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《米国》ユッカマウンテンでの水利用に制限-州の水利用停止命令へのエネルギー省(DOE)の緊急仮差止請求棄却

米国のネバダ地区連邦地方裁判所は、2007年8月31日、エネルギー省(DOE)によるユッカマウンテンでのボーリング作業のための水利用に関して、ネバダ州の利用停止命令に対する連邦政府(具体的にはDOE)からの緊急仮差止請求を棄却した。ユッカマウンテンでの水利用については、ボーリング作業のための利用は認められないとして、2006年6月1日にネバダ州の係官から利用停止命令が出されていた。今回の裁判所決定は、この利用停止命令に対してDOEが申立てていた緊急仮差止請求に対するものである。

高レベル放射性廃棄物の処分場開発に向けてサイト特性調査が行われてきたユッカマウンテンにおける水利用については、2002年4月を期限とする暫定許可がネバダ州から発給されていたが、その後永続的な水利用についてのDOEからの申請がネバダ州によって拒否され、2000年3月にはDOEによる訴訟が起こされている。この訴訟は、ユッカマウンテン処分に係る連邦規則の一部無効判決等もあって原子力規制委員会(NRC)への申請書提出に至っていないなどの理由で一時停止されているが、当面の水利用については、2002年12月に訴訟上の合意が行われ、サイト維持のための水利用が認められてきた。

今回問題となったのは、ユッカマウンテン・サイトでのボーリング作業のための水利用である。DOEの2007年6月度四半期進捗報告書によれば、NRCへの認可申請書の論拠となる地震解析に必要なコアサンプル採取のためにボーリング作業が行われている。2002年の合意では、飲用及び安全・衛生上の目的等のための一定量の水利用が認められているが、ボーリング作業は利用対象として含まれていなかった。

連邦地方裁判所の決定では、DOEが合意の無いボーリング作業用の水利用を開始するなど信義則上の問題があること、ユッカマウンテンでの処分場建設は決定されておらず連邦法の先占の問題には当たらないこと、緊急仮差止請求を認める程の回復不能の損害やDOEの主張の明白な正当性は認められないことなどが、DOEの申立棄却の理由として示されている。なお、この決定はあくまでもDOEの緊急仮差止請求に対するもので、水利用に関する実体的な判断を下したものではない。

【出典】

【2007年9月28日追記】

ネバダ地区連邦地方裁判所の決定に対し、DOEは、第2期ボーリング作業用の水利用を中止すること及び第1期ボーリング作業用の水利用は9月末迄に終了することをネバダ州に通知した。ネバダ州は、全てのボーリング作業用の水利用停止を求め、8月31日裁判所決定の遵守申立を行ったが、2007年9月20日、連邦地方裁判所はこれを却下した。
※2007年6月のネバダ州による水利用停止命令は、第2期ボーリング作業を対象としていた。

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )