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《スイス》連邦原子力安全検査局(ENSI)が安全性の評価関連の3つの文書を公表

サイト選定手続きにおいて安全性に関する審査と評価を行う連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2013年1月25日のプレスリリースで、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定プロセスの第2段階における安全性の評価に係る3つの文書を作成したことを公表した。

第2段階の作業フロー図 (特別計画「地層処分場」 方針部分(2008年4月2日)を基に作成)

第2段階の概要図
(特別計画「地層処分場」 方針部分(2008年4月2日)を基に作成)

特別計画では、安全評価を段階的に具体化して進めていくとしており、第2段階では「予備的安全評価」および同評価の結果を用いた「サイト比較」が実施される(右図の赤枠部分。詳細は下記<参考>を参照)。また、予備的安全評価の実施に先立ち、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)はENSIとともに、追加調査の必要性を検討することになっている。

ENSIが今回公表した文書は、以下の3つの事項を扱ったものである。

  1. 予備的安全評価とサイト比較に関する要件の基準に関する詳細
  2. 地質学的知見の充足性について、予備的安全評価の実施前に行う検証の方法
  3. 地上施設と地下施設を結ぶアクセス構造物に対する、建設技術に係るリスクの評価方法

サイト選定プロセスの第2段階は2011年11月から開始されており、現在6つの「サイト地域」のそれぞれにおいて、地層処分場の地上施設の設置区域案の検討が進められている。これに関して、地元自治体などが参加する「地域会議」(サイト地域ごとに設置)の見解が2013年前半に出揃う見通しである 。今回ENSIが公表した文書は、地域会議の見解表明以降にNAGRAが実施する作業に適用する文書である。

同プレスリリースにおいてENSIはこれら3つの文書の概要を以下の通り示している。

①〔ENSI 33/154〕
特別計画「地層処分場」第2段階において、高レベル放射性廃棄物用及び低中レベル放射性廃棄物用の地層処分場についてそれぞれ最低2カ所の候補サイトを選定するための安全性に関する方法論の詳細

ENSIは2010年4月に「予備的安全評価と安全性の比較に係る要件」(ENSI 33/075)1 を公表している。この文書は、「特別計画」で規定されている処分場閉鎖後の長期安全性に関する予備的安全評価と安全性の観点からのサイトの比較作業に適用される基準を示すとともに、これらについてENSIが定めている「要件の基準」の詳細を解説したものであった。

今回公表された文書(ENSI 33/154)は、「特別計画」及びENSI 33/075に示されている「要件の基準」の詳細を示したものである。この文書では、不確実性への対処方法のほか、地質学的候補エリアが明らかな欠点を有している場合、どのようにそれを把握・評価すべきか、また候補サイトの提案に至るまでに、その欠点をどう考慮すべきかについても説明している。

②〔ENSI 33/155〕
特別計画「地層処分場」第2段階のための安全性に関する資料の提出に先立つ地質学的な知見の検証の進め方

NAGRAは、2010年10月付で作成した報告書(NAGRA技術報告書 10-01)において、現在有する知見と第2段階で得られる知見により予備的安全評価が可能であるという判断を示している 。この報告書を評価したENSIは2011年3月に、既に第1段階で得ている知見と第2段階で得られる知見に加えて、ENSIが補足を要求した41の要求事項をNAGRAが明らかにできる場合は、予備的安全評価の実施が可能であると結論した報告書(ENSI 33/115)を公表している

今回公表された文書(ENSI 33/155)は、この41の要求事項を補足する形で、地質学的知見が十分であるかどうかについての検証方法を示したものである。この報告書においてENSIは、専門家が参加する会議において、NAGRAが揃えている地質学的知見が十分であるかどうか、安全性の観点からサイトの比較が実施できるかについて判断するとしている。ここで地質学的な知見が十分であると結論できる場合にのみ、NAGRAは“第2段階における安全性に関する文書”の作成に着手できる。

③〔ENSI 33/170〕
特別計画「地層処分場」第2段階におけるアクセス構造物に関する建設技術に係るリスク評価及び補完的な安全性の検討に関する要件

各サイト地域の「地域会議」は、地上インフラの形態、設置、開発についての見解を2013年前半中に順次表明する見込みである。それらの見解を踏まえてNAGRAは、サイト地域の中に設定されている「計画範囲」ごとに、地上施設の設置区域を最低1カ所提示することになっている。さらにNAGRAは、地上施設と地下施設を結ぶアクセス構造物について検討し、設計する。

今回公表された文書(ENSI 33/170)は、地層処分場のアクセス構造物が安全要件を満たしているかどうか、操業や閉鎖の安全性が確保されているか等、建設技術に係るリスクの評価方法を示したものである。なお、アクセス構造物に関する評価・検討に関わる要件については、「特別計画」の策定時点(2008年4月策定)は見過ごされていたため、ENSIが今回新たに策定したものである。

 

<参考>「予備的安全評価」と「サイト比較」

予備的安全評価は、放射性廃棄物の閉じ込めにおける個々のバリアの性能及びその挙動の解明と、第1段階で選定されたそれぞれの地質学的候補エリアにおける線量の評価値が、防護基準である0.1mSv/年を超えないことの立証を目的とする。予備的安全評価の結果は、安全性の観点からのサイトの比較に用いられるとともに、それにより、概要承認の申請時に必要とされるデータを収集するために第3段階においてどのような調査が必要となるかが明らかになるとされている

サイトの比較作業は、安全性に関する観点から明らかに他より適性が劣ると評価されるサイトを提案しないようにし、また基礎的なデータに内在する不確実性のみに起因する線量の相違を理由としてサイトを除外しないようにすることを目的としている。サイトの比較は、レファレンスケースによる評価結果、パラメータ変動時の評価結果及び安全性と工学的な実現可能性に関する諸基準の定性的評価に基づき行われる。

【出典】

  1. 「予備的安全評価と安全性の比較に係る要件」については、2010年12月3日既報及び2011年4月8日既報の「参考」を参照。 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-02-13 )