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《スイス》サイト選定プロセス第2段階の進捗状況ー地層処分場の地上インフラに関する地元の見解が2013年前半中に出揃う見通し

特別計画「地層処分場」の第1段階で確定した地質学的候補エリア(高レベル放射性廃棄物の処分場3カ所および低中レベル放射性廃棄物の処分場6カ所)(NAGRA2011年年次報告書を基に作成) 第1段階は2008~2011年にかけて実施

特別計画「地層処分場」の第1段階で確定した地質学的候補エリア(高レベル放射性廃棄物の処分場3カ所および低中レベル放射性廃棄物の処分場6カ所)(NAGRA2011年年次報告書を基に作成)
第1段階は2008~2011年にかけて実施

スイスにおける地層処分場のサイト選定手続きを主導する連邦エネルギー庁(BFE)は、2013年1月22日付のプレスリリースにおいて、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定プロセスの第2段階の進捗について、6カ所の各「サイト地域1 」で検討中の“地上インフラの形態、設置、開発”に関する地元の見解が2013年前半までに出揃う予定であることを明らかにした。BFEは2012年10月のプレスリリースにおいて、見解表明の時期が当初予定の2012年秋頃から2013年4月頃に遅れるとの見方を示していたが 、今回のプレスリリースによれば、見解表明はサイト地域ごとに異なるタイミングで行われることになる。

各サイト地域に属する自治体は、処分義務者(実施主体)である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)と共働2 して、地上インフラの形態、設置及び開発の提案を策定・具体化する役割を担う。NAGRAは、2012年1月に、各々のサイト地域内に設定されている「計画範囲」に対して、地上施設3 の設置区域案を3~4カ所(6つのサイト地域の合計で20カ所)提案している 。地上施設の設置区域案の提案は、NAGRAが以下の観点を考慮して行ったものである。

  • 安全性及び技術的実現性:交通網との接続、地形や面積等の状況、地下施設へのアクセス、安全性
  • 土地利用に関する適合性及び環境との適合性:土地利用の法的制限、地表の水流、地下水流、鉱物及び温泉の利用、自然保護区域の回避
  • 地域との調和:今日の利用状況、都市計画上の状況、保養地の所在、景観の保護

地域参加の構築責任をもつBFEは、サイト地域ごとに「地域会議」を設置しており、この会議体において地上施設の設置区域案に対する検討が進められている。地域会議には、州及び自治体の代表者のほか、一般市民も参加している4 。地域会議は、NAGRAが地上施設の設置区域案を提案した際に考慮した観点のほか、地元独自の観点を加えて検討することになっている。このため、NAGRAが提案した以外の地上施設の設置区域案の提案を見解に含めることができる。各々の地域会議の見解表明は総会の議決によって行われる。

BFEのプレスリリースによると、各サイト地域で検討中の地上施設の設置区域案の数や、それらの評価手続き等が異なっているため、6つのサイト地域の見解表明の時期は同一にならず、地域会議それぞれが設定している総会の開催日程に応じて、2013年前半中に順次行われていく予定である。

6つのサイト地域が見解を表明した後、NAGRAは計画範囲ごとに、地上施設の設置区域を最低でも1カ所提示する作業に着手することになっている。特別計画で事前に定められている手続きを経て(下記<参考>を参照)、高レベル放射性廃棄物用と低中レベル放射性廃棄物用の地層処分場についてそれぞれ最低でも2カ所のサイトまで絞り込み、その結果に対する連邦評議会の承認をもって第2段階が完了(BFEの見込みでは2016年)となる。

今回のプレスリリースにおいてBFEは、サイト地域の見解表明がされた時点で、当該のサイト地域における地上施設の立地点に関する判断が行われるものではなく、サイト地域の見解表明のタイミングが前後することによって、あるサイト地域が以降の手続きで優遇されることも不利な扱いを受けることはないと言明している。

 

<参考>特別計画「地層処分場」の第2段階における選定手続き

第2段階の概要図 (特別計画「地層処分場」 方針部分(2008年4月2日)を基に作成)

第2段階の概要図
(特別計画「地層処分場」 方針部分(2008年4月2日)を基に作成)

2011年末に開始された特別計画「地層処分場」の第2段階では、最初のステップとして、地域参加プロセスが本格的に開始されることとなっており、地上インフラに関する検討、安全性に関する評価(予備的安全評価)、経済・社会・環境影響についての評価等の実施が規定されている。右図では、赤枠で囲んだ部分がこれに該当する。このステップを踏まえて、高レベル放射性廃棄物の地層処分場について最低2カ所、低レベル放射性廃棄物の地層処分場について最低2カ所の候補サイトが選定される。現在進行中の赤枠部分の実施内容は以下の通りである。

■地域参加

遅くとも第2段階において「サイト地域」に属する自治体が地域参加の組織を立ち上げ、活動を開始させる。これらの自治体が地域参加の枠組みの中で連邦官庁やNAGRAと共働して地域の利益を代表する。

現在では地域参加プロセスの中で、連邦エネルギー庁(BFE)が主導で設置した6つの地域会議が活動しており、合計で202の自治体が参加している。各地域会議は約50名から最大150名までのメンバーで構成されており、州の代表者やサイト地域を構成する自治体の代表者、経済団体・政党・教会等の代表者、住民が参加している。

■処分場プロジェクトの具体化

NAGRAは必要な地上インフラの配置と形態の提案を策定し、処分場の地下施設を設計する。サイト地域ではNAGRAの提案を検討し、地上インフラの形態、設置、開発について見解を示す。その後、サイト地域と共働して、NAGRAは計画範囲ごとに地上施設の設置区域を最低1カ所提示する。

2012年1月にNAGRAは地上施設の設置区域20カ所を提案した。サイト地域の見解表明は2013年前半中にサイト地域ごとに順次行われる予定である。その後、NAGRAが計画範囲ごとに地上施設の設置区域を最低でも1カ所提示することとなっており、その時期は2013年後半以降となる(2012年1月30日付既報及び2012年10月15日付け追記を参照)。

■予備的安全評価

NAGRAは、提示した最低1カ所の地上施設の設置区域を考慮しながら、予備的安全評価を実施する。同評価は、放射性廃棄物の閉じ込めにおける個々のバリアの性能及びその挙動の解明と、第1段階で選定されたそれぞれの地質学的候補エリアにおける線量の評価値が、防護基準である0.1mSv/年を超えないことの立証を目的とする。予備的安全評価の結果は、サイトの比較に用いられるとともに、それにより、概要承認の申請時に必要とされるデータを収集するために第3段階においてどのような調査が必要となるかが明らかになるとされている

サイトに関する知見によって予備的安全評価が可能となるが、場合によっては追加調査を実施しなければならず、NAGRAは早期に連邦原子力安全検査局(ENSI)と追加調査の必要性を検討しなければならない。

■地域開発及び環境の観点

第1段階で確定した地質学的候補エリアの計画範囲に基づいて、第2段階でNAGRAは、選定したサイトの地域開発計画評価のための資料を作成する。続いて、連邦国土計画庁(ARE)は、サイト地域の所在州(1つまたは複数のサイト地域を含む州)と共働してサイトの地域開発計画を評価する。また、第3段階で実施する環境影響評価の第1ステージを考慮して、NAGRAは予備調査において、提案した候補サイトにおける地層処分場の建設が環境に与える影響を調査し、その後、環境影響評価の仕様書を作成する。

■社会・経済的基盤研究

地層処分場が立地地域に与える社会・経済的影響をサイト地域が包括的に把握・評価できるようにするため、BFEは地域の持続的な開発のための戦略、対策、プロジェクトを新たに策定するか、または現行の戦略、対策、プロジェクトを更新する。BFEがサイト地域との共働で実施する、サイト地域での地層処分場の計画、準備、建設、操業及び閉鎖の影響についての調査が、地域開発戦略の基盤をなす。

なお、2012年6月にBFEは地層処分場が地域に与える経済影響に関する中間報告書を公表した。この後、社会影響と環境影響に関する調査が実施されることとなっており、2013年夏に社会・経済・環境影響に関する最終報告書を公表する予定である

【出典】

  1. 特別計画「地層処分場」の「2.2.2 地質学的候補エリア、計画範囲、サイト地域」及び「略語一覧、用語」によると、サイト地域は、候補エリア所在自治体(地質学的候補エリアが領域の一部あるいは全体にわたって含まれる自治体)、並びに計画範囲(建設される可能性のある地上施設の配置を考慮して、地質学的候補エリアの広がりによって確定される地理的領域)の境界内に全体が含まれるか、それを管轄領域の一部に含む自治体によって構成される。また、事情によってはその他の自治体がサイト地域に含まれることもある。 []
  2. 「特別計画」では、共働は「計画の枠組みにおいて生じうる係争を適切に認知し解決できるようにするために、影響を受ける連邦、州、隣接諸国の官庁、並びに公的課題が付託されている限りにおける公法上・私法上の組織と個人を、早期に関与させる」と規定されている。 []
  3. NAGRAの技術報告書NTB11-01によると、地上施設は地層処分場への物資の搬入の入口等から構成されており、地上インフラの一部とされている。他方、地上インフラには、地上施設、道路、線路、坑道・斜坑・処分場の建設現場の設備、斜坑の頂上部の施設等が含まれる。 []
  4. サイト地域にドイツの自治体が含まれる場合はドイツの代表者も参加する。 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-02-13 )