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《米国》ブルーリボン委員会が最終報告書を公表

「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下「ブルーリボン委員会」という)は、2012年1月26日に、米国の使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分に係る安全かつ長期的な解決策のための包括的な提案を示した最終報告書をエネルギー長官に提出した。ブルーリボン委員会は2011年7月にドラフト報告書を公表しており、最終報告書は、その後の意見募集を経て、委員会設置から2年以内という期限に合わせ、最終報告・提言が取りまとめられたものである。

最終報告書では、概ねドラフト報告書の内容が踏襲されているが、勧告された戦略の重要な要素として、「集中貯蔵施設や処分場が利用可能となった際に開始される使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の大規模な輸送のための迅速な取組」が追加され、8つのポイントが示されている(他の7点については既報参照)。ブルーリボン委員会のプレスリリースでは、最終報告で示した戦略における極めて重要な要素として、以下の3点の勧告が挙げられている。

  1. 州などの地元の意に反して強要する試みは成功しておらず、将来の放射性廃棄物の貯蔵施設及び処分場の立地選定は同意に基づくアプローチとすること。
  2. 米国での高レベル放射性廃棄物管理プログラムの責任は、DOEから独立で、安全な貯蔵及び処分の確保に専念する新しい組織へ移すこと。
  3. 毎年約7.5億ドルの放射性廃棄物基金への拠出金の連邦予算上の取扱いを変更し、連邦議会の当初の意図通りに使用できるよう確保すること。

ブルーリボン委員会は、エネルギー長官に宛てた書簡において、勧告の多くは政府及び連邦議会による行動が必要とした上で、勧告の実施においてエネルギー省(DOE)に関連する全ての要素を調整するため、十分な権限を有する上級担当官を速やかに指名するよう要請している。また、最終報告書では、放射性廃棄物の安全かつ恒久的な解決策の決定は現世代の義務であるとして、新たな戦略の必要性は緊急課題としている。

なお、ブルーリボン委員会は最終報告書においても、ユッカマウンテンの適性について見解を示すこと、放射性廃棄物管理に係る特定サイトを提案すること、米国の将来のエネルギー供給上の原子力発電の役割について見解を示すことは、委員会の検討対象とされていなかったとしている。ブルーリボン委員会のプレスリリースでは、これらは何れも重要な課題ではあるが、放射性廃棄物管理のための戦略の変更・改善の緊急性を変えるものではなく、ブルーリボン委員会が成し遂げようと努力したのは、サイトに関わらず適用可能であり、現状の行き詰まりの解決につながる確実な放射性廃棄物管理アプローチの勧告であるとしている。

【出典】

【2012年2月9日追記】

米国連邦議会では、2012年1月26日のブルーリボン委員会の最終報告書の公表後、同報告書に関する公聴会が以下の委員会において開催された。これらの公聴会では、ブルーリボン委員会の2名の共同委員長などが出席して証言を行った。

  • 下院エネルギー・商務委員会、環境・経済小委員会(2012年2月1日開催)
  • 上院エネルギー・天然資源委員会(2012年2月2日開催)
  • 下院科学・宇宙・技術委員会(2012年2月8日開催)

このうち、2012年2月8日に行われた下院科学・宇宙・技術委員会の公聴会では、ブルーリボン委員会の共同委員長の他、エネルギー省(DOE)の原子力担当次官補が証言を行っており、2012会計年度のDOEの研究開発計画である「使用済燃料処分等プログラム」(UFD)における以下の処分関連の活動を紹介した。

  • 放射性廃棄物の発熱に対する岩塩の挙動を理解する最適なアプローチを決定するためのワークショップの開催
  • 産業界とともに、超深孔処分概念のための研究開発・実証計画やロードマップの策定の開始
  • 花崗岩及び粘土層での処分についての国際的なパートナーとの協力を拡大

さらに、原子力担当次官補は、2012会計年度の歳出法案に関する両院協議会報告書において、ブルーリボン委員会の最終報告書の公表後の6カ月以内に、使用済燃料などの管理戦略を策定するよう指示されていることを挙げ(2011年12月20日追記参照)、上記のDOEの研究開発活動は、DOEが進めている作業での重要な部分となるとした。

【出典】

【2012年3月9日追記】

ブルーリボン委員会が設置していた処分小委員会、原子炉・核燃料サイクル技術小委員会、輸送・貯蔵小委員会の3つの小委員会は、各々の最新版報告書を公表した。これらの小委員会は、2011年5月から6月にかけて、それぞれの勧告案を含むドラフト報告書を公表し、2011年7月15日までを最終締切として意見募集を行っていた(2011年6月21日追記参照)。また、2011年7月29日にブルーリボン委員会の委員会自体のドラフト報告書が公表され、2011年10月31日まで意見募集が行われていた

今回公表された3つの小委員会の最新版報告書は、小委員会及びブルーリボン委員会のドラフト報告書に対して寄せられた情報や意見を反映して改訂したものとされている。また、輸送・貯蔵小委員会の最新版報告書によると、2012年1月時点での小委員会の成果及び結論を中心に示しており、将来の使用済燃料等の輸送及び貯蔵に関する勧告の詳細を示しているとしている。このため、小委員会の最新版報告書は、ブルーリボン委員会の最終報告書を補完するものとしている。

【出典】

【2012年4月17日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、2012年4月10日、ブルーリボン委員会の最終報告書に関するブリーフィングを開催した。本ブリーフィングでは、ブルーリボン委員会の共同委員長が最終報告書で示された8つの勧告について説明するとともに、NRCからこれらの勧告のNRCの活動への影響などについて説明が行われた。

本ブリーフィングにおいてNRCのヤツコ委員長は、ブルーリボン委員会の最終報告書での提案に関連し、一般的な地層処分場に適用する連邦規則である10 CFR Part 60「地層処分場における高レベル放射性廃棄物の処分」の改定作業を検討することを示した。なお、10 CFR Part 60は、1982年放射性廃棄物政策法においてNRCが策定することを求められているものであり、これに先立って1981年に最終版が策定された後、数度にわたって改定が行われている。

【出典】

【2012年9月14日追記】

連邦議会上院エネルギー天然資源委員会は、2012年9月12日、「2012年放射性廃棄物管理法案」に関する公聴会を開催した。この公聴会においてエネルギー省(DOE)の原子力担当次官補は、使用済燃料などの管理戦略が策定期限を過ぎた現在も提出されていないことについて、策定作業は終盤を迎えているが、現在も継続しており、終了する日を明確に示すことはできないなどと証言した。この使用済燃料などの管理戦略については、ブルーリボン委員会の最終報告書の公表後6カ月以内に策定するよう連邦議会が指示していたものである(2011年12月20日追記参照)

なお、今回の公聴会の主題である「2012年放射性廃棄物管理法案」は、ブルーリボン委員会の勧告を実施に移すための法案であり、新たな放射性廃棄物管理実施主体の設置や資金確保制度を変更する規定などを含んでいる。同法案は、現在の会期中での成立は見込まれておらず、今後の検討に資するためにエネルギー天然資源委員会委員長が提出していたものである。

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )