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フランスの原子力安全機関(ASN)は2017年8月1日に、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2016年4月にASNへ提出していた地層処分場の「安全オプション意見請求書」1 に関する見解案を公表した。ASNは、2016年11月の国際レビューチームの見解及び2017年5月の放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の見解を踏まえ、今回の見解案を策定している。ASNは見解案について、9月15日まで意見を募集し、その結果を踏まえ、2017年10月に最終的な見解を出す予定である。

ASNは今回の見解案において、ANDRAが安全オプション意見請求書で示した廃棄物インベントリの特定方法について、十分なものであると評価しつつも、地層処分場の設置許可申請に際しては、将来における燃料サイクル政策やエネルギー政策の変化に伴う不確実性を考慮した予備的なインベントリを提出すべきとしている。

さらにASNは、ANDRAの地層処分プロジェクトに対し、安全オプション意見請求書の段階としては技術的に十分に高いレベルに達しており、過去にANDRAが提出したプロジェクトの進捗報告書に比べて、大きな進展が見られたと評価している。一方でASNは、以下のような問題点を指摘している。

ビチューメン(アスファルト)固化体について

処分坑道における火災を想定した対策として、ビチューメン(アスファルト)固化体の発熱反応を抑えるための研究を優先的に実施すべきである。ただし、これに先立って、ビチューメン固化体の特性を発生者が速やかに明確化することが不可欠である。

地層処分場の設計変更の可能性について

  • 地層処分場の閉じ込め機能を強化するため、放射性廃棄物の処分エリアと地上への坑道の位置関係等の設計を検討する必要がある。設置許可申請において採用される設計については、長期にわたる操業期間中の原子力安全や放射線防護を考慮し、異なるオプションの長所と短所に関する研究成果を提示して妥当性を立証しなければならない。
  • 操業中から閉鎖後に至るまで、地層処分場において想定される自然災害(特に、地震)のリスクのレベル及びそのリスクにさらされる機器や構造物の要件や挙動の解析方法を設置許可申請書に記載し、その妥当性を立証する必要がある。
  • 設置許可申請書の作成に際しては、廃棄体の内容物に影響を与えるほどの火災が地上施設において発生することを想定する必要がある。
  • 安全オプション意見請求書においては、処分場の操業中及び閉鎖後の安全性に関わるモニタリングに関する情報が限定的である。設置許可申請書においては、地層処分場のモニタリング戦略とその実施方法を記載し、妥当性を立証する必要がある。
  • 設置許可申請書における地層処分場の設計に関する記載内容に関して、想定される事故の発生後における処分機能の回復等、長期にわたる地層処分場の操業の安全上の課題を提示し、以下のような点を考慮していることを説明する必要がある。
    ・地層処分場の操業を継続できること
    ・事故により影響を受けた廃棄物を回収できること
    ・地層処分場の閉鎖作業を実施できること

 

【出典】


  1. 原子力基本施設及び原子力安全・放射性物質輸送管理に関する2007年11月2日のデクレ(2007-1557)の第6条に基づいて、事業者(ANDRA)は、処分施設の安全を確保するために採用したオプションの全部または一部に対する見解を原子力安全機関(ASN)に請求することができる []

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2017年7月18日付けのプレスリリースにおいて、地層処分場の設置許可申請書の提出が2019年半ばの見込みであることを公表した。これまでANDRAは、2016年7月に制定された「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした2016年7月25日付法律」に基づいて、設置許可申請を2018年中に行う方針であった。ANDRAは設置許可申請時期の先送りについて、安全要件を満たしつつ大幅なコスト削減を実現するための最適化や変動要因へ対処するためであり、計画変更以外の部分では、地元自治体や住民との協議など含め、プロジェクトは順調に進捗しているとしている。

今回のプレスリリースにおいてANDRAは、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)から指摘を受けていた処分坑道での火災時の安全確保への対応について、2016~2018年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に基づいて、補完的な安全性の実証に既に着手しており、IRSNの指摘にも対応できると説明している。ANDRAは2016年4月に地層処分場の「安全オプション意見請求書」1 を原子力安全機関(ASN)に提出しており、ASNの要請により評価を行った放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)は、2017年7月に、地層処分場の安全確保について全体として肯定的な評価を示した一方で、ビチューメン(アスファルト)固化体について、処分坑道で火災が発生した場合の安全確保が不十分であることを指摘していた

また、今回のプレスリリースにおいてANDRAは、ムーズ県、オート=マルヌ県の両県にまたがるサイトにおける地層処分場の建設について、一部の反対運動が激化し、ANDRAの施設だけでなく、周辺の企業や住人等にも被害が及んでいることについて遺憾の意を表明している。ANDRAは2017年6月22日付のプレスリリースにおいて、周辺の企業や住人等に被害をもたらすような反対活動は許容しがたいとして、関係当局に被害状況を報告するとともに、周辺住民等に対する国の支援を要請するとしている。

 

 

【出典】


  1. 原子力基本施設及び原子力安全・放射性物質輸送管理に関する2007年11月2日のデクレ(2007-1557)の第6条に基づいて、事業者(ANDRA)は、処分施設の安全を確保するために採用したオプションの全部または一部に関する意見を原子力安全機関(ASN)に請求することができる []

フランスの原子力安全機関(ASN)は2017年2月27日に、2016~2018年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)を公表した。PNGMDRは、フランスにおける全ての放射性廃棄物の管理の現状分析と管理方策の実現に向けた、研究開発を含む取組を取りまとめたものである。

PNGMDRは2006年の放射性廃棄物等管理計画法により、政府が3年ごとに策定・改定することが義務付けられているものである。初めてのPNGMDRは2007年に策定されており、今回のPNGMDRは第4版となる。現在、PNGMDRの取りまとめは、原子力安全機関(ASN)及び環境・エネルギー・海洋省のエネルギー・気候総局(DGEC)が担当しており、PNGMDR(第4版)は2010年に制定された環境に関する取組を強化する法律の制定に伴う関連法令改定を受け、初めて環境行政の観点からの評価を組み込んでおり、環境・エネルギー・海洋省の環境庁(AE)の見解も聴取された。

PNGMDR(第4版)は、以前の計画に沿って実施された放射性廃棄物の管理方法の改善・最適化に向けた取組みの成果と2015年に公表された廃棄物インベントリの内容に基づいて、廃棄物の管理方法ごとのアプローチ、特に、包括的な産業レベルでの処分計画の作成・見直しを強化するものである。また、PNGMDR(第4版)では、特に放射性廃棄物の最終処分の開始期限を決定するために必要となる、放射性廃棄物の中間貯蔵の能力や貯蔵設備に関する調査も要請している。さらに、極低レベル放射性廃棄物の発生量の予測を明確化する必要性や、一部の放射性物質を再利用する可能性の妥当性の証明を強化する必要性を改めて確認している。

PNGMDRにおいて計画された内容の実施は、デクレ(政令)及びアレテ(省令)によって規定されることになっており、2017年2月23日付のデクレ(政令)及び同デクレ(政令)の施行に関する2017年2月23日付のアレテ(省令)が同月25日付官報に公示された。

PNGMDR(第4版)に関する2017年2月23日のデクレ(政令)の規定では1、放射性廃棄物の管理・研究の基本的な枠組みを定めている。このうち、極低レベル放射性廃棄物、長寿命低レベル放射性廃棄物に関しては、包括的な産業レベルでの処分計画を放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が策定することを規定している。また、高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物については、原子力・代替エネルギー庁(CEA)が核種分離・変換の研究を、ANDRAが地層処分場の設置許可申請に向けて必要な研究及び貯蔵の研究をそれぞれ実施することを規定している。

なお、同デクレ(政令)の施行に係る2017年2月23日付アレテ(省令)では、長寿命低レベル放射性廃棄物の管理、高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の管理に関して、それぞれ以下のような具体的な内容が規定されている。

<長寿命低レベル放射性廃棄物の管理>

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2017年3月末までに、処分場の操業開始に向けた目標日程を提案する。
  • ANDRAが2018年6月末までに、処分場の安全要件と設計研究を原子力安全機関(ASN)に提出する。
  • ANDRAが2019年6月末までに、概念設計段階の技術オプションと安全オプションをASNに提出する。
  • ANDRAが2021年末までに、基本設計段階の安全オプション文書をASNに提出する。

<高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の管理>

  • 放射性廃棄物の発生者であるフランス電力株式会社(EDF社)、AREVA社及び原子力・代替エネルギー庁(CEA)は2017年末までに、その時点までに調整された放射性廃棄物の廃棄体の地層処分場への受け入れ可能性について、ANDRAが提出した予備的な受け入れ仕様と比較して分析を実施する。ANDRAの仕様との乖離が明らかになった場合、事業者とANDRAが技術的協議を行う。
  • CEAは2015年までに発生した長寿命中レベル放射性廃棄物の特性評価と調整に関する研究を継続し、2017年6月末までに、今後の研究計画を政府に提出する。
  • CEAはANDRAと協力し、ビチューメン(アスファルト)廃棄物の挙動に関する研究を継続する。CEAは2017年6月末までに、研究結果に関する報告書を政府に提出し、ANDRAはこの研究結果について、ビチューメン廃棄物を地層処分場に受け入れた際の条件への影響について分析し、報告書を2018年6月末までに政府に提出する。
  • EDF社、CEA及びAREVA社は2017年6月末までに、今後少なくとも20年にわたる期間について、全ての高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の中間貯蔵の必要性を提示する。

 

【出典】


  1. 同デクレは、環境法典の規則の部において放射性廃棄物管理に関する規則を定める第5巻第4編第2章に第1節~第8節(第R542-1~R542-73条)の後に、PNGMDRに関する新たな節として第9節を追加する内容となっている。 []

フランスの原子力安全機関(ASN)は2016年12月1日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2016年4月に提出した地層処分場の「安全オプション意見請求書」1 について、国際レビューチームのレビュー報告書を公表した。「安全オプション意見請求書」についてASNは、審査の一環として国際原子力機関(IAEA)にレビューを要請していた。

ASNの委託を受けたIAEAは、9名で構成される国際レビューチーム2 を組織し、2016年11月6~15日にかけてレビューを実施し、レビュー報告書を取りまとめた。国際レビューチームは、研究・開発戦略、知見の取得、操業及び閉鎖後の安全評価のためのシナリオ設定に関するアプローチ、福島第一原子力発電所事故を踏まえた対応という観点からレビューを行っており、以下のような評価・勧告を示している。

  • 地層処分プロジェクトの段階的かつ双方向的な進め方、特にパイロット操業フェーズを導入することや「安全オプション意見請求書」を事前に作成する決定がなされたことは高く評価できる。
  • プロジェクトマネジメントの観点から見て、「処分操業基本計画」3 は有効なツールであり、ASN、公衆、その他のステークホルダーとのコミュニケーションやコンサルテーションに役立つ。
  • プロジェクトマネジメントを強化し、ASNやステークホルダーの間での信頼醸成のため、ANDRAは以下のような取組みを行うべきである。
    • 地層処分場開発のフェーズが次フェーズへと移行する際に、それまでに得られた新たな知見の活用方法、前フェーズとのつながりや一貫性を明示すること。
    • 100年超の地層処分場の供用期間にわたって、操業や閉鎖後の安全確保のために重要なデータや情報が更新・維持され、適切に理解されることを担保すること。
    • 研究開発について、その内容、意図、地層処分場開発の各フェーズとの関連性を特定し、優先順位を検討することにより、地層処分場開発と研究開発計画間の整合性を明確にすること。
    • 操業中のモニタリング計画内容の検討をさらに進める:モニタリングのパラメータと処分場閉鎖後の安全性の関連、モニタリング機器の保守・交換等も含めた操業期間中を通じたモニタリング活動のフィージビリティ等を検討すること。
  • 地層処分場のロバスト性の立証を補強するため、ANDRAは以下のような取組みを行うべきである。
    • カロボ・オックスフォーディアン粘土層4 における地下水の挙動に関わる特徴(割れ目など)を考慮すべきである。
    • 標準シナリオにおいて、高レベル放射性廃棄物の処分容器に当初から欠陥があること、あるいは定置後の早い段階で不備が発生することが考慮されていない理由の妥当性について説明すること。
    • 地層処分場のスリーブ5 について、微生物活動による影響をセーフティケースに含めること。
  • 地層処分場の操業時の安全性を評価するためのANDRAの方法論は包括的で体系立てられている。福島第一原子力発電所事故との関連では、ANDRAはASNのガイドラインに従って、補完的安全性評価(フランス版ストレステスト)を実施している。さらにANDRAは、地下施設からの排ガスのフィルタ装置の導入や、斜坑から流入した水を除去する際の地層処分場の設計のロバスト性を評価すべきである。

ASNは、今回の国際レビュー結果を公開するとともに、「安全オプション意見請求書」に関する審査において支援を受ける放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)やASN内の常設専門家グループにも周知する方針である。また、ASNはANDRAが取りまとめた「安全オプション意見請求書」に関する見解を2017年夏頃に表明する予定である。

なお、2016年7月に成立した「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」に基づいて、ANDRAは2018年に、地層処分場の設置許可申請を行う方針である。ANDRAは、「安全オプション意見請求書」に関して今後ASNが表明する見解を踏まえて、設置許可申請書の作成を行うことになる。

 

《参考》 フランスにおける地層処分場の設置許可申請の段階的な審査プロセス

フランスでは、原子力施設の設置許可申請に先立って、施設の「安全オプション意見請求書」を原子力安全機関(ASN)に提出し、安全確保に関する見解を求めることができる。放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2013年5月から約7カ月間にわたって開催された地層処分プロジェクトに関する公開討論会の結果を受けて、2014年5月に地層処分場プロジェクトの継続に関する方針を公表し、地層処分場の設置許可申請の審査プロセスとスケジュールに関する提案を行っていた。ANDRAは、地層処分場の設置許可申請書類の提出を段階的に進める方針とし、今回レビューを受けた「安全オプション意見請求書」を先行してASNに提出することを提案していた。ANDRAが「安全オプション意見請求書」をASNに提出することにより、地層処分場の設置許可申請書類の一部を成す下記の内容を前もって示すことになる。

  • 施設の設計とその建設に確保されたオプション及び基本原則
  • リスクインベントリ及びリスク予防に関する技術オプション
  • 予備リスク解析及び影響評価 - 操業期間及び閉鎖後期間を対象

これに対し、ASNは、2014年12月19日付けの書簡において、「安全オプション意見請求書」の提出に係るANDRAの決定を承諾し、ANDRAに対し、「安全オプション意見請求書」において示される地層処分場の基本設計の内容が2008年の地層処分に関するASN指針に整合していることを説明するとともに、全ての操業段階での安全確保のために採用された安全目標、設計、原則について網羅的に提示すること等を要請していた。

【出典】

 

【2016年12月08日追記】

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2016年12月6日に、ANDRAが2016年4月に原子力安全機関(ASN)へ提出した地層処分場の「安全オプション意見請求書」に関して、国家評価委員会(CNE)が行った分析と勧告を取りまとめた報告書「CIGEO2016文書の分析及び勧告」を公表した。CNEは2006年の放射性廃棄物等管理計画法等に基づいて、ANDRAが予定する地層処分場の設置許可申請に関する評価報告書を議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出することになっており、今回の「安全オプション意見請求書」に関する分析と勧告は、設置許可申請を見据えたものである。
CNEは今回の報告書において、以下のような意見を示している。

  • 廃棄物の定置が完了した処分孔は、開放状態にせず、隔離すべきである。
  • 地層処分場の操業に関わる作業員の訓練や、操業手順を決定するために、3次元のインタラクティブなシミュレーションを実施することを勧告する。
  • 工事中の区域と操業中の区域における作業員の安全を同時に確保する措置を明確化し、事故が発生した場合の状況分析を行うべきである。
  • 高レベル放射性廃棄物の処分孔、長寿命中レベル放射性廃棄物の処分坑道、さらにはニアフィールドで生じる現象について、処分場の閉鎖前後に着目した経時変化ダイアグラムを示すべきである。
  • 地層処分場の安全性の立証は、地層処分場の構造物及び地質環境における放射性化学種の放出と移行のモデルに基づいているため、異なるレベルの現象を再現する様々なモデルを明確に区別することを勧告する。また、放射性物質のパラメータの変動がシミュレーション結果に与える影響を評価する感度解析を行うことを要請する。
  • 地層処分場の建設によって影響を受けた岩盤に関するパラメータを、より適切に根拠づけて選択できるようにするため、カロボ・オックスフォーディアン粘土層の過剰な圧力上昇や熱-水-応力連成現象等に関する理解を深め、岩盤の長期的な応力挙動に関する包括的な定量化を行う必要がある。
  • 熱-水-応力連成メカニズム及び複雑な化学メカニズムによって、処分場の閉鎖後にその構成要素が影響を受けるおそれがある。特に、水とガスによる影響が生じる過渡的なフェーズに特に注意すべきである。

    【出典】
    •    CNE、「CIGEO2016文書の分析及び勧告」、ANALYSE DES DOCUMENTS CIGEO 2016 ET RECOMMANDATIONS
    https://www.cne2.fr/telechargements/avis/Analyse-DOS-DOREC-PDE-Vfinal.pdf
    •    ANDRA、2016年12月6日付プレス
    http://www.andra.fr/index.php?id=actualite_1_1_1&art=6101

 

【2017年7月5日追記】

フランスの規制支援研究機関である放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)は2017年7月4日付けプレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)から原子力安全機関(ASN)に提出された地層処分場に関する「安全オプション意見請求書」に関する報告書を公表した。本報告書は、ASNの要請に基づいて実施した技術的評価の結果を取りまとめ、ASNの諮問委員会である2つの常設専門家グループ6 に2017年5月に提出したものである。IRSNは、今回の技術的評価を、地層処分場の設計を固める最終ステップと位置づけ、安全オプション意見請求書の内容について、原子力安全や放射線防護の観点から、ANDRAが採用した設計オプションの適切性について評価を行ったとしている。

IRSNは、ANDRAの地層処分プロジェクトに対し、安全オプション意見請求の段階としては技術的に十分に高いレベルに達していると評価する一方で、地層処分場の設計変更が必要となる可能性のある問題点として、以下の4点を指摘している。

  • 地層処分場の施設や立坑が放射性核種の移行経路とならないようにすることを意図した施設構成(アーキテクチャ)の最適化
  • 処分場の操業期間中に実施されるモニタリング計画(操業パラメータのモニタリング、処分孔の挙動などの安全上重要なパラメータ)
  • 地層処分場の施設の汚染事故への対応手段の確保
  • ビチューメン(アスファルト)固化体の処分坑道における火災を想定した対策

 

IRSNは、「安全オプション意見請求書」の提出時における地層処分場の設計について、処分坑道においてビチューメン固化体の火災が発生した場合の安全確保は不十分であるとの見解を持っている。このためIRSNはANDRAに対し、廃棄物発生責任を負う事業者と協力し、ビチューメン固化体の熱反応を抑えるための前処理を行うことを検討するか、あるいは、地層処分場の設計を大幅に見直す必要があると指摘している。

なお、ビチューメン固化体の処分坑道への定置後の発熱反応等に関する研究が従来から進められており、ASNが2017年2月に公表した「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画(PNGMDR)2016-2018」においても取り上げられている。本国家計画の施行に係る2017年2月23日付のアレテ(省令)においては、①廃棄物発生責任を負う事業者の一つである原子力・代替エネルギー庁(CEA)がANDRAと協力し、ビチューメン固化体の挙動に関する研究を継続し、2017年6月末までに政府に研究結果を報告すること、②ANDRAはビチューメン固化体を地層処分場へ受け入れた際の影響を分析し、2018年6月末までに政府に報告することが要求されている

今後ASNは、IRSNが提示した評価結果及び2016年12月に公表された国際原子力機関(IAEA)による評価結果を受けて、2つの常設専門家グループが行う勧告を踏まえ、2017年夏頃に、安全オプション意見請求書に関する見解を公表する予定である。

 

【出典】


  1. 原子力基本施設及び原子力安全・放射性物質輸送管理に関する2007年11月2日のデクレ(2007-1557)の第6条に基づいて、事業者(ANDRA)は、処分施設の安全を確保するために採用したオプションの全部または一部に関する意見を原子力安全機関(ASN)に請求することができる。 []
  2. フィンランドの安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)の放射性廃棄物及び放射性物質規制部長を長とし、英国、スイス、ドイツ、ベルギー、スウェーデン、米国とIAEAの9名の専門家で構成 []
  3. 処分事業に関する最新の進捗状況を、操業開始、パイロット操業フェーズから本格操業フェーズへの移行、処分施設の閉鎖等に関する主要な課題と決定の時期を伝え続ける書類であり、5年毎に更新 []
  4. 高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の処分が想定されている地層 []
  5. 高レベル放射性廃棄物の処分孔(水平に掘削、全長約40m)の内部に設置される金属製の筒であり、廃棄体の設置及び回収を容易にする []
  6. 廃棄物常設専門家グループ(GPD)及び研究所・プラント常設専門家グループ(CPU) []

フランスで2016年7月11日に、地層処分場の設置許可申請時期の変更、可逆性の定義、パイロット操業フェーズの導入等に関する規定を含む「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」が成立した。本法律の制定に伴って、「2006年放射性廃棄物等管理計画法」において規定されていた「可逆性のある地層処分」の処分場の設置許可申請時期が2015年から2018年に改定される。また、2006年放射性廃棄物等管理計画法での多くの規定が取り込まれている「環境法典」が改正され、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による地層処分場の操業は、可逆性と安全性の立証を目的とする「パイロット操業フェーズ」から始まることとなった。

今回成立した「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」では、地層処分の「可逆性」を以下のように定義している。

  • 「可逆性」とは、地層処分場の建設・操業を段階的に継続すること、または過去の選択を見直し、管理方法を変更することが将来世代にとって可能とすることである。
  • 可逆性は、将来の技術進歩を反映し、エネルギー政策の転換による廃棄物インベントリの変更に対応するために、地層処分場の建設を段階的に進め、設計を調整可能とし、操業の柔軟性を確保することによって実行される。
  • 可逆性には、定置済の廃棄物パッケージが、処分場の操業・閉鎖戦略と整合した方法及び期間において、回収可能であることが含まれる。
  • 可逆性は、環境法典に定める公衆の安全、保健、衛生の保証、自然環境の保護の目的を遵守するよう確保されなければならない。可逆性の原則については少なくとも5年に1度の頻度でレビューを行う。

また、「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」は、可逆性のある地層処分について以下の事項を規定している。

○2006年放射性廃棄物等管理計画法に規定された地層処分場の設置許可申請時期を2015年から2018年に変更する。

○環境法典に以下の内容を規定する。

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、地層処分場の操業期間を通じて、市民参加を確実にするため、全てのステークホルダーとの協議のもとで「操業基本計画」を策定し、5年毎に見直す。
  • 地層処分場の操業は、実地試験を実施し、地層処分場の可逆性と安全性の立証を強固にすることを目的としたパイロット操業フェーズから始まる。パイロット操業フェーズにおいては、全ての廃棄物パッケージは容易に回収できる状態に維持されなければならない。パイロット操業フェーズで行う試験には、廃棄物パッケージの回収試験も含まれる。
  • デクレ(政令)による地層処分場の設置許可の発給後、原子力安全機関(ASN)が発給する操業許可は、パイロット操業フェーズの操業に限定される。
  • 地層処分場の設置許可申請において、地下構造物に関しては、都市計画法典に基づく建設に関する事前の申告または建設許可は免除される。
  • 地層処分場のパイロット操業フェーズの操業許可は、その操業者が地上施設の設置される土地及び地下構造物の設置される地下部分の所有者である場合、もしくは土地所有者の義務について操業者と土地所有者の合意がある場合に限り発給できる。
  • パイロット操業フェーズの結果については、ANDRAが報告書を作成するとともに、ASN及び国家評価委員会(CNE)が見解書を提示する。さらに公衆意見聴取の対象区域内に全部または一部が所在する地方公共団体の意見が聴取される。
  • ANDRAの報告書はASN及びCNEの見解書とともに、議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出される。OPECSTはANDRAの報告書を評価し、放射性廃棄物管理政策を担当する議会上下両院の委員会に、評価作業を報告する。
  • 政府はOPECSTの勧告も踏まえて、地層処分の可逆性の実現に関する条件を定める法案を策定する。
  • 操業中の地層処分場の可逆性の実現に関する条件を定める法律の公布後、ASNは地層処分場の全面的な操業の許可を発給できる。法律に定められる可逆性の実現に関する条件を満たしていない場合、操業許可は発給されない。

地層処分場の設置許可申請時期については、2006年放射性廃棄物等管理計画法において、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2015年に設置許可申請書を提出することが規定されていた。しかし、同法にて設置許可申請書の提出に先立って実施が義務付けられた公開討論会が2013年に開催された結果を踏まえ、ANDRAは2014年5月に、設置許可申請時期の変更や、パイロット操業フェーズの導入等を提案していた。今回成立した「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」には、これらの設置許可申請時期の変更等に関する規定が含まれている。

また、2006年放射性廃棄物等管理計画法は、設置許可申請書が提出された後、政府が地層処分の可逆性の条件を定める法案を提出することを規定していたが、今回成立した、「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」により、環境法典に可逆性の定義が盛り込まれた。今後、政府は、パイロット操業フェーズの結果を踏まえた上で、全面的な操業以降における地層処分の可逆性の実現に関する条件を定める法案を策定することとなる。

なお、地層処分場の設置許可申請スケジュールの変更等については、2015年7月に成立した「成長、活動、経済機会の平等のための法律」において規定されていた。しかし、同年8月、同法の目的と地層処分場に係る規定の関連が弱いこと等を理由に、憲法院1 は同法の地層処分場に係る規定を違憲と判断し、これらの規定は無効とされた。今回成立した「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」は、無効となった規定の内容を一部踏襲し、2016年3月にロンゲ上院議員及びナミ上院議員らが法案を上院に提出したものであり、2016年5月17日に上院で可決された後、国民議会(下院)で最終可決されたものである。

 

【出典】


  1. 憲法裁判所である憲法院(Conseil constitutionnel)は、国会の議決後、大統領による審査・署名前の法律に対する違憲審査、大統領選挙の選挙管理、大統領及び国会議員の選挙に関する裁判等を行う。司法権にも行政権にも属さない機関である。 []

フランスの原子力安全機関(ASN)は2016年6月16日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物の地層処分における「可逆性」の技術的解釈に関する2016年5月31日付の見解書を公表した。フランスでは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法により、高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物について、「可逆性のある地層処分」を行う方針を定めている。2016年3月30日には、地層処分場の設置に関する法案1 が提出されており、国会で審議が行われている。ASNは今回の見解書の公表にあたり、審議中の法案には「可逆性」に関する規定が盛り込まれており、この規定が今後、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が地層処分場の設置許可申請を行う際の条件になるとしている。

ASNは、今回の見解書において、可逆性の原則は以下の2つの必要性によって説明されるとしている。

①適応性: 地層処分場は、以下の条件を考慮することが可能でなければならない。

  • 経験のフィードバックと科学の進歩(例えば、地層処分場の開発において採用される産業プロセスの変更につながるもの)。
  • エネルギー政策や事業方針の変更(例えば、使用済燃料の直接処分、または地層処分場の閉鎖が先送りされるなど)。

②回収可能性: 放射性廃棄物は以下の条件で、地層処分場から回収できなければならない。

  • 法律によって定められる期間にわたって回収可能であること。
  • 地層処分場の構造物や廃棄物パッケージが劣化した場合であっても、原子力安全と放射線防護を確保した形で回収可能であること。

ASNは、適応性及び回収可能性に関するこれらの条件は、透明性が確保され、あらゆるステークホルダーとともに、定期的に再評価されなければならないとしている。また、ASNは、適応性に関して考慮すべき条件のうち、エネルギー政策や事業方針の変更に関連して、ANDRAによる地層処分プロジェクトのコスト評価報告書に関する2015年2月10日付のASN見解書において必要性に言及した、将来的な政策変更等を考慮した廃棄物インベントリについて、地層処分場の設置許可申請以降、速やかに提出される必要があると指摘している。

さらに、ASNは、可逆性の原則の実現に際しては、安全確保の上で必要な以下の2つの事項が達成されなければならないことを指摘している。

  • 可逆性を担保した状態で地層処分場を機能させるために採用される措置は、操業中及び閉鎖後における原子力安全及び放射線防護の目標と整合していなければならない。
  • 地層処分場の操業期間は有限でなければならず、地層処分場の長期安全性を確保するためには、処分場の閉鎖が不可欠である。

なお、ASNは2014年12月に、ANDRAが設置許可申請に先立ってASNに提出する「地層処分場の主要な技術オプション」等に対する記載要求事項をまとめた書簡をANDRAに送付し2 、この中で、可逆性に関する考え方を示しており、可逆性には「適応性」と「回収可能性」の2つの概念を含むことが適切であるとの判断を示していた。

 

【出典】


  1. ロンゲ上院議員及びナミ上院議員、2016年3月30日提出、「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法案」 []
  2. フランスでは、原子力基本施設及び原子力安全・放射性物質輸送管理に関する2007年11月2日のデクレ(政令)(2007-1557)の第6条に基づき、原子力施設の設置許可申請に先立って、安全オプションをASNに提出し、その見解を求めることができるとされている。ASNは見解において、設置許可申請を行う場合に必要となる補完的な研究や立証についても特定することができる []

フランスにおいて放射性廃棄物等の管理に関する調査研究の進捗状況を評価する国家評価委員会(CNE)は、第10回評価報告書を2016年5月25日に議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、CNEのウェブサイトで公表した。CNEは、2006年放射性廃棄物等管理計画法による規定に基づいて、放射性廃棄物等管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を実施し、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出することになっている。第1回評価報告書は2007年6月に取りまとめられており、今回の報告は10回目となる。

CNEの第10回評価報告書では、高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分プロジェクトのほか、特に、極低レベル放射性廃棄物、技術的に濃度が高められた自然起源の放射性物質(TENORM)廃棄物及び長寿命低レベル放射性廃棄物の管理研究も取り上げている。これらの放射性廃棄物の処分実施主体はいずれも、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)である。CNEは、ANDRAが処分の実現に向けて実施している研究開発について、以下のような見解を示している。

高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分プロジェクト

  • ANDRAは、地層処分場の機能の実証等を行うため、通常の操業フェーズに先立ち「パイロット操業フェーズ」(PIP)を導入する予定としており、CNEも地層処分事業を実証する上で「パイロット操業フェーズ」が不可欠であると考える。CNEは、ANDRAが処分場の建設及びパイロット操業フェーズの期間を通じて、公衆に情報提供しつつ経験をフィードバックするとともに、毎年、進捗報告書を提出することを勧告する。また、ANDRAが地層処分場の設置許可申請書とともに提出することになっている「事業計画」を策定するため、パイロット操業フェーズでの実証試験等が行われる地層処分場の最初の処分区画について、建設の技術オプションを可及的速やかに確定することを勧告する。
  • 設置許可申請前に、発熱量の大きな高レベル放射性廃棄物の処分区画の設計を行うためには、熱-水-応力連成現象の理解を深めなければならないが、ANDRAは設置許可申請時には、これらの現象の不確実性を考慮した設計を示す必要がある。発熱量の大きな高レベル放射性廃棄物の処分区画の建設が始まるのは数十年先であることから、CNEは、ANDRAが設計に柔軟性を持たせ、これらの処分区画の建設開始までの間に適切な規模で熱-水-応力連成モデルの試験を提案するよう勧告する。
  • ANDRAは地下研究所において多くの試験を行ってきたが、そこで得られた全ての試験結果を説明できる力学モデルを開発できていない。CNEは、ANDRAが100年単位での岩盤の力学挙動を説明する主要な特性を優先的に明らかにすべきであると考える。
  • ANDRAは、処分場の坑道のシーリングの有効性に関する実規模実証試験をパイロット操業フェーズで実施することを検討しており、このことは処分場の設置許可デクレ(政令)の発給前に、この実証試験の成果を利用できないことを意味している。CNEは、ANDRAが地下研究所での試験を活用し、地層処分場の全てのフェーズにおける坑道のシーリング機能に関するモデルを提示するとともに、処分場でのパイロット操業フェーズにおける実規模試験の詳細を確立するよう勧告する。
  • CNEは、地層処分場に輸送される廃棄物パッケージの輸送容器の仕様と検査体制について、設置許可申請の前に確定しておくべきと考える。
  • 地層処分プロジェクト全体をカバーするコストの目標額が、2016年1月のアレテ(省令)により250億ユーロ(約3兆3,500億円)と設定されたが、この額が過去にANDRAが見積った額よりも低いことにCNEは疑問を持っている。ANDRAと原子力事業者が合意して採用した地層処分場の技術オプションは維持されるべきであり、予算的な観点から見直されるべきではない。

極低レベル放射性廃棄物

  • 国内の原子力発電所の廃止措置に伴い、2080年までに大量の極低レベル放射性廃棄物が発生する見込みであり、極低レベル放射性廃棄物処分場の新設も検討されている。CNEは、現時点では放射性廃棄物とみなしているものの、ほとんど放射性物質に汚染されていない廃棄物の管理に関して、研究機関や事業者等が革新的な研究を継続することを奨励する。また、大量の廃棄物の中から、微量の放射性物質を検知する方法を開発するよう改めて勧告する。

TENORM廃棄物

  • 「電離放射線からの被ばくを防護するための基本安全原則を制定するEU指令2013/59/Euratom」が今後国内法化されると、「技術的に濃度が高められた自然起源の放射性物質」(TENORM)廃棄物は、フランスでは原子力活動から発生した廃棄物であるとみなされることとなる。このためCNEは、ANDRAに対し、同EU指令の国内法化によるTENORM廃棄物の管理への影響を評価するよう要請する。

長寿命低レベル放射性廃棄物

  • CNEは、長寿命低レベル放射性廃棄物に含まれる放射性核種のインベントリをさらに精緻化すべきと考える。
  • 処分が想定されている長寿命低レベル放射性廃棄物に含まれる放射性核種の挙動に関し、CNEは、現状得られている結果は、ANDRAが選定した処分場候補サイトの全ての地質学的パラメータを考慮した、現実的な安全解析を実施するには不十分であると考える。

 

【出典】

 

フランスのエコロジー・持続可能開発・エネルギー省は2016年1月11日、地層処分プロジェクトのコスト評価の進捗状況として、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2014年10月に提出したコスト評価に関する報告書、同報告書に対する原子力安全機関(ASN)の見解及び原子力事業者の見解を公表した。

現在、フランスでは、地層処分事業に係る基金制度はあるものの実際の運用はされておらず、原子力事業者は地層処分場の建設・操業等のコストを賄うために引当金を内部留保している。引当金は、2005年に政府、ANDRA、フランス電力株式会社(EDF社)、AREVA社及び原子力・代替エネルギー庁(CEA)が行った評価結果(135~165億ユーロ(約1兆8,100億円~約2兆2,100億円))に基づいて計上している。

地層処分プロジェクトが具体化する中で、ANDRAは新たにコスト評価を行い、2014年10月に、エコロジー・持続可能開発・エネルギー省に報告書を提出していた。今回、同省は2006年放射性廃棄物等管理計画法の規定1 に基づいて、ANDRAによるコスト評価報告書とともに、ASN及び原子力事業者の見解を公表したものである。

今回公表された2014年10月のANDRAのコスト評価報告書では、コスト総額は344億ユーロ(約4兆6,100億円)2 との結果が示されている。

■ANDRAによるプロジェクトコストの評価額(金額は2012年価格)
建設費 198億ユーロ
操業費(操業期間は100年以上) 88億ユーロ
41億ユーロ
その他支出 17億ユーロ
合計 344億ユーロ

 

ANDRAのコスト評価報告書について、ASNは2015年2月10日付で以下のような見解を示していた。

  • コスト評価はデータ等に裏付けされた根拠の確かなものである。特に、地層処分場の安全性についてより適切に考慮されていることから、2005年時点のコスト評価から大きな進展があったと評価できる。
  • 原子力事業者の引当金計上のため、コストは早急に確定されなければならない。しかし、コスト評価におけるANDRAの仮定には、将来的な政策変更によって処分対象となる廃棄物インベントリに、商業用原子炉や研究炉の使用済燃料が含まれる可能性が考慮されていない等の楽観的すぎる点がある。
  • 地層処分プロジェクトについて現時点で不確実性があることはやむをえない。このためコスト評価は少なくとも、設置許可や操業認可の発給時やパイロット操業フェーズ終了時など、プロジェクトの重要なマイルストーンにおいて、定期的にアップデートされるべきである。
  • 情報の透明性を確保するため、ANDRAのコスト評価報告書や原子力事業者の見解は公開されるべきである。

一方、原子力事業者(EDF社、AREVA社及びCEA)が共同で示した2015年4月16日付の見解では、地層処分場の事業期間中の技術的、経済的な最適化等により、コスト総額は200億ユーロ(2兆6,800億円)3 になるとしていた。

また、ASNの見解に対し、ANDRA、EDF社、AREVA社は2016年1月11日の共同プレスリリースにおいて、フランスの会計検査院(CDC)の試算によれば、発電コストに占める地層処分プロジェクトに係るコストの割合は、1~2%とされており、ANDRAと原子力事業者によるコスト評価結果の違いは電気料金へ大きな影響を与えないとしている。

今後、エネルギー担当大臣はこれらの評価結果を踏まえた処分コストの見積額を決定することとなる。

なお、会計検査院(CDC)は2014年5月に公表した原子力発電事業のコストに関する報告書(更新版)において、放射性廃棄物管理事業に備えるため原子力事業者が積み立てる引当金の算定に採用する割引率(将来費用の現在価値への換算係数)について、2007年のアレテ(省令)に規定される割引率の上限の設定方法を見直すべきであると提言している4

 

【出典】

【2016年1月18日追記】

フランスのエコロジー・持続可能開発・エネルギー省は2016年1月15日、「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の長期管理方策の実施に係るコストに関する2016年1月15日付のアレテ(省令)」を制定し、同アレテは2016年1月17日付官報に公示された。

本アレテの第1条では、2016年以降、以下に列挙するような140年間にわたる地層処分プロジェクト全体をカバーするコストの目標額を250億ユーロ(約3兆3,500億円)とすることが規定されている。

  • プロジェクトの第一段階の構造物の設計・建設(10年)
  • 地層処分場のパイロット操業フェーズ(10年)
  • 段階的な地層処分場の操業・開発フェーズ(110年)
  • 地層処分場の閉鎖フェーズ(10年)

また、本アレテの第3条では、プロジェクトの進展状況や、原子力安全機関(ASN)の見解を受けて、必要に応じてコストの目標額を見直すことが規定されている。

なお、本アレテにおいてコストの目標額は、2011年12月31日時点の経済条件に基づくものとしており、目標額の内訳は示されていない。

今回のアレテの制定を受けて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2016年1月15日付でプレスリリースにおいて、地層処分場の開発プロジェクトは、操業期間を通じて段階的に進める計画であり、技術の進展に伴うイノベーションや、ANDRA及び原子力事業者による最適化を開発プロジェクトに反映することが可能であるとしている。ANDRAは最適化の可能性について、以下の方法を例示している。

  • 高レベル放射性廃棄物の処分坑道:安全要件を遵守しつつ、処分坑道の長さを100メートル以上に延長することにより、コスト削減が実現できる可能性がある。
  • 掘削技術及び処分坑道の支保技術:技術進展によって、掘削スピードが増大するだけでなく、処分坑道のより最適な支保が可能となる。
  • 長寿命中レベル放射性廃棄物の処分坑道:直径を大きくすることによって、処分に必要な空間を確保しつつ、掘削量を低減できる可能性がある。

ANDRAはこれらの最適化について、2018年に予定されている地層処分場の設置許可申請時までには明確化できるとしており、一部の最適化については、設置許可申請段階において安全性の立証を実施することも可能であるとの見通しを示している。その他の最適化については、段階的な地層処分場の開発プロジェクト期間を通じて、長期的な研究が必要になるとしている。

【出典】


  1. 2006年放射性廃棄物等管理計画法は、ANDRAが地層処分のコストを評価してエネルギー担当大臣に提案すること、エネルギー担当大臣は原子力事業者とASNの意見を徴したうえで、これを公表することを規定している。また、併せて、地層処分場の建設段階以降に、建設・操業等に係るコストを賄うための基金をANDRA内に設置することを規定しており、原子力事業者に対して、同基金に将来的に拠出するため、コスト評価とその資金の確保(引当金の積立てと引当金を保証する排他的な資産としての割当)を要求している。さらに、原子力事業者によるコスト評価に対する資金確保及び管理状況の適切性等を評価する組織として、資金評価国家委員会(CNEF)の設置を規定している []
  2. プロジェクトに関するリスク等が実現した場合のコストへの影響額は含まない []
  3. プロジェクトに関するリスク等が実現した場合のコストへの影響額は含まない []
  4. 「原子力債務の資金確保に関する2007年3月21日のアレテ(省令)」の第3条では、割引率の上限値について「当期の決算日において確認された固定金利タイプ30年満期国債金利(TEC 30)の直近48ヶ月の算術平均に1ポイントを加算したものに等しい」と規定されているが、経済状況の変化により国債金利が低下傾向にある。原子力事業者は同規定に基づいて、2012年まで割引率を5%に設定してきたが、国債金利の低下に伴い、割引率は5%を下回っている。 []

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2015年10月12日に、長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトの進捗に関する報告書を公表した。本報告書においてANDRAは、オーブ県のスーレーヌ・コミューン共同体1 における地質調査の結果、処分場の設置に適した特性を持つ粘土層の存在を確認し、地質調査を継続する10㎞2の区域を特定している。長寿命低レベル放射性廃棄物には、以下のような廃棄物が含まれる。

  • ラジウム含有廃棄物(主に希土類、ジルコニウム、ウランの鉱石の処理により発生)
  • 黒鉛廃棄物(主に黒鉛減速炭酸ガス冷却炉(GCR)の運転、廃止措置により発生)
  • アスファルト固化廃棄物等

今回ANDRAの報告書において、これらの長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトの進捗は、以下の通りとしている。

<長寿命低レベル放射性廃棄物の特性>

長寿命低レベル放射性廃棄物は、2013年時点で約9万m3が存在しており、フランス国内の放射性廃棄物の総量の6%、放射能量の0.01%を占める。同廃棄物には半減期の極めて長い核種(例えば、塩素36、半減期約30万年)が含まれていることから、深さ100m程度の地層中に処分するオプションも検討していたが、廃棄物の特性に関する研究が進み、新たに特定した放射能インベントリに基づき、浅地中処分(深さ約20m)を検討できるようになった。

<処分場のサイト選定>

ANDRAは、2008年に長寿命低レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定の公募を開始し、2009年にはオーブ県にある2つの自治体(コミューン)であるオークソンとパール・レ・シャヴァンジュを選定した。しかし、両自治体とも自治体議会の反対を受けて、選定プロセスから撤退した。これを受けて政府は、ANDRAに対し、すでに原子力施設が立地しているサイト近傍の自治体、または2008年のサイト選定公募に応募した自治体における研究を検討するよう指示した。その後、すでに低レベル放射性廃棄物の処分場が立地しているオーブ県のスーレーヌ・コミューン共同体がサイト選定に向けた調査の実施を承諾したことを受け、ANDRAは2013年7月からスーレーヌ・コミューン共同体の50km2の区域において地質調査を開始した。調査の結果、浅地中処分場の設置に適した特性を持つ粘土層の存在を確認し、地質調査を継続する10㎞2の区域を特定した。

<処分場の設計>

長寿命低レベル放射性廃棄物の浅地中処分場の設計については、原子力安全機関(ASN)が2008年5月に公表した「長寿命低レベル放射性廃棄物処分のサイト調査に関する安全性の一般方針」に示された安全目標等に基づいて検討した。ANDRAは、①地表からの開削、②地下での処分スペースの掘削の2つのオプションのいずれかの採用に向けて、さらに研究を継続している。なお、ANDRAは、廃止措置に伴って今後発生する極低レベル放射性廃棄物についても、長寿命低レベル放射性廃棄物に隣接した区域における処分が可能であると考えている。

<プロジェクトの今後の計画>

ANDRAはスーレーヌ・コミューン共同体において特定された10km2の区域において、処分場サイト選定のための補完的な調査を2015~2016年にかけて実施する。また、処分場の設計に関する検討も継続し、特に、開削方式を採用した場合に、掘削した土を埋め戻した後の挙動について研究を進める。これらの研究結果に基づきANDRAは、2018年に処分場の設計案を作成し、設置許可申請書の提出に向けた作業を進める。

 

今回ANDRAが公表した報告書は、2013~2015年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物管理国家計画」(PNGMDR)の施行に関する2013年12月27日のデクレ(政令)に基づいたものである。本デクレにおいては、ANDRAが2015年6月30日までに、黒鉛廃棄物とアスファルト固化廃棄物の管理シナリオ及び地表からの開削と覆土による処分プロジェクトのフィージビリティに関する報告書について、エネルギーと原子力安全の担当大臣に提出しなければならないと定めている。なお、フランスでは、2006年放射性廃棄物等管理計画法に基づいて、政府が3年間毎に「放射性物質及び放射性廃棄物管理国家計画」(PNGMDR)を策定することになっており、次の国家計画の策定は2016年の予定である。

 

【出典】

【2016年4月20日追記】

フランスの原子力安全機関(ASN)は2016年4月6日、長寿命低レベル放射性廃棄物の管理研究に関する2016年3月29日付の見解書を発表した2  。ASNは今回の見解書において、長寿命低レベル放射性廃棄物の種類が多様であることから、それら全てを単一処分場で処分するには多くの課題があるという認識を示しているが、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が処分場の設置を想定している粘土層の機能(低透水性、水理地質学的条件、厚さ等)、処分場の操業中及び閉鎖後の安全性に関する予備的安全評価(廃棄物の化学的毒性による影響、廃棄物に含まれるウランやラジウムの放射性崩壊に伴って発生するラドンによる被ばく等)に関して、ANDRAが研究を継続するにあたっての要求や勧告を今後示す方針を表明した。

ASNは今回の見解書において、ANDRAが2015年10月12日に公表したANDRAによる長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトの進捗に関する報告書について、以下のような意見を示している。

  • 処分場を設置することを想定している粘土層の下には帯水層があるが、この帯水層への放射性核種の移行を防ぐために、粘土層のうち処分場を設置する面よりも深い部分の特性(厚み、均質性、低透水性等)に関する詳細な分析を行うべきである。
  • ANDRAは処分対象となる長寿命低レベル放射性廃棄物のインベントリを明確にする必要がある。
  • ANDRAは、長寿命低レベル放射性廃棄物の処分場に採用する技術オプション及び安全オプションをASNに提出したうえで、侵入リスクや放射性物質及び化学物質の拡散に対する防護について、慎重な決定論的安全評価アプローチに基づく予備的安全評価を提出すべきである。
  • ANDRAが想定しているスーレーヌ・コミューン共同体における処分場の設置を補完する措置として、ANDRAは第2の処分場の設置可能性を検討し、2017年半ばまでに、候補サイトを選定するための方法論を提出するべきである。

なお、フランスではASN等が2016年内に、2016~2018年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)を取りまとめる予定である。ASNは今回公表した意見書において、PNGMDRで規定する長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトのスケジュールに関して、ANDRAが提示していたものよりも慎重なものとする見解を示している。ASNは、ANDRAの安全オプションの提出が2021年末、処分場の設置許可申請を2025年末まで行い、処分場の操業開始を2035年にする案を示している。

【出典】

  • 低レベル長寿命放射性廃棄物の管理研究に関する2016年3月29日付のASN見解書第2016-AV-264号、Avis no 2016-AV-264 de l’Autorité de sûreté nucléaire du 29 mars 2016 sur les études relatives à la gestion des déchets de faible activité à vie longue (FA-VL) remises en application du Plan national de gestion des matières et des déchets radioactifs 2013-2015, en vue de l’élaboration du Plan national de gestion des matières et des déchets radioactifs 2016-2018
    http://www.asn.fr/content/download/102318/751420/version/2/file/2016-AV-0264.pdf
  • 2015年10月12日、ANDRA、長寿命低レベル放射性廃棄物処分プロジェクトの進捗に関する報告書、PROJET DE STOCKAGE DE DÉCHETS RADIOACTIFS DE FAIBLE ACTIVITÉ MASSIQUE À VIE LONGUE (FA-VL) RAPPORT D’ÉTAPE 2015
    http://www.andra.fr/download/site-principal/document/editions/rapport-etape-favl.pdf

 


  1. オーブ県の複数のコミューン(自治体)の広域行政組織 []
  2. 2013~2015年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)の施行に関する2013年12月27日のデクレにおいて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトの進捗に関する報告書について、ASNが意見を示すべきことが規定されており、今回の見解書はこれに基づいたものである。 []

フランスの憲法院(Conseil constitutionnel)1は2015年8月5日に、「成長、活動、経済機会の平等のための法律」(2015年7月9日成立)のうち、地層処分場の設置許可申請スケジュールの変更等を定めた条文を含む複数の条文が違憲であるとの決定を行った。憲法院が違憲と決定した条文は施行されず、憲法院の決定に対する不服申立ても認められない。

フランスでは議会で成立した法律は大統領による審署により執行力が与えられるが、審署前に、国会議員60人以上の求めがある場合には憲法院に合憲性審査を付託することが可能である。今回の法律に関する合憲性審査は、約200人の国会議員が2015年7月15日に審査を付託したものである。

今回の法案を提出した経済・産業・デジタル省のマクロン大臣は2015年8月6日付のプレスリリースにおいて、憲法院が当該条文を違憲と判断した理由として、同法の目的との関連が弱いこと、または、法案審議で取り上げられたタイミングが遅かったことであると指摘している。なお、同大臣は、今秋以降の議会において、これら違憲と判断された条文に規定された措置について再検討する方針を明らかにしている。

 

【出典】


  1. 憲法裁判所である憲法院(Conseil constitutionnel)は、議会の議決後、大統領による審査・署名前の法律に対する違憲審査、大統領選挙の選挙管理、大統領及び国会議員の選挙に関する裁判等を行う。司法権にも行政権にも属しない機関である。参考:http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/pdfs/dai5gijiroku-2.pdf []