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ドイツ連邦政府は2015年10月14日に、原子力発電からの撤退1 に関連して、原子力発電所の廃止措置及び放射性廃棄物管理のための資金(以下「バックエンド資金」という)について、資金確保のあり方を検討する「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という)の設置を決定した。検討委員会は、原子力発電事業者がバックエンド資金に係る費用負担の責任を果たすため、十分なバックエンド資金を長期的に維持できるような資金確保方策を検討するとされている。

脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会

2015年10月14日付で設置された検討委員会は、3名の共同委員長及び委員16名の合計19名で構成される。

共同委員長は以下の3名である。

  • マティアス・プラツェク(元ブランデンブルク州首相、社会民主党(SPD))
  • オーレ・フォン・ボイスト(元ハンブルク市長、キリスト教民主同盟(CDU))
  • ユルゲン・トリッティン(元連邦環境大臣、緑の党)

16名の委員には、州首相経験者を含む政治家、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の原子力安全局長、会計監査、法律の専門家の他、経済団体、環境団体、労働組合、大学、宗教団体などに所属する委員が含まれている。

ドイツには現在、バックエンド資金確保に関して公的な基金制度などはなく、原子力発電事業者が独自に引当金として資金確保を行っている。しかし、資金確保のあり方については、「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」に基づき設置された「高レベル放射性廃棄物処分委員会」の市民対話集会などにおいても、基金や財団を設置して管理すべきとの意見が出されていた

検討委員会は2016年1月までに検討結果を勧告にとりまとめ、「原子力発電に関する政務次官委員会」に提出する。同政務次官委員会は、今回の閣議決定によって検討委員会と同時に設置された関係省庁の次官級組織であり、連邦経済エネルギー省(BMWi)、BMUB、連邦財務省(BMF)、連邦運輸・デジタルインフラ省(BMVI)の次官や連邦内閣官房長官等で構成され、検討委員会の活動に協力すると共に、検討委員会から提出された勧告のレビューを行う。

原子力発電事業者のバックエンド資金に係る費用負担能力に関するストレステスト

検討委員会の設置に先立ち、連邦経済エネルギー省(BMWi)は2015年10月10日に、原子力発電事業者のバックエンド資金に係る費用負担能力に関するストレステストの結果を公表した。本ストレステストは、BMWiが会計監査法人に委託して実施したものであり、原子力発電事業者を傘下に持つ事業者がバックエンド資金に係る費用負担に耐えうるかの観点で財務状況を評価したものである。

本ストレステストでは、原子力発電所の廃止措置及び放射性廃棄物管理費用を含むバックエンド費用見積りの総額は、475億2,700万ユーロ(約6兆4,637億円、2014年価格)と算出されている。また、バックエンド費用見積りの内訳が、5種類の費用区分で示されている。費用区分ごとの見積額を下表に示す。

ドイツ原子力発電所の廃止措置及び放射性廃棄物管理費用を含むバックエンド費用見積り(2014年価格)

廃止措置と解体

197億1,900万ユーロ(約2兆6,818億円)

キャスク・輸送・運転廃棄物 99億1,500万ユーロ(約1兆3,480億円)
中間貯蔵 58億2,300万ユーロ(約7,919億円)
コンラッド処分場 37億5,000万ユーロ(約5,100億円)
高レベル放射性廃棄物処分場 83億2,100万ユーロ(約1兆1,320億円)
総額 475億2,700万ユーロ(約6兆4,637億円)

 

バックエンド費用見積り総額を基に、金利、インフレ率などのパラメータを変動させたシナリオにより、事業者によって確保されるべきバックエンド費用総額が計算されており、その幅を約299億ユーロ(約4兆700億円)から約774億ユーロ(約10兆5,000億円)と評価している。これに対し、2015年8月現在でのバックエンド資金として利用可能な対象事業者の資産総額は約830億ユーロ(約11兆3,000億円)であり、うち約383億ユーロ(約5兆2,100億円)が引当金として確保されている。このため、バックエンド費用が最も高額となるシナリオの場合でも、原子力発電事業者を傘下に持つ事業者はバックエンド資金に係る費用負担に対応できるとの評価結果を示している。

なお、本ストレステストの結果は、検討委員会に資料として提示されることとなっている。

 

【出典】


  1. ドイツ政府は2022年末までにすべての原子力発電所の営業運転を停止することを決定している。 []

欧州委員会(EC)は、2015年10月9日に、英国の新規原子炉から発生する高レベル放射性廃棄物等の所有権及び地層処分の費用負担責任を廃棄物発生者から英国政府に移転させる契約(Waste Transfer Contracts, WTC.以下「放射性廃棄物移転契約」という)について、契約価格の設定方法が、欧州連合(EU)の国家補助禁止規則に抵触しないとして、価格設定方法を承認することを公表した。

英国では、2008年エネルギー法により、原子力発電事業者に対し、新規原子炉の建設前に、廃止措置、放射性廃棄物の管理・処分費用のうち、自らの負担分の全額を賄うため、確実な資金確保措置を講じること1を義務付けており、原子力発電事業者は、廃止措置資金確保計画(FDP)を担当大臣に提出し、承認を得る必要があるが、このFDP承認の際に、放射性廃棄物移転契約の締結が望まれている。こうしたことから、エネルギー・気候変動省(DECC)は、2010年12月より放射性廃棄物移転契約の価格設定方法に関する公開協議を行い、その結果を踏まえ、2011年12月に「新規原子力発電所から発生する高レベル放射性廃棄物等の処分のための廃棄物移転価格設定方法」を公表している。この放射性廃棄物移転契約の価格設定方法については、事業者支援のために公的資金が利用されるおそれがあるため、欧州条約において原則禁止となっている国家補助禁止規則2に抵触していないかを欧州委員会が2012年6月から審査していた。

欧州委員会は、放射性廃棄物移転契約の価格設定方法がEUの国家補助禁止規則に抵触しないとした理由として、以下の点を挙げている。

  • 現在は地層処分の費用について不確実な点が多いが、契約価格が最終的に決定するのは新規原子炉における発電開始から30年後であり、現在の地層処分スケジュールから見ても、費用はほぼ明確になっていること
  • 契約価格には地層処分に係る全ての変動費と固定費が含まれており、契約価格設定後の処分費用の上昇リスクを考慮した適切な額が価格に上乗せされていること
  • 新規原子炉の発電開始から契約価格が最終的に決定する30年後まで、5年ごとに地層処分費用が見直され、事業者にはそのための資金を確実に確保していく義務が課せられていること
  • 英国政府が地層処分費用の上限額を保守的な方法で見積っていることから、実際の地層処分費用が、放射性廃棄物移転契約に基づいて事業者が支払う上限額を超過し、英国政府が超過分を負担することになるリスクが極めて低いこと
  • 設定価格には、英国政府が上記リスクを負うことに対する補償額が含まれていること
  • 英国政府が最終的に超過分を負担するという事業者支援が発生したとしても、支援によって生じる市場の歪曲は極めて限定的であること

【出典】


  1. 英国では、日本のような地層処分のための資金確保制度(外部独立基金)はなく、廃棄物発生者である事業者が必要な資金を確保することとなっている。 []
  2. EUにおける市場競争の歪曲、または歪曲するおそれのある国家補助に関する規則。 []

スイスの連邦評議会1 は2015年10月8日、地層処分場の設置に係る立地地域への経済的措置としての「交付金」及び影響に対する「補償金」について、現行の法制度の十分性に関する検討結果を取りまとめた報告書を公表した。本報告書は、スイスの国民議会(下院)の環境・都市計画・エネルギー委員会(UREK-N)が2013年4月9日に連邦評議会に対して検討を要請していたものである。UREK-Nの要請を受けて連邦評議会は、今回公表した報告書「地層処分場の影響—国民議会環境・都市計画・エネルギー委員会(UREK-N)要請13.3286(2014年4月9日付)に対応する連邦評議会報告」において、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に十分に規定されていることから、追加的な法整備は不要であるとの結論を示している。

特別計画に基づくサイト選定手続では、交通インフラなど他の事業にも共通する土地収用法に基づく補償義務に加え、放射性廃棄物処分場の立地地域に対する経済的措置として「交付金」及び立地地域へ及ぼす影響に対する措置として「補償金」が規定されている。

特別計画における「交付金」

特別計画では、国としての課題の解決への貢献に報いる経済的措置として、処分場の立地地域に対し、「交付金」を支払うことを定めている。特別計画に基づく「交付金」は、補助金法における交付金や土地収用法における補償のような法的根拠に基づく措置とは異なり、立地地域との個別の取り決めに基づいて支払われるものである。なお、スイスではすでに、原子力発電所や中間貯蔵施設について、取り決めに基づいて事業者が立地地域に対し、経済的措置を講じている。

「交付金」の分配・使途については、サイト選定第3段階の概要承認の発給前に、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)が地域会議、関係する州、自治体と協議し、取り決める。概要承認が発給され処分場サイトが確定した後に、NAGRAを経由する形で、廃棄物発生者がこの取り決めに基づいて立地地域へ「交付金」を支払う。

特別計画における「補償金」

特別計画では、地層処分場の計画や建設・操業に伴い立地地域に及ぼす影響に対し、「補償金」を支払うことが定められている。「交付金」の場合と同様に、特別計画に基づく「補償金」は、法律に基づく措置ではなく、地域会議及び関係する州が表明する影響に関して、廃棄物発生者、地域会議、関係する州、自治体との交渉の上で取り決められるものである。補償内容は連邦エネルギー庁(BFE)の承認を受ける必要がある。「補償金」に係る資金は、「交付金」と同様に、NAGRAを通じて廃棄物発生者が提供する。

地層処分場により立地地域が受ける影響に関して、特別計画は肯定的な面と影響の両面を早期に確認するよう要求しており、すでに連邦エネルギー庁(BFE)が2014年11月に、放射性廃棄物の地層処分場が立地地域に与える社会影響・経済影響・環境影響に関する調査の最終報告書を公表している

なお、「交付金」及び「補償金」の資金は、連邦が監督する放射性廃棄物管理基金により確保されることになっている。廃棄物発生者はこの基金に毎年拠出金を払い込んでおり、積立てられた資金のうち低中レベル放射性廃棄物用処分場については約3億スイスフラン(約381億円、1スイスフラン=127円で換算)、高レベル放射性廃棄物用処分場については約5億スイスフラン(約635億円)が立地地域に対する「交付金」及び「補償金」に充てられることになっている。2 連邦エネルギー庁(BFE)は、サイト選定第2段階終了までに、関係する州、自治体及び廃棄物発生者の関与のもと、「交付金」及び「補償金」に係る交渉の具体的なプロセスをガイドラインとしてまとめる予定である。

 

【出典】


  1. 日本の内閣に相当。 []
  2. 放射性廃棄物管理基金の管理委員会は廃棄物発生者による拠出金の額を決定する際の根拠として、原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアによる費用見積(2011年版)を用いている。 []

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2015年10月12日に、長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトの進捗に関する報告書を公表した。本報告書においてANDRAは、オーブ県のスーレーヌ・コミューン共同体1 における地質調査の結果、処分場の設置に適した特性を持つ粘土層の存在を確認し、地質調査を継続する10㎞2の区域を特定している。長寿命低レベル放射性廃棄物には、以下のような廃棄物が含まれる。

  • ラジウム含有廃棄物(主に希土類、ジルコニウム、ウランの鉱石の処理により発生)
  • 黒鉛廃棄物(主に黒鉛減速炭酸ガス冷却炉(GCR)の運転、廃止措置により発生)
  • アスファルト固化廃棄物等

今回ANDRAの報告書において、これらの長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトの進捗は、以下の通りとしている。

<長寿命低レベル放射性廃棄物の特性>

長寿命低レベル放射性廃棄物は、2013年時点で約9万m3が存在しており、フランス国内の放射性廃棄物の総量の6%、放射能量の0.01%を占める。同廃棄物には半減期の極めて長い核種(例えば、塩素36、半減期約30万年)が含まれていることから、深さ100m程度の地層中に処分するオプションも検討していたが、廃棄物の特性に関する研究が進み、新たに特定した放射能インベントリに基づき、浅地中処分(深さ約20m)を検討できるようになった。

<処分場のサイト選定>

ANDRAは、2008年に長寿命低レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定の公募を開始し、2009年にはオーブ県にある2つの自治体(コミューン)であるオークソンとパール・レ・シャヴァンジュを選定した。しかし、両自治体とも自治体議会の反対を受けて、選定プロセスから撤退した。これを受けて政府は、ANDRAに対し、すでに原子力施設が立地しているサイト近傍の自治体、または2008年のサイト選定公募に応募した自治体における研究を検討するよう指示した。その後、すでに低レベル放射性廃棄物の処分場が立地しているオーブ県のスーレーヌ・コミューン共同体がサイト選定に向けた調査の実施を承諾したことを受け、ANDRAは2013年7月からスーレーヌ・コミューン共同体の50km2の区域において地質調査を開始した。調査の結果、浅地中処分場の設置に適した特性を持つ粘土層の存在を確認し、地質調査を継続する10㎞2の区域を特定した。

<処分場の設計>

長寿命低レベル放射性廃棄物の浅地中処分場の設計については、原子力安全機関(ASN)が2008年5月に公表した「長寿命低レベル放射性廃棄物処分のサイト調査に関する安全性の一般方針」に示された安全目標等に基づいて検討した。ANDRAは、①地表からの開削、②地下での処分スペースの掘削の2つのオプションのいずれかの採用に向けて、さらに研究を継続している。なお、ANDRAは、廃止措置に伴って今後発生する極低レベル放射性廃棄物についても、長寿命低レベル放射性廃棄物に隣接した区域における処分が可能であると考えている。

<プロジェクトの今後の計画>

ANDRAはスーレーヌ・コミューン共同体において特定された10km2の区域において、処分場サイト選定のための補完的な調査を2015~2016年にかけて実施する。また、処分場の設計に関する検討も継続し、特に、開削方式を採用した場合に、掘削した土を埋め戻した後の挙動について研究を進める。これらの研究結果に基づきANDRAは、2018年に処分場の設計案を作成し、設置許可申請書の提出に向けた作業を進める。

 

今回ANDRAが公表した報告書は、2013~2015年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物管理国家計画」(PNGMDR)の施行に関する2013年12月27日のデクレ(政令)に基づいたものである。本デクレにおいては、ANDRAが2015年6月30日までに、黒鉛廃棄物とアスファルト固化廃棄物の管理シナリオ及び地表からの開削と覆土による処分プロジェクトのフィージビリティに関する報告書について、エネルギーと原子力安全の担当大臣に提出しなければならないと定めている。なお、フランスでは、2006年放射性廃棄物等管理計画法に基づいて、政府が3年間毎に「放射性物質及び放射性廃棄物管理国家計画」(PNGMDR)を策定することになっており、次の国家計画の策定は2016年の予定である。

 

【出典】

【2016年4月20日追記】

フランスの原子力安全機関(ASN)は2016年4月6日、長寿命低レベル放射性廃棄物の管理研究に関する2016年3月29日付の見解書を発表した2  。ASNは今回の見解書において、長寿命低レベル放射性廃棄物の種類が多様であることから、それら全てを単一処分場で処分するには多くの課題があるという認識を示しているが、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が処分場の設置を想定している粘土層の機能(低透水性、水理地質学的条件、厚さ等)、処分場の操業中及び閉鎖後の安全性に関する予備的安全評価(廃棄物の化学的毒性による影響、廃棄物に含まれるウランやラジウムの放射性崩壊に伴って発生するラドンによる被ばく等)に関して、ANDRAが研究を継続するにあたっての要求や勧告を今後示す方針を表明した。

ASNは今回の見解書において、ANDRAが2015年10月12日に公表したANDRAによる長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトの進捗に関する報告書について、以下のような意見を示している。

  • 処分場を設置することを想定している粘土層の下には帯水層があるが、この帯水層への放射性核種の移行を防ぐために、粘土層のうち処分場を設置する面よりも深い部分の特性(厚み、均質性、低透水性等)に関する詳細な分析を行うべきである。
  • ANDRAは処分対象となる長寿命低レベル放射性廃棄物のインベントリを明確にする必要がある。
  • ANDRAは、長寿命低レベル放射性廃棄物の処分場に採用する技術オプション及び安全オプションをASNに提出したうえで、侵入リスクや放射性物質及び化学物質の拡散に対する防護について、慎重な決定論的安全評価アプローチに基づく予備的安全評価を提出すべきである。
  • ANDRAが想定しているスーレーヌ・コミューン共同体における処分場の設置を補完する措置として、ANDRAは第2の処分場の設置可能性を検討し、2017年半ばまでに、候補サイトを選定するための方法論を提出するべきである。

なお、フランスではASN等が2016年内に、2016~2018年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)を取りまとめる予定である。ASNは今回公表した意見書において、PNGMDRで規定する長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトのスケジュールに関して、ANDRAが提示していたものよりも慎重なものとする見解を示している。ASNは、ANDRAの安全オプションの提出が2021年末、処分場の設置許可申請を2025年末まで行い、処分場の操業開始を2035年にする案を示している。

【出典】

  • 低レベル長寿命放射性廃棄物の管理研究に関する2016年3月29日付のASN見解書第2016-AV-264号、Avis no 2016-AV-264 de l’Autorité de sûreté nucléaire du 29 mars 2016 sur les études relatives à la gestion des déchets de faible activité à vie longue (FA-VL) remises en application du Plan national de gestion des matières et des déchets radioactifs 2013-2015, en vue de l’élaboration du Plan national de gestion des matières et des déchets radioactifs 2016-2018
    http://www.asn.fr/content/download/102318/751420/version/2/file/2016-AV-0264.pdf
  • 2015年10月12日、ANDRA、長寿命低レベル放射性廃棄物処分プロジェクトの進捗に関する報告書、PROJET DE STOCKAGE DE DÉCHETS RADIOACTIFS DE FAIBLE ACTIVITÉ MASSIQUE À VIE LONGUE (FA-VL) RAPPORT D’ÉTAPE 2015
    http://www.andra.fr/download/site-principal/document/editions/rapport-etape-favl.pdf

 


  1. オーブ県の複数のコミューン(自治体)の広域行政組織 []
  2. 2013~2015年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)の施行に関する2013年12月27日のデクレにおいて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による長寿命低レベル放射性廃棄物の処分プロジェクトの進捗に関する報告書について、ASNが意見を示すべきことが規定されており、今回の見解書はこれに基づいたものである。 []

英国の原子力安全規制機関である原子力規制局(Office for Nuclear Regulation, ONR)とイングランドを所管する環境規制機関(Environment Agency, EA)は、高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)について、RWMの活動に対するレビュー報告書(2015年8月付)を2015年9月16日に公表した。RWMとONR及びEAとは、規制プロセスに入る前のRWMによる地層処分に関する活動について、RWMにアドバイスを行うことに合意しており、この合意に基づき今回のレビューが実施されている。

英国では、使用済燃料や放射性廃棄物の管理及び処分施設を含む、原子力施設の建設・操業などについては、原子力施設法に基づき、原子力規制局(ONR)から原子力サイトとしての許可を取得する必要がある。また、原子力サイトにおいて放射性廃棄物を処分するためには、イングランド及びウェールズでは環境許可規則、スコットランドと北アイルランドでは放射性物質法に基づいた許可をそれぞれの環境規制当局1から取得する必要がある。

また、英国では、地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)のうち、イングランド以外は地方自治政府に放射性廃棄物管理の権限が委譲されており、現在のところ高レベル放射性廃棄物等を地層処分する方針を採用しているのは英国政府(イングランドを所管)とウェールズ政府のみ2である。なお、ウェールズ政府は、今回のレビューの実施期間(2013年4月から2015年3月)の後の2015年6月に地層処分する方針を決定したため、レビュー報告書は原子力規制局(ONR)とイングランド所管の環境規制機関(EA)によって発行されている。

原子力規制局(ONR)とイングランド所管の環境規制機関(EA)は今回のレビューの目的を、放射性廃棄物管理会社(RWM)が将来提出する地層処分施設に関する許可申請書において、環境保護、安全、セキュリティ、放射性廃棄物輸送、保障措置等の規制要件を満足するようにするためとともに、RWMによる廃棄物発生者に対する廃棄物パッケージ方法に関するアドバイスが適切であることを規制機関が確証するためとしている。

原子力規制局(ONR)とイングランド所管の環境規制機関(EA)は、放射性廃棄物管理会社(RWM)の地層処分に関する活動を毎年レビューする意向であり、今回のレビュー報告書と同様、以下の8つの分野をレビュー対象として、規制機関からのコメントや改善点などを年次報告書として示していくとしている。

  1. 地層処分の実施に向けた計画策定
  2. 処分システムの仕様・設計
  3. セーフティケースの開発
  4. 持続可能性・環境アセスメント
  5. 研究開発(R&D)
  6. サイト評価・特性調査
  7. 廃棄物パッケージに関するアドバイス・評価
  8. 実施組織体制の整備

【出典】


  1. 環境規制機関(EA)、天然資源ウェールズ(NRW)、スコットランド環境保護局(SEPA)、ならびに北アイルランド環境省(DoENI) []
  2. 北アイルランド政府も地層処分方針を支持しているが、北アイルランドでは地層処分対象となる高レベル放射性廃棄物等が発生していない。また、スコットランドについては、スコットランド政府が地層処分する方針を採用しておらず、地表近くに設置した施設で高レベル放射性廃棄物等の長期管理を継続することとしている。 []

高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、2015年9月8日、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニング(下記コラム参照)のガイダンス案を公表するとともに、意見提出期限を2015年12月4日までとする公開協議を開始した。RWMは一般への情報提供を目的として、公開協議期間中の10月から11月初めにかけて、ロンドンを含めて11の地域でワークショップを開催する予定である1

英国では2015年3月に、英国政府の要請を受けた英国地質学会(The Geological Society)が、放射性廃棄物管理会社(RWM)の作成する地質学的スクリーニングのガイダンスが技術的な知見に立脚していることを確保するため、独立評価パネル(IRP)を設置している2 。2015年6月に、RWMはIRPのレビュー用にガイダンス案を作成し、IRPはガイダンス案の評価を実施している(2015年6月16日の追記を参照)。RWMは、このIRPの評価結果を踏まえ、今回公表した地質学的スクリーニングのガイダンス案を作成している。ガイダンス案は以下のものから構成されている。

① 地質環境が関与する地層処分施設の7つの長期安全要件の提示

  1. 地層処分施設の人工バリア機能が維持されること
  2. 地下水に溶け込んだ放射性核種または毒性物質によって安全性が損なわれないこと
  3. 地層処分施設内で発生したガスによって安全性が損なわれないこと
  4. 自然事象や自然変動によって安全性が損なわれないこと
  5. 安全性を立証するためにサイト特性調査が十分に実施できること
  6. 長期挙動が安全性に与える影響が理解可能なこと
  7. 潜在的な人間侵入の影響が評価可能であること

② 長期安全要件に関して考慮すべき5つの地質特性についての説明
  (1)岩種、(2)岩盤の構造(断層・破砕帯、褶曲の位置等)、(3)地下水、(4)自然現象(地震・断層活動、氷河作用等)、(5)資源の賦存

③ 上記5つの地質特性を理解するために使用する既存の地質情報の情報源についての説明

④ 既存の地質情報を基に実施する地質学的スクリーニングの結果の提示方法の説明:イングランド、ウェールズ、北アイルランドを13の地域に区分し(下図参照)、地域ごとに地質学的スクリーニングを実施する。地質学的スクリーニングの結果は、各地域の地質環境の主な特徴と安全性の関連を説明したものを適宜、地図でわかりやすく例示する。

英国地質学的スクリーニング置ける地域区分

また、放射性廃棄物管理会社(RWM)は、今回の公開協議において、地質学的スクリーニングのガイダンス案について以下の4つの質問事項を示し、一般からの意見を募集している。

  • 長期安全性に関する既存の地質情報の提供方法は適切なものか。
  • 既存の地質情報の情報源は適切かつ十分なものか。
  • 地質学的スクリーニングの結果の提示方法に賛成か反対か。
  • 地質学的スクリーニングのガイダンス案で示された内容について他に意見があるか。

放射性廃棄物管理会社(RWM)は、公開協議で得られた意見を踏まえ、地質学的スクリーニングのガイダンス案を更新し、独立評価パネル(IRP)の評価を受ける予定である。RWMは2016年中に最終版の地質学的スクリーニングガイダンスを公表し、これに基づいて地質学的スクリーニングを実施するとしている。

地質学的スクリーニングについて

RWMは、2014年7月にエネルギー・気候変動省(Department of Energy and Climate Change, DECC)が公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』 に基づき、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期段階において、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングを実施することになっている。地質学的スクリーニングは、自治体を含む地域が地層処分施設の設置について検討を行う際、安全面において重要な地質に関する情報を利用できるようにするため、既存の地質情報を活用し、地質学的スクリーニングのガイダンスを適用して実施されるものである。なお、地質学的スクリーニングの結果は、地層処分施設の設置に「適格」または「不適格」なエリアの判定やサイトの絞り込みに使用されるものではないと位置づけられている。 

【出典】


  1. ワークショップにおいて表明された見解や意見は、公開協議において提出された意見とはみなされない。 []
  2. IRPは、RWMが作成する地質学的スクリーニングのガイダンス案の評価だけでなく、RWMが実施する地質学的スクリーニングへのガイダンスの適用についての評価も行う。 []

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2015年8月28日に、地質学的候補エリア「ジュラ東部」における三次元弾性波探査1 の実施について、アールガウ州の建設・運輸・環境省がNAGRAに対して許可発給したことを公表した。NAGRAは、2015年1月末に、地層処分場のサイト選定プロセス第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みの結果として「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」の2カ所を提案していた。サイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアが確定するまでの間、NAGRAは2つの地質学的候補エリアにおいて、地表から三次元弾性波探査を実施する予定としていた

三次元弾性波探査の対象範囲とスケジュール

今回のアールガウ州の許可発給を受け、NAGRAは関係する地権者へ説明して承諾を得た後、2015年9月末から12月半ばにかけて、ジュラ東部において三次元弾性波探査を実施する予定である。ジュラ東部では、高レベル放射性廃棄物(HLW)、中低レベル放射性廃棄物(I/LLW)処分場の暫定的な設置範囲とされる区域の全域を含む約96km2(下左図中)を三次元弾性波探査の範囲としている。

ジュラ東部での三次元弾性波探査が終了後、NAGRAは2016年1月から約3週間にわたり、もう一つの地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」の北部約21km2(下右図中)を対象として三次元弾性波探査を実施する予定である。なお、南部の高レベル放射性廃棄物処分場の地質学的候補エリアを中心とする約50km2の範囲については、既存の地質情報としてNAGRAが1997~1999年にかけて実施した三次元弾性波探査の結果が利用可能であるため2 、今回の三次元弾性波探査の範囲は北部に限定したものとなっている。

「ジュラ東部」における三次元弾性波探査対象区域

「ジュラ東部」における三次元弾性波探査対象区域
(NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた三次元弾性波探査(ジュラ東部版)」、2015年1月より)

「チューリッヒ北東部」における三次元弾性波探査対象区域

「チューリッヒ北東部」における三次元弾性波探査対象区域
(NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた三次元弾性波探査(チューリッヒ北東部版)」、2015年1月より)

 

スイスのサイト選定プロセスにおける三次元弾性波探査の位置づけ

スイスでは、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づいて、3段階でのサイト選定手続きが進められている。サイト選定に係る地球科学的調査のうち、地表から行う調査には弾性波探査やボーリング調査などがあるが、弾性波探査のように地下への影響の少ない調査の実施には、原子力法に基づく許可は不要である3 。ただし、原子力法令以外の連邦法や州法で別途定めがある場合は、それらの法令に基づく許可の取得が必要となっている4

サイト選定プロセス第2段階での地質学的候補エリアの絞り込み過程においてNAGRAは、第1段階で選定された全6つの地質学的候補エリアの比較可能性の確保・改善を目的として、2011年から2012年にかけて「ジュラ東部」と「北部レゲレン」(下の地図参照)を中心とするスイス北部を対象に、二次元弾性波探査を実施した。この際には、NAGRAは事前に対象地域の自治体への説明や州当局との協議を行い、土地所有者に連絡をした上で実施した 。なお、ボーリング調査等、原子力法に基づく許可が必要な地球科学的調査については、NAGRAが2010年の報告書において、追加の調査を実施せずに第2段階における予備的安全評価が可能との判断を示しており 、連邦原子力安全検査局(ENSI)もこの判断を肯定している 5

地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」の位置

地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」の位置
(NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より

2015年9月現在、スイスにおける地層処分場のサイト選定プロセスは、第2段階の終盤に差し掛かっており、各地質学的候補エリアにおける地層処分場の地上施設の設置地点案(右の地図の赤丸)を含む形で、「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」の2つの地質学的候補エリアの絞り込み結果についての連邦原子力安全検査局(ENSI)などによる審査が行われているところである。NAGRAは2015年4月に、これら2つの地質学的候補エリアで実施する三次元弾性波探査及びボーリング調査のスケジュールを公表した。NAGRAは、ボーリング調査の実施に当たっては、原子力法による許可が必要となっており、具体的には、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)から地質学的候補エリアでの地球科学的調査の許可を受ける必要があるとしている。また、ボーリング調査の作業は、NAGRAが提案した2つの地質学的候補エリアを連邦評議会が承認する2017年以降(すなわちサイト選定プロセス第3段階)に開始するとしている

 

【出典】

 

【2015年10月5日追記】

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2015年10月1日に、地質学的候補エリア「ジュラ東部」における三次元弾性波探査を同日に開始したことを公表した。今回の探査はアールガウ州ベツベルク自治体(Bözberg)周辺の約96km2の区域を対象としており、約3カ月をかけて実施する予定としている。三次元弾性波探査の対象区域には、農地や人口密集地が含まれており、NAGRAは探査作業の実施に先立ち、関係住民の同意を得ている。

三次元弾性波探査(反射法)では、人工的に地震を発生させる起振車を用いて、地層の境目で反射した弾性波を地表に設置した受振器で測定する。実際の作業は、NAGRAの委託を受けたドイツのDMT社の120名で実施し、起振車6台、受振器6万台が用いられ、ケーブル総延長は150kmに及ぶとされている。

 

【出典】

 

【2016年10月27日追記】

「北部レゲレン」における三次元弾性波探査対象区域 (NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた地球科学的調査」、2016年4月より)

「北部レゲレン」における三次元弾性波探査対象区域
(NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた地球科学的調査」、2016年4月より)

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2016年10月24日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」における三次元弾性波探査を開始することを公表した。今回の探査は、ドイツ・スイス両国をまたぐ約91km2の区域を南北2つのブロックに分けて2017年2月まで実施される。北側のブロックは、大部分がドイツ領内(バーデン・ビュルテンベルク州)に属する。一方、南側のブロックはスイス領内である。

NAGRAは、2015年1月末にサイト選定第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みにおいて、北部レゲレンをサイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアとせず、予備候補とする内容の提案を行っている。この提案について、現在、連邦原子力安全検査局(ENSI)が審査を行っているが、北部レゲレンが予備候補ではなく優先候補となる可能性が残っている。このため、NAGRAは2016年2月に、北部レゲレンが優先候補となる場合を想定して準備作業に着手していることを公表していた。NAGRAは、北部レゲレンにおいても三次元弾性波探査を行うことにより、サイト選定第3段階での作業スケジュールの遅延を回避できるとしている。

 

【出典】

【2017年2月8日追記】

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2017年2月3日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」における三次元弾性波探査を終了した。これにより、地質学的候補エリア「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」を対象に2015年10月から実施された一連の三次元弾性波探査が終了した。

3つの地質学的候補エリアで実施された三次元弾性波探査は、スイスでは過去最大規模のものであり、調査範囲は合計で約200km2に及んだ。測定地点は5万1,000カ所に上った。調査範囲の関係自治体は53であり、NAGRAは地権者3,999人と事前協議を行い、このうち98%に相当する3,907人の地権者から所有地における探査に対する同意を得たとしている。

サイト選定に係る地球科学的調査のうち、原子力法に基づく許可が必要なボーリング調査についてNAGRAは、2016年9月にジュラ東部とチューリッヒ北東部での実施に向けた許可申請書を既に提出しており、今後、北部レゲレンについてもボーリング調査の許可申請を行う意向である

 

【出典】


  1. 弾性波探査(反射法)は専用の車両や小規模の発破を用いて人工的に振動を発生させ、地層の境目で反射した弾性波を地表に設置した受振器で測定する手法であり、地下の岩盤構造の把握を目的として実施される。 []
  2. NAGRAはスイス国内における高レベル放射性廃棄物等の処分の実現可能性を実証した「処分の実現可能性実証プロジェクト」の一環として、1997~1999年に現在の地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」南部に相当する区域を対象に、三次元弾性波探査及びボーリング調査を実施した。プロジェクトの最終報告書は2002年に公表されている。 []
  3. スイスの原子力令第61条において、弾性波探査、並びに、例えば重力探査、電気探査及び電磁探査等の物理探査は、原子力法による地球科学的調査の許可が不要であることが規定されている。 []
  4. 地質学的候補エリア「ジュラ東部」が所在するアールガウ州では、州法「地下及び天然資源の開発に関する法律」第4条において、地下深部の利用を想定した活動を州当局の許可の対象と定めている。 []
  5. NAGRAによる第2段階の絞り込みに向けた現有知識の証明は、特別計画に基づく手続きの一環として実施されたものである。NAGRAの報告書を審査したENSIは2011年、原子力法上の許可が必要な地質学的調査は不要とのNAGRAの判断を認めつつも、41項目の補足要求を付した 。これらの要求項目にNAGRAが対応したことを受け、ENSIは2014年8月に、NAGRAの現有知見は第2段階の絞り込み実施に十分な水準に達しているとの最終判断を示した 。 []

韓国の中・低レベル放射性廃棄物処分場である「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の第1段階施設(地下空洞処分施設、処分量10万本)の竣工式が2015年8月28日に行われ、一般市民を含む1,000名以上が参加した1 。竣工式では、来賓による地下空洞処分施設の視察や、本事業の功労者44名の表彰が行われた。なお、本施設では2015年7月13日より廃棄物の処分を開始している

韓国では、中・低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を同一サイトに立地するとした当初の放射性廃棄物管理政策が見直され、2004年12月に、2つの施設の建設を分離して推進する政策が策定された。その後、地域振興策を含めたサイト選定に関する法制度が整備され、中・低レベル放射性廃棄物処分場の誘致に応じた4自治体の中から、住民投票で最も賛成率が高かった慶州市が、2005年11月に中・低レベル放射性廃棄物処分場のサイトとして決定された。第1段階施設の竣工までの経緯は以下に示すとおりである。当初は2010年6月の竣工(工期53か月)を予定していたが、2009年、2012年にそれぞれ竣工予定を延長し、総工期は最終的には90か月に及んでいる。総工費は1兆5,436億ウォンである。

なお、第2段階処分施設(浅地中処分、処分量12万5千本)の建設事業は2019年までの竣工を予定している。

月城原子力環境管理センター第1段階施設の竣工までの経緯
2007年7月 電源開発事業実施計画公示
2008年7月 中・低レベル放射性廃棄物処分施設建設・操業許可発給
2008年8月 工事着工
2009年6月 竣工予定を2010年6月から2012年12月に変更
2010年1月 処分事業主体が韓国水力原子力株式会社(KHNP)から韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)(現 韓国原子力環境公団(KORAD))に移管
2012年1月 竣工予定を2012年12月から2014年6月に再変更
2014年6月 施工完了
2014年12月 使用前検査承認
2015年7月 廃棄物処分を開始(2015年7月13日、ドラム缶16本を処分)

また、韓国政府は月城原子力環境管理センターの立地にあたり、一般支援事業として2007年から2035年までの間、55事業、総額3兆2,253億ウォンの支援を、さらに特別支援事業として3事業の実施および特別支援金3,000億ウォンの支給を約束している。支援事業はおおむね計画通りに推移しているが、遅れが生じている一部の大型事業6件については、「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致に関する特別法」により設置された誘致地域支援委員会に正常化計画を2015年末までに上程し、改善策を講じていくとしている。

一般支援事業の進捗状況(2015年8月時点)
総事業件数および総予算 完了済件数及び執行済予算 進行中件数及び状況

55件
3兆2,253億ウォン

28件
1兆7,165億ウォン

27件
うち6件の大型事業については2015年中に正常化計画を上程予定

特別支援事業の進捗状況(2014年末時点)
項目 状況

韓国水力原子力株式会社(KHNP)の本社移転

2015年末までに完了予定

特別支援金(3,000億ウォン)

2006年5月執行済

陽子加速器事業

総事業費3,143億ウォン(国庫1,836億ウォン、地方費1,067億ウォン、民間125億ウォン)のうち、国庫・民間支援分を執行済

放射性廃棄物搬入手数料

年間約46億ウォン(ドラム缶1本あたり637,500ウォン)

継続事業

 

【出典】

 

【2016年7月29日追記】

韓国原子力環境公団(KORAD)は2016年7月26日、中・低レベル放射性廃棄物処分場である「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の第2段階施設(浅地中処分)の建設に関して、産業通商資源部(MOTIE)から電源開発事業実施計画の承認を受けたことを公表した2

電源開発事業実施計画の承認により、処分施設の建設に必要な手続きのうち、国土開発事業、道路工事、農地転用等の関連法令に関する手続きが完了し、KORADは公共施設(道路、電気、水道施設等)の設置や処分施設建設予定地の整地工事などの基盤整備工事に着手する。なお、今後、KORADが第2段階処分施設自体を建設するには、別途、原子力安全委員会(NSSC)から原子力安全法に基づく建設許可を取得する必要がある。

【出典】
• 韓国原子力環境公団 2016年7月26日付プレスリリース、
https://www.korad.or.kr/krmc2011/user/community/report/report_main.jsp?mode=read&idx=250&rnumValue=248

• 電源開発促進法


  1. 韓国政府からは国務総理、産業通商資源部第二次官が、立地自治体からは慶尚北道(キョンサンプクド)知事、慶州(キョンジュ)市長が、また、電気事業者からは韓国水力原子力株式会社(KHNP)社長が参列している []
  2. 電源開発事業実施計画の承認手続きは、電源開発促進法に定められた原子力施設の建設に必要な手続きのひとつである。同法第3条等の規定により、放射性廃棄物管理事業者である韓国原子力環境公団(KORAD)が建設する放射性廃棄物処分施設は電源設備の付帯施設と位置づけられており、同法の適用を受ける []

ドイツの連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)は、2015年8月12日付けプレスリリースにおいて、BMUBが策定した「使用済燃料及び放射性廃棄物の責任ある安全な管理のための計画」(以下「国家放射性廃棄物管理計画」という)について、連邦政府が承認したことを公表した。今回、連邦政府が承認した国家放射性廃棄物管理計画は、欧州連合(EU)理事会が2011年7月に採択した「使用済燃料及び放射性廃棄物の責任ある安全な管理に関する、共同体(EURATOM)の枠組みを構築する理事会指令」(2011/70/Euratom)(以下「EU指令」という)に基づき、ドイツを含むEU加盟国が2015年8月23日までに欧州委員会(EC)に提出することが義務付けられている「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」に相当するものである 。連邦政府は、今回承認した国家放射性廃棄物管理計画を欧州委員会に提出する予定である。

EU指令に基づいて、EU加盟国は、「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」において、使用済燃料及び放射性廃棄物管理に関する全体的な目標、スケジュール、インベントリ及び将来の発生量、関連研究、放射性廃棄物管理費用の見積り、資金確保の枠組み等を示すことになっている。また、EU加盟国は、国家計画を定期的に改訂することも義務付けられている。

国家放射性廃棄物管理計画によれば、ドイツ国内で2080年までに発生が見込まれる放射性廃棄物量は、既発生分を含めて以下の通りである。

○発熱性放射性廃棄物1

  • 原子力発電所の運転に伴い発生する使用済燃料:キャスク約1,100体分(約1万500トン)
  • 使用済燃料の海外再処理に伴う返還廃棄物(ガラス固化体やハル・エンドピースの圧縮体など):キャスク約300体分
  • 研究炉、実証炉等の運転に伴う使用済燃料:キャスク約300体分

○非発熱性放射性廃棄物

  • 原子力施設の運転・解体に伴い発生する放射性廃棄物、医療・産業等における放射線利用に伴い発生する放射性廃棄物等:約60万m3(アッセⅡ研究鉱山から回収される放射性廃棄物約20万m3、及びウラン濃縮施設で発生する放射性廃棄物約10万m3を含む)

■放射性廃棄物の管理計画

ドイツでの放射性廃棄物の処分方針として、非発熱性放射性廃棄物と発熱性放射性廃棄物のために1カ所ずつ、合計2カ所の処分場を設置するとしている。このうち1カ所は、非発熱性放射性廃棄物の処分を行うコンラッド処分場であり、すでにサイトが確定し、建設・操業等の許認可も発給されており、現在は操業に向けた準備が進められている。国家放射性廃棄物管理計画によれば、コンラッド処分場は2022年の操業開始が見込まれている。

発熱性放射性廃棄物処分場については、現在、2013年7月制定の「発熱性放射性廃棄物の処分場サイト選定に関する法律」(サイト選定法)に基づいて、サイト選定に向けた取り組みが行われており 、2031年までに処分場サイトを確定し、2050年までに操業を開始する計画が示されている。

なお、アッセⅡ研究鉱山は、閉鎖のためにすでに処分された放射性廃棄物を回収する方針が決定している。国家放射性廃棄物管理計画では、回収される廃棄物量を約20万m3と見込んでいる。このアッセⅡ研究鉱山から回収される放射性廃棄物及びウラン濃縮施設から発生する放射性廃棄物については、非発熱性放射性廃棄物の処分場であるコンラッド処分場を拡張2 して処分するオプションも完全には排除していないが、基本的には発熱性放射性廃棄物処分場に処分することを想定していることが示されている。

■放射性廃棄物管理費用

放射性廃棄物の管理費用の見積りについては、国家放射性廃棄物管理計画の添付文書として欧州委員会に提出される「使用済燃料及び放射性廃棄物管理に係る費用及び資金確保に関する報告書」に示されている。放射性廃棄物管理費用のうち、非発熱性放射性廃棄物及び発熱性放射性廃棄物の処分場の建設・操業・閉鎖に係る費用は、以下のように見積られている。

  • 非発熱性放射性廃棄物処分場(コンラッド処分場):約75億ユーロ(約1兆200億円。2007年までに支出した計画や探査作業等の費用約9.3億ユーロ(約1,260億円)を含む)
  • 発熱性放射性廃棄物処分場(サイト未定):約77億ユーロ(約1兆500億円)

【出典】


  1. ドイツでは発熱による処分空洞壁面の温度上昇が3℃以下である放射性廃棄物を「非発熱性放射性廃棄物」と定義している。それ以外が「発熱性放射性廃棄物」に分類され、使用済燃料や海外再処理に伴い返還されるガラス固化体やハル・エンドピースの圧縮体などがこれに該当する。 []
  2. 現在計画されているコンラッド処分場の処分容量は約30万m3であり、国家放射性廃棄物計画で示されている非発熱性放射性廃棄物の発生量60万m3(2080年まで)より小さい。 []

フランスの憲法院(Conseil constitutionnel)1は2015年8月5日に、「成長、活動、経済機会の平等のための法律」(2015年7月9日成立)のうち、地層処分場の設置許可申請スケジュールの変更等を定めた条文を含む複数の条文が違憲であるとの決定を行った。憲法院が違憲と決定した条文は施行されず、憲法院の決定に対する不服申立ても認められない。

フランスでは議会で成立した法律は大統領による審署により執行力が与えられるが、審署前に、国会議員60人以上の求めがある場合には憲法院に合憲性審査を付託することが可能である。今回の法律に関する合憲性審査は、約200人の国会議員が2015年7月15日に審査を付託したものである。

今回の法案を提出した経済・産業・デジタル省のマクロン大臣は2015年8月6日付のプレスリリースにおいて、憲法院が当該条文を違憲と判断した理由として、同法の目的との関連が弱いこと、または、法案審議で取り上げられたタイミングが遅かったことであると指摘している。なお、同大臣は、今秋以降の議会において、これら違憲と判断された条文に規定された措置について再検討する方針を明らかにしている。

 

【出典】


  1. 憲法裁判所である憲法院(Conseil constitutionnel)は、議会の議決後、大統領による審査・署名前の法律に対する違憲審査、大統領選挙の選挙管理、大統領及び国会議員の選挙に関する裁判等を行う。司法権にも行政権にも属しない機関である。参考:http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/pdfs/dai5gijiroku-2.pdf []