Learn from foreign experiences in HLW management

EU理事会が原子力安全及び使用済燃料・放射性廃棄物管理に関する理事会決定を採択-高官レベルグループ設置へ

欧州連合(EU)のEU理事会(閣僚理事会(閣僚級代表で構成されるEUの決定機関))が2007年5月8日に公表したプレスリリースによると、原子力安全及び使用済燃料・放射性廃棄物管理に関するEU理事会決定が採択された。このEU理事会決定によると、今後、原子力安全規制機関等の代表により構成される高官レベルグループが設置され、同グループは専門家グループを設置した上で、使用済燃料・放射性廃棄物管理等に関する諸問題を検討することとなっている。

欧州連合(EU)では、2003年4月に欧州委員会(EC。EUの執行機関)より放射性廃棄物管理及び原子力施設の安全確保に関して、拘束力のある指令の策定に向けた指令案が提出されていたが、それに対する2004年6月のEU理事会決定では、原子力施設の安全に対する各国の責任が強調され、欧州委員会(EC)の指令案は採択されなかった。今回のEU理事会決定の前文でも、本決定が、原子力安全に対する責任は加盟国にあり、適切である場合にのみEUレベルでの対応がなされること、原子力施設の安全と監督に関わる意思決定は操業者と国の機関によってのみなされるものであること、EUレベルでのイニシアティブは国際的に行われている様々な活動に付加的な価値を加えるものでなければならないことなどに留意しつつ採択されたものであることが示されている。

EUレベルでの放射性廃棄物管理及び原子力施設の安全確保に関する制度の構築について、2004年6月のEU理事会決定では、原子力安全作業部会(WPNS)を設置して検討を継続するとしており、2006年12月にWPNSとその下部グループにより報告書が取りまとめられた。その内容を踏まえ、EU理事会は原子力安全及び使用済燃料・放射性廃棄物管理に関する行動計画の策定に向けた協議プロセスを、欧州委員会(EC)などとともに進めてきた。今回のEU理事会決定は、この協議プロセスの成果であり、EU理事会として今後の原子力安全、使用済燃料・放射性廃棄物管理、廃止措置における資金確保に関する検討範囲や行動、実施手段等を示すものである。

今回のEU理事会決定では、「A.目的と検討範囲」において、原子力施設における安全性の維持と向上、使用済燃料・放射性廃棄物管理における安全性の維持と向上、原子力施設の廃止措置における資金確保の3項目が目的として示されている。「B.今後の行動」では、3項目について方策が示されている。そのうち、使用済燃料・放射性廃棄物の管理に関しては、使用済燃料・放射性廃棄物の安全管理のための戦略の策定、加盟国に国家プログラムを策定・更新させることなどが挙げられている。

「C.手段」で示されている内容は次の通りである。

  • EU理事会は、欧州委員会(EC)に対して、加盟国の安全規制機関等の上級代表者により構成される高官レベルグループの設置を要請
  • EU理事会は、EUレベルでの高官レベルグループの設置を支援
  • EU理事会は、高官レベルグループに対して、検討結果や今後の行動等に関する報告書を、グループ設置後の遅くとも2年以内に、その後は遅くとも3年毎にEU理事会と欧州議会(諮問・共同決定機関)に提出するよう要請
  • 高官レベルグループは、原子力安全、使用済燃料・放射性廃棄物管理、廃止措置における資金管理のそれぞれに関して専門家グループを設置し、専門家グループの成果を評価・議論
  • 高官レベルグループは、2007年中に策定される作業プログラムを基礎として、今後の行動や考えうる研究テーマ、それらの優先順位を決定
  • EU理事会は、欧州委員会(EC)に対して、高官レベルグループが選定した研究の実施に関する支援を要請
  • EU理事会は、高官レベルグループの成果を評価し、将来の適切な行動について決定

【出典】

  • EU理事会ウェブサイト、2007年5月8日付プレスリリース http://www.consilium.europa.eu/ueDocs/cms_Data/docs/pressData/en/ecofin/94016.pdf
  • EU理事会ウェブサイト、2004年6月28日付プレスリリース http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/04/st10/st10746.en04.pdf
  • 外務省ウェブサイト、欧州連合(European Union)http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html

【2007年7月19日追記】

2007年7月17日付のプレスリリースにおいて、欧州委員会(EC)は、EU理事会から設置要請のあった原子力安全及び放射性廃棄物管理に関する高官レベルグループについて、設置を決定したことを公表した。高官レベルグループの第一回目のミーティングは、夏休み明けに開催される予定とされている。

  • EUウェブサイト、2007年7月17日付プレスリリース (http://www.europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/1107&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en#fn3)

【2007年8月1日追記】

2007年7月17日付の欧州委員会(EC)による原子力安全及び放射性廃棄物管理に関する高官レベルグループの設置に関する決定が、7月27日付欧州連合(EU)官報に掲載された。この決定では、高官レベルグループのタスク、組織、欧州議会・EU理事会(閣僚理事会)に対する報告に関する規定などが示されている。

(post by 原環センター , last modified: 2013-06-26 )