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ドイツ連邦政府は2016年10月19日に、「原子力バックエンドの責任分担刷新法案」を閣議決定した。同法案には、「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という)が2016年4月27日に提出した最終報告書において示した勧告 を実施するための規定が含まれている。同法案は今後、2016年内の発効を目指し、連邦議会での審議が行われる予定である。

原子力バックエンドの責任分担刷新法案には、二つの新法――①放射性廃棄物管理のための公的基金の設置に関する法律、②原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務移管に関する法律――を制定及び関連法令の改正を行う内容が盛り込まれている。同法案に含まれる法律案及び関係法令の改正案の概要は以下の通りである。

放射性廃棄物管理のための公的基金の設置に関する法律案〔基金設置法案〕

ドイツでの原子力発電事業者は、放射性廃棄物管理の将来費用を引当金として内部留保してきた。放射性廃棄物管理のための公的基金の設置に関する法律案(以下「基金設置法案」という)では、新たな公的基金を設置し、連邦政府が責任を負う放射性廃棄物管理(中間貯蔵から最終処分場閉鎖まで、後述)について、必要な資金を基金に拠出して管理するための規定が含まれている。なお、この基金は、連邦経済・エネルギー省(BMWi)が所管する。

○基金の構成

新たに設置される基金は、監査組織である「管理委員会」と基金を運営する「運営委員会」から構成される。管理委員会は、連邦財務省、BMWi及び連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の代表者の計3名で構成される。運営委員会の委員は、管理委員会によって、資金管理経験者3名が指名される。

○原子力発電事業者による基金への払い込み

原子力発電事業者による基金への払込金は、放射性廃棄物管理の将来費用(基本払込金)と、リスクに備えるための保険料(基本払込金の35.47%)で構成される。原子力発電事業者は、基本払込金約174億ユーロ(約1兆9,700億円)に保険料約62億ユーロ(約7,000億円)を上乗せした合計約236億ユーロ(約2兆6,700億円)を基金に払い込むこととされている。これらの金額は、概ね2016年4月の検討委員会の勧告と同様である(下表参照)。

原子力発電事業者は、法律発効から7カ月後までに基本払込金、2022年末までに保険料を払い込むことが規定されている。ただし、連邦財務省同意の上でBMWiと合意すれば、基本払込金とリスク保険料の合計額を2026年末までに分割で支払うことも可能とされている。

表:原子力事業者による放射性廃棄物管理基金への払い込み金額

基金設置法
(払込時点で再調整可能性あり)
検討委員会勧告
(2014年価格)
 A. 基本払込金  約174億ユーロ(1兆9,700億円)  a. 引当金から基金への資金移管額  約172億ユーロ(約1兆9,400億円)
 B. 保険料(Aの35.47%)  62億ユーロ(約7,000億円)  b. 保険料(aの約35%)  約61億ユーロ(6,900億円)
 C. 払込総額
(A+B)
 236億ユーロ(約2兆6,700億円)  c. 払込総額
(a+b)
 約233億ユーロ(2兆6,300億円)

 

原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務移管に関する法律案〔義務移管法案〕

原子力バックエンドの責任分担刷新法案には、原子力発電事業者と連邦政府の間での放射性廃棄物管理に関する責任分担を変更する新法を制定する条文が含まれている。「原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務移管に関する法律案」(以下「義務移管法案」という)の概要は以下の通りである。

○中間貯蔵と処分の実施・資金管理責任の変更

義務移管法案では、放射性廃棄物の中間貯蔵の実施責任者を従来の原子力発電事業者から連邦政府に変更するとともに、資金管理責任についても連邦政府の責任とする規定が設けられている(下表参照)。なお、廃止措置に関しては引き続き、実施・資金確保ともに原子力発電事業者が責任を有する。

保険料を含む基金への払い込み完了により、資金確保を含め、中間貯蔵以降の放射性廃棄物管理に関する責任は連邦政府に移行することになる。したがって、払い込み完了後は、最終処分場の操業開始遅延などに伴い費用が増大した場合でも、原子力発電事業者が追加の負担を求められることはない。

表:放射性廃棄物管理における原子力発電事業者と連邦政府の責任分担

 

現在の責任分担

移管法による責任分担

中間貯蔵

最終処分

中間貯蔵

最終処分

実施

事業者

連邦政府

連邦政府

資金

事業者(各自費用を引当)

連邦政府(ただし基金への払い込み完了後)

○連邦政府への中間貯蔵の移管時期及び実施主体

義務移管法案によれば、原子力事業者から連邦政府への中間貯蔵の実施責任の移行時期は次の通りである。

  • 発熱性放射性廃棄物(使用済燃料及びガラス固化体等):2019年1月1日
  • 非発熱性放射性廃棄物(発熱性放射性廃棄物以外):2020年1月1日

なお、中間貯蔵施設は原子力発電事業者が費用を負担して設置したものであるが、上記期日を以て、無償で連邦政府に引き渡されることとされている。

放射性廃棄物の中間貯蔵に関する実際の活動は、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督下に置かれる「連邦政府が100%所有する私法上の組織」によって実施される。放射性廃棄物の最終処分についてはすでに、「最終処分分野における組織体制刷新のための法律」(2016年7月30日発効)による原子力法改正がなされており、連邦政府が100%所有する実施主体として、連邦放射性廃棄物機関(BGE)が新たな処分実施主体となることが決まっている。中間貯蔵の実施主体についても、今後新たな組織が設置されることになる。

 

その他の法令の改正案など

「原子力バックエンドの責任分担刷新法案」による「基金設置法案」及び「義務移管法案」の2件の新法制定に伴い、放射性廃棄物管理に係る各種料金や分担金の支払い方法の変更に関係する法令の改正がなされる。関係する法令には以下のものがある。

  • 原子力法
  • 発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律(サイト選定法)
  • 最終処分場設置の前払金令
  • 放射線防護令

 

【出典】

【2016年12月20日追記】

ドイツの連邦議会は2016年12月15日に、放射性廃棄物管理のための公的基金設置等を定める「原子力バックエンドの責任分担刷新法案」を賛成516、反対58で可決した。また、連邦参議院が12月16日に、同法案への同意1 を決議したことにより成立した。

なお、発効日については、別途、連邦官報に公示されることが規定されている。

【出典】

【2017年5月11日追記】

ドイツでは、2016年12月に成立した「原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務の移管に関する法律」(以下「義務移管法」という)に基づいて、今後2020年1月までに、放射性廃棄物の中間貯蔵の実施義務を、従来の原子力発電事業者から連邦政府に段階的に移管する方針である。使用済燃料や放射性廃棄物の処分前に行われる中間貯蔵は、連邦政府が100%所有する私法上の組織が実施することになっている。

ドイツ連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)と原子力サービス社(GNS社)とは2017年5月8日に、GNS社の所有する中間貯蔵の新たな実施主体「連邦中間貯蔵機関」(BGZ)の株式及びGNS社が所有・操業しているゴアレーベン及びア―ハウスの集中中間貯蔵施設について、2017年8月1日に連邦政府に引き渡すことで合意したことを公表した。現在、BGZはBMUBとGNS社が共同出資した合弁会社として存在しているが2  、引き渡しにより連邦政府が100%所有する組織となる。

GNS社は原子力事業者が共同出資して設立された民間会社である。ドイツ北部のニーダーザクセン州にあるゴアレーベン中間貯蔵施設においては、原子力発電所から発生した放射性廃棄物や使用済燃料のほか、フランスと英国に委託した再処理からの返還ガラス固化体の中間貯蔵を実施している3 。ドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州にあるアーハウス中間貯蔵施設では、原子力発電所から発生した放射性廃棄物の中間貯蔵のほか、主として研究炉や高温ガス炉(実験炉と実証炉、いずれも1980年代に廃止)の使用済燃料を乾式貯蔵している4 。

今夏に行われるBGZの株式、ゴアレーベン及びア―ハウスの集中中間貯蔵施設の連邦政府への移管は、義務移管法に規定された中間貯蔵の実施責任移管の第一段階である。義務移管法では次の段階として、原子力事業者が各原子力発電所構内に設置している使用済燃料等の中間貯蔵施設12カ所を2019年1月1日までに、また、原子力発電所の運転・廃止措置に伴って発生する放射性廃棄物の中間貯蔵施設12カ所を2020年1月1日までに連邦政府へ移管することが規定されている。

【出典】

【2017年6月20日追記】

ドイツの連邦経済・エネルギー省(BMWi)は、2017年6月19日に、放射性廃棄物管理のための「放射性廃棄物管理基金」が正式に設置されたことを公表した。これは、「放射性廃棄物管理のための公的基金の設置に関する法律」(基金設置法)及び「原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務移管に関する法律」(義務移管法)を定める「原子力バックエンドの責任分担刷新法」が2017年6月16日付で発効したことを受け、6月19日に基金の監査組織である管理委員会の設置会合が開催されたことによるものである。

放射性廃棄物管理基金には2017年7月1日付で、原子力発電事業者から約236億ユーロ(約2兆7,800億円)の拠出金が払い込まれる予定である。今後、組織・職員構成を整備するとともに、払い込まれた資金の長期安定運用に関する戦略等の検討が進められることになっている。

【出典】

 

【2017年6月27日追記】

ドイツの連邦経済・エネルギー省(BMWi)は、2017年6月16日に発効した「放射性廃棄物管理のための公的基金の設置に関する法律」(基金設置法)及び「原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務移管に関する法律」(義務移管法)の規定内容の実施について、連邦政府と原子力発電事業者との合意事項を定めた「脱原子力に係る費用確保に関する協定」が2017年6月26日に締結されたことを公表した。

この協定締結により、原子力発電事業者が、総額約236億ユーロ(約2兆7,800億円)の拠出金を放射性廃棄物管理のための公的基金に対して、2017年7月1日付けで払い込むことが確定した。

【出典】

【2017年7月4日追記】

ドイツの連邦経済・エネルギー省(BMWi)は、2017年7月3日に原子力発電事業者が放射性廃棄物管理のための公的基金に対して、基本拠出金約179億ユーロ(約2兆2,200億円)5 、及びリスク保険料約62億ユーロ(約7,700億円)の合計約241億ユーロ(約2兆9,900億円)を一括で払い込んだことを公表した。義務移管法の規定に基づいて、基本拠出金の払い込み完了に伴い、原子力発電事業者による放射性廃棄物の中間貯蔵の実施義務及び資金確保義務、最終処分の資金確保義務については、連邦政府に移管されたこととなる。

公的基金の運営委員会は、基金全体の資金運用戦略の策定を進めつつ、一部の資金については、ドイツの中央銀行であるドイツ連邦銀行の協力のもとで近日中に投資運用を開始するとしている。

【出典】

【2017年8月2日追記】

ドイツ連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)及び原子力サービス社(GNS社)は、2017年8月1日付で、ゴアレーベン及びアーハウスの使用済燃料等の集中中間貯蔵施設が連邦政府に移管されるとともに、GNS社が所有していた連邦中間貯蔵機関(BGZ)の株式が連邦政府に無償譲渡されることにより、BGZが100%連邦政府所有の組織となったことを公表した。これらの中間貯蔵施設等の移管・譲渡は、2016年12月に成立した「原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務の移管に関する法律」(以下「義務移管法」という)に基づいて行われたものである。これに伴って、ゴアレーベン及びアーハウスの集中中間貯蔵施設やGNS本社で中間貯蔵業務に従事していた約150名の従業員もBGZに移籍した。

さらに、今後は、義務移管法に基づいて、以下の中間貯蔵施設が連邦政府に移管される予定である。

  • 2019年1月1日までに連邦政府に移管:原子力発電事業者が各原子力発電所内に設置している使用済燃料等の中間貯蔵施設12カ所
  • 2020年1月1日までに連邦政府に移管:原子力発電事業者が各原子力発電所内に設置している原子力発電所の運転・廃止措置に伴って発生する放射性廃棄物の中間貯蔵施設12カ所

【出典】


  1. ドイツの国会は二院制であり、連邦議会と連邦参議院がある。連邦参議院は直接選挙で選出されるのではなく、州が代表を送って構成される。ドイツ基本法では、連邦法は連邦議会が議決すると規定しているが、法律の内容によっては連邦参議院の同意が必要となる。 []
  2. ドイツ連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)と原子力サービス社(GNS社)は、義務移管法の2016年12月成立を受けて、2017年3月1日に共同出資によるベンチャー企業として「連邦中間貯蔵機関(BGZ)」を設立していた。 []
  3. ゴアレーベン中間貯施設は、GNS社の子会社であるゴアレーベン燃料貯蔵会社(BLG)が実施している。1995年から返還ガラス固化体の受け入れを開始したが、2013年の連邦政府とニーダーザクセン州の合意に基づく原子力法の改正により、現在は受け入れが行われていない。今後返還されるガラス固化体は、原子力発電所サイトで中間貯蔵することが計画されている。 []
  4. アーハウス中間貯蔵施設は、GNS社の子会社であるアーハウス燃料貯蔵会社(BZA)が操業している。 []
  5. 基金設置法に規定された金額に加え、同法の規定により、2017年1月1日以降の利息が加算されている []

米国のエネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2016年10月14日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)のTRU廃棄物の処分エリアの一部について、閉鎖を実施する方針を公表した。WIPPでは、火災事故及び放射線事象が2014年2月に発生して以来、現在まで操業が停止されており、2016年内の操業再開を目指して復旧活動が行われているが、一部の坑道で崩落が続いたことなどを受けて閉鎖の方針が決定された。DOEは、WIPPの規制機関である連邦環境保護庁(EPA)及びニューメキシコ州環境省(NMED)と既に協議を開始しており、地下施設の南側一部を閉鎖する計画の策定を始めている。

閉鎖が検討されているエリアは、下図に示す処分エリア南端の範囲であり、2014年2月の放射線事象により汚染された区域にある。

閉鎖が検討されているエリア

閉鎖が検討されているエリア

WIPPでは、模擬廃棄物容器を用いたコールドによる操業を2016年8月24日に完了するなど操業再開に向けた準備が進められているが、2016年9月27日に第4パネルの入気坑道で、2016年10月4日には第3パネルの排気坑道で、岩塩の崩落が発見された。2014年2月のWIPPでの放射線事象の後、汚染エリアでは坑道の維持作業が削減されていたため、処分エリアの南端部分では崩落等の兆候が確認されていた。WIPPは、岩塩層に建設された処分施設であり、廃棄物の定置後、長期的には岩塩のクリープ現象による崩壊等で開削空間が閉じられていくことにより、処分エリアが密封されることが想定されており、今回の一部の坑道での崩落もこのクリープ現象によるものである。

DOEは、一部の処分エリアの閉鎖により、作業安全が確保されるとともに、今後、処分が予定されるエリアにおける坑道維持作業等に集中することが可能になるとしている。また、今回の一部の処分エリアの閉鎖は、操業再開の準備や今後の廃棄物定置活動には影響せず、操業再開後の処分施設の操業能力が限定されることもないとしている。

【出典】

スウェーデンの使用済燃料処分の実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は2016年10月3日付けのプレスリリースにおいて、「放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2016」(以下「RD&Dプログラム2016」という)1 を取りまとめ、放射線安全機関(SSM)に提出したことを公表した。SKB社はRD&Dプログラム2016において、使用済燃料処分場の建設開始を2020年、実際の使用済燃料を収納したキャニスタを処分する試験操業の開始を2030年とする処分事業計画を示している。

使用済燃料の最終処分に向けた実施計画(SKB社 RD&Dプログラム2016より作成)

使用済燃料の最終処分に向けた実施計画(SKB社 RD&Dプログラム2016より作成)

使用済燃料の処分に向けて、SKB社は、2006年11月にSSMに対してオスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書を、2011年3月にはSSM及び土地・環境裁判所に対してフォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書を提出している。SSM及び土地・環境裁判所はそれぞれ、SKB社による建設許可申請を認めるか否かに関する意見書を政府に提出することとなっており、SSMは意見書の提出は2017年内になるとの見通しを示している。SKB社がRD&Dプログラム2016で示した処分事業計画は、政府の許可発給が2018年に行われると想定したものとなっている。

SKB社は、今後の放射性廃棄物の処分事業計画に関して、原子力発電所の運転計画の変更を受けた使用済燃料の中間貯蔵容量の確保、並びに原子炉の廃止措置から発生する放射性廃棄物の処分容量の確保の重要性が高まっていることを指摘している。2015年にスウェーデンの原子力事業者2社は、東京電力(株)福島第一原子力発電所事故を受けた規制強化によるコスト増のほか、電力需要の低迷予測を受けて、2020年までにオスカーシャム原子力発電所1、2号機、リングハルス原子力発電所1、2号機の計4基の営業運転を終了するよう運転計画を変更している。SKB社は、使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB、1985年操業開始)の貯蔵容量を8,000トンから11,000トンに引き上げる申請を2015年3月に行っているほか、短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR、1988年操業開始)を拡張する申請も2014年12月に行っている。SKB社は、SFRでは処分できない長寿命低中レベル放射性廃棄物の処分場(SFL)を2045年に操業開始するよう準備を進めており、それまでの期間においては、原子力発電所の廃止措置で発生する廃棄物の一部は、SFR内または原子力発電所敷地内で貯蔵する計画としている。

RD&Dプログラム2016に対するSSM等のレビュー

SSMは、2016年10月3日付けのプレスリリースにおいて、SKB社のRD&Dプログラム2016を受理したこと、RD&Dプログラム2016に対する意見募集を行うため、政府機関、大学・研究機関、原子力施設のある自治体、環境団体など約70の関係機関に送付したことを公表した。意見の募集期間は2016年12月31日までとされており、収集した意見を取りまとめた後、SSMはRD&Dプログラム2016に対する意見書を、2017年3月31日までに政府に提出するとしている。

【出典】


  1. RD&Dプログラムとは、使用済燃料を含む放射性廃棄物の安全な管理・処分、及び原子力施設の廃止措置に関する包括的な研究開発などの計画であり、原子力活動法に基づいて原子力発電事業者が3年毎に策定するよう義務づけられているものである。原子力発電事業者4社の委託によりSKB社が取りまとめを行っている。 []
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合計16カ所のボーリング調査予定地点

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は、2016927日に、地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」において、サイト選定第3段階で実施するボーリング調査に必要な許可申請書を連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)に提出したことを公表した。NAGRAは、ボーリング調査地点を選定するにあたり、これら2つのエリアにおいて20162月までに地表からの地質構造を調査する三次元弾性波探査を完了させていた。ボーリング調査は、2つの地質学的候補エリアのそれぞれ8地点(右の図の△)、計16地点で実施し、最大2,000メートルの深度までボーリング孔を掘削する計画である。

NAGRAは、特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)に基づく地層処分場のサイト選定プロセス第2段階において、今回ボーリング調査の許可申請を行った2つの地質学的候補エリアを優先候補として提案している。この提案は、現在、BFE及び連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)がレビュー等を行っており、サイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアが確定するのは早くとも2018年末となる見込みである。サイト選定第3段階では最終的に、地層処分場を立地する1つのエリアを選定する計画となっており、ボーリング調査を含む地球科学的調査の結果に基づいて、地質学的候補エリア間の詳細な比較が行われることになっている。今回NAGRAが行ったボーリング調査の許可申請は、サイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアが確定した後、速やかにボーリング調査に着手できるように、先行的に行ったものである。 

ボーリング調査の許可手続きと今後のスケジュール

原子力法第35条に基づいて、ボーリング調査のような地下に影響を及ぼす地球科学的調査の実施には、環境・運輸・エネルギー・通信省(Eidgenössisches Departement für Umwelt, Verkehr, Energie und Kommunikation, UVEK)の許可が必要となっており、UVEKの下で連邦エネルギー庁(BFE)が許可発給までの手続を担う1 。NAGRAが提出したボーリング調査の許可申請を受理したBFEは、許可申請書を2017年第1四半期に30日間の公衆縦覧に付す予定としている。また、BFEは、ボーリング調査に関する許可手続の状況について情報提供を行うため、2017年内に関係官庁や報道機関を対象としたセミナーを開催するとしている。BFEの作業と並行して、連邦原子力安全検査局(ENSI)は、今回NAGRAが許可申請したボーリング調査の内容について、安全面からの評価を行い、ボーリング調査が行われる16地点ごとに評価報告書を作成し、2017年末にBFEへ提出するとしている。ボーリング調査に関する許可手続が順調に進んだ場合、16地点でのボーリング調査のUVEKからの許可発給は2018年半ばとなる見込みである2

なお、現在進められているサイト選定第2段階のレビューの結果次第では、NAGRAが予備候補とした地質学的候補エリア「北部レゲレン」も、サイト選定第3段階に進む可能性が残っている。このため、NAGRAは、予備候補の北部レゲレンについても、ボーリング調査の実施地点を検討し、ボーリング調査の許可申請を行う意向である。 

【出典】

【2017年8月25日追記】

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NAGRAファクトシート「ボーリング地点の説明及びボーリング調査の目的-北部レゲレン」を基に原環センターが加工・作成

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は2017年8月24日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」について、サイト選定第3段階で実施するボーリング調査に必要な許可申請書を連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)に提出したことを公表した。北部レゲレンにおけるボーリング調査の対象地点数は6地点である(右の図の△)。

 

NAGRAは、サイト選定第3段階で検討対象とする優先候補として、「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」の2つのエリアを提案していた。この提案に対して連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)は、2017年4月に公表された審査報告書において、これら2つに加え「北部レゲレン」も優先候補に加えてサイト選定第3段階での検討対象とすべきと勧告し、2017年7月には、原子力安全委員会(Eidgenössische Kommission für nukleare Sicherheit、KNS)3 がENSIの勧告を支持するとしていた。今後、他の官庁の審査、意見聴取の実施を経て、2018年末に連邦評議会4 がサイト選定第3段階へ進む地質学的候補エリアを承認する予定である。今回のNAGRAの許認可申請書の提出は、サイト選定第3段階で「北部レゲレン」が検討対象となることに備えたものであり、NAGRAはサイト選定第3段階が開始される2019年初頭から順次、ボーリング調査を実施するとしている。

 

【出典】


  1. 弾性波探査のように地下への影響の少ない調査の実施には、原子力法に基づく許可は不要である。ただし、原子力法令以外の連邦法や州法で別途定めがある場合は、それらの法令に基づく許可の取得が必要となっている。 []
  2. NAGRAはボーリング調査の過程で発生する新たな情報へ柔軟に対応するため、実際に必要とされるよりも多くの許可申請書を提出したとしており、全ての地点に対する許可が発給されない可能性を示している。 []
  3. KNSは、ENSI、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)、連邦評議会に対して安全性に関する重要な問題に関して助言する。 []
  4. 日本の内閣に相当 []

米国のエネルギー省(DOE)は、高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設及び処分施設の立地に向け、同意に基づくサイト選定プロセスの設計についての意見募集等が終了したのを受け、現在、意見募集・パブリックミーティング等を通じて得られた意見等の集約を行っている。2016年9月15日には、収集した意見等を集約するためのミーティングが計画されているが、これに先だって、2016年9月15日付けのドラフト報告書「公衆からの意見の集約に係るドラフト報告書」(以下「ドラフト報告書」という)を2016年9月14日に公表した。

DOEは、同意に基づくサイト選定プロセスの設計に関する意見募集を2015年12月23日から2016年7月31日まで実施した他、サイト選定プロセスの構築について議論するため、2016年1月20日にはワシントンD.C.でキックオフミーティングを、2016年3月29日から7月21日にかけて全米の8カ所でパブリックミーティングを開催した

DOEが公表したドラフト報告書では、意見募集においてDOEが提示した5つの質問に対する意見に加え、同意に基づくサイト選定に関連する主要なテーマに対する意見、その他の論点に対する意見が要約されている。このうち、その他の論点としては、以下の10点が挙げられている。

  • 原子力の役割に対する考え方
  • 使用済燃料の集中中間貯蔵及び現在の原子力発電所サイト内での貯蔵
  • 原子力発電所の立地自治体からの視点
  • 地層処分に対する考え方
  • 貯蔵から処分への移行に対する考え方
  • ユッカマウンテンプロジェクトに対する考え方
  • 軍事関連の廃棄物のみを対象とした処分場の必要性に対する考え方
  • 現在の民間企業によって進められている集中中間貯蔵施設の建設に向けた取り組みに対する考え方
  • 連邦政府の放射性廃棄物基金による資金確保に対する考え方
  • その他の論点

DOEは2016年12月末までに、同意に基づくサイト選定プロセスの第一案(initial draft)を公表する計画である。また、同意に基づくサイト選定プロセスの設計の一部として、サイト選定基準が必要と認識しており、中間貯蔵施設及び地層処分場のサイト選定における検討事項に関するドラフト報告書を作成し、2016年12月には意見募集を開始する計画である。さらに、これまでの意見募集・パブリックミーティング等において、自治体やステークホルダーから、情報提供、資金的な支援が必要との意見が提示されたため、DOEは2017会計年度の予算要求において、資金提供公募を通じて、同意に基づくサイト選定のための相互学習、関与の取組を自治体レベルに移行するための支援に係る予算を要求した。

【出典】

 

【2016年9月16日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2016年9月15日付けの連邦官報において、「公衆からの意見の集約に係るドラフト報告書」に対する意見募集を2016年9月15日から2016年10月30日までの期間で実施することを公告した。意見は、電子メール、書簡、FAX及びオンラインでの提出が可能とされている。

【出典】

 

【2016年10月4日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2016年9月15日に、同意に基づくサイト選定プロセスについて、意見募集・パブリックミーティング等を通じて得られた意見等を集約するとともに、サイト選定プロセスを構築するための次ステップについて話し合うためのミーティング(以下「意見集約ミーティング」という)を開催した。DOEウェブサイトの意見集約ミーティングのページでは、議事の概要が示されるとともに、議事次第や「公衆からの意見の集約に係るドラフト報告書」等の配付資料のほか、質疑応答を含めた議事録とビデオも掲載されている。

今回の意見集約ミーティングでは、DOEが収集した意見の集約及び今後のステップ等についてDOEから報告が行われた後、約1時間の質疑応答が行われた。今後のステップについては、2016年10月30日まで「公衆からの意見の集約に係るドラフト報告書」についての意見募集を行った上で、2016年12月までに最終報告書を発行すること、2016年12月末までに同意に基づくサイト選定プロセスの第一案を公表して意見募集を行うこと、及び輸送・貯蔵・処分など統合廃棄物管理システム(integrated waste management system)の他の要素に係る活動の状況などが示された。中間貯蔵については、民間での取組についても関心があるとして、近々、情報要求(RFI)により関係者の見解を求める意向であるとしている。

【出典】

 

【2017年1月5日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2016年12月29日付で、同意に基づくサイト選定プロセスについて、意見募集・パブリックミーティング等を通じて得られた意見等を集約した報告書「同意に基づくサイト選定プロセス:公衆からの意見の集約に係る最終報告書」(以下「最終報告書」という)を公表した。本最終報告書は、2016年9月14日に公表されたドラフト報告書について、2016年10月30日までの期間で意見募集を行い、収集した意見を反映して最終版としたものである。ドラフト報告書に対する意見は、DOEの回答とともに公表されている。

DOEは、最終報告書に反映され、また、公衆やステークホルダーとの種々の取組を通して得られた意見等は、今後の同意に基づくサイト選定プロセスの案を構築する上で重要なものとしている。なお、最終報告書においては、ドラフト報告書の第5章で将来の展望としていた「同意に基づくサイト選定プロセスの第一案」やサイト基準などの「施設立地に際しての検討事項策定」に係る記述は削除されている。

一方、DOE原子力局(NE)の同意に基づくサイト選定イニシアティブのウェブサイトでは、今後のステップとして、軍事起源の高レベル放射性廃棄物の独立した処分場の計画案に対する意見募集を行っていることが示されている。本計画案では、同意に基づくサイト選定プロセスを構築した後に処分場の開発を進める、段階的なアプローチが採られており、今後の民間を含めた全体的な放射性廃棄物戦略に重要な経験となるとしていた。

【出典】

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は、2016年8月12日に、地層処分場の技術的実現可能性に関するサイトの評価基準に関して、最大深度に係る補足文書を規制機関に提出したことを公表した。また、NAGRAは、NAGRAが設定した最大深度700mより深いオパリナス粘土層での処分場の建設は極めて困難であること、最大深度700mよりも深く処分する場合には建設・操業に関する安全面で不利になることなどの見解を示した。
今回NAGRAが提出した補足文書は、2014年12月に取りまとめたNAGRA技術報告書『地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案』に対して、規制機関である連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)が2015年11月に提示した補足情報の要求に対応するものである。ENSIは、地質学的候補エリアの絞り込みにNAGRAが用いた指標「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」に関する技術情報に不足があり、評価基準の妥当性を検証できないと指摘していた。今回の補足文書においてNAGRAは、様々な深度における処分空洞、密封、バリアの概念を比較した結果を示している。

○スイスにおけるサイト選定の現状

「第3段階に向けたサイト提案」 (NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

「第3段階に向けたサイト提案」
(NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

現在行われているサイト選定第2段階では、サイト選定第1段階で選定された高レベル放射性廃棄物の3つ、低中レベル放射性廃棄物の6つの地質学的候補エリアの中から、高レベル放射性廃棄物用、低中レベル放射性廃棄物用のそれぞれの地層処分場について、2カ所以上の候補を提案することが目標となっている。

高レベル放射性廃棄物の地層処分場について、当初の地質学的候補エリアは「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」である。NAGRAは、2014年12月に取りまとめた技術報告書において、岩盤強度及び変形特性を考慮した上での建設上の適性の観点からの最大深度を地下700mと設定し、これに基づいて、オパリナス粘土層の多くが700mより深いところに分布している「北部レゲレン」をサイト選定第3段階で検討する優先候補とせず、予備候補として留保する提案を行っていた。

NAGRAの提案に対する連邦原子力安全検査局(ENSI)の依頼に基づく外部専門家によるレビューにおいて、NAGRAが提出した岩盤力学的な基本情報や想定条件、設計基準等が不十分かつロバストではないとの指摘を受けており、2015年11月にENSIは、「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」を用いた評価を可能とするため、NAGRAに補足情報の提出を求めていた。

今回、NAGRAは地質学的候補エリアの地質工学的条件について、構造地質学的な履歴や処分深度に応じた変化を踏まえて評価するとともに、処分場の人工バリア及び天然バリアに及ぼす影響を長期安全性の観点から評価することにより、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場の最大深度を地下700mとする根拠を明らかにした。NAGRAは、北部レゲレンを地層処分場とすることについて、「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」と比較すると明らかに適性が劣ると評価している。

○今後の予定

今後、連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2015年1月にNAGRAが取りまとめた報告書と今回の補足文書とを合わせて、サイト選定第2段階の絞り込み結果について審査を継続する。特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)に基づいて、ENSIは審査結果の取りまとめを2017年春に公表する予定である。その後、原子力安全委員会(KNS)1 と州委員会2 がENSIの審査結果に対する見解を表明する。ENSIの審査結果、KNSと州委員会の見解を踏まえて、連邦エネルギー庁(BFE)は地質学的候補エリアの提案に関する成果報告書とファクトシートを作成する。2017年末には、成果報告書とファクトシートについて3か月にわたって州、自治体、政党、関心のある住民、近隣諸国を対象に意見聴取が実施される。意見聴取の結果を踏まえ、2018年末に連邦評議会3 が地質学的候補エリアの提案を承認する予定となっている。

 

【出典】


  1. 原子力安全委員会(Eidgenössische Kommission für nukleare Sicherheit, KNS)は、ENSI、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)、連邦評議会に対して安全性に関する重要な問題に関して助言する。 []
  2. 州内に地質学的候補エリアが含まれる7つの州に、近接する地方バーゼル半州を加えた8つの州の代表が参加している。また、投票権は有さないが、連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)、連邦原子力安全検査局(ENSI)、ドイツの連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)、及びドイツの3つの自治体の代表者も参加している。 []
  3. 日本の内閣に相当 []

スイスの連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)は、2016年7月28日付プレスリリースにおいて、スイス北部の高速道路トンネルの掘削現場において、オパリナス粘土層を対象とした岩盤力学的な調査を実施することを公表した。この調査は、2016年2月から開始されている「ベルヒェン代替トンネル」のトンネル掘削工事と並行して進められる予定であり、ENSIがチューリッヒ工科大学に委託して実施する。

ベルヒェン・トンネルの位置(Tagesanzeiger紙より引用)

ベルヒェン・トンネルの位置(Tagesanzeiger紙より引用)

ベルヒェン代替トンネル

スイスの高速道路A2ルート上にあるベルヒェン・トンネルは、1970年代に建設され、スイス北部のジュラ山脈を貫く上下2本、合計4車線のトンネルである。2023年から大規模な改修工事を行う計画であり、改修中に閉鎖するトンネルの代替として運用するため、2016年2月から全長3.2km、2車線のベルヒェン代替トンネルの建設が開始されている。代替トンネルの開通は2022年の予定であり、トンネル工事には、スイス最大級の掘削機が投入されている。

オパリナス粘土は、放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)が2015年1月に提案した地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」の母岩である。ベルヒェン代替トンネルの位置は、これら2つの地質学的候補エリアとは重なっていないが、母岩と同様のオパリナス粘土層が存在する。連邦原子力安全検査局(ENSI)は、地層処分場プロジェクトとは直接関係のないベルヒェン代替トンネルにおいて、大規模なオパリナス粘土層を掘削する機会を利用することにより、既存の地下研究施設では実施できなかった岩盤力学的な調査を実施するとしている。

調査では、実際の構造地質学・水理地質学的条件下において、トンネル掘削機を用いた場合におけるオパリナス粘土層の挙動や掘削後のオパリナス粘土の膨張に係る挙動等を、光学スキャン、写真撮影、各種計測、実験室での分析等により確認する計画である。

ENSIは調査に向け、同トンネルを管轄する連邦道路庁(ASTRA)及びトンネル工事事業者らと協議を進める意向である。ENSIは本調査の予算として、17万5,000スイスフラン(2,030万円、1スイスフラン=116円で換算)を計上している。

 

【出典】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2016年7月19日に、2015年度1 の年次報告書を公表した。CoRWMは、高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM)2 のプログラム及び計画、英国政府が主導するサイト選定の手続及び基準、政府及びRWMが行う公衆・ステークホルダーの関与に関するアプローチ等の活動をレビューしており、それらのレビュー活動に関する年次報告書を英国政府に提出することになっている

CoRWMは2015年度の年次報告書において、英国政府及びRWMに対して、次の3つの勧告を行っている。

  • 勧告1:放射性廃棄物管理会社(RWM)は、一般的な条件における地層処分システム・セーフティケース(gDSSC)の更新版を2016年に取りまとめる予定である。このセーフティケースには、地層処分場の設置が考えられている3種類の岩種(硬岩、粘土、岩塩)について、岩種による施設設計の違いが分かるような概念図を示すとともに、安全特性に関する説明を含めるべきである。
  • 勧告2:放射性廃棄物管理会社(RWM)の組織体制が地層処分施設を実現するという目的に合致しているかを評価するため、英国政府は、RWMのビジネスモデルに対する外部による独立したレビューを実施すべきである。
  • 勧告3:過去の文書へのアクセスは、地層処分を成功裡に終わらせるための重要な鍵となるため、英国政府は、公衆が放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)及び放射性廃棄物管理会社(RWM)の過去の文書に容易にアクセスできる方法を検討すべきである。

地層処分の実施主体であるRWMは、NDAの内部組織であった放射性廃棄物管理局(RWMD:Radioactive Waste Management Directorate)を分離し、2014年4月に政府外公共機関(NDPB)であるNDA所有の100%子会社として設立された。その後、2014年8月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、RWMが地層処分の実施主体と位置付けられた。このためCoRWMは、地層処分施設を設計、建設、操業するエンジニアリング・プロジェクト組織としての中核機能をRWMが備えるべきと考えている。一方、2015年11月に開催されたCoRWMとRWMとの会合において、RWMは当面の組織開発において、①サイト選定、②ステークホルダーの関与、③放射性廃棄物管理の3つの主要作業項目を軸とする考えを表明していた。これを受けてCoRWMは、公衆及び主要ステークホルダーがRWMの本来の役割を認識するのが難しくなることを懸念し、英国政府に対して勧告2として、RWMのビジネスモデルに対する外部による独立したレビューの実施を勧告すると説明している。

【出典】


  1. 英国の年度は日本と同じ4月開始 []
  2. 原子力廃止措置機関(NDA)の完全子会社 []

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、「適応性のある段階的管理」(APM詳細はこちら)の実施に関して、2017年~2021年の5年間における実施計画案を公表し、2016年10月31日までの期限で意見募集を開始した。NWMOは2008年以降毎年、向こう5年間の行動計画をまとめた実施計画案を事前に公表し、幅広く国民から意見を聞く機会を設けている。最終版の実施計画書は、2017年3月に公表する予定である。

サイト選定プロセスの参照スケジュールの提示

サイト選定プロセスに参加している9自治体

サイト選定プロセスに参加している9自治体(出典:NWMO、2017-2021年実施計画書案)

NWMOは今回意見募集を行っている実施計画案において、使用済燃料処分場のサイト選定プロセスのリファレンスとなるスケジュールを示している。カナダでは現在、サイト選定プロセス第3段階にあたる“使用済燃料処分場の潜在的な適合性の予備的評価”が進められている。NWMOは、机上調査を行う前期(第3段階第1フェーズ)と、現地調査を行う後期(第3段階第2フェーズ)とに分けており、サイト選定プロセスの第3段階第1フェーズが完了した21自治体のうち、9つの自治体が第3段階第2フェーズに進んでいる。NWMOは、これまでのサイト選定プロセスの進行状況に基づいて、第3段階第2フェーズを2022年までに完了できるとの見通しを明らかにした。第3段階第2フェーズの途中段階でも、現地調査等から得られた情報に基づいて、適性が低いと思われる地域を除外していくが、2023年にはNWMOが1カ所の好ましいサイトを選定する準備が整うとしている。この好ましいサイトの所在自治体がサイト選定プロセス第4段階に進むことを望む場合、NWMOが詳細なサイト調査を実施するほか、サイト調査をサポートする専門技術センターの建設が行われる。また、NWMOは将来の作業計画を立案するための前提条件として、処分場の操業開始を2040~45年と仮定していることを明らかにした。

NWMOは2010年に策定したサイト選定プロセス(下記《参考》コラムを参照)において、各段階で実施する調査の期限やスケジュールを意図的に設定せず、サイト選定プロセスに参加する自治体がプロセス自体に関与し、使用済燃料処分場プロジェクトの安全性と地元の福祉への貢献を確認するために必要な時間を確保する姿勢を明確にし、堅持してきた。NWMOは今回の実施計画案において、サイト選定プロセスに参加する自治体や関係組織がサイト選定プロセスの今後の進行見通しを必要としているとの理解から、NWMOが現在までに得た情報に基づく最良のリファレンスとなるスケジュールを提示すると説明している。

2017年から5年間の主要マイルストーン

NWMOは、今回公表した2017年~2021年の実施計画案において、期間中の主要なマイルストーンとして以下の点を示している。

  • 安全性の評価のための予備的な現地調査と技術的評価の実施、及び対象地域の絞り込みに向けた強固なパートナーシップの構築
  • 詳細サイト特性調査の対象となる好ましいサイトの特定に向けた予備的な現地調査と評価の実施、及び強固なパートナーシップの構築
  • これらの活動を、先住民族などを含む関係自治体と協力して実施することによる、パートナーシップを構築してプロジェクトを実施するための基礎固め
  • NWMOの試験施設における使用済燃料コンテナ及び輸送用コンテナの試作品の設計と製造
  • 処分環境で発生しうる微生物学的プロセスの統合的評価の完了
  • サイト選定プロセスに関与している自治体との議論を通じた、選定されたサイトに設置される専門技術センター(Centre of Expertise)の設計計画の推進
  • サイト選定プロセスに関与している自治体との協力による、地元雇用の機会の創出と、「適応性のある段階的管理(APM)」による処分場の建設と操業に関連する将来の雇用のために必要な能力・技能の形成の機会の創出
  • コンテナの設計と試験、及び計画の枠組みの開発に関する情報の提供による公衆の関与を通じた、輸送計画の策定
  • 現在、使用済燃料が貯蔵されている施設からの使用済燃料の輸送計画の立案における廃棄物所有者との協力

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

【出典】

 

【2017年4月3日追記】

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、「適応性のある段階的管理」(APM詳細はこちら)の実施に関して、今後5年間の行動計画をまとめた実施計画書の最終版を公表した。本最終版では、2016年7月の実施計画書案で示されていた主要マイルストーンに変更はない。なお、これと併せて、2014年から2016年までの事業内容等を取りまとめた報告書(以下「3年次報告書」という。)も公表している1

今回公表された実施計画書においてNWMOは、早ければ2023年としている1カ所の好ましいサイトの選定に向けて、当該サイトに設置される専門技術センター(Centre of Expertise)の設計計画の立案などの取組について、サイト選定プロセスに関与している自治体との議論を通じて進めていく意向を示している。

【出典】


  1. 3年次報告書の作成については、核燃料廃棄物法第18条で規定されており、同条では3年次報告書において、今後5年間のAPMの実施に向けた計画を記載すべきことが規定されている。 []

フランスで2016年7月11日に、地層処分場の設置許可申請時期の変更、可逆性の定義、パイロット操業フェーズの導入等に関する規定を含む「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」が成立した。本法律の制定に伴って、「2006年放射性廃棄物等管理計画法」において規定されていた「可逆性のある地層処分」の処分場の設置許可申請時期が2015年から2018年に改定される。また、2006年放射性廃棄物等管理計画法での多くの規定が取り込まれている「環境法典」が改正され、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による地層処分場の操業は、可逆性と安全性の立証を目的とする「パイロット操業フェーズ」から始まることとなった。

今回成立した「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」では、地層処分の「可逆性」を以下のように定義している。

  • 「可逆性」とは、地層処分場の建設・操業を段階的に継続すること、または過去の選択を見直し、管理方法を変更することが将来世代にとって可能とすることである。
  • 可逆性は、将来の技術進歩を反映し、エネルギー政策の転換による廃棄物インベントリの変更に対応するために、地層処分場の建設を段階的に進め、設計を調整可能とし、操業の柔軟性を確保することによって実行される。
  • 可逆性には、定置済の廃棄物パッケージが、処分場の操業・閉鎖戦略と整合した方法及び期間において、回収可能であることが含まれる。
  • 可逆性は、環境法典に定める公衆の安全、保健、衛生の保証、自然環境の保護の目的を遵守するよう確保されなければならない。可逆性の原則については少なくとも5年に1度の頻度でレビューを行う。

また、「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」は、可逆性のある地層処分について以下の事項を規定している。

○2006年放射性廃棄物等管理計画法に規定された地層処分場の設置許可申請時期を2015年から2018年に変更する。

○環境法典に以下の内容を規定する。

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、地層処分場の操業期間を通じて、市民参加を確実にするため、全てのステークホルダーとの協議のもとで「操業基本計画」を策定し、5年毎に見直す。
  • 地層処分場の操業は、実地試験を実施し、地層処分場の可逆性と安全性の立証を強固にすることを目的としたパイロット操業フェーズから始まる。パイロット操業フェーズにおいては、全ての廃棄物パッケージは容易に回収できる状態に維持されなければならない。パイロット操業フェーズで行う試験には、廃棄物パッケージの回収試験も含まれる。
  • デクレ(政令)による地層処分場の設置許可の発給後、原子力安全機関(ASN)が発給する操業許可は、パイロット操業フェーズの操業に限定される。
  • 地層処分場の設置許可申請において、地下構造物に関しては、都市計画法典に基づく建設に関する事前の申告または建設許可は免除される。
  • 地層処分場のパイロット操業フェーズの操業許可は、その操業者が地上施設の設置される土地及び地下構造物の設置される地下部分の所有者である場合、もしくは土地所有者の義務について操業者と土地所有者の合意がある場合に限り発給できる。
  • パイロット操業フェーズの結果については、ANDRAが報告書を作成するとともに、ASN及び国家評価委員会(CNE)が見解書を提示する。さらに公衆意見聴取の対象区域内に全部または一部が所在する地方公共団体の意見が聴取される。
  • ANDRAの報告書はASN及びCNEの見解書とともに、議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出される。OPECSTはANDRAの報告書を評価し、放射性廃棄物管理政策を担当する議会上下両院の委員会に、評価作業を報告する。
  • 政府はOPECSTの勧告も踏まえて、地層処分の可逆性の実現に関する条件を定める法案を策定する。
  • 操業中の地層処分場の可逆性の実現に関する条件を定める法律の公布後、ASNは地層処分場の全面的な操業の許可を発給できる。法律に定められる可逆性の実現に関する条件を満たしていない場合、操業許可は発給されない。

地層処分場の設置許可申請時期については、2006年放射性廃棄物等管理計画法において、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2015年に設置許可申請書を提出することが規定されていた。しかし、同法にて設置許可申請書の提出に先立って実施が義務付けられた公開討論会が2013年に開催された結果を踏まえ、ANDRAは2014年5月に、設置許可申請時期の変更や、パイロット操業フェーズの導入等を提案していた。今回成立した「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」には、これらの設置許可申請時期の変更等に関する規定が含まれている。

また、2006年放射性廃棄物等管理計画法は、設置許可申請書が提出された後、政府が地層処分の可逆性の条件を定める法案を提出することを規定していたが、今回成立した、「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」により、環境法典に可逆性の定義が盛り込まれた。今後、政府は、パイロット操業フェーズの結果を踏まえた上で、全面的な操業以降における地層処分の可逆性の実現に関する条件を定める法案を策定することとなる。

なお、地層処分場の設置許可申請スケジュールの変更等については、2015年7月に成立した「成長、活動、経済機会の平等のための法律」において規定されていた。しかし、同年8月、同法の目的と地層処分場に係る規定の関連が弱いこと等を理由に、憲法院1 は同法の地層処分場に係る規定を違憲と判断し、これらの規定は無効とされた。今回成立した「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」は、無効となった規定の内容を一部踏襲し、2016年3月にロンゲ上院議員及びナミ上院議員らが法案を上院に提出したものであり、2016年5月17日に上院で可決された後、国民議会(下院)で最終可決されたものである。

 

【出典】


  1. 憲法裁判所である憲法院(Conseil constitutionnel)は、国会の議決後、大統領による審査・署名前の法律に対する違憲審査、大統領選挙の選挙管理、大統領及び国会議員の選挙に関する裁判等を行う。司法権にも行政権にも属さない機関である。 []