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《カナダ》核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が2008~2010年度の3年次報告書を公表

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2011年3月29日に、2008年度から2010年度までの事業内容等を取りまとめた報告書(以下「3年次報告書」という)を連邦天然資源大臣に提出したことを公表した。

2002年11月に施行された「核燃料廃棄物法」では、NWMOの活動に関する年次報告書に加えて、3年に一度、3年次報告書の作成が求められている。今回NWMOが公表した3年次報告書は、NWMOが初めて作成したものであり、核燃料廃棄物法の規定に基づいて、3年間の事業内容の他、2011年から2015年までの実施計画及び予算の見通し、過去3年間にNWMOが実施した活動に対する公衆の意見募集の結果、諮問委員会のコメントなどがまとめられている。

2010年度までの戦略的目標については、以下のような目標が示されている。

  • 関心のある人々との持続可能で長期的な関係の構築及び将来の方向性の設定への参画
  • 情報の提供を受け、処分場を受入れる意思のある地域での処分に向け、協力的なサイト選定手続きの実施
  • 結晶質岩及び堆積岩での処分のための設計及びセーフティケースの開発、最善な慣行と整合して継続的な向上を目指す研究開発の推進
  • 安全、長期の管理のための資金確保
  • 新たな知見、国際的な最善の慣行、技術の高度化、社会的な期待・価値の変化に対する処分計画の適応
  • NWMO事業の実施における一般公衆の信頼に寄与するような責任あるガバナンス体制の維持
  • 社会、環境、技術及び財務能力を持った実効的な実施主体の整備と維持

このような戦略的目標に対して、3年次報告書でNWMOは、2008年度から2010年度の取組における成果として、以下の点を挙げている。

  • 「適応性のある段階的管理(APM)」のためのサイト選定プロセスの確立
  • 2010年5月のサイト選定プロセスの開始
  • 地層処分に関するレファレンス設計やセーフティケースの開発・改良
  • 将来のAPMプログラムに関する財政的な枠組みの確立
  • NWMOの技術、監督、ガバナンスなどの能力の向上及び組織基盤の整備

また、3年次報告書では、サイト選定手続きの実施については、2010年5月にサイト選定プロセスを開始した後、2010年末までに以下の5つの地域が、処分事業及びサイト選定計画についての情報提供に対して関心を表明する決議を行ったことが示されている。

  • パインハウス村(サスカチュワン州)
  • イングリッシュリバー先住民族保留地(サスカチュワン州)
  • イアーフォールズ・タウンシップ(オンタリオ州)
  • イグナス・タウンシップ(オンタリオ州)
  • シュライバー(オンタリオ州)

NWMOは、これらの地域での検討を行うため、APMやプロジェクトを紹介する機会や情報を提供する取組を行っているとしている。また、NWMOは、関心を表明した地域の周辺の先住民に情報を提供するなどの取組を開始したとしている。

さらに、3年次報告書では、2010年10月のドラフトに基づいて検討した2011年から2015年までの実施計画の最終版も示されている。この実施計画では、2015年までの戦略的目標としてサイト選定手続きの実施を掲げ、2011年には9段階からなる選定プロセスの第2段階(詳細な情報提供、初期スクリーニングの実施)及び第3段階(潜在的な適合性の予備的評価の実施)を実施するとしている。

なお、2002年に、核燃料廃棄物発生者である原子力事業者及びカナダ原子力公社(AECL)は、各々が信託基金を設定しており、その資金残高は、2010年12月末時点で合計約21億カナダドル(約1,700億円)とされている。

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )