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《米国》連邦議会上院の委員会で高レベル放射性廃棄物の管理・処分に係る法案の検討を開始

2013年4月25日に、米国の連邦議会上院のエネルギー天然資源委員会は、ブルーリボン委員会の最終報告書・勧告を実施に移すための法案について、4人の超党派の議員により作成した討議用ドラフト法案を公表した。エネルギー天然資源委員会のウェブサイトによると、発電事業者、環境保護団体やブルーリボン委員会委員などのステークホルダーや専門家からの本法案に対するコメントなどを2013年5月24日まで募集するとしている。

本法案の名称は「2013年放射性廃棄物管理法」とされており、討議用ドラフト法案の要点を示した文書においては、ブルーリボン委員会が勧告した放射性廃棄物管理組織の設立、同意に基づく高レベル放射性廃棄物の管理施設のサイト選定プロセスを創設するとしている。また、本法案により、連邦政府の高レベル放射性廃棄物管理に関する義務を果たすとともに、民間の使用済燃料の処分が実現できていないことによる高額な負担を終了させるとしている。さらに、本法案によって使用済燃料の集中貯蔵・処分システムを確立することにより、二酸化炭素の排出のない原子力利用の拡大につながるとしている。

以下では、討議用ドラフト法案の要点を示した文書においてコメントを募集している事項として、「放射性廃棄物管理組織」、「集中貯蔵及び処分場の同意に基づくサイト選定プロセス」、「集中貯蔵施設と処分場との関連」、「放射性廃棄物基金」に関する法案での規定内容の概要を示す。

「放射性廃棄物管理組織」についての規定内容の概要

本法案により、一人の長官が指揮を執る新しい連邦政府関係機関(行政府に設置される独立機関)を設立する。長官は、連邦上院の助言・承認に基づいて大統領に任命され、エネルギー省(DOE)が設定した高レベル放射性廃棄物計画を実施する。また、大統領府管理・予算局(OMB)の副長官、陸軍工兵部隊のチーフエンジニア、エネルギー副長官により構成される監視委員会を創設し、新しい放射性廃棄物管理組織による計画の実施を監督する。

「集中貯蔵及び処分場の同意に基づくサイト選定プロセス」についての規定内容の概要

本法案では、新しい放射性廃棄物管理組織が、閉鎖された原子炉サイトからの使用済燃料、及び運転中の原子炉から緊急に輸送される使用済燃料を受け入れるパイロット規模の中間貯蔵施設を建設することを規定している。また、民間の使用済燃料及びDOEの国防関連の廃棄物を一時的に貯蔵する1つ、または複数の集中中間貯蔵を建設することも規定している。
また、本法案により、処分場及び集中貯蔵施設に適用する新しいサイト選定プロセスを策定する。このサイト選定プロセスでは、新しい放射性廃棄物管理組織は、以下を実施する必要がある。

  • サイトを評価するための技術的なサイト選定ガイドラインを開発する
  • 自主的にサイトとなるような州及び自治体を募集する
  • サイト調査実施のための州及び地元の同意を得る
  • 調査の開始、またはサイトとして選定する段階での多数のパブリックヒアリングを開催する
  • 処分場、または貯蔵施設のサイトとして選定するための州及び地元の同意を得る
  • サイトとなることの同意協定の連邦議会による承認を得る
  • 処分場、または貯蔵施設の建設、操業のための原子力規制委員会(NRC)の許認可を得る

「集中貯蔵施設と処分場との関連」についての規定内容の概要

本法案は、直ちに集中貯蔵施設のサイト選定を開始することを認めるが、貯蔵施設の貯蔵容量に制限を設定しない。本法案では、貯蔵施設の建設・操業中に、長官に対して、自身のミッションプランに照らしながら、処分場のサイト選定及び建設を継続して進展させることを求める要件を提案している。長官、または監視委員会は、処分場に関して着実な進展がなされていないと判断した場合には、すでに貯蔵している放射性廃棄物はそのままとしながらも、貯蔵施設への輸送を停止する。

「放射性廃棄物基金」についての規定内容の概要

本法案により、放射性廃棄物管理組織が歳出予算措置を経ずに利用可能となる、新しい運営資本基金を財務省に創設する。新たに創設される基金には、電力会社からの拠出金が預託される。本法案の成立前に収集された拠出金は、従来からの放射性廃棄物基金に残り、歳出予算の対象となる。

【出典】

 

【2013年6月6日追記】

米国の連邦議会上院のエネルギー天然資源委員会は、「2013年放射性廃棄物管理法」の法案へのコメント募集を2013年4月25日に開始していたが(期限は2013年5月24日)、2013年6月5日に、提出を受けた意見・コメント等を集約して法案へのコメント募集の特設サイトに掲載した。

現状、法案への意見・コメント等の内容の分析結果などは示されていないが、3,211ページに及ぶコメントがほぼそのままの形で掲載されている。

コメントを提出しているのは、原子力エネルギー協会(NEI)などの業界団体、米国原子力学会(ANS)、ユッカマウンテンの地元であるネバダ州ナイ郡、エナジーソリューションズ社などの原子力関連会社、地球の友(FoE)などとなっている。

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )