処分や地層処分の計画の動きに注目し、 "海外情報ニュースフラッシュ"として 最新の正確な情報を迅速に提供しています。 ニュースフラッシュを発行した後も、記事トピックをフォローしています。必要に応じて、情報の"追記"を行っています。


欧州委員会(EC ―欧州連合(EU)の執行機関)の2011年7月19日付のプレスリリースによると、同日、EU理事会(閣僚級代表で構成されるEUの決定機関)は「使用済燃料及び放射性廃棄物の責任ある安全な管理に関する、共同体(EURATOM)の枠組みを構築する理事会指令」を採択した。本指令は、EUがEU加盟国に対して、自国における使用済燃料及び放射性廃棄物の管理責任の履行を義務づける強固な枠組みを構築するためのものである。EU加盟国は、指令の規定内容を、発効後1 2年以内に国内法に反映しなければならず、さらに発効後4年以内に、国家計画、及び指令の実施状況に関してECに通知しなければならない2

ECのプレスリリースでは、指令の主な規定として以下を挙げている。

  • EU加盟国は、2015年までに放射性廃棄物管理に関する国家計画を策定し、ECに通知する。ECは、詳細に調査し、計画の修正を要求できる。国家計画では、処分場建設のスケジュール、費用見積り、資金確保の枠組み等を示さなければならず、定期的に更新しなければならない。
  • 国際原子力機関(IAEA)が策定している安全基準に法的拘束力を持たせる。
  • 公衆及び従事者への情報提供が義務付けられ、公衆は意思決定過程への参加機会を与えられる。
  • EU加盟国は、10年を超えない間隔で、国際ピアレビューを実施する。
  • 複数のEU加盟国が共同で、それらの国内にある処分場を利用することに関して合意することができる。また、厳格な条件の下で、放射性廃棄物をEU域外国へ輸出することができる。

なお、放射性廃棄物を処分する目的でEU域外に当該廃棄物を輸出する場合には、輸出国はその旨をECに事前に通知するとともに、①輸出先の国が使用済燃料及び放射性廃棄物の管理を対象とした欧州原子力共同体(EURATOM)との協定を締結している、または「使用済燃料管理と放射性廃棄物管理の安全に関する条約」の締約国であるか、②輸出先の国が今回採択された指令と同等の高水準の安全の確保を目的とした放射性廃棄物処分に関する計画を有しているか、③輸出先の国における処分場が、輸送される放射性廃棄物に関して承認されているものであること、輸送に先立って操業していること、及びその輸出先の国の放射性廃棄物の管理及び処分の計画で規定された諸要件を遵守して運営されていること、を保証するための合理的な措置を講じる必要があるとしている。

EURATOM条約によると、放射線防護等の分野における指令等の草案はECが作成し、欧州議会の意見を得た上で、その採択の判断はEU理事会が行うことになっている。2010年11月にECは、今回採択された指令の草案を公表しており、その後、EU理事会において採択可否の検討が進められ、「特定多数決」3 により採択された 。

【出典】

【2012年11月20日追記】

原子力発電所が所在する欧州17カ国4 の規制機関によって構成されている「西欧原子力規制当局連合」(WENRA)は、2012年11月19日付けのプレスリリースにおいて、「放射性廃棄物及び廃止措置に関するワーキンググループ」(WGWD)が「放射性廃棄物の処分施設の安全性に関するリファレンスレベル」についてのドラフト報告書を作成し、パブリックコメントを開始したことを公表した。

ドラフト報告書は、欧州連合(EU)の使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する指令で示された安全目標に沿って、処分施設の安全性に関するリファレンスレベルの提示を目的としたものである。安全性に関するリファレンスレベルとは、EU加盟国の検討状況を評価するための要件とされており、リファレンスレベルを達成するための行動を実施する責任は、EU加盟国にあるとされている。

ドラフト報告書は、2013年4月30日までのパブリックコメントに付されおり、コメント数や重要性に基づいて、公聴会、ワークショップ等の開催の必要性をWGWDが判断するとされている。ワークショップ等が必要と判断された場合は、2013年の6月末または7月上旬に開催されることが計画されている。処分施設の安全性に関するリファレンスレベルについての最終報告書の取りまとめは、現在策定中の「放射性廃棄物及び使用済燃料の貯蔵の安全性に関するリファレンスレベル」、「廃止措置の安全性に関するリファレンスレベル」についての最終報告書の取りまとめ作業とあわせて進められるとされている。

【出典】


  1. 本指令は、欧州連合官報への掲載後、20日目に発効すると規定されており、ECのプレスリリースでは、遅くとも2011年9月には指令が発効するとしている。 []
  2. 欧州原子力共同体(EURATOM)条約の規定によると、ECが、EU加盟国が義務を履行していないと判断した場合、所見を提出させた上で、ECは当該加盟国に理由を付した意見書を提出する。当該加盟国が、ECが定めた期限内に意見書に従わない場合、ECは欧州司法裁判所に提訴することができる。 []
  3. 「特定多数決」では、概ね人口に応じてEU加盟国に票が割り当てられ、27の加盟国の合計票数は345票になる。成立には少なくとも255票(73.9%)が必要であり、さらに、加盟国の過半数が賛成していること、賛成票がEU全人口の少なくとも62%を代表していること、という条件がある。 []
  4. WENRAを構成する17カ国は、EU加盟国16カ国(ベルギー、ブルガリア、チェコ、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、オランダ、英国)とスイスである。 []

欧州委員会(EC ― 欧州連合(EU)の執行機関)は、2010年11月3日付で「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する指令1 案」を公表した。指令案の策定を伝えたEUのプレスリリースによれば、指令案は、EU加盟国に対して最終処分場をいつ、どこで、どのように建設・操業するのかを示した国家計画の策定を要求するものであり、また指令により、国際的に承認された安全基準がEU内で法的拘束力を有するようになるものとされている。

同プレスリリースによると、今回公表された指令案は、EU内で法的拘束力を有する実施可能な枠組みを構築することで、使用済燃料及び放射性廃棄物の最終処分に至るあらゆる段階において全てのEU加盟国に、国際原子力機関(IAEA)が構築している安全基準を適用させるようにするものである2 。プレスリリースには、指令案の主旨として次の5点が示されている。

  • EU加盟国は、指令採択の4年以内に国家計画を策定する。この計画には、最終処分場の建設・操業計画、処分の実施のための段階や活動の詳細を含めた建設の具体的スケジュール、費用見積り及び資金確保制度を含む。
  • EU加盟国は、国家計画を欧州委員会(EC)に送付する。ECは計画の修正を要求することができる。
  • EUの2国間または多国間で、それらの国内にある処分場を使用することに関して合意することができる。
    EU域外への最終処分のための放射性廃棄物の輸出は許可されない。
  • EU加盟国は公衆に対して情報提供を行わなければならず、また、公衆が放射性廃棄物管理に関する意思決定に参加できるようにすべきである。
  • 国際原子力機関(IAEA)が策定した安全基準に法的拘束力を付与する。処分場の建設に許可を発給し、個別の処分場の安全解析を審査する独立した規制機関を設置すべきことを定めた規定にも法的拘束力が付与される。

指令案が規定している国家計画の内容は以下の通りである。なお、指令案と併せて公表された解説文書によれば、今回の指令案は処分場のサイト選定や処分場の建設・操業開始の年限を定めるものではないとされている。

  • 将来見込みも含めた、使用済燃料及び放射性廃棄物のインベントリ
  • 放射性廃棄物の発生から処分に至るまでの計画と技術的対応策
  • 処分場の閉鎖後段階の計画(制度的管理の終了後の期間及びそれ以降の知識の保存方法も含む)
  • 使用済燃料及び放射性廃棄物の管理のために必要となる研究・開発
  • 処分の実施のための主要段階、明確なスケジュール及び責任分担
  • 処分の実施への進捗を管理するための主要業績評価指標
  • 処分プログラムの実現のための費用見積り及び見積りの根拠と仮定
  • 処分プログラムの実現のための資金確保の枠組み

指令案は、前文に続いて、指令の目的や適用範囲、一般原則、セーフティケース等に関する19の条文で構成されている(セーフティケースに関する規定については、下の「参考①」を参照)。

本指令案は、欧州原子力共同体(EURATOM)条約3 の規定に従い、欧州議会等の意見を得ながら、EU理事会(閣僚理事会 ― 閣僚級代表で構成されるEUの決定機関)で審議される。EU理事会での審議の結果、一定の賛成票が得られた場合に指令は採択されることになる4

参考①:指令案におけるセーフティケースに関する規定

今回公表された指令案の第8条は、セーフティケースについて次の通り規定している。

  1. セーフティケース及びそれをサポートする安全評価は、施設または行為の許可申請の一部として提出するものとする。それらは施設または行為の進捗に応じて、必要に応じて改訂する。セーフティケース及び安全評価の範囲と詳細さは、操業の複雑さ及び施設または行為に関連する危険性の程度に対応したものとする。
  2. セーフティケース及びそれをサポートする安全評価は、施設のサイト選定、設計、建設、操業及び廃止措置、または処分施設の閉鎖を対象とするものとする。セーフティケースによって安全評価に適用する基準を特定するものとする。閉鎖後の長期安全性は、特に、できる限りの範囲にわたって、どのようにして受動的方法により安全を確保するかという観点から取り扱うものとする。
  3. 施設のセーフティケースは、サイト、施設の設計、管理の手法及び規制による管理における、あらゆる安全性に関する観点を取り扱うものとする。セーフティケース及びそれをサポートする安全評価は、防護のレベルを示すものとし、また安全要件が遵守されることを、権限を有する監督機関及びその他の関係する組織に対して立証するものとする。
  4. セーフティケース及びそれをサポートする安全評価は、権限を有する監督機関に提出し、承認を得るものとする。

参考②:EUにおける使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する法制度の構築に向けた経緯

今回の指令の策定に向けた動きは、欧州原子力共同体(EURATOM)条約の第31条及び第32条の規定に依拠して進められている。それによれば、指令案は欧州委員会(EC)が策定し、欧州議会等の意見も踏まえ、欧州連合(EU)理事会(閣僚理事会)が指令を採択することとされている。

EUの執行機関であるECには、任務遂行の上で独立性が付与されており、EUの共通利益のために行動することを義務づけられているため、加盟国政府の意向に左右されてはならないとされている。他方、EU理事会は、EUの主たる意思決定機関であり、全ての理事会の会議には、加盟国から閣僚級代表が1名出席する。どの閣僚が出席するかは、会議の議題によって決定される。

EUでは、ECを中心として放射性廃棄物管理などに関してEU内での法的拘束力を有する制度の構築に向けた取り組みが進められており、2003年4月にはECが指令案を提出したが、これに対する2004年6月のEU理事会決定では、原子力施設の安全に対する各国の責任が強調され、指令案は採択されなかった。このEU理事会の決定では、作業部会を設置して検討を継続することが決定され、この作業部会における検討内容を踏まえ、EU理事会は原子力安全及び使用済燃料・放射性廃棄物管理に関する行動計画の策定に向けた協議プロセスを、ECなどとともに進めてきた。

EU理事会は2007年5月に、原子力安全及び使用済燃料・放射性廃棄物管理に関する決定を採択した。この決定により、原子力安全規制機関等の代表により構成される高官レベルグループが設置され、EU全体での原子力安全、放射性廃棄物管理及び廃止措置に関する取り組みの強化が図られてきた

その後、高官レベルグループは「欧州原子力安全規制者グループ(ENSREG)」と改称され、2009年6月には同グループの検討結果なども踏まえ、EU理事会により原子力安全に関する指令が採択された。今回の「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する指令案」も、ENSREGの活動の成果を踏まえて策定されたものである。

【出典】


  1. 指令は、規則及び勧告とともに、EUの法体系の中で「二次法」を構成するものである。指令が発効すると、EU加盟国は指令の規定を国の法制度に反映させなければならない。「一次法」は、EUの基本条約により構成される。 []
  2. 具体的には、指令案の前文において、IAEA安全基準シリーズNo.SF-1「基本安全原則」を遵守しなければならないとされている。 []
  3. EURATOM条約の規定の下、EUには放射線防護の法的権限が与えられている。なお、27のEU加盟国の内、14カ国に原子力発電所がある。 []
  4. EUの基本条約に基づき、EU理事会における議決は案件に応じて、単純多数決、加重票を用いた「特定多数決」、もしくは全会一致のいずれかの方法によって行われなければならない。EURATOM条約の第31条及び第32条の規定によれば、本案件は特定多数決方式により議決される。 []

欧州連合(EU)の2008年6月9日付のプレスリリースによると、2008年5月30日に原子力安全及び放射性廃棄物管理に関する高官レベルグループのミーティングが開催され、EU全体での原子力安全、放射性廃棄物管理及び廃止措置に関する取り組みを強化していくことで合意したとされている。

同プレスリリースによると、今回のミーティングでの合意を受けて進められる取り組みは次の通りである。

  • 原子力安全条約にはEUの加盟国の全てが、放射性廃棄物等安全条約にもほぼ全てが加盟しており、各国の規制機関は両条約に基づくレビュープロセスを通じて意見交換を行っているが、それに加えて、原子力安全及び放射性廃棄物管理に関する全加盟国での取り組みを強化するため、レビュープロセスで得られた知見に基づいた共通的な教訓を抽出する。
  • 現在は加盟国が任意に実施している国際原子力機関(IAEA)によるピアレビュー(総合的規制評価サービス、IRRS)を義務化する。
  • 加盟国の規制機関は、放射性廃棄物・使用済燃料管理のさらなる向上に向けた共同作業を進めていくことで合意。数カ月以内に高官レベルグループが、全加盟国における放射性廃棄物管理計画の策定・実施について協議する。
  • 加盟国の規制機関は、業務の透明性を高め、公衆に公開していくことで合意。数カ月以内に全加盟国の原子力安全に関する関連データへのアクセスを容易にするウェブサイトを開設する。

また、プレスリリースによると、今回のミーティングでは、EUでの共通的なルールの可能性についての意義についても議論が行われ、欧州全域において、原子力安全に係る最善の基準、及び放射性廃棄物の責任ある管理の実施を保証すべきであるということが認識された。高官レベルグループは、将来的な決定に係る情報を提供するための共通的な措置の得失を明らかにするため、詳細な調査に着手しているとされている。

なお、高官レベルグループは、EU理事会(閣僚理事会(閣僚級代表で構成されるEUの決定機関))の2007年5月8日の決定により設置が決まり、欧州委員会(EC。EUの執行機関)により設置されたものである。同グループの議長はスロベニアの原子力安全規制機関のトップが務めており、加盟国の原子力規制・安全機関の上級代表者で構成されている。

【出典】

  • EU(欧州連合)ウェブサイト、2008年6月9日付プレスリリース http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/08/907&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
  • EUウェブサイト、2008年2月20日付プレスリリース http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/08/270&format=HTML&aged=1&language=EN&guiLanguage=en

【2009年7月27日追記】

欧州委員会(EC)は、2009年7月17日付のプレスリリースにおいて、高官レベルグループから改称された「欧州原子力安全規制者グループ(ENSREG)」の最初の活動報告書が公表されたことを発表した。同報告書は、2009年7月に取り纏められ、原子力安全や廃棄物管理などに関するENSREGの勧告等が示されている。また、放射性廃棄物管理に関しては以下の点が示されている。

  • 放射性廃棄物管理に係る国家計画の策定
  • 加盟国における最良の実施例の特定と有効活用
  • 加盟国間でのピアレビュー
  • 経験のフィードバックの有効活用
  • 新しい設計のプラントの廃棄物安全
  • 放射性廃棄物等安全条約のレビュー会合の有効活用

なお、ENSREGのウェブサイト(http://ec.europa.eu/energy/nuclear/ensreg/ensreg_en.htm)も開設されている。

【追記部出典】

  • 欧州委員会(EC)、2009年7月17日付プレスリリース、
    http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/09/1158&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
  • 欧州原子力安全規制者グループ(ENSREG)報告書、2009年7月、
    http://ec.europa.eu/energy/nuclear/ensreg/doc/2009_ensreg_report.pdf

欧州連合(EU)のEU理事会(閣僚理事会(閣僚級代表で構成されるEUの決定機関))が2007年5月8日に公表したプレスリリースによると、原子力安全及び使用済燃料・放射性廃棄物管理に関するEU理事会決定が採択された。このEU理事会決定によると、今後、原子力安全規制機関等の代表により構成される高官レベルグループが設置され、同グループは専門家グループを設置した上で、使用済燃料・放射性廃棄物管理等に関する諸問題を検討することとなっている。

欧州連合(EU)では、2003年4月に欧州委員会(EC。EUの執行機関)より放射性廃棄物管理及び原子力施設の安全確保に関して、拘束力のある指令の策定に向けた指令案が提出されていたが、それに対する2004年6月のEU理事会決定では、原子力施設の安全に対する各国の責任が強調され、欧州委員会(EC)の指令案は採択されなかった。今回のEU理事会決定の前文でも、本決定が、原子力安全に対する責任は加盟国にあり、適切である場合にのみEUレベルでの対応がなされること、原子力施設の安全と監督に関わる意思決定は操業者と国の機関によってのみなされるものであること、EUレベルでのイニシアティブは国際的に行われている様々な活動に付加的な価値を加えるものでなければならないことなどに留意しつつ採択されたものであることが示されている。

EUレベルでの放射性廃棄物管理及び原子力施設の安全確保に関する制度の構築について、2004年6月のEU理事会決定では、原子力安全作業部会(WPNS)を設置して検討を継続するとしており、2006年12月にWPNSとその下部グループにより報告書が取りまとめられた。その内容を踏まえ、EU理事会は原子力安全及び使用済燃料・放射性廃棄物管理に関する行動計画の策定に向けた協議プロセスを、欧州委員会(EC)などとともに進めてきた。今回のEU理事会決定は、この協議プロセスの成果であり、EU理事会として今後の原子力安全、使用済燃料・放射性廃棄物管理、廃止措置における資金確保に関する検討範囲や行動、実施手段等を示すものである。

今回のEU理事会決定では、「A.目的と検討範囲」において、原子力施設における安全性の維持と向上、使用済燃料・放射性廃棄物管理における安全性の維持と向上、原子力施設の廃止措置における資金確保の3項目が目的として示されている。「B.今後の行動」では、3項目について方策が示されている。そのうち、使用済燃料・放射性廃棄物の管理に関しては、使用済燃料・放射性廃棄物の安全管理のための戦略の策定、加盟国に国家プログラムを策定・更新させることなどが挙げられている。

「C.手段」で示されている内容は次の通りである。

  • EU理事会は、欧州委員会(EC)に対して、加盟国の安全規制機関等の上級代表者により構成される高官レベルグループの設置を要請
  • EU理事会は、EUレベルでの高官レベルグループの設置を支援
  • EU理事会は、高官レベルグループに対して、検討結果や今後の行動等に関する報告書を、グループ設置後の遅くとも2年以内に、その後は遅くとも3年毎にEU理事会と欧州議会(諮問・共同決定機関)に提出するよう要請
  • 高官レベルグループは、原子力安全、使用済燃料・放射性廃棄物管理、廃止措置における資金管理のそれぞれに関して専門家グループを設置し、専門家グループの成果を評価・議論
  • 高官レベルグループは、2007年中に策定される作業プログラムを基礎として、今後の行動や考えうる研究テーマ、それらの優先順位を決定
  • EU理事会は、欧州委員会(EC)に対して、高官レベルグループが選定した研究の実施に関する支援を要請
  • EU理事会は、高官レベルグループの成果を評価し、将来の適切な行動について決定

【出典】

  • EU理事会ウェブサイト、2007年5月8日付プレスリリース http://www.consilium.europa.eu/ueDocs/cms_Data/docs/pressData/en/ecofin/94016.pdf
  • EU理事会ウェブサイト、2004年6月28日付プレスリリース http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/04/st10/st10746.en04.pdf
  • 外務省ウェブサイト、欧州連合(European Union)http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html

【2007年7月19日追記】

2007年7月17日付のプレスリリースにおいて、欧州委員会(EC)は、EU理事会から設置要請のあった原子力安全及び放射性廃棄物管理に関する高官レベルグループについて、設置を決定したことを公表した。高官レベルグループの第一回目のミーティングは、夏休み明けに開催される予定とされている。

  • EUウェブサイト、2007年7月17日付プレスリリース (http://www.europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/1107&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en#fn3)

【2007年8月1日追記】

2007年7月17日付の欧州委員会(EC)による原子力安全及び放射性廃棄物管理に関する高官レベルグループの設置に関する決定が、7月27日付欧州連合(EU)官報に掲載された。この決定では、高官レベルグループのタスク、組織、欧州議会・EU理事会(閣僚理事会)に対する報告に関する規定などが示されている。

欧州連合(EU)理事会は2006年12月20日に公表した事務総局文書において、加盟国及び欧州委員会(EC)などとともに、原子力安全及び使用済燃料・放射性廃棄物管理に関する行動計画の策定を開始することを明らかにした。これを受けて、策定に係る議長国、加盟国及び欧州委員会(EC)の協議プロセスが2007年1月9日から開始されている。

欧州連合では、2003年4月、欧州委員会(EC)により「放射性廃棄物管理指令案」及び「原子力施設安全確保指令案」が提出され、放射性廃棄物管理に関して各国に対して拘束力を持つ指令の策定に向けた動きが進められていた。しかしながら、2004年6月のEU理事会で示された結論では、指令案は採択されず、放射性廃棄物管理及び廃止措置の在り方については関連する作業部会において検討を継続することとされていた。今回公表された事務総局文書では、2004年6月のEU理事会の結論に対応して原子力安全作業部会(WPNS)及びその下に設置された3つの下部グループが取りまとめた報告書を、原子力課題作業部会(WPAQ)が承認し、使用済燃料・放射性廃棄物管理に関する行動計画の策定が開始されることが示されている。

この事務総局文書の付属資料では、今後の検討の目的、検討範囲、考えうる方策のリスト、手段が示されている。また、検討結果はEU理事会と欧州議会へ報告することとされている。考えうる方策のリストでは、原子力施設の安全、使用済燃料と放射性廃棄物の管理の安全性、原子力施設の廃止措置と放射性廃棄物管理のための資金確保の3点に関する検討項目が示されている。使用済燃料と放射性廃棄物の管理の安全性に関して挙げられている項目は次の通りである。

  • 使用済燃料と放射性廃棄物管理の特殊性を考慮した、整合の取れた整備プロセス、知識共有と協力の実施
  • 放射性廃棄物等安全条約に基づくレビューミーティング開催後、次のミーティングまでの期間に行う協議
  • 西欧原子力規制当局連合(WENRA)の成果の活用
  • 全ての種類の使用済燃料と放射性廃棄物の安全な管理のための戦略の策定への重点的取り組み
  • 協力及び知見と課題の交換のための、使用済燃料と放射性廃棄物の安全な管理計画の立案と加盟国への提供、達成度の評価
  • 廃止措置期間及び同期間終了後の人員と知識に関する課題についての意見の交換

また、事務総局文書によると、今後検討を進めていくに当たって、上級規制機関グループ、原子力安全に関する専門家グループ、使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する専門家グループなどを設置することとされている。

なお、2004年6月のEU理事会後、欧州委員会(EC)は2004年9月に修正指令案を提出したが、この修正指令案については、公式な動きは示されていない。廃止措置の資金確保に関しては、欧州委員会(EC)より2006年10月24日に拘束力のない勧告が採択されている

【出典】

  • 2007年1月15日のEU理事会原子力課題作業部会(WPAQ)議事概要 http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/07/st05/st05253.en07.pdf
  • 2006年12月20日のEU理事会事務局文書「原子力安全及び使用済燃料と放射性廃棄物の安全管理に関する協議プロセス」 http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/06/st17/st17020.en06.pdf
  • 2004年6月のEU理事会の結論「原子力安全及び使用済燃料と放射性廃棄物の安全な管理に関する結論」 http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/04/st10/st10823.en04.pdf

欧州委員会(EC)は、2006年10月24日のプレスリリースにおいて、「原子力施設の廃止措置、使用済燃料及び放射性廃棄物の資金管理に関する委員会勧告」(以下「廃止措置等に関する勧告」という)を採択したことを公表した。欧州連合(EU)法の二次法(規則、指令、勧告等)に当たる本勧告は、放射性廃棄物と使用済燃料の管理及び処分を含めた原子力施設の廃止措置のための資金の適切な管理に関するものである。

プレスリリースによると、今回の勧告は、原子力安全分野における補完性の原則1 、各国規制機関による監督責任を十分に尊重したものとなっており、廃止措置に関する専門能力を備えた、事業者とは独立した国家組織の設置を提案する形が取られている。欧州委員会(EC)は将来発生する廃止措置費用の確保のためには、適切な管理の下で分離された基金を設置することが望ましい選択肢であるとしている。また、欧州委員会(EC)は、常設の専門家グループを設置する他に、関連する全ての加盟国における廃止措置及び放射性廃棄物管理基金の利用状況に関する年次報告書を発行する意向を示している。

欧州委員会(EC)は、「放射性廃棄物管理指令案」及び廃止措置を含む原子力施設の安全確保に関する指令案(以下「原子力施設安全確保指令案」という)として、各々拘束力を持つ指令を提出しており、原子力施設の安全確保指令案には廃止措置における資金確保に関する規定も含まれていた。また、原子力施設安全確保指令案には、廃止措置基金の設置義務及び基金が満たすべき最低限の基準が具体的に示されていたが、2004年9月に提出された修正指令案では具体的な基準は明示されなかった。なお、欧州委員会(EC)はその後、2004年10月26日に「原子力施設の廃止措置のための資金の利用に関する報告書」を公表し、公式声明として2005年には透明性のある形で廃止措置資金を管理するよう求める勧告を採択する意向を示していた。

また、欧州連合(EU)における最近の放射性廃棄物管理の動向に関して、2006年11月20日にはEU理事会によって、放射性廃棄物及び使用済燃料の輸送管理に関する指令が採択されている。これまで放射性廃棄物の輸送に関して適用されていた1992年のEURATOM指令は、使用済燃料を適用対象としていなかったが、今回新たに策定された指令では使用済燃料も対象に含まれることとなった。

【出典】

  • 欧州委員会ウェブサイト、2006年10月24日付プレスリリース http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/06/1466&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
  • 「原子力施設の廃止措置、使用済燃料及び放射性廃棄物の資金管理に関する委員会勧告」 Commission Recommendation on the management of financial resources for the decommissioning of nuclear installations, spent fuel and radioactive waste http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2006:330:0031:0035:EN:PDF
  • 「『放射性廃棄物管理指令案』及び『原子力施設安全確保指令案』の修正指令案」 Amended proposal for a COUNCIL DIRECTIVE (Euratom) laying down basic obligations and general principles on the safety of nuclear installations Amended proposal for a COUNCIL DIRECTIVE (Euratom) on the safe management of the spent nuclear fuel and radioactive waste http://europa.eu.int/cgi-bin/eur-lex/udl.pl? REQUEST=Service-Search&LANGUAGE=en&GUILANGUAGE=en&SERVICE=all &COLLECTION=com&DOCID=504PC0526
  • 「放射性廃棄物及び使用済燃料の輸送の監督と管理に関する指令」 Council Directive on the supervision and control of shipments of radioactive waste and spent fuel http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2006:337:0021:0032:EN:PDF
  • EC条約

  1. 補完性の原則について、EC条約第5条2段は、「共同体は、その排他的権限に属しない分野においては、補完性の原則に従って、提案されている行動の目的が加盟国によっては十分に達成できず、それゆえ提案されている行動の規模又は効果の点からして共同体により一層良く達成できる場合にのみ、かつ、その限りにおいて行動する」と定めている。 []

欧州連合(EU)のプレスリリースによると、欧州委員会は、2004年9月8日に「使用済燃料と放射性廃棄物の管理に関するEURATOM指令」(案)(以下「放射性廃棄物管理指令案」という)の修正案(以下「修正指令案」という)を閣僚理事会に提出した。この修正指令案は、2003年1月に示された放射性廃棄物管理指令案に対し、欧州議会による修正および閣僚理事会での議論や様々な機関との協議に基づき作成されたものである。主な修正点は、処分サイト開発等の許認可発給までの期限を加盟国自身が設定することや、加盟国が提出を義務付けられている放射性廃棄物管理計画(以下「廃棄物管理計画」という)をレビューする専門家委員会を設立することである。なお、この修正指令案は、同時に提案されていた原子力施設の安全確保指令(案)の修正案とともに閣僚理事会に提出された。

放射性廃棄物管理指令案をめぐるこれまでの動き

放射性廃棄物管理指令案は、欧州原子力共同体(EURATOM)条約の第31条および32条に基づいて作成されたもので、2003年1月30日に欧州委員会で採択された後、3月26日に欧州経済社会委員会による見解を受けた上で2003年4月30日に欧州議会と閣僚理事会に提出された。なお、廃止措置を含む原子力施設の安全確保指令案も同時に提案されていた。欧州議会は、2003年12月1日に、放射性廃棄物管理指令(案)の修正提案を作成し、2004年1月13日にこの修正提案を承認していた。しかし、閣僚理事会では、2004年6月28日に理事会結論を採択したが、この中では、放射性廃棄物等安全条約や国際原子力機関(IAEA)による基準やアプローチなどの国際的な枠組みの中での各国の廃棄物管理責任を強調し、EUとして加盟国に対し拘束力のある放射性廃棄物管理指令の採択は行わなかった。今回の修正指令案は、これらの動きを受けて提出されたものである。

放射性廃棄物管理指令案からの修正点

今回の修正指令案の中で強調されている修正点としては、処分サイトの開発等に関する許認可発給の期限に関するものが挙げられる。放射性廃棄物管理指令案では、各加盟国は長期的な管理を含めた廃棄物管理計画の作成、提出を義務付ける規定がされており、また、処分に対する適切な代替案がなく、利用できる状態でない場合には、加盟国は廃棄物管理計画に明記すべき放射性廃棄物処分サイトの開発等に関する許認可の発給に具体的期限が示されていた。欧州議会による修正提案では、これらの期限は削除され、各国が独自の期限を設定するように修正されていた。また、閣僚理事会での議論においても、この統一的なスケジュールの設定に対する加盟国の反発が強かったため、今回の修正指令案では、放射性廃棄物の長期管理のためのスケジュールを廃棄物管理計画の中に含めることとし、処分に対する適切な代替案がなく、利用できる状態でない場合には、廃棄物管理計画の中でそれぞれの国が処分サイトの開発等の許認可発給期限を独自に設定できるようになっている。下の表は、放射性廃棄物指令案および修正指令案において、適切な代替案がない場合に必要とされる処分サイトの開発スケジュールに関する規定内容である。

  放射性廃棄物管理指令案
(2003年1月30日)
修正指令案
(2004年9月8日)
放射性廃棄物処分サイトの開発許認可 遅くとも2008年までに発給を行うこと。(高レベルおよび長寿命放射性廃棄物処分場の場合は地下でのさらなる期間をかけた詳細調査の条件付許認可とすることができる) 廃棄物管理計画に発給の期日を記すこと。
処分場の操業許認可 高レベル放射性廃棄物に関しては、2018年までに発給を行うこと。 廃棄物管理計画に発給の期日を記すこと。
なお、加盟国は複数のカテゴリーの放射性廃棄物を同一処分場に処分する決定ができる。
短寿命の低中レベル放射性廃棄物に関しては、2013年までに発給を行うこと。

この他に、放射性廃棄物管理指令案では、指令に基づく各国の国内法化期限を2004年5月としていたが、修正指令案では、指令施行後2年以内という期限が設定されている。また、修正指令案では、廃棄物管理計画において加盟国が深地層処分を優先する研究を行うことを求めている。さらに、修正指令案では、加盟国の提出する廃棄物管理計画をレビューするための専門家委員会の設置が謳われている。この専門家委員会は、各加盟国によって任命された専門家によって構成される。

なお、プレスリリースの中で欧州委員会副委員長は、拡大されたEU内で原子力安全に関して非常に重要なこの修正指令案が閣僚理事会ですみやかに議論され、採択されることを望んでいると述べている。

【参考】

  • 欧州委員会(The European Commission)
  • 閣僚理事会(The Council of the European Union)
  • 欧州議会(The European Parliament)
  • EU法については 既報を参照。

【出典】

  • 欧州委員会のウェブサイト プレスリリース(2004年9月8日) http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/04/1080&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
  • 修正指令案 Amended proposal for a COUNCIL DIRECTIVE (Euratom) laying down basic obligations and general principles on the safety of nuclear installations, Amended proposal for a COUNCIL DIRECTIVE (Euratom) on the safe management of the spent nuclear fuel and radioactive waste. http://europa.eu.int/cgi-bin/eur-lex/udl.pl?REQUEST=Service-Search&LANGUAGE=en&GUILANGUAGE=en&SERVICE=all&COLLECTION=com&DOCID=504PC0526
  • 放射性廃棄物管理指令案 Proposal for a Council Directive (EURATOM) on the management of spent nuclear fuel and radioactive waste. http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2003/com2003_0032en01.pdf
  • 欧州議会修正提案 Report on the proposal for a Council directive (Euratom) on the management of spent nuclear fuel and radioactive waste – Committee on Industry, External Trade, Research and Energy. http://www2.europarl.eu.int/omk/sipade2?PUBREF=-//EP//NONSGML+REPORT+A5-2003-0442+0+DOC+PDF+V0//EN&L=EN&LEVEL=2&NAV=S&LSTDOC=Y
  • 原子力安全に関する閣僚理事会結論 閣僚理事会プレスリリース(2004年6月28日)

欧州委員会(European Commission)は、2003年4月30日に、「使用済燃料と放射性廃棄物の管理に関するEURATOM指令」(案)(以下「放射性廃棄物管理指令案」という」)を欧州議会(European Parliament)および閣僚理事会(The Council of the European Union)に提出した。 放射性廃棄物管理指令案は、加盟国における使用済燃料および放射性廃棄物管理を最良の方法で実施することを目的としており、処分場開発に関する具体的な年限も示されている。今後、欧州議会での諮問を受けた後、閣僚理事会で「特定多数決」1 方式により最終的に採決される予定である。

放射性廃棄物管理指令案は、欧州原子力共同体(EURATOM)条約の31条および32条に基づいて作成されたもので、2003年1月30日に欧州委員会で採択された後、3月26日に欧州経済社会委員会による見解を受けた上で欧州議会と閣僚理事会に提出された。なお、廃止措置を含む原子力施設の安全確保の指令案も同時に提案されている。今回提出された放射性廃棄物管理指令案の提案書は、指令案の策定に当たっての背景やその目的が「説明メモランダム」として記述されているほか、全10条からなる指令案本体および付属文書から構成されている。以下においては、その背景や目的と共に、指令案のハイライトをまとめる。


放射性廃棄物管理指令案の背景と目的

今回提出された放射性廃棄物管理指令案の提案書の「説明メモランダム」では、2000年11月の欧州委員会グリーンペーパー「エネルギー供給の安定性に対する欧州の戦略に向けて」において示された、放射性廃棄物管理に対する受入可能な解決策を探すことが原子力オプションに影響を及ぼす重要な関心事との指摘を引用している。また、現在の欧州連合(EU)加盟国だけでなく、新規加盟の候補となっている国をも視野に入れた放射性廃棄物管理の必要性を指摘している。EUでは旧東欧諸国等の加盟が2004年以降予定されており、これらの国ではかつて行われていた旧ソ連への使用済燃料返還が中止され、使用済燃料管理が大きな問題となっている。

特に、加盟国における高レベル放射性廃棄物管理に関しては、管理オプションとして地層処分が最も適しているという国際的なコンセンサスがあるものの、各加盟国が行っているサイト選定が遅延していること、中間貯蔵されている廃棄物の量が増加していることなどを挙げている。さらに、2001年9月11日の同時多発テロ後においては、中間貯蔵施設の脆弱性も懸念される事項であると指摘している。

EU加盟国は、放射性廃棄物の長期管理に対する適切な戦略を確立させるとともに、詳細なプログラムを準備する必要性、特に放射性廃棄物の処分のための処分場開発に焦点を置く必要性が指摘されている。加盟国はそれぞれが独自の管理を行わなければならないが、高いレベルの原子力安全と環境保護を保証するために、特に加盟国同士の連携が求められている。複数の国によるアプローチは、原子力開発利用が小規模または全くない国に対してはメリットがあるとしているが、何れの加盟国も廃棄物の輸入を義務づけられるものではないとしている。

放射性廃棄物管理指令案のハイライト

放射性廃棄物管理指令案は第1条に「目的と範囲」、第3条に「放射性廃棄物および使用済燃料の管理に対する一般的な要求事項」が定められている。放射性廃棄物処分計画に関する具体的な規定は、指令案の第4条に定められている。まず、各加盟国は長期的な管理を含めた「放射性廃棄物管理計画」を作成しなければならない。そして、処分に対する適切な代替案がなく、利用できる状態でない場合には、加盟国は計画のなかに以下の内容を盛り込まなければならない(第4条)。

  • 遅くとも2008年までに放射性廃棄物処分サイトの開発の許認可の発給を行うこと。(高レベルおよび長寿命廃棄物処分場の場合は地下での更なる期間をかけての詳細調査の条件付許可とすることができる)
  • 高レベル放射性廃棄物に関しては、2018年までに処分場の操業に対する許認可の発給を行うこと。
  • 短寿命の低中レベル放射性廃棄物に関しては、2013年までに処分場の操業に対する許認可の発給を行うこと。

また第4条では、他の既存のEU法(特に輸送許可などを規定した「EU加盟国間における放射性廃棄物の輸送と共同体への輸出入の監督および管理に関する指令92/3/EURATOM」等)を遵守する限りにおいて、放射性廃棄物の輸出をすることが出来ると定められている。

この他に、第5条では研究開発について加盟国での協力体制の規定がされている他、第7条ではEUへの報告書の提出義務の規定として、加盟国は第8条に定める期日(2004年5月)の一年後とその後3年毎に欧州委員会に対して放射性廃棄物管理の状況を説明した報告書を作成しなければならないことが定められている。 第8条では、この指令に基づく各国の法制化期限の案として2004年5月が示されている。

なお、欧州経済社会委員会から示された意見書では原則として委員会の放射性廃棄物管理指令案を支持しているが、処分場開発のスケジュールについてはより柔軟なものとすべきであり、各国の個別事情に適応すべきとの勧告が行われている。

【EU法についての解説】

EUの法令は、一次法(条約等)と二次法(規則、指令、勧告等)、および判例法の3つに分類される。今回の指令は二次法に分類されるもので、目的の達成について各国に対する拘束力を持つが、その実施形式、実施方式は、各国に委ねられる性質を持つ。

立法過程に関し、立法権は閣僚理事会に属し、欧州議会は、通常の国家の国会とは異なり非常に限られた立法権しか有していない。欧州議会の立法過程に関する役割は、以下の5つに分類されており、今回の指令に関しては②が適用される。この場合、閣僚理事会による決定は、欧州議会の諮問内容には拘束されない。

  1. 共同決定手続・・・閣僚理事会と議会による共同決定手続
  2. 諮問手続・・・閣僚理事会が採決する前に欧州議会が意見を提出する手続
  3. 協力手続・・・欧州議会が案に対して修正を加えることが出来る手続
  4. 同意手続・・・閣僚理事会が全会一致で採択する法令に対する欧州議会の同意を要する手続
  5. 法令の発案権・・・法案を発案する権利(極めて限定される)

【出典】

  • Proposal for a Council Directive(EURATOM) on the management of spent nuclear fuel and radioactive waste http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2003/com2003_0032en01.pdf
  • EUのウェブサイト http://europa.eu.int/scadplus/leg/en/cig/g4000q.htm http://www.europa.eu.int/eur-lex/en/about/pap/index.html http://europa.eu.int/prelex/detail_dossier_real.cfm?CL=en&DosID=182452
  • 欧州原子力共同体(EURATOM)条約抜粋 http://europa.eu.int/comm/environment/radprot/legislation/extracts.pdf

  1. 特定多数決方式とは、閣僚理事会の立法手続で使用されるものである。採択には、各国に割り当てられた合計票数87票のうち、62票の賛成票が必要となる。意思決定方法には、問題の重要度に応じてこの他に、単純多数決、全会一致方式がある。放射線防護に関連する安全規定については特定多数決方式によるべきことが欧州原子力共同体(EURATOM)条約の第31条に規定されている。 []