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《スイス》「処分の実現可能性実証プロジェクト」に関する連邦当局の技術的な検証作業が終了 ―関連評価文書・報告書類が公開される

スイスの連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は2005年9月12日付のプレスリリースにおいて、2002年末に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が提出した「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書に関する連邦当局による技術的な検証作業が、同日公表された評価文書及び報告書をもって終了したことを発表した。また、2004年9月に連邦環境・運輸・エネルギー・通信相がNAGRAに対し、チュルヒャー・ヴァインラント地域の代替案となる高レベル放射性廃棄物処分場の候補地域の提示のために作成を要請 した、NAGRAのオプション報告書も公表された。「処分の実現可能性実証プロジェクト」は1978年に連邦政府によってその実施が求められたもので、2002年12月にNAGRAはチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土を対象とする「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書を発表している

今回のプレスリリースによると、以下の4つの文書によって、評価文書を含む「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書に関連するすべての報告書類が揃ったことになる。

NAGRAのオプション報告書:
NAGRAは地質学的観点から、高レベル放射性廃棄物処分場の候補サイトとして、母岩候補が存在する地域とその岩種、具体的に候補となりうる区域などを記述し、オパリナス粘土とその他の候補となる母岩(結晶質岩と、下部淡水モラッセの粘土層)を比較して、オパリナス粘土の母岩が安全性の観点からみて優位にあるという判断を提示。
処分の実現可能性実証プロジェクトに関する原子力施設安全本部(HSK)の検証:
HSKは、使用済燃料、ガラス固化された高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物に関して、法律で定められた処分の実現可能性の実証が、NAGRAによって適切に実施されたという全体的な見解を提示。
高レベル放射性廃棄物処分の歴史的な経緯に関するHSKの報告書:
HSKは、一般公衆を対象に、高レベル放射性廃棄物処分に関する歴史的な経緯を読みやすいパンフレット形式でまとめ、処分の実現可能性実証のためにチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土が選択された理由を説明。
処分の実現可能性実証に関する原子力施設安全委員会(KSA)の見解表明:
KSAは、スイスにおける高レベル放射性廃棄物処分の実現可能性の実証がNAGRAによって適切に実施されたと結論。


同プレスリリースでは、2005年9月13日から2005年12月12日までの間、関連する全ての文書が公表され、スイス国内のみならず隣接する外国を含めて、関心を有するすべての州、地方自治体、組織及び個人などが、これらの報告書に関する意見を表明することができるとされている。また、この意見収集手続きにおいて、関連する当局、住民及び隣接する外国に対する情報の公開とその継続的な提供が連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)にとって重要であると述べられている。このために、連邦エネルギー庁(BFE)はチュルヒャー・ヴァインラントのあるチューリッヒ州の建設局との協力により、2005年9月17日に同州内の自治体の一つであるマルタレンにおいて、地域住民への情報提供のための集会を開催するとしている。

また、2005年9月9日には、BFE関連の放射性廃棄物処分に関する情報公開用ウェブサイトのプレスリリースにおいて、チュルヒャー・ヴァインラント北部での「処分の実現可能性実証プロジェクト」の社会・経済的な影響に関する調査が実施されたことが報じられ、調査報告書が公開された。同プレスリリースによると、この調査は、高レベル放射性廃棄物処分場の建設及び操業が、チュルヒャー・ヴァインラント北部地域の経済及び地元住民の生活の質に与える影響についての調査を目的として、NAGRAの費用負担で、同地域の3つの自治体の代表などからなるオパリナス・ワーキンググループにより実施されたものである。

さらに同プレスリリースは、この調査と並行して、BFEにより、国内外において建設または建設予定の地層処分場に関して、社会・経済的な影響に関する基礎的な調査が実施されており、調査の結果が2005年末に公表される予定としている。

「処分の実現可能性実証プロジェクト」に関する関連評価書・報告書類は以下のサイトで閲覧が可能である。
http://www.entsorgungsnachweis.ch/index.php?navID=39&userhash=457211&lID=1

【出典】

  • BFE関連の放射性廃棄物処分に関する情報公開用ウェブサイトのプレスリリース(2005年9月9日) (http://www.entsorgungsnachweis.ch/news.php?userhash=&lID=1&newsID=35)
  • 連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)プレスリリース(2005年9月12日)(http://www.energie-schweiz.ch/imperia/md/content/medienmitteilungen/mm07-122005/24.pdf)

【2005年12月15日追記】

連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、2005年12月13日付けのプレスリリースにおいて、2005年12月12日をもって高レベル放射性廃棄物の処分の実現可能性実証に関して公開された文書及び報告書についての意見聴取期間が終了したことを発表した。

同プレスリリースによると、連邦エネルギー庁(BFE)の下には約3,800件の見解が寄せられ、その内訳はスイス国内の個人、州、市町村、政党などから825件、ドイツは連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)からのものも含めて2,770件、オーストリアから200件、フランスから5件となっている。

また、同プレスリリースによると、BFEは今後数ヶ月をかけて寄せられた見解の分析を行い、報告書を取りまとめるとしている。また、連邦評議会はこの報告書及び「処分の実現可能性実証プロジェクト」に関連する文書に基づいて、2006年上半期には処分の実現可能性が実証されたかどうかの判断を行うとしている。

  • 連邦環境・交通・エネルギー・通信省(UVEK)プレスリリース(2005年12月13日)
    (http://www.uvek.admin.ch/dokumentation/00474/00492/index.html?lang=de&msg-id=1189)

【2006年6月20日追記】

2006年6月15日、連邦エネルギー庁(BFE)関連の放射性廃棄物処分に関する情報公開用ウェブサイトにおいて、BFEが提出した地層処分場の社会・経済的な影響に関する調査報告書が公開された。

  • 連邦エネルギー庁(BFE)関連の放射性廃棄物処分に関する情報公開用ウェブサイトのプレスリリース(2006年6月15日)
    (http://www.entsorgungsnachweis.ch/news.php?userhash=&lID=1&newsID=43)

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )