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ドイツの高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)は2016年7月5日に、「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づくサイト選定手続きに関する最終報告書「将来への責任-最終処分場選定のための公正かつ透明性の高い手続き」(以下「最終報告書」という)を連邦議会議長に提出するとともに、処分委員会ウェブサイトにおいて最終報告書を公開した。

最終報告書は、報告書全体の主要な結論及び勧告をまとめた「パートA」と、報告書本体部分である「パートB」で構成されている。パートAでは、第1章及び第2章で可能な限り安全性の高い処分が可能なサイトを選ぶという処分場のサイト選定の基本方針を示すと共に、サイト選定に係る過去の経験や処分委員会の使命及び取り組み方法等を総括した上で、第3章から第5章に処分委員会の勧告をまとめている。各章では、以下の分野に関する勧告が示されている。

  • 第1章:可能な限り安全性の高い処分場サイト
  • 第2章:サイト選定の主要な前提条件
  • 第3章:処分オプションに関する勧告(回収可能性を有する地層処分)
  • 第4章:サイト選定手続きに関する勧告(サイト選定プロセス及び公衆参加)
  • 第5章:政治・社会的側面に関する勧告(処分実施体制、連邦議会に対する勧告)

サイト選定プロセス

処分委員会は2015年3月に、現行の連邦放射線防護庁(BfS)に代わる新たな処分実施主体として「連邦放射性廃棄物機関(BGE)」の設置を勧告しており、サイト選定の作業もBGEが主体となって進められる。サイト選定手続きの監督は、連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が所管する1

サイト選定プロセスは、下表の3段階で行われ、各段階において公衆参加の手続きが実施される。公衆参加の形態としては、公聴会等に加え、連邦、地域横断、地域の3つのレベルでそれぞれ委員会等が設置され、BGEによる選定手続き及びBfEによる審査の状況について評価・監視が行われる

 

段階

各段階での取り組み

段階の終了

第1段階

ドイツ全土を対象にサイト選定プロセスを開始。除外基準及び最低要件に基づき、対象外となる地域を除外。地質学的な評価基準及び項目を限定した予備的安全評価(第1次予備的安全評価)に基づき、主に連邦地球科学・天然資源研究所(BGR)や州の地質調査所が保有する既存のデータを元に地域間の比較を実施し、候補地域と地上探査の対象サイト地域を選定。

連邦放射性廃棄物機関(BGE)の提案に基づき、候補地域と地上探査の対象サイト地域を連邦法によって決定。

第2段階

地上からの探査を実施。地質学的な除外基準、最低要件、評価基準及び第1段階より範囲を拡大した予備的安全評価(第2次予備的安全評価)に基づき、サイト間の比較を実施し、地下探査の対象サイトを選定。

BGEの提案に基づき、地下探査の対象サイトを連邦法によって決定。

第3段階

地下探査などの処分の安全性の観点からの詳細な調査を実施。包括的な予備的安全評価を実施し可能な限り安全性の高いサイトの特定に向け、サイトの比較を実施し、処分場サイトを選定。

連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)の提案に基づき、処分場サイトを連邦法によって確定。

 

連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の反応

処分委員会から最終報告書の提出を受けた連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)のヘンドリクス大臣は、原子力発電に対する各委員の姿勢が異なる中で、処分委員会が最終処分の将来に向けた共通の結論を出すに至ったことを評価した。同大臣は、サイト選定の対象からゴアレーベンを予め除外することを求める意見が一部の州から出ていることについて、旧処分場候補地であるゴアレーベンを含め、ドイツ全土を同じ条件で取り扱う原則を強調した。

今後、連邦政府及び連邦議会・連邦参議院において、処分委員会の最終報告書に示された勧告を踏まえて、サイト選定法の改正に向けた検討などが行われる。

 

【出典】

 

【2016年7月20日追記】

連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)は2016年7月18日、高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)が2016年7月5日に連邦政府及び連邦議会へ提出した最終報告書「将来への責任-最終処分場選定のための公正かつ透明性の高い手続き」(以下「最終報告書」という)に対するインターネット上での意見募集を開始した。意見募集は、2016年9月11日まで実施される。

意見募集用に設置された専用ウェブサイト(https://www.endlagerbericht.de/ja/)では、処分委員会の最終報告書の各節、各段落について、「賛成」、「反対」の投票が可能であるほか、コメントを記入できるようになっている2

意見募集の結果は、処分委員会の委員参加の下、2016年9月28日に開催予定となっている連邦議会の環境委員会で検討され、最終報告書の勧告を受けて実施されるサイト選定法の改正作業等において考慮される。

【出典】

【2016年9月30日追記】

ドイツ連邦議会(下院)の環境委員会は2016年9月28日に、高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)が2016年7月5日に連邦政府及び連邦議会へ提出した最終報告書「将来への責任-最終処分場選定のための公正かつ透明性の高い手続き」(以下「最終報告書」という)について、サイト選定法の改定などを検討するための会合を開催した。

本会合において連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)は、最終報告書に示された勧告を実施に移すための法整備について、2016年内に法律原案を取りまとめる意向であること、その場合、2017年の連邦議会の夏季休会前に法律の成立が可能との見方を示した。また、最終報告書の勧告の法制化の手続きは、州の代表で構成される連邦参議院(上院)との協力が重要であるとの意見が出された。

さらに、本会合では、2016年7月上旬から9月18日まで(当初予定より1週間延長)実施された、処分委員会の最終報告書に対するインターネット上での意見募集の結果について報告が行われた。意見募集のための専用ウェブサイトには、11名が参加し、800件を超えるコメントが寄せられており、コメントの大半は技術的内容に関するものであったとされている。

【出典】


  1. 2016年6月に名称を「連邦放射性廃棄物処分安全庁(Bundesamt für kerntechnische Entsorgungssicherheit, BfE)」に変更する法案が連邦議会で可決されている []
  2. 意見表明するには、ソーシャルネットワークサービスのユーザ登録情報を利用した本人確認が必要となっている []
図 フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出した使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等について、安全審査を行っている放射線安全機関(SSM)は2016年6月29日、土地・環境裁判所に対して、SKB社は安全要件を遵守して処分場を建設する能力を有しているとする意見書を提出した。

SKB社は、KBS-3概念1 と呼ばれる処分概念による使用済燃料の最終処分の実現に向け、2006年11月にオスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書を提出し、その後、2011年3月にフォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書を提出した 。現在、スウェーデンにおける使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設に関する許可申請では、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく3つの申請書の審査が並行して進められている(下記の囲みを参照)。

※:使用済燃料処分場の実現に向けて審査中の申請書

①オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書
(2006年11月にSSMに提出済、2011年3月16日更新)…原子力活動法に基づく申請
②フォルスマルクにおける使用済燃料の処分場の立地・建設許可申請書
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
③使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請

今回SSMが土地・環境裁判所に提出した意見書は、上記のうち③の環境法典に基づく使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請の審査に係わる意見書である。

SSMは、土地・環境裁判所に提出した意見書において、SKB社の許可申請に関して、以下のような総括的な評価結果を示している。

  • SKB社による環境影響評価書、及びその補足文書と原子力活動法に基づく許可申請書は、環境法典に基づく許可プロセスにおける原子力安全と放射線防護に関連する論点をSSMが評価するために十分な根拠となるものである。環境影響評価のための意見募集プロセスにおいて、SSMには見解を表明する機会が与えられ、SKB社はそれに対応してきた。
  • SKB社は、放射線から人間や環境を防護するため、環境法典第2章「配慮に関する一般規定」を遵守している、遵守する能力を有していることを立証している。
  • 使用済燃料の最終処分システムを構成しているキャニスタ封入施設及び処分場は、放射線から人間や環境を防護するために規定された放射線安全要件を遵守する能力を備えている。

また、SSMは、SKB社が、原子力安全と放射線防護の観点から、処分場の長期安全性を十分に立証したと評価しており、その根拠として以下の3点を挙げている。

  • 処分場として望ましいサイトとしてのフォルスマルクの選択の根拠
  • 最終処分方法の選択の根拠、及びそれが他の方法に比して望ましいとされる理由の説明
  • 放射線安全要件を遵守してキャニスタ封入施設及び処分場の建設・操業を行う能力

今後、土地・環境裁判所での審理手続きとして、2016年10月から12月の間で口頭弁論が実施される予定となっている。土地・環境裁判所での審理手続きの後、SSM及び土地・環境裁判所はそれぞれ、SKB社による申請を認めるか否かに関する意見書を政府に提出することとなっており、SSMは意見書の提出は2017年内になるとの見通しを示している。SKB社が計画している使用済燃料の処分事業の実施是非は、SSM及び土地・環境裁判所の意見書を踏まえて政府が判断することになる

【出典】


  1. KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、処分坑道の床面に掘削した処分孔に縦置きに定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというもの。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様な概念を採用している。 []

ドイツの高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)は、2016年6月27日に開催された第33回会合において、「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づくサイト選定手続きに関する最終報告書を採択した。最終報告書は2016年7月5日に、連邦政府及び連邦議会に提出されると同時に処分委員会ウェブサイトにおいて公開される予定である。また、処分委員会は7月5日に、最終会合となる第34回会合を開催し、公衆に向けて最終報告書の勧告などの説明を行うとしている。

処分委員会は32名の委員(委員長2名除く)で構成されるが、このうち最終報告書に関する議決権を持つのは、学術界代表及び社会グループ代表の各8名の計16名である。最終報告書の採決は、16名の全員一致、もしくは、これらの16名の委員のうち3分の2以上の賛成が必要とサイト選定法に規定されているが、14名が賛成し、環境団体代表の1名が反対した(1名は欠席)。

最終報告書の主な勧告内容

処分委員会は2016年6月28日付のプレスリリースにおいて、採択した最終報告書は500ページを超えるものとなり、ドイツにおいて可能な限り高い安全性を有する高レベル放射性廃棄物処分場サイトを選定するための勧告・基準、及び公衆参加を組み込んだ公正で透明性の高いサイト選定手続きが含まれているとしている。

連邦議会のウェブサイトによると、最終報告書には、主に以下の勧告が示されている。

  • 放射性廃棄物は地層処分場に最終処分する。その際には、欠陥が認識された際に是正が可能となるよう、意思決定の可逆性及び定置された廃棄物の回収可能性を重視する。
  • 可能な限り高い安全性を有する処分場サイトを3段階の手続で絞り込み、連邦法で確定する。
  • 連邦、地域横断、地域の各レベルで委員会・合議体を設置し、包括的な公衆参加のもとでサイト選定を実施する
  • 岩塩、粘土層、結晶質岩を候補母岩として検討対象とする。
  • 旧処分場候補地であるゴアレーベン・サイトを、今後実施されるサイト選定手続きから除外しない。

【出典】

ドイツの連邦議会は2016年6月23日に、「最終処分分野における組織体制刷新のための法案」(以下「法案」という)を可決した。法案の発効後は、ドイツにおいて放射性廃棄物処分場のサイト選定から建設・操業・廃止措置を、単一の国営組織が担う体制が構築されることになる。また、放射性廃棄物処分関連の安全規制機関の名称変更が行われる。本法案は、2016年6月24日付で連邦参議院に回付されており、今後、連邦参議院の同意を得たのち、連邦官報に公示され、発効する見込みである1 。

本法案は、「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づく「高レベル放射性廃棄物処分委員会」(以下「処分委員会」という)が提案した、放射性廃棄物処分の新たな実施主体の設置 や、放射性廃棄物処分場のサイト選定プロセスを中立的な立場から監視する「社会諮問委員会」の早期設置などを目的として策定されたものであり、原子力法やサイト選定法をはじめとする計15の関係法令を改正する条文で構成されている。

放射性廃棄物処分の新たな実施主体の設置

本法案には原子力法とサイト選定法の改正が含まれている。改正原子力法には、放射性廃棄物処分事業の実施責任を、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督下に置かれる「連邦が100%所有する私法上の組織」に一任するとの規定が盛り込まれる。同様に、改正サイト選定法では、高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定の実施責任者が、現在の連邦放射線防護庁(BfS)から、「連邦が100%所有する私法上の組織」に変更される。

なお、処分委員会は2015年3月の決議において、処分実施主体となる「連邦放射性廃棄物機関(BGE)」を100%国営組織として新たに設置することを提案しており、本法案は処分委員会の決議を反映したものである

放射性廃棄物処分の実施責任に関する現行法上の体制と、関係法令の改正後における体制を整理すると、下表のとおりとなる。

実施責任範囲

現行法上の体制

改正案による新体制

放射性廃棄物処分場のサイト選定・建設・操業・廃止措置

連邦放射線防護庁(BfS)

(実際の処分場の建設・操業等の作業については、ドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社:民間会社)及びアッセ有限会社(国有会社)に業務委託)

連邦が100%所有する私法上の組織(※)。監督官庁は連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)。

(※連邦放射性廃棄物機関(BGE)として設置される見込み)

 

放射性廃棄物処分場のサイト選定プロセスを監視する社会諮問委員会の早期設置

現行のサイト選定法において社会諮問委員会は、サイト選定手続きへの公衆参加を実現するための組織と位置づけられているが、具体的な役割、委員構成等に関する規定は含まれていなかった。本法案の発効後は、社会諮問委員会の設置時期が、現行の「連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後」から、「2016年6月30日の処分委員会の最終報告書提出後」に前倒しされる。社会諮問委員会は、処分委員会の活動終了後からサイト選定の開始までの期間においても、関連機関の諸活動に関与することになる。また、社会諮問委員会の役割が明確化され、処分場サイトの決定に至るまでの公衆参加の実施状況も含めて、サイト選定手続きを中立的な立場から監視するとともに、関係者間の調整を行うことになる。

なお、処分委員会は、最終報告書提出後に公衆参加の空白期間が生じることを回避する目的で、社会諮問委員会の設置を早めることを提案していた。

社会諮問委員会の設置時期と体制、役割について、現行法と改正案における規定内容を整理すると、下表のようになる。

項目

現行法

改正案

設置時期

連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後に設置。

2016年6月30日の処分委員会の最終報告書提出後に設置。

委員構成

委員構成は多元性に配慮しなければならない

設置時(9名):連邦議会・連邦参議院から6名、市民代表2名、若年層代表1名。

連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後に見直しを実施。

委員任期

規定なし。

3年(再選2回まで)。

主な役割

サイト選定手続きへの公衆参加を実現。

  • サイト選定手続きを公衆参加の実施状況も含めて中立的な立場から監視及び関係者間の調整
  • 処分委員会の活動終了後からサイト選定の開始までの期間の諸活動に関与

 

放射性廃棄物処分関連の安全規制機関の名称変更

処分場サイト選定手続全体の監督、調整を担う規制機関として、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(Bundesamt für kerntechnische Entsorgung, BfE)が設置されている。本法案の発効後は、同機関の名称が「連邦放射性廃棄物処分安全庁(Bundesamt für kerntechnische Entsorgungssicherheit, BfE)」に変更される。また、放射性廃棄物の貯蔵や輸送に関する許可発給権限は、連邦放射線防護庁(BfS)からBfEに移管される。

連邦放射線防護庁(BfS)の反応

連邦放射線防護庁(BfS)長官は、本法案の連邦議会通過を受けて公表された2016年6月24日付の声明において、最終処分関連の組織体制変更は、最終処分事業のこれまでの経験に照らして、理に適ったものであると評価しており、その上で、組織体制の刷新は、高レベル放射性廃棄物処分場の新たなサイト選定にとって必要であり、体制の重複を避け、外部から見て責任の所在がわかりやすい構造とする必要があると述べている。

【出典】

 

【2016年7月13日追記】

ドイツの連邦参議院は2016年7月8日に、連邦議会が可決した「最終処分分野における組織体制刷新のための法律」について、同法の内容に異議を申し立てないことを決議した2 。今回の連邦参議院の決議により、同法に関する議会両院の手続が終了して法律として成立した。同法は今後、連邦官報に公示され、発効する見込みである。

【出典】


  1. ドイツの国会は二院制であり、連邦議会と連邦参議院がある。連邦参議院は直接選挙で選出されるのではなく、州が代表を送って構成される。ドイツ基本法では、連邦法は連邦議会が議決すると規定しているが、法律の内容によっては連邦参議院の同意が必要となる。 []
  2. ドイツの法律制定過程における連邦参議院の関与には2通りあり、連邦参議院の同意が必要なものと、異議権限が認められるものがある。連邦参議院が異議を唱えた場合、両院協議会が設置され協議が行われるが、連邦議会は異議を覆すことが可能である。 []
フェノヴォイマ社が地質学的研究を行う2自治体の位置

フェノヴォイマ社が地質学的研究を行う2自治体の位置

フィンランドにおいて新たに原子力発電事業に参入し、原子炉新設に向けたプロジェクトを進めているフェノヴォイマ社は、2016年6月22日付のプレスリリースにおいて、新規原子炉から発生する使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省(TEM)に提出したことを公表した。フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(下図参照)によれば、同社は調査を2030年代半ばまで実施した後、環境影響評価書の作成を行い、2040年代に使用済燃料処分場のサイトを選定する計画である。

  • 使用済燃料処分場のサイトに関してフェノヴォイマ社は、原子炉建設プロジェクトを進めているピュハヨキ自治体と、ポシヴァ社が使用済燃料処分場を建設するエウラヨキ自治体の2カ所を対象として、今後、地質学的研究(Geological studies)を実施する。
  • フェノヴォイマ社は、ポシヴァ社の子会社ポシヴァ・ソリューションズ社と10年間の業務提携契約を締結した。ポシヴァ・ソリューションズ社は親会社のポシヴァ社が培ってきた専門性を活かして、フェノヴォイマ社の使用済燃料処分に向けた計画策定や研究開発、及びサイト選定の面で協力する。10年後には次のステップの実施に向けた別の協定を結ぶことも可能となっている。
フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(フェノヴォイマ社環境影響評価計画書を基に作成)

フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(フェノヴォイマ社環境影響評価計画書を基に作成)

雇用経済省の2016年6月22日付プレスリリースによると、同省のレーン経済大臣は、フェノヴォイマ社とポシヴァ・ソリューションズ社との協力により、フェノヴォイマ社の使用済燃料処分プロジェクトにおいてポシヴァ社が有する専門的知識が活用されるとして歓迎の意を表明した。また、フィンランドの原子力に関する安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)も2016年6月22日にプレスリリースを公表し、今回の両社の協力は、これまでのポシヴァ社の経験を活かすことによって、フェノヴォイマ社が計画している使用済燃料処分の安全性にとって好ましいとする見解を表明した。また、フェノヴォイマ社が今後実施する環境影響評価について、STUKは処分の計画の実施、処分概念、処分による放射線影響の評価に主に取り組んでいくこととしている。

フェノヴォイマ社の使用済燃料処分計画をめぐるこれまでの動向

フェノヴォイマ社は、フィンランドの原子力発電事業に新たに参入した企業であり、同社が新規原子炉建設事業に関して2009年に原則決定(詳細はこちら)の申請を行った際には、使用済燃料管理に関してはエウラヨキ自治体オルキルオトに計画されている処分場に共同で処分する計画としていた。なお、その当時、フェノヴォイマ社はポシヴァ社やその親会社であるテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)、フォルツゥム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)と経済的な面での協力関係はなかった。フェノヴォイマ社の原則決定申請に対して政府は2010年5月に原則決定を行い、2010年7月には国会が政府原則決定を承認していた。政府による原則決定文書では、フェノヴォイマ社は2016年6月30日までに、同社が既存の処分実施主体であるポシヴァ社と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価計画書を雇用経済省に提出することにより、同社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することを付帯条件としていた。

フェノヴォイマ社は、ポシヴァ社及びその親会社2社(TVO社、FPH社)と使用済燃料処分に関して協力関係を構築するよう調整を行っていたが、ポシヴァ社はオルキルオトに建設予定の処分場は親会社が運転する原子炉から発生する使用済燃料のためのものであるとして、フェノヴォイマ社との協力関係を拒否し続けていた。

その後、FPH社の親会社であるフォルツム社が、2015年8月にフェノヴォイマ社のプロジェクトに出資し、フェノヴォイマ社のプロジェクトに参加することとなった。なお、フェノヴォイマ社は2015年に新規原子炉(ハンヒキヴィ1号機)の建設許可申請を行っている。

今回のポシヴァ社によるプレスリリースでは、ポシヴァ社は引き続き、親会社であるTVO社とFPH社の原子力発電所で発生する使用済燃料の処分場建設に集中していくものであり、フェノヴォイマ社との業務契約締結には、フェノヴォイマ社の原子力発電所で発生する使用済燃料をポシヴァ社が建設を進めているオルキルオトの地層処分場において処分することは含まれていないとしている。

フィンランドにおける環境影響評価について

フィンランドでは、1994年に環境影響評価手続法が制定されている。環境影響評価は、環境に重大な影響が生じる可能性がある事業について、市民を含むステークホルダーが情報を事前に入手し、計画策定や意思決定に参加する機会を増やすことを目的とした制度となっている。最終処分場を含む重要な原子力施設の建設事業に関しては、原子力法に基づく原則決定手続きの申請に先だって、事業者は環境影響評価(EIA)を実施し、その評価書を原則決定申請書に添付することが規定されている。

EIAは、狭い意味での自然環境に対する影響だけではなく、景観、社会生活への影響、経済的な影響を含めた総合的な評価をすることが規定されている。

また、環境影響評価(EIA)は、計画書の作成(EIA計画書)、評価の報告書(EIA報告書)をまとめる段階から構成されている。

原子力施設に係る事業に関しては雇用経済省が環境影響評価の監督官庁となり、対象地域住民を含めた関係者や関係省庁に意見を求めることとなっており、その一環としてこれまでの原子力施設に係る環境影響評価において、雇用経済省はSTUKにも意見書の提出を要求している。

【出典】

 

【2016年7月13日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年7月12日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が提出した使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書が、同社の新規原子炉建設事業に関する2010年の原則決定の付帯条件を満たしていることを承認したことを公表した。これにより、同社が2015年に提出していたハンヒキヴィ原子力発電所1号機の建設許可申請の審査が継続されることになる。

フェノヴォイマ社の新規原子炉建設に関する原則決定申請に対して、政府は2010年5月に原則決定を行っていた。原則決定文書では、フェノヴォイマ社が2016年6月30日までに、同社が既存の処分実施主体であるポシヴァ社と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省に提出することにより、同社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することを付帯条件としていた。

また、同プレスリリースによれば、今後、雇用経済省(TEM)は環境影響評価の調整機関として、関係行政機関や、候補サイトの自治体とされているエウラヨキ、ピュハヨキの両自治体にフェノヴォイマ社の環境影響評価(EIA)計画書に関する意見照会を行うほか、その一環として公聴会を開催する計画である。

【出典】

 

【2016年8月24日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年8月23日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が提出した使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書に関する公聴会を、エウラヨキ、ピュハヨキ両自治体において、それぞれ2016年9月21日、9月22日に開催することを公表した。

環境影響評価手続法に基づいてTEMは、環境影響評価の調整機関として、関係行政機関及び候補サイトの自治体にEIA計画書に関する意見照会を行うほか、公聴会を開催することが規定されている。同プレスリリースによると、EIA計画書に対する関係行政機関及び候補サイトの自治体から意見照会を行う期間は2016年9月12日から2016年11月9日とされ、収集した意見を踏まえて、TEMは2016年末までに見解書を公表する予定としている。

【出典】

 

【2016年12月19日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年12月16日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が2016年6月に提出していた使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書に対する意見書を公表した。TEMは意見書において、フェノヴォイマ社のEIA計画書は包括的であり、環境影響評価手続法の要件を満たしているとの見解を示している。

フェノヴォイマ社のEIA計画書について調整機関である雇用経済省(TEM)は、2016年9月12日から11月9日にかけて自治体や関係機関等、及び関係国に対して意見聴取を行った。その結果、合計で63の意見が寄せられたが、多かった意見としては、EIA評価の期間が非常に長いこと、事業に関するコミュニケーションが重要であることなどのほか、EIA評価の期間中における評価プログラムに関する最新情報の提供についての要求があったとしている。

雇用経済省(TEM)は、今回の意見書においてフェノヴォイマ社に対し、現時点で放射性廃棄物管理義務を有している原子力発電事業者との協力を継続すること、及び2018年1月31日までに使用済燃料処分プロジェクトのより詳細なスケジュールを示した計画書を追加で提示するよう求めている。フェノヴォイマ社が追加で提出する計画書では、エウラヨキ自治体で実施する調査の対象となる地域の選定方法と選定時期のほか、エウラヨキ・ピュハヨキ両自治体の調査地域での調査の実施方法、及び公衆参加の枠組みに関する詳細を示さなければならないとしている。そのほか、雇用経済省(TEM)は、フェノヴォイマ社の原子炉から発生する使用済燃料については、商業契約に基づく協力により、ポシヴァ社の処分場で処分するのが最も望ましい解決策であり、フェノヴォイマ社がそのための努力をすべきであるとの見解を示している。

【出典】

ドイツの高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)は、2016年6月15日に開催された第31回会合において、高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定の各段階における公衆参加の枠組みや流れについて決定した。今回合意された内容は、2016年6月30日までに連邦政府及び連邦議会に提出される予定の最終報告書の「7.3節 関係者、委員会」及び「7.4節 公衆参加の手順」に組み込まれる。

処分委員会は、探査サイトの地元住民がサイト選定の早期から対話に参加し、サイト選定における決定に関与することを実現するためには、新しい公衆参加形態が必要であるとの認識から、広範な公衆参加の枠組みを決定したとしている。これらの公衆参加形態については、処分委員会の最終報告書に基づき、連邦政府による法令への反映が想定されている。

公衆参加手続きの概要

2013年7月に制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という) では、地質学的な除外要件及び最低要件の適用により提示される複数のサイト地域から、地上探査サイト地域の選定(第1段階)、地下探査サイトの選定(第2段階)、最終的なサイトの提案・合意(第3段階)へと段階的に絞り込みが行われることが規定されている。

今回、処分委員会において決定された公衆参加手続きでは、高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定における公衆参加を目的として、サイト選定法に基づく選定手続の各段階に対応し、連邦、地域横断、地域の3つのレベルで委員会や合議体を設置する方針である(下表参照)。

 

サイト選定プロセス

委員会・合議体の設置レベル

第1段階
地上探査サイト地域の選定

第2段階
地下探査サイトの選定

第3段階
処分場サイトの提案・合意

サイト区域選定

地上からの探査サイト地域選定

地上からの探査の実施

地下探査サイト選定

地下探査の実施

サイト提案・合意

連邦

社会諮問委員会

地域横断

サイト区域専門会議

地域代表者専門会議

地域代表者専門会議

地域代表者専門会議

地域代表者専門会議

地域

地域会議(多数)

地域会議(多数)

地域会議(複数)

地域会議(複数)

地域会議(1カ所)

 

公衆参加のための枠組みの詳細

連邦レベルでは中立的な立場から、サイト選定手続きの開始から終了までの全プロセスを監視するため、「社会諮問委員会」が設置される。サイト選定プロセス第1段階では、処分実施主体が提案する「地上からの探査サイト地域」の地元では、地域レベルの合議体である「地域会議」が設置される。

サイト選定プロセス第1段階において、各地元に「地域会議」が設置される前段階では、地域横断レベルの合議体として「サイト区域専門会議」が設置される。この合議体の役割は、処分実施主体が第1段階の中間において「地上からの探査サイト地域」を提案した以降は、各地域会議から同数の代表者が参加する合議体「地域代表者専門会議」に引き継がれる。

これらの委員会・合議体は、サイト選定プロセスの各段階において、公衆参加の結果を報告書としてとりまとめ、提出することとされている1連邦、地域横断及び地域の各レベルにおいて設置される委員会・合議体の設置時期、構成、及び役割を以下に示す。

<連邦レベル>

社会諮問委員会

  • 設置: 2016年6月30日の処分委員会の最終報告書提出後、選定プロセス開始に先立ち、9名の委員で暫定的に設置される。選定プロセス開始に伴い18名の委員で本格的に活動を開始する。
  • 構成:国民を代表する18名の委員で構成される。このうち12名は連邦議会と連邦参議院から半数ずつ選出し、残る6名は性別年齢を考慮した上で無作為に抽出された全国の市民から選出する。市民代表のうち2名は16歳から27歳の若年層から選出する。委員指名は連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)により行われる。
  • 役割:中立的な立場から、サイト選定手続きの開始から終了までの全プロセスにおいて、手続き全体を監視すると共に、関係者間の調整を行う。

社会諮問委員会については、サイト選定法において、連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後に設置することが規定されている。しかし、処分委員会は、最終報告書提出後に公衆参加の空白期間が生じることを回避する目的で、これを前倒しで設置することを提案している。すでに超党派の議員がサイト選定法の改正案を議会に提出している。

<地域横断レベル>

サイト区域専門会議

  • 設置:連邦放射性廃棄物機関(BGE)によるサイト選定の第1段階の中間報告書作成後に連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置する。
  • 構成:BGEによる第1段階の中間報告書において、提示される「サイト区域」の代表者を中心に構成される。該当するサイト区域内の自治体や各種社会組織及び市民の代表者に加え、該当区域外の専門家も参加することが望ましいとしている。
  • 役割:選定プロセスにおける利害関係者となる区域が特定され、地域会議が設置される前の段階において、公衆が参加する機会を提供する。BGEによる第1段階の中間報告書提示後、6カ月間に3回にわたり会議を開催し、中間報告書を評価する。

地域代表者専門会議

  • 設置:地域会議の設置後に、サイト区域専門会議に代わり設置される。
  • 構成:各地域会議から同数の代表者が参加する。総数は30名を超えないものとされている。
  • 役割: 連邦放射性廃棄物機関(BGE)及び連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)のサイト選定・審査結果を検証するとともに、各地域会議におけるプロセスを比較する。また、探査サイトにおける地域開発促進のための包括的な戦略を検討する。会議の頻度は選定プロセスの進捗によるが、最低でも年3回は開催する。

<地域レベル>

地域会議

  • 設置:新たな処分実施主体として処分委員会が設置を提案している連邦放射性廃棄物機関(BGE)による第1段階の地上からの探査サイト地域の提案を受けて、サイト選定を監督する役割を有す連邦放射性廃棄物処分庁(BfE) が提案されたサイト地域ごとに設置する。
  • 構成:処分委員会が提示している地域会議の概念モデルには、「代表者グループ」、「総会」、「公衆」の3つの層が含まれる。「代表者グループ」は地域内の自治体、経済・環境団体等の各界、並びに市民の代表者から成り、総数は30名を超えない規模とされる。「総会」には、当該地域の全有権者が参加可能であり、代表者グループの任命権限があるほか、代表者グループに対して要望や提案を提示することが可能である。「公衆」はその他を含む公衆一般であり、代表者グループが、これら公衆に対し、BfEが運営するインターネット上の情報プラットフォームを通じた情報提供に加え、地域会議の枠組みによる公衆参加機会の提供を行う。
  • 役割:サイト選定プロセスに密接に関与し、重要な提案、決定の正当性や実証可能性を検証するとともに、関心を持つ全ての市民がサイト選定プロセスに参加しやすくなるように配慮する。また、連邦放射性廃棄物機関(BGE)が提示する処分場設置に伴う社会経済的影響について議論を行う。処分場サイトの最終提案が行われる第3段階では、サイトの提案の検証を行うと共に、立地地域の地域開発に関する合意の策定に取り組む。

【出典】


  1. ただし、サイト区域専門会議を除く。サイト区域専門会議の関与は、連邦放射性廃棄物機関(BGE)が第1段階の提案に向けて作成する中間報告書の評価に限られる。 []

フランスの原子力安全機関(ASN)は2016年6月16日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物の地層処分における「可逆性」の技術的解釈に関する2016年5月31日付の見解書を公表した。フランスでは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法により、高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物について、「可逆性のある地層処分」を行う方針を定めている。2016年3月30日には、地層処分場の設置に関する法案1 が提出されており、国会で審議が行われている。ASNは今回の見解書の公表にあたり、審議中の法案には「可逆性」に関する規定が盛り込まれており、この規定が今後、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が地層処分場の設置許可申請を行う際の条件になるとしている。

ASNは、今回の見解書において、可逆性の原則は以下の2つの必要性によって説明されるとしている。

①適応性: 地層処分場は、以下の条件を考慮することが可能でなければならない。

  • 経験のフィードバックと科学の進歩(例えば、地層処分場の開発において採用される産業プロセスの変更につながるもの)。
  • エネルギー政策や事業方針の変更(例えば、使用済燃料の直接処分、または地層処分場の閉鎖が先送りされるなど)。

②回収可能性: 放射性廃棄物は以下の条件で、地層処分場から回収できなければならない。

  • 法律によって定められる期間にわたって回収可能であること。
  • 地層処分場の構造物や廃棄物パッケージが劣化した場合であっても、原子力安全と放射線防護を確保した形で回収可能であること。

ASNは、適応性及び回収可能性に関するこれらの条件は、透明性が確保され、あらゆるステークホルダーとともに、定期的に再評価されなければならないとしている。また、ASNは、適応性に関して考慮すべき条件のうち、エネルギー政策や事業方針の変更に関連して、ANDRAによる地層処分プロジェクトのコスト評価報告書に関する2015年2月10日付のASN見解書において必要性に言及した、将来的な政策変更等を考慮した廃棄物インベントリについて、地層処分場の設置許可申請以降、速やかに提出される必要があると指摘している。

さらに、ASNは、可逆性の原則の実現に際しては、安全確保の上で必要な以下の2つの事項が達成されなければならないことを指摘している。

  • 可逆性を担保した状態で地層処分場を機能させるために採用される措置は、操業中及び閉鎖後における原子力安全及び放射線防護の目標と整合していなければならない。
  • 地層処分場の操業期間は有限でなければならず、地層処分場の長期安全性を確保するためには、処分場の閉鎖が不可欠である。

なお、ASNは2014年12月に、ANDRAが設置許可申請に先立ってASNに提出する「地層処分場の主要な技術オプション」等に対する記載要求事項をまとめた書簡をANDRAに送付し2 、この中で、可逆性に関する考え方を示しており、可逆性には「適応性」と「回収可能性」の2つの概念を含むことが適切であるとの判断を示していた。

 

【出典】


  1. ロンゲ上院議員及びナミ上院議員、2016年3月30日提出、「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法案」 []
  2. フランスでは、原子力基本施設及び原子力安全・放射性物質輸送管理に関する2007年11月2日のデクレ(政令)(2007-1557)の第6条に基づき、原子力施設の設置許可申請に先立って、安全オプションをASNに提出し、その見解を求めることができるとされている。ASNは見解において、設置許可申請を行う場合に必要となる補完的な研究や立証についても特定することができる []

高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、地層処分に関する研究開発の概要を示した『科学技術プログラム』を公表した。科学技術プログラムは、RWMの地層処分に係る科学・技術研究における構造と範囲、地層処分事業を実施する上で重要なアウトプットをステークホルダーに提示することを念頭に置いて取りまとめたものであり、RWMは、科学・技術研究の進捗を管理するツールとして使用していくとしている。

図: 科学・技術研究の4分野と実施プロセスの関係

図: 科学・技術研究の4分野と実施プロセスの関係

RWMは、科学・技術研究を4つの分野(図の中央部分にある緑色のボックス)に分け、各分野において目標とする主要な研究成果(合計62)をマップしている。RWMは、科学・技術研究を構成する一連の研究プロジェクトを設けており、各プロジェクトの成果の中で重要なもの、または複数のプロジェクトの成果を基に達成されるものを「主要成果」と位置づけている。なお、研究プロジェクトの詳細内容は、『科学技術プログラム』と同時に公表された『科学技術プラン』1 において示されている。

主要成果は、必ずしも単独の成果文書である必要はなく、RWMが発行する廃棄物パッケージの仕様遵守確認書(LoC)や廃棄物受入基準(WAC)、地球科学データ管理システムのようなデータベースやモデルも含まれている(図の下側のアウトプット部分を参照)。

科学技術プログラムにおける研究開発内容の策定・実施プロセスは、繰り返し行われることになっており、この反復プロセスの中で主要成果が提示される。

4つの科学・技術研究分野と各分野での主要成果の例

■科学・技術研究分野1:処分システム仕様(主要成果として6件を設定)

  • 処分システム機能に関する仕様
  • 処分システム技術に関する仕様
  • 処分対象となる放射性廃棄物インベントリ
  • 処分概念
  • 地層処分の代替管理方法

■科学・技術研究分野2:処分システム設計(主要成果として14件を設定)

  • 処分システム設計に関する仕様
  • 地層処分施設の一般設計
  • 処分システムのコスト評価

■科学・技術研究分野3:評価(主要成果として20件を設定)

  • 一般的な条件における処分システム・セーフティケース(gDSSC)
  • 一般的な条件における、環境、社会・経済、健康に関する評価
  • 処分可能性評価
  • 地質学的スクリーニング

■科学・技術研究分野4:知見の拡充(主要成果として22件を設定)

  • 高レベル放射性廃棄物等に関するプログラム
  • 科学技術プラン
  • サイト特性調査

 

RWMは、地層処分施設に関する活動期間を、①予備調査、②地上からのサイト調査、③処分施設の建設及び地下におけるサイト調査、④処分施設の操業、⑤処分施設の閉鎖の5つのフェーズに分割しており、今回の科学技術プログラムで設定した主要成果は、①~③のフェーズ(処分施設の操業開始前までの期間)に焦点をあてたものであると説明している。なお、RWMは、地層処分施設の開発の進捗状況に応じて、科学技術プログラム自体も定期的にレビューし、更新するとしている。RWMは、④と⑤(処分施設の操業開始以降の期間)の主要成果は、今後の活動フェーズが進むにつれて変わる可能性があるため、今回の科学技術プログラムでは基本的に含めていないが、今後提示する科学技術プログラムにおいて設定するとしている。

 

【出典】


  1. RWMは、これまでに科学技術プログラムの初版(2013年9月)、第2版(2014年3月)を策定しており、いずれもNDAの文書として発行されている(当時の文書名は技術プログラム)。今回RWMが公表した『科学技術プラン』は、科学技術プログラム(第2版)に含まれていた研究開発計画の詳細部分の記述を独立させたものである。 []

フランスにおいて放射性廃棄物等の管理に関する調査研究の進捗状況を評価する国家評価委員会(CNE)は、第10回評価報告書を2016年5月25日に議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、CNEのウェブサイトで公表した。CNEは、2006年放射性廃棄物等管理計画法による規定に基づいて、放射性廃棄物等管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を実施し、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出することになっている。第1回評価報告書は2007年6月に取りまとめられており、今回の報告は10回目となる。

CNEの第10回評価報告書では、高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分プロジェクトのほか、特に、極低レベル放射性廃棄物、技術的に濃度が高められた自然起源の放射性物質(TENORM)廃棄物及び長寿命低レベル放射性廃棄物の管理研究も取り上げている。これらの放射性廃棄物の処分実施主体はいずれも、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)である。CNEは、ANDRAが処分の実現に向けて実施している研究開発について、以下のような見解を示している。

高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分プロジェクト

  • ANDRAは、地層処分場の機能の実証等を行うため、通常の操業フェーズに先立ち「パイロット操業フェーズ」(PIP)を導入する予定としており、CNEも地層処分事業を実証する上で「パイロット操業フェーズ」が不可欠であると考える。CNEは、ANDRAが処分場の建設及びパイロット操業フェーズの期間を通じて、公衆に情報提供しつつ経験をフィードバックするとともに、毎年、進捗報告書を提出することを勧告する。また、ANDRAが地層処分場の設置許可申請書とともに提出することになっている「事業計画」を策定するため、パイロット操業フェーズでの実証試験等が行われる地層処分場の最初の処分区画について、建設の技術オプションを可及的速やかに確定することを勧告する。
  • 設置許可申請前に、発熱量の大きな高レベル放射性廃棄物の処分区画の設計を行うためには、熱-水-応力連成現象の理解を深めなければならないが、ANDRAは設置許可申請時には、これらの現象の不確実性を考慮した設計を示す必要がある。発熱量の大きな高レベル放射性廃棄物の処分区画の建設が始まるのは数十年先であることから、CNEは、ANDRAが設計に柔軟性を持たせ、これらの処分区画の建設開始までの間に適切な規模で熱-水-応力連成モデルの試験を提案するよう勧告する。
  • ANDRAは地下研究所において多くの試験を行ってきたが、そこで得られた全ての試験結果を説明できる力学モデルを開発できていない。CNEは、ANDRAが100年単位での岩盤の力学挙動を説明する主要な特性を優先的に明らかにすべきであると考える。
  • ANDRAは、処分場の坑道のシーリングの有効性に関する実規模実証試験をパイロット操業フェーズで実施することを検討しており、このことは処分場の設置許可デクレ(政令)の発給前に、この実証試験の成果を利用できないことを意味している。CNEは、ANDRAが地下研究所での試験を活用し、地層処分場の全てのフェーズにおける坑道のシーリング機能に関するモデルを提示するとともに、処分場でのパイロット操業フェーズにおける実規模試験の詳細を確立するよう勧告する。
  • CNEは、地層処分場に輸送される廃棄物パッケージの輸送容器の仕様と検査体制について、設置許可申請の前に確定しておくべきと考える。
  • 地層処分プロジェクト全体をカバーするコストの目標額が、2016年1月のアレテ(省令)により250億ユーロ(約3兆3,500億円)と設定されたが、この額が過去にANDRAが見積った額よりも低いことにCNEは疑問を持っている。ANDRAと原子力事業者が合意して採用した地層処分場の技術オプションは維持されるべきであり、予算的な観点から見直されるべきではない。

極低レベル放射性廃棄物

  • 国内の原子力発電所の廃止措置に伴い、2080年までに大量の極低レベル放射性廃棄物が発生する見込みであり、極低レベル放射性廃棄物処分場の新設も検討されている。CNEは、現時点では放射性廃棄物とみなしているものの、ほとんど放射性物質に汚染されていない廃棄物の管理に関して、研究機関や事業者等が革新的な研究を継続することを奨励する。また、大量の廃棄物の中から、微量の放射性物質を検知する方法を開発するよう改めて勧告する。

TENORM廃棄物

  • 「電離放射線からの被ばくを防護するための基本安全原則を制定するEU指令2013/59/Euratom」が今後国内法化されると、「技術的に濃度が高められた自然起源の放射性物質」(TENORM)廃棄物は、フランスでは原子力活動から発生した廃棄物であるとみなされることとなる。このためCNEは、ANDRAに対し、同EU指令の国内法化によるTENORM廃棄物の管理への影響を評価するよう要請する。

長寿命低レベル放射性廃棄物

  • CNEは、長寿命低レベル放射性廃棄物に含まれる放射性核種のインベントリをさらに精緻化すべきと考える。
  • 処分が想定されている長寿命低レベル放射性廃棄物に含まれる放射性核種の挙動に関し、CNEは、現状得られている結果は、ANDRAが選定した処分場候補サイトの全ての地質学的パラメータを考慮した、現実的な安全解析を実施するには不十分であると考える。

 

【出典】

 

韓国産業通商資源部(Ministry of Trade, Industry and Energy, MOTIE)は、2016年5月26日のプレスリリースにおいて、「高レベル放射性廃棄物管理基本計画(案)」(以下「基本計画案」という)を公表し、パブリックコメントの募集を開始した。この基本計画案は、2015年6月末に使用済燃料公論化委員会(以下「公論化委員会」という)からMOTIE長官に提出された「使用済燃料の管理に関する勧告」 を踏まえて策定されたものである。MOTIEは、基本計画案を2016年6月17日までパブリックコメントに付した後、2016年6月中旬頃には公聴会等を通じて国民の意見聴取を行い、2016年7月頃、国務総理主宰の原子力振興委員会での審議を経て確定させる予定である。

韓国では、1978年に商業用の原子力発電所が運転を開始し、2015年12月時点で24基の原子炉が運転中である。このうち20基が加圧水型軽水炉(PWR)、4基がカナダ型重水炉(CANDU炉)である。原子力発電所で発生した使用済燃料は、原子力発電所内の使用済燃料プール及び乾式貯蔵施設に貯蔵されており、貯蔵量は2014年3月時点で約1.3万トン(ウラン換算)となっている。

■ 高レベル放射性廃棄物料管理に関する政策の方向性

MOTIEは基本計画案において、高レベル放射性廃棄物の管理について、国民の安全の最優先や現世代による管理責任の負担、廃棄物発生者による管理費用の負担等の原則を示した上で、政策の方向性として下記の事項を示している。

○ 許認可用の地下研究所(URL)、中間貯蔵施設、最終処分施設を1カ所のサイトにおいて段階的に確保する方向で推進する。

  • 科学的サイト調査と民主的方式によるサイト選定(約12年間)を行う。
  • サイト確保後、中間貯蔵施設の建設(約7年間)と許認可用の地下研究所の建設・実証研究(約14年間)を同時に推進する。
  • 許認可用の地下研究所における実証研究後、最終処分施設を建設(約10年間)する。
  • 中間貯蔵施設の操業までは、原子力発電所サイト内で使用済燃料を管理することは不可避である。

○国際協力により、国際共同貯蔵・処分施設の確保にも併行して取り組む。

○ 安全性と経済性の両方の達成を目指す重要な管理技術を適時に確保する。

○ 管理施設の操業に関する情報は常に公開し、地域住民との持続的にコミュニケーションを行う。

使用済燃料の処分施設等に関する所要期間の見込み(基本計画案より作表)

基本計画(案)

※注: 使用済燃料公論化委員会は、最終的な勧告「使用済燃料の管理に関する勧告」(2015年6月29日)において、2051年までに処分施設を建設し、操業を開始するよう勧告していたが、今回MOTIEが公開した基本計画案では、各工程の所要期間の見込みを示しているが、処分場の操業開始年は明示していない。

 

基本計画案では、この他に、処分方式としては、操業中の回収可能性を考慮した地層処分方式を優先して考慮するものの、超深孔処分等の代替研究も国際共同研究として推進すること、使用済燃料の管理・処分費用として約53.3兆ウォン(約4.9兆円)を見込むこと、基本計画の実施のための法令や諮問機関の整備を推進すること等が述べられている。

また、国際共同貯蔵・処分については、経済性と将来の不確実性を勘案して、国内でのサイト選定と並行して推進することとしている。その上で、国際共同貯蔵・処分施設の実現に積極的に対応できるよう、2017年より経済性、安全性、回収可能性等に対する分析と法的検討を推進するとともに、国内での管理施設のサイト選定の進捗度と海外動向を勘案し、推進の要否を決定するとしている。

■ 使用済燃料管理サイトの選定について

使用済燃料の中間貯蔵施設と処分施設の両方を立地するサイトの選定については、地質調査等によるサイトの適合性評価のための科学的な妥当性確保と、地域住民の意思を確認する手順の順守、サイト選定等に対する客観的で透明性の高い手続きと方式を規定する法制度を整備するとしている。MOTIEはサイト選定手続きを以下のステップで進めるとしており、(1)~(4)に8年間、(5)に4年間で、全体で12年間の所要期間を見込んでいる。

(1)不適合な地域の除外
(2)サイトの公募
(3)基本調査
(4)住民の意思の確認
(5)詳細調査

地下研究所については、処分施設と同一サイトにおける、処分施設の許認可申請データの取得のための地下研究所の建設に先立ち、別途、研究用の地下研究所(Generic URL)を建設し、処分施設のサイト選定、設計、建設、操業等のために処分システムの研究を行うとしている。研究用の地下研究所の確保と操業には約10年間、その後の許認可用の地下研究所の建設・操業には約14年間の所要期間を見込むことが示されている。また、許認可用の地下研究所での実証研究を10年間以上実施した後、処分施設へと拡大するとしている。

 

【出典】

【2016年8月25日追記】

韓国産業通商資源部(MOTIE)は、「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)の原子力振興委員会1 による審議・承認を受け、「高レベル放射性廃棄物管理手続きに関する法律」の法案を策定した。本法案は、2016年8月11日から9月19日までの間にパブリックコメントに付された後、国会審議等を経て、2016年内の制定が見込まれている。
「高レベル放射性廃棄物管理手続きに関する法律」は、高レベル放射性廃棄物管理委員会の設置、サイト選定手続き等を定めるものであり、基本計画に盛り込まれた政策を実施することを目的としたものである。法案の骨子は以下のとおりである。

第1章:総則
第2章:高レベル放射性廃棄物管理委員会
    委員会の設置、構成・運営等を規定
第3章:サイト適合性調査手続き
    適合性調査計画の策定、基本調査及び精密調査、サイト予定地の確定、
    誘致地域支援委員会の設置、構成・運営等を規定
第4章:管理施設の建設・操業
    管理施設の建設計画、操業時の管理基準等を規定
第5章:附則
第6章:罰則

なお、基本計画は、2016年7月25日の第6回原子力振興委員会において、審議・承認された。基本計画の承認に関する国務調整室(OPC)、韓国産業通商資源部(MOTIE)、韓国未来科学創造部(MSIP)による、2016年7月25日付の共同プレスリリースでは、「高レベル放射性廃棄物管理手続きに関する法律」の立法過程における地域説明会等を通じ、ステークホルダーとの継続的なコミュニケーションを図り、基本計画の5年毎の見直しに反映するとしている。

 

【出典】