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《スイス》連邦原子力安全検査局が事業者による処分費用見積りを妥当なものと評価

スイスの連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2012年11月5日付のプレスリリースにおいて、原子力発電事業者が2011年に行った廃止措置及び放射性廃棄物の処分に関する費用見積りを、技術的観点から妥当なものと評価したことを公表した。

スイスにおいて原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処分に係る資金確保については、原子力法に基づく「廃止措置・廃棄物管理基金令」が枠組みを定めており、原子力施設の所有者が、5年毎に廃止措置費用及び放射性廃棄物の処分費用の見積りを行うことを規定している。この規定に基づいて、原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリア1 は、2011年にこれらの費用の見積りを行っていた。
プレスリリースによると、ENSIは、エンジニアリング会社の協力を得て、放射性廃棄物の処分費用の見積りを評価したとしている。その結果、低・中レベル放射性廃棄物用と高レベル放射性廃棄物用の地層処分場のいずれについても、建設、操業及び閉鎖に関して原子力発電事業者が行った処分費用の見積りは、現在の知見の水準を踏まえて、完全かつ妥当であるという結論に至ったとしている。なお、処分費用の見積りの基礎的な算定は、処分の実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が行っている。
一方、ENSIは、次回以降の費用見積りにおいて考慮すべき点として、以下の6点を勧告している。

  • 研究施設の廃止措置廃棄物の種類と量の評価について考慮し、更新すべきである。
  • 輸送が実際に行われるのは数十年後になることから、「陸路による危険物の国際輸送に関する欧州協定」(ADR)に依拠して、個々の輸送容器の輸送能力を精査すべきである。
  • 地下のデータ収集に関するスケジュールについて検討し、改訂すべきである。
  • 処分場のシール構造(高圧縮ベントナイトブロックなど)の費用評価を検証し、類似した処分場プロジェクト(フランス、ベルギー)と比較すべきである。
  • 地層処分場内の坑道ライニング(掘削支保及びライニング)の厚みが妥当かどうかを判断するために、サイトを特定して検討すべきである。
  • ENSIは、低・中レベル放射性廃棄物処分場サイトにおける地下特性調査施設の許認可、建設から操業に至る期間を10年以下としている原子力発電事業者のスケジュールを楽観的すぎると指摘していた。このため、地下データの収集スケジュールを段階的に検討、更新し、その結果として見積られる費用の変化を示すべきである。

なお、2011年の原子力発電事業者の見積り額は、原子力発電事業者が負担する放射性廃棄物管理費用が、合計176億8,000万スイスフラン(日本円で約1兆5,205億円、1スイスフラン=86円で換算、以下同じ)である。

また、原子炉5基の運転停止後に必要となる廃止措置などと放射性廃棄物の管理費用2 の合計は、206億5,400万スイスフラン(1兆7,762億円)であり、このうち、「廃止措置基金」及び「廃棄物管理基金」で確保すべき資金が115億スイスフラン(9,890億円)になる。原子力発電事業者が引当金や経費として費用負担するか、実施する放射性廃棄物管理費用の合計は91億5,400万スイスフラン(7,872億4,400万円)である。

 

事業者が費用負担する、または引き当てる費用

基金により確保すべき費用

原子炉の運転停止後
(原子力発電事業者が直接行う放射性廃棄物管理の費用―ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)での貯蔵及び各原子炉サイトでの搬送準備等を含む)

17億900万スイスフラン

(1,469億7,400万円)

放射性廃棄物管理費用
(放射性廃棄物の処分費用等―ヴュレンリンゲン中間貯蔵施設(ZWILAG)での貯蔵を含む)

74億4,500万スイスフラン

(6,402億7,000万円)

85億2,600万スイスフラン

(7,332億3,600万円)

(中間貯蔵費用3 を含む)

廃止措置費用

29億7,400万スイスフラン

(2,557億6,400万円)

合計

91億5,400万スイスフラン

(7,872億4,400万円)

115億スイスフラン

(9,890億円)

【出典】

【2012年11月26日追記】

連邦エネルギー庁(BFE)の2012年11月21日付のプレスリリースによると、「廃止措置基金」及び「廃棄物管理基金」を管理する基金委員会は、原子力発電事業者が2011年に行った廃止措置及び放射性廃棄物の処分に関する費用見積りを受けて、2012~2016年の期間に原子力発電事業者が基金に支払うべき拠出金を決定した。

プレスリリースによると、2012~2016年間の期間における原子力発電事業者4社の廃棄物管理基金に対する1年間の拠出金額の合計は、1億1,830万スイスフラン(日本円で101億7,380万円、1スイスフラン=86円で換算、以下同じ)とされている。また、同じ期間における、原子炉5基及びヴュレンリンゲン中間貯蔵施設(ZWILAG)を対象とした廃止措置基金に対する原子力発電事業者の1年間の拠出金額の合計は、5,600万スイスフラン(48億1,600万円)である。

【出典】

  1. http://www.swissnuclear.ch/en/home.html []
  2. 廃止措置・廃棄物管理基金令は、「廃止措置基金」及び「廃棄物管理基金」によって、原子力発電所の運転停止後に必要となる廃止措置及び放射性廃棄物の処分費用を確保すべきことを規定している。なお、原子力発電所の運転停止の前に必要となる資金については、原子力法において、発電所の所有者が引当金を計上することにより資金確保すると規定されている。 []
  3. 発電所サイト内での中間貯蔵は事業者が直接負担し、サイト外での中間貯蔵は基金により賄われる。 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2023-10-11 )